コラム

公開 2021.10.18 更新 2023.02.13

失敗しない資金調達とは?ベンチャー企業が知っておくべき方法と注意点

失敗しない資金調達とは?ベンチャー企業が知っておくべき方法と注意点

ベンチャー企業が活用したい資金調達方法を紹介し、それぞれのメリットやデメリット、注意点をわかりやすく解説します。

ベンチャー企業が資金調達するには、銀行からの融資のほか、補助金の活用、ベンチャーキャピタルからの出資等さまざまな方法が存在します。

自社に合った方法を選択するようにしましょう。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
一橋大学法学部法律学科卒業。元裁判官。企業法務、M&A、労働法、事業承継、倒産法(事業再生含む)等、企業に係わる幅広い分野を中心とした法律問題に取り組む。弁護士としてだけでなく、裁判官としてこれまで携わった数多くの案件実績や、中小企業のみならず、大企業や公的企業からの依頼を受けた経験と実績を活かし、企業組織の課題を解決する多面的かつ実践的なアドバイスを提供している。
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資金調達がベンチャー企業にとって重要である理由

ベンチャー企業には、明確な定義は存在しませんが、一般的に、革新的なアイデアや技術をベースとして、新たなビジネスを立ち上げる過渡期にある企業等を指します。

新たなビジネスを形にして軌道に乗せるためには、多くの資金が必要となります。
設備や技術への投資の他、利用者を獲得するための広告宣伝等にも費用が必要となるためです。

通常の企業であれば、事業による売上から、これらの費用を支出することも多いと思いますが、ベンチャー企業はまだまだ稼ぐ力が弱いことも少なくありません。
そのため、自己資金のみで必要な資金を賄うことが難しい場合が多いといえるでしょう。

むしろ、スピードが命ともいえるベンチャー企業で、必要な費用を自己資金のみで手配できる日を待っていては、機運を逃してしまうことにもなりかねません。
こうした事情から、ベンチャー企業を一気に軌道に乗せるためには、企業自身以外から、まとまった資金を調達することが不可欠といえます。

ベンチャー企業の資金調達の方法

ベンチャー企業が資金を調達する方法には、次のものが考えられます。
それぞれのメリットとデメリットは後ほど解説するため、まずはそれぞれの資金調達方法の概要を確認しましょう。

金融機関からの融資を受ける

金融機関からの融資は、金融機関からお金を借りることです。
融資を受けた場合、利息が発生し、約束した返済時期に利息とともに資金を返済する必要があります。

しかし、返済してくれるかどうかわからない相手に始めから多額の融資をすることは、金融機関にとってリスクが高いといえるでしょう。また、金融機関は、融資にあたり、対象企業の与信審査を行いますので、財務体質がまだ万全とはいえないベンチャー企業では、この与信審査が通らないこともあります。
そのため、ベンチャー企業が創業時に金融機関から融資を受けるためには、信用保証をつける必要があることが一般的です。

信用保証とは、創業したばかり等の理由でまだ信用力の弱い企業の保証を信用保証協会が引き受けてくれる制度です。
万が一返済が滞った場合には信用保証協会が返済を肩代わりしてくれるため、金融機関からの融資が受けやすくなります。

日本政策金融公庫から融資を受ける

日本政策金融公庫とは、民間金融機関を補完するために存在する政府系の金融機関です。
創業融資等さまざまなコンセプトでの融資制度を設けており、創業間もない企業等が融資を受けやすい仕組みとなっています。

無担保無保証で融資が受けられる枠があるため、創業時にまず検討したい資金調達方法の一つです。

助成金や補助金を活用する

助成金や補助金とは、国や地方自治体等が企業に対して資金を支給してくれる制度です。
原則として返済は不要ですが、支給を受けるには要件があります。

一般的に、助成金は人材の活用や育成のために支給されることが多い一方で、補助金の目的はその補助金の種類によってさまざまです。

補助金や助成金には非常に多くの種類が存在します。
また、常に募集があるものではなく、年によって募集内容が異なることも少なくありません。
そのため、活用を検討する際には要件に当てはまりそうな助成金や補助金を見逃さないことが重要です。

VCから出資を受ける

VC(ベンチャーキャピタル)とは、上場していないベンチャー企業等に出資して株式を取得する投資会社や投資ファンドを指します。

VCは、将来的にその企業が成長して上場した際や、M&Aをされた際に株式を売却して利益を得ることを目指していることが一般的です。

個人投資家から出資を受ける

個人投資家はエンジェル投資家とも呼ばれ、VC等に属さず個人でベンチャー企業へ投資する人を指します。

VCと同じく、企業が上場した際やM&Aをされた際に株式を売却して利益を得ることを目指していることが一般的です。

クラウドファンディングを活用する

一般的に、クラウドファンディングとはインターネットを介して不特定多数の人々から少額ずつの資金を調達することを指します。※1
クラウドファンディングのマッチングサイトも複数存在し、近年急速に認知が広がっている資金調達の形態です。

一口にクラウドファンディングといってもその形態はさまざまで、例えば次のものが代表的です。

  • 寄付型:起案されたプロジェクトに対して支援者が寄付をする仕組みのクラウドファンディングです。お礼の手紙等の返礼がある場合もありますが、返戻品の金銭的価値は出した資金と比べて低いことが一般的です。被災地の支援等に活用されることの多い形態だといえます。
  • 購入型:商品やサービスの前払いに近い仕組みのクラウドファンディングです。資金を出した対価として、商品が返礼されます。商品等を作るためには材料費の購入や設備投資等で先にお金が必要になることは少なくありません。また、購入者がいないにもかかわらず大量に作ってしまえば、売れ残りのリスクもあります。そこで、購入型クラウドファンディングであらかじめ資金を調達し、目標額に達した時点で実際に商品を製作して、出資者へ返礼することでリスクを低減することが可能です。

このうち、購入型が資金調達方法の選択肢となります。

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資金調達方法ごとのメリット・デメリット

資金調達には、それぞれのメリットとデメリットがあります。
それぞれの特性を知ったうえで、資金調達の方法を検討しましょう。

金融機関からの融資

金融機関からの融資で資金調達をするメリットには、次のものが挙げられます。

  • 信用保証協会を使えば、創業間もない企業でも資金調達を受けやすい
  • 株式を保有されるわけではないため、経営に口出しされない
  • きちんと返済すれば以後の金融機関との関係構築につながる(以後の融資が受けやすくなる可能性がある)

一方、デメリットは次のとおりです。

  • 返済の義務がある
  • 利息に加えて、信用保証協会を利用した場合には、同協会に対する手数料が発生する
  • 融資を受けるまでに審査等で時間がかかりやすい
  • ある程度の自己資金が必要となる

金融機関から融資を受ける場合、その金融機関に預金口座を設けて、その口座を通して融資金のやり取りを行ったり、売上金の管理を行ったりすることも多いと思いますが、金融機関への返済が滞った場合、当該預金口座が凍結されたり、預金と融資金とを相殺されたりして、運営資金を使えなくなり、経営自体が困難となることがありますので、返済計画は、かなりしっかり立てないと、リスクは大きいといえます。

日本政策金融公庫からの融資

日本政策金融公庫から融資を受けるメリットは、次のとおりです。

  • 創業間もない企業であっても資金調達を受けやすい
  • 無担保・無保証で融資が受けられる制度がある
  • 株式を保有されるわけではないため、経営に口出しされない
  • 比較的スピーディーに融資が実行される
  • 民間金融機関よりも低金利で返済期間が長いことが多い

一方で、デメリットとしては次の点が挙げられます。

  • 返済の義務がある
  • それぞれの融資制度ごとに利用条件がある
  • 融資の条件として創業計画書をきちんと作成する必要がある
  • ある程度の自己資金が必要となる

なお、創業計画書の作成は手間の面でデメリットに分類しましたが、事業の収益性や見通しと向き合うためには、創業計画書の作成はむしろメリットであるとも考えられます。

助成金や補助金

助成金や補助金を使った資金調達のメリットには、次のものが挙げられます。

  • 原則として返済が不要
  • 株式を保有されるわけではないため、経営に口出しされない

一方、デメリットは次のとおりです。

  • 種類が多く募集中の補助金等の情報を追うのが大変
  • 募集期間が短いことも多く、厳しいスケジュール管理が必要
  • 審査があるため申込書類を作りこむ必要がある
  • 入金までにかなり時間がかかることが多いため、ある程度の自己資金が必要となる
  • 申し込んだからといって必ず採択されるとは限らない
  • 定期的な報告が必要となるものもある

VCからの出資

VCからの出資による資金調達のメリットは、次のとおりです。

  • 融資ではないため返済の義務がない
  • VCによる経営コンサルや取引先の紹介等を受けられる場合がある
  • 第三者の目があることで上場等に向けてより真剣に取り組みやすくなる

一方で、デメリットとしては次の点が挙げられます。

  • 株式を保有されるため、経営に口出しされる可能性があり、場合によっては、経営権を奪われることもあり得る
  • 長期目線での成長よりも短期的な利益が重視される傾向にある

VCとの間では、投資契約等の契約書を締結することが必須ですが、この契約内容が非常に重要となります。

IPOや、M&A等のイグジットに至らなくとも、一定期間経過後に、会社や創業者が、VCの保有する株式を買い取る義務を負ったり、イグジットの際に、出資者の株式を優先的に売却するという内容であったり等、契約内容をよく確認しておかないと、予期していなかった事態が発生することもあり得ます。

個人投資家からの出資

個人投資家からの出資により資金調達をするメリットは次のとおりです。

  • 融資ではないため、返済の義務がない
  • 個人投資家による経営コンサルや取引先の紹介等を受けられる場合がある
  • 第三者の目があることで上場等により真剣に取り組みやすくなる

一方、デメリットは次のとおりです。

  • 株式を保有されるため、経営に口出しされる可能性があり、場合によっては、経営権を奪われることもあり得る
  • 応援して出資してくれる個人投資家と出会うことは容易ではない

クラウドファンディング

クラウドファンディング(購入型)での資金調達のメリットには、次のものがあります。

  • 商品販売前にニーズを知ることができる
  • スピーディーに資金調達ができる
  • 想定以上の額が調達できる可能性がある

一方、デメリットとして考えられるのは、次のとおりです。

  • サイトの利用手数料がかかる
  • 必ず資金調達ができるとは限らない
  • リターン(返礼)を提供する必要がある
  • 不適切な募集をしてしまったりすると、炎上したり、風評被害が発生したりする可能性がある

まとめ

ベンチャー企業が資金調達をする選択肢には、さまざまなものが存在します。
しかし、たとえばVCが株式を保有することによるトラブル等、資金調達にはそれぞれ、異なるリスクが存在します。
また、いずれの資金調達方法においても、契約書の締結は必須であり、この契約内容如何では、会社運営に大きな影響を及ぼす可能性も否定できませんので、専門家によるチェックは必須であるといえます。
さらに、補助金の申請等、行政とのやり取りについても、専門家に任せた方が良いこともあります。
資金調達の判断に迷ったら、ぜひ弁護士にご相談ください。

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