コラム

兄弟姉妹間で遺産分割する際の2パターンと相続割合は?揉めないためのポイントを弁護士が解説

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人が亡くなると相続が発生し、原則として遺産分割協議をする必要が生じます。
しかし、兄弟姉妹で遺産分割協議をするにあたって、揉め事に発展しないかどうか不安に感じる人も少なくないでしょう。

兄弟姉妹間で行う遺産分割協議で揉めないためには、どのような点に注意すればよいのでしょうか?
また、遺産分割協議はどのような流れで進めればよいのでしょうか?

今回は、兄弟姉妹間での遺産分割協議のポイントなどについて弁護士が詳しく解説します。

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兄弟姉妹で遺産分割をする2つのパターンと相続の割合

相続が発生すると、有効な遺言書があるなど一定の場合を除き、相続人全員で遺産分けの話し合いをする必要が生じます。
この遺産分けの話し合いを「遺産分割協議」といいます。
兄弟姉妹で遺産分割協議を行う場面には、どのようなケースがあるのでしょうか?
はじめに、兄弟姉妹間で遺産分割協議を行う2つのパターンについて解説します。

パターン1:親が亡くなり、その子である兄弟姉妹で遺産分割をする場合

1つ目は、親が亡くなり、故人(「被相続人」といいます)の子どもである兄弟姉妹が遺産分割協議をする場合です。

被相続人の子どもは、原則として相続人となります。
そのため、被相続人に子どもが複数いる場合は、その子どもである兄弟姉妹間で遺産分割協議をすることとなります。

この場合における相続分は、兄弟姉妹間で平等です。
たとえば、相続人が被相続人の長男と二男の2名だけである場合は、長男と二男の相続分はそれぞれ2分の1となります。

また、被相続人に配偶者がいる場合は、配偶者と子どもの相続分は2分の1ずつであり、子どもが複数いる場合は子ども全体の相続分である2分の1を子どもの数で等分します。
たとえば、相続人が被相続人の配偶者と長男、二男である場合の相続分は、配偶者が2分の1、長男と二男がそれぞれ4分の1(=2分の1×2分の1)です。

パターン2:子どもがいない者が亡くなり、その兄弟姉妹で遺産分割をする場合

2つ目は、被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合です。

相続人の順位は、次のように定められています。
被相続人に配偶者がいる場合は、配偶者はこれらの相続人とともに常に相続人となります。

  1. 第1順位:被相続人の子ども。被相続人より先に死亡している子どもがいる場合には、その死亡した子どもの子どもである被相続人の孫
  2. 第2順位:被相続人の父母。父母がいずれも他界しており存命の祖父母がいる場合は、祖父母
  3. 第3順位:被相続人の兄弟姉妹。被相続人より先に死亡している兄弟姉妹がいる場合には、その死亡した兄弟姉妹の子どもである被相続人の甥姪

そのため、第1順位の相続人と第2順位の相続人がいない場合や、これらの者がいたものの全員が相続放棄をした場合には、第3順位である兄弟姉妹が相続人となります。
この場合における相続分は、兄弟姉妹間で平等です。
たとえば、相続人が被相続人の兄と弟の2名だけである場合は、兄と弟の相続分はそれぞれ2分の1となります。

また、被相続人に配偶者がいる場合は、配偶者の相続分は4分の3、兄弟姉妹の相続分は4分の1となり、兄弟姉妹が複数いる場合は兄弟姉妹全体の相続分である4分の1を兄弟姉妹の数で等分します。
たとえば、相続人が被相続人の配偶者と兄弟姉妹である場合の相続分は、配偶者が4分の3、長男と二男がそれぞれ8分の1(=4分の1×2分の1)です。

兄弟姉妹間の遺産分割で揉めやすいケース

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兄弟姉妹間の遺産分割は円満に進むことも多い一方で、中には争いに発展してしまうケースもあります。
では、兄弟姉妹間での遺産分割協が争いに発展しやすいのは、どのようなケースなのでしょうか?

ここでは、被相続人の長男と二男が相続人であることを前提に、遺産分割協議で揉めやすい例を紹介します。

兄弟姉妹間が疎遠となっている場合

1つ目は、兄弟姉妹間が疎遠となっている場合です。

疎遠となっている場合や、前妻の子と後妻の子であるなど確執がある場合には、遺産分割が揉め事に発展しやすいといえます。
疎遠であったり、元々関係性がよくなかったりする場合は、今後の関係悪化を気にすることなく双方が自身の主張をする可能性が高くなるためです。

兄弟姉妹間で遺産分割についての考え方が異なる場合

2つ目は、兄弟姉妹間で遺産分割についての考え方が異なる場合です。

たとえば、長男が「被相続人と同居してきて、かつ長男である自分が遺産の大半をもらうのは当然だ」と考えている一方で、二男が「どちらも被相続人の子どもある以上、遺産は平等に分けるべき」と考えている場合などです。

兄弟姉妹の一部が多額の生前贈与を受けていた場合

3つ目は、兄弟姉妹の一部が被相続人から多額の生前贈与を受けている場合です。
兄弟姉妹の一部だけが多額の生前贈与を受けている場合は、感情的な不満も相まって遺産分割でトラブルとなりやすくなります。

兄弟姉妹の配偶者が介入する場合

4つ目は、兄弟姉妹の配偶者が介入する場合です。

兄弟姉妹の配偶者は相続人ではないものの、金銭が関係する問題であるがゆえに、配偶者が話し合いに同席することがあります。
配偶者が介入して相続に家庭内の金銭問題(子どもが小さくてお金がかかる等)を持ち込むことで、話し合いがまとまりづらくなるおそれがあります。

遺産が分けにくい場合

5つ目は、遺産が分けづらい場合です。
たとえば、唯一の遺産が被相続人と長男一家が暮らしていた不動産だけである場合などがこれに該当します。

この場合において法定相続分で遺産分割をしようとすると、長男がその不動産を相続する代わりに、長男から二男へ不動産の評価額の2分の1相当額の金銭を支払うことが現実的な落としどころとなるでしょう。

しかし、長男が二男に支払えるだけの金銭を有していない場合は、この方法を取れません。
そこで、不動産を売ってお金を分けることを二男が希望するなどして、争いに発展するおそれがあります。

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兄弟姉妹間での遺産分割で揉めないポイント

兄弟姉妹間での遺産分割で揉めないためには、どのような点に注意すればよいのでしょうか?
ここでは、兄弟姉妹間での遺産分割を争いに発展させないための主なポイントを5つ紹介します。

法定相続分が基本となることを知っておく

1つ目は、法律上、遺産分割は法定相続分が基本となると知っておくことです。

先ほど解説したように、被相続人と同居していた長男が初めから「自分がすべて相続して当然だ」といった態度で協議に臨むと、二男が気分を害し争いに発展してしまいかねません。
また、遺産分割協議がまとまらず、後ほど解説する調停や審判へと移行すれば、長年同居し無償で介護をしたなどの事情が多少考慮されることはあるとはいえ、原則として法定相続分で遺産を分けることとなります。

そのため、本来は兄弟姉妹間の取り分は平等であることを知ったうえで、話し合いに臨むとよいでしょう。

財産を隠さない

2つ目は、遺産を隠さないことです。

中には、被相続人と同居していた相続人などが、少しでも遺産の取り分を増やそうと遺産を隠すことがあります。
しかし、財産隠しが発覚することが少なくありません。
相続人は、被相続人の預金口座など財産を調査できるためです。

財産隠しが一つ発覚すると、他にも隠している事項があるのではないかと疑心暗鬼となり、相続トラブルに発展しやすくなります。

無断で預金を引き出さない

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3つ目は、被相続人の預金を無断で引き出さないことです。

相続が起きても、金融機関が死亡を知らないうちは口座が動いています。
そのため、キャッシュカードを持っており暗証番号を知っていれば、事実上引き出しはできてしまうかもしれません。

しかし、事実上「できてしまう」からといって、被相続人の口座から無断で預金を引き出すと、他の相続人から財産隠しを疑われトラブルに発展するおそれがあります。
そもそも、金融機関との約款により、本人以外によるキャッシュカードの利用は禁じられていることが一般的です。
そのため、被相続人のキャッシュカードを使って口座から無断で預金を引き出すことは、避けるべきでしょう。

なお、当面の生活費や葬儀費用の支払いなどに苦慮している場合は、預金の仮払い制度を使うことで、被相続人の預金の一部の仮払いを受けることが可能です。
制度の活用には注意点が少なくないため、利用をご検討の際はあらかじめ弁護士にご相談ください。

相手の心情に配慮する

4つ目は、相手の心情や状況に配慮することです。

兄弟姉妹間での相続争いは、相手の心情や状況に配慮せず自身の要求をぶつけることから起きるケースが少なくありません。
たとえ法律的に正しい主張であったとしても、伝え方を誤ると関係に亀裂が入る原因となるおそれがあります。

そのため、遺産分割において自身の希望を伝える際は、相手の心情や状況に配慮した表現をすることをおすすめします。

生前に遺言書を作成しておいてもらう

5つ目は、可能であれば、生前に遺言書を作成しておいてもらうことです。

すべての遺産について承継者が定められた有効な遺言書があれば、相続発生後に兄弟姉妹間で遺産分割協議をする必要はありません。
そのため、有効な遺言書があれば、兄弟姉妹間での相続争いを回避しやすくなります。

しかし、トラブルを回避できる有効な遺言書を自分で作成することは、容易ではありません。
そのため、遺言書の作成は、弁護士などの専門家のサポートを受けて行うことをおすすめします。

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兄弟姉妹間での遺産分割をする流れ

兄弟姉妹間での遺産分割協議は、どのような流れで進めればよいのでしょうか?
ここでは、遺産分割をする一般的な流れを解説します。

相続人を確定する

はじめに、相続人を確定します。
遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、一人でも協議から漏れた遺産分割協議は無効となってしまうためです。

相続人の確定は、被相続人の戸籍謄本や除籍謄本などを取り寄せることで行います。
しかし、相続人が被相続人の兄弟姉妹姉妹である場合などには相続人を確定するために取り寄せるべき書類も多くなり、書類を集めるだけでも一苦労でしょう。

自分で相続人の確定をすることが難しい場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。

遺産を確定する

相続人の確定と並行して、遺産の確定を行います。
どのような遺産がどれだけあるのかがわからなければ、遺産分割協議を進めることが難しいためです。
判明した遺産は一覧表にまとめておくと、協議の際に参照しやすくなるでしょう。

遺産分割協議をする

相続人と遺産が確定できたら、相続人全員で遺産分割協議を行います。
遺産分割協議では、誰がどの遺産を受け取るのかを取り決めます。

遺産分割には「土地と建物は長男、A銀行の預金は二男」のように遺産ごとに承継者を決める方法のほか、「唯一の遺産である土地建物を長男が相続する代わりに、長男から二男に〇円を支払う」のように金銭で調整する方法などがあります。

遺産の分け方についてお困りの際は、弁護士にご相談ください。

協議の結果を遺産分割協議書にまとめる

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遺産分割協議がまとまったら、まとまった協議内容を遺産分割協議書にまとめます。

遺産分割協議書はその後、遺産である不動産の名義変更や預貯金の解約手続きなどに使用します。
そのため、第三者が見ても誰がどの遺産を取得することになったのかがわかるよう、明確に記載してください。

遺産分割協議書を作成したら、相続人全員が署名と実印での押印を行います。

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兄弟姉妹間で遺産分割協議がまとまらないとどうなる?

先ほど解説したように、遺産分割協議を成立させるには相続人全員による合意がまとまらなければなりません。
では、兄弟姉妹間での合意がまとまらない場合は、どうすればよいのでしょうか?
最後に、遺産分割協議がまとまらない場合の対応を解説します。

遺産分割調停を申し立てる

兄弟姉妹間での遺産分割協議がまとまらない場合は、遺産分割調停による解決を図ります。

遺産分割調停とは、家庭裁判所で行う遺産分けの話し合いです。
話し合いといっても当事者が直接顔を合わせてやり取りするのではなく、裁判所の調停委員が交互に意見を聞き、意見を調整したうえで進行します。

調停委員の調整を受けて無事に合意ができたら遺産分割調停が成立し、裁判所で作成された調停調書をもとに遺産の名義変更などを行います。

遺産分割審判へ移行する

遺産分割調停を経ても合意ができない場合は、調停が不成立となります。
遺産分割調停が不成立となると、自動的に遺産分割審判へと移行します。

遺産分割審判とは、裁判所が遺産の分け方を決める手続きです。
裁判所が下した審判の内容には相続人全員が従わなければならず、不服がある場合は審判書の送達から14日以内に高等裁判所に即時抗告の申立てをしなければなりません。

相続人が誰も期間内に即時抗告をしなかった場合は、その時点で審判が確定し、審判書を使って遺産である不動産の名義変更や預貯金の解約などが可能となります。

まとめ

遺産分割を兄弟姉妹間でするパターンや、兄弟姉妹間での遺産分割協議で揉めないためのポイントなどを解説しました。
兄弟姉妹間での遺産分割協議で揉めないためには、法定相続分による分割が原則であることを知っておくほか、相手の心情に配慮した話し合いなどがポイントとなります。
兄弟姉妹間での遺産分割がまとまらない場合などには、弁護士へ相談して解決を図るとよいでしょう。

Authense法律事務所には相続に問題に強い弁護士が多く在籍しており、数多くのサポート実績があります。
兄弟姉妹間での遺産分割協議でお困りの際は、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。

遺産分割に関するご相談は、初回60分間無料でお受けしています。

Authense法律事務所が選ばれる理由

Authense法律事務所には、遺産相続について豊富な経験と実績を有する弁護士が数多く在籍しております。

これまでに蓄積した専門的知見を活用しながら、交渉のプロである弁護士が、ご相談者様の代理人として相手との交渉を進めます。
また、遺言書作成をはじめとする生前対策についても、ご自身の財産を遺すうえでどのような点に注意すればよいのか、様々な視点から検討したうえでアドバイスさせていただきます。

遺産に関する問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
相続に関する知識がないまま遺産分割の話し合いに臨むと、納得のできない結果を招いてしまう可能性がありますが、弁護士に依頼することで自身の権利を正当に主張できれば、公平な遺産分割に繋がります。
亡くなった被相続人の財産を調査したり、戸籍をたどって全ての相続人を調査するには大変な手間がかかりますが、煩雑な手続きを弁護士に任せることで、負担を大きく軽減できます。
また、自身の財産を誰にどのように遺したいかが決まっているのであれば、適切な内容の遺言書を作成しておくなどにより、将来の相続トラブルを予防できる可能性が高まります。

私たちは、複雑な遺産相続の問題をご相談者様にわかりやすくご説明し、ベストな解決を目指すパートナーとして供に歩んでまいります。
どうぞお気軽にご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(神奈川県弁護士会)
神奈川県弁護士会所属。中央大学法学部法律学科卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了。離婚、相続を中心に家事事件を数多く取り扱う。交渉や調停、訴訟といった複数の選択肢から第三者的な目線でベストな解決への道筋を立てることを得意とし、子の連れ去りや面会交流が関わる複雑な離婚案件の解決など、豊富な取り扱い実績を有する。
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