コラム

公開 2022.12.23 更新 2023.10.17

名誉毀損などの誹謗中傷の時効は?民事と刑事それぞれの時効を弁護士がわかりやすく解説

誹謗中傷_アイキャッチ_10

X(旧Twitter)など、インターネット上での誹謗中傷被害が後を絶ちません。
被害の拡大を防ぐため、誹謗中傷などの被害を受けたら即座に対応することをおすすめします。

では、名誉毀損などの誹謗中傷を受けた場合、これに対応するための時効はあるのでしょうか?
今回は、名誉毀損の時効について弁護士がくわしく解説します。

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名誉毀損とは

名誉毀損とは、相手の社会的地位を低下させる行為です。
名誉毀損をされた場合には、相手を刑事罰に問うことができる可能性がある他、相手に対して損害賠償請求をすることができる可能性があります。

なお、刑事罰(名誉毀損罪)は刑事上の概念である一方で、損害賠償請求は民事上の概念です。
両者の考え方は重なる部分もあるものの、基本的には別の概念ですので、混同しないように整理しておきましょう。

名誉毀損と刑事罰

刑法上には、「名誉毀損罪」という罪が存在します。
これは、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合に該当する罪です。

「公然と」とありますので、原則としては、密室やインターネット上の閉鎖空間で行われた誹謗中傷は、名誉毀損罪には該当しません。
たとえば、他に人がいない会議室や、InstagramやX(旧Twitter)のダイレクトメールでの発言であれば、名誉毀損罪に問うことは困難な場合がほとんどです。
一方、他の社員などの面前や、InstagramやXのリプライ、YouTubeのコメント欄への投稿などでの発言は、「公然と」に該当する可能性が高いでしょう。

名誉毀損罪に問うための「事実を摘示し、人の名誉を毀損した」とは、事実を述べて相手の社会的評価を低下させることです。
たとえば、「A氏は不倫している」や「A氏は覚醒剤をやっている」などの発言は、これに該当する可能性が高いでしょう。

また、述べた内容が本当のことではなかったとしても、名誉毀損罪は成立します。
つまり、A氏が実際には不倫や覚醒剤の使用をしていなかったとしても、これらの発言を名誉毀損罪に問うことは可能であるということです。

名誉毀損罪が成立する場合には、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金の対象となります。

名誉毀損と損害賠償請求

名誉毀損によって名誉権を侵害された場合や、名誉感情を侵害された場合には、民事上の損害賠償請求をすることも選択肢の一つとなります。

名誉権の侵害とは、社会的評価を低下させられることであり、刑法上の名誉毀損罪の成立要件とほとんど同一です。また、名誉感情の侵害は、本人が自分自身に感じている価値や自尊心(プライド)を傷つけられることであり、これは民事独自の考え方です。

損害賠償請求とは、被った損害を相手に金銭で賠償してもらう請求です。
認められる損害賠償額は名誉毀損によって受けた被害によって異なりますが、被害者が個人の場合で数万円から数十万円程度、被害者が個人事業主などで事業に影響が及んだ場合には数十万円から100万円程度となると言われています。

なお、これはあくまでも民事上の話であり、損害賠償請求が認められたからといって、相手の刑事責任も当然に認められるわけではありません。

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名誉毀損を刑事罰に処すための時効

名誉毀損を受けた場合、相手を刑事罰に処すためには、「告訴時効」と「公訴時効」という2つの時効に注意しなければなりません。
それぞれの内容は、次のとおりです。

告訴時効

告訴時効とは、告訴をする際の時効です(刑訴法235条)。

まず、名誉毀損罪は「親告罪」に該当します。
親告罪とは、被害者側から告訴をしなければ、検察が公訴をすることができない罪です。
そのため、被害者側が告訴をしない限り、加害者が名誉毀損罪に問われることはありません。

そして、名誉毀損罪などの親告罪において、この告訴をすることができる期間は、犯人を知った日から6か月とされています。
この期間を過ぎると、もはや告訴をすることはできません。

公訴時効

公訴時効とは、起訴をする際の時効です(刑訴法250条)。

名誉毀損罪などの親告罪で相手の刑が確定するまでのおおまかな流れは、原則として次のようになります。

  1. 被害者側が加害者を告訴して捜査機関が受理する
  2. 捜査機関が捜査をする
    ※必要に応じて加害者を逮捕する
  3. 検察へ送致する
  4. 起訴する
  5. 裁判がされ、有罪か無罪かが決定される
    ※略式起訴の場合、公開の裁判は行われません。

先ほど解説した「告訴時効」は、このうち「1」についてかかる時効であり、この「公訴時効」は、このうち「5」の時効です。

公訴時効はその罪に科される法定刑によって異なっており、名誉毀損の場合には3年とされています。
つまり、この期間が過ぎてしまうともはや起訴をすることができず、相手を有罪とすることはできません。

名誉毀損をした人に損害賠償請求をするための時効

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民事上の損害賠償請求ができる期間にも、時効が存在します。
損害賠償請求の時効は、損害および加害者を知ったときから3年です。

ただし、加害者などを知らないまま期間が経過したとしても、不法行為の時から20年を経過すると、もはや損害賠償請求をすることはできなくなります。

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名誉毀損で相手の法的責任を追求する流れ

SNSなどインターネット上で名誉毀損に遭い、相手を刑事告訴したり損害賠償請求をしたりするための基本的な流れは次のとおりです。

証拠を保全する

名誉毀損をする内容の投稿がなされたら、投稿のスクリーンショットを撮影しましょう。
スクリーンショットは投稿の内容の他、URL、投稿された日時、相手のアカウント名やユーザー名などが写るように撮影します。

X(旧Twitter)など相手のプロフィール画面が別で存在する場合には、相手のプロフィールについても撮影しておきましょう。
利用環境によっては、投稿画面だけではユーザー名などの表記が不完全となる場合があるためです。

弁護士へ相談する

名誉毀損への法的責任追及を、自分一人で行うことは容易ではありません。
なぜなら、損害賠償請求や刑事告訴には、法律や裁判についての専門知識が不可欠であるためです。

そのため、名誉毀損がなされたら、できるだけすぐに弁護士へご相談いただくことをおすすめします。

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発信者情報開示請求をする

インターネット上で名誉毀損の投稿をする者は匿名であることが多く、相手が誰であるのかわからないことがほとんどでしょう。
そのため、損害賠償請求の前の段階として、相手が誰なのかを特定するための発信者情報開示請求が必要となります。

刑事告訴する場合も、多くの場合、発信者情報開示請求を先行させることが推奨されます。

発信者情報開示請求は、まず名誉毀損行為(投稿など)が行われたSNS運営企業などに対して行うことが多いです。
そこでIPアドレスやタイムスタンプなどの情報が入手できたら、その情報をもとに、プロバイダへ発信者情報開示請求を行います。
これで、ようやく投稿者であると推認される者(プロバイダ契約者)の住所と氏名がわかります。

しかし、任意で発信者情報開示請求をしたところで、SNS運営企業などやプロバイダが応じてくれる可能性は低いです。
そのため、多くの場合、裁判所の手続きを利用して、裁判所の判断に基づきIPアドレスなどを開示してもらう必要があります。

これらの手続きをトータルすると、おおむね半年から1年ほどの期間がかかります。
告訴時効は犯人を知ってからスタートするため問題ありませんが、3年の公訴時効は犯罪行為が終わった日(名誉毀損投稿がなされた日)から進行しますので、開示手続きに1年近く要することを考えると、できるだけ早期に準備に取り掛かることが必要です。

なお、プロバイダ制限責任法が改正され、令和4年(2022年)10月から施行されました。
これにより、SNS運営企業などへの裁判とプロバイダへの開示請求にかかる期間の短縮が期待されています。

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損害賠償請求や刑事告訴を行う

開示請求によって名誉毀損投稿をした相手の住所や氏名がわかったら、相手に対して損害賠償請求をしたり、刑事告訴をしたりします。

損害賠償請求をすべきか刑事告訴をすべきか、もしくは両方とも行うべきなのかは、状況によって異なります。
また、たとえば損害賠償請求は可能であるものの刑事告訴は難しいケースも少なくありません。

そのため、どのような方法で法的責任を追求するのかについても、弁護士と相談したうえで決めるとよいでしょう。

名誉毀損の時効に関する注意点

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名誉毀損に対して法的責任を追及するにあたって、時効にまつわる注意点は次のとおりです。

時効前でもログが消される可能性がある

法律上の時効は上で紹介したとおりですが、実務上はこの時効にのみ注意をすればよいわけではありません。

なぜなら、早期に対応しなければ、SNS運営企業などやプロバイダで保存しているログが消されてしまうためです。
ログの保存期間はSNS運営企業などやプロバイダなどによって異なりますが、おおむね3か月から6か月と言われています。

ログの保存期間を過ぎてしまえば、発信者情報開示請求をしてもログが残っていないため、情報の開示を受けることが困難となってしまいます。
また、名誉毀損投稿をした相手が証拠を保全する前に投稿を消してしまう可能性もあるため、注意が必要です。

刑事の時効が過ぎても損害賠償請求ができる場合がある

刑事上の責任を追及できるかどうかと、損害賠償請求などで民事上の責任を追及できるかどうかは別の問題です。
また、先ほど解説したように、それぞれの時効は同一ではありません。

そのため、たとえ刑事上の公訴時効を過ぎてしまっても民事上の時効を過ぎていなければ、相手に対して損害賠償請求ができる可能性があります。
時効が過ぎたことを理由に相手への責任追及が難しいと感じていても、一度弁護士へご相談いただくことをおすすめします。

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自分での対応はおすすめしない

名誉毀損などの誹謗中傷に対して、自分で対応することはおすすめできません。
自分で反論をすることで、誹謗中傷投稿が悪化するリスクがある他、言い返した内容によっては、相手への法的責任追及が難しくなる可能性があるためです。

また、発信者情報開示請求など裁判をすべき場面も多く、裁判手続きに慣れていない人が自分で手続きを行うことは困難でしょう。
そのため、名誉毀損など誹謗中傷への対応は、弁護士へご相談いただくことをおすすめします。

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まとめ

名誉毀損の被害に遭い、相手に対して法的責任を追及したい場合には、刑事上と民事上それぞれの時効期間内に行わなければなりません。
また、ログの保存期間にも注意が必要です。

名誉毀損への法的責任追及は、時間との勝負であるといっても過言ではないでしょう。
そのため、被害に遭ったらできるだけすぐに弁護士へご相談いただくことをおすすめします。

Authense法律事務所では、名誉毀損や誹謗中傷にまつわる相談を、初回60分間無料でお受けしております。
名誉毀損でお困りの際には、ぜひAuthense法律事務所までお早めにご相談ください。

記事を監修した弁護士
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Authense法律事務所記事監修チーム
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