コラム

公開 2022.10.06 更新 2024.02.19

パワハラで訴えられた人のその後はどうなる?会社がとるべき対応策を弁護士が解説

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パワハラで訴えられた人は、その後どうなるのでしょうか?
今回は、パワハラで訴えられた人のその後やパワハラの定義、社内でのパワハラを予防するために会社が講じるべき対策などについて、弁護士がわかりやすく解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(大阪弁護士会)
大阪弁護士会所属。一橋大学法学部法律学科卒業、一橋大学法科大学院修了。大学卒業後、一般企業に就職。業務を通して種々の法的トラブルに触れる中で、法的問題を解決することで社会に貢献したいという強い思いから弁護士を志す。離婚や相続といった家事事件のほか、労働問題、不動産法務、企業法務など、様々な案件を取り扱う。
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パワハラ防止法によるパワハラの定義

まずは、2022年4月より、大企業だけでなく中小企業も対象範囲となった、パワハラ防止法(正式名称「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」)によるパワハラの定義を確認していきましょう。

同法第30条の2第1項によれば、次の3つの要件をいずれも満たす行為が、パワハラであると定義されています。※1

優越的な関係を背景とした言動

1つ目の要件は、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動」です。
これは、業務を遂行するにあたり、行為者とされる者に対して、抵抗や拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われる言動のことです。

上司から部下に対する行為がこの典型例ですが、仮に同僚や部下などからの行為であっても、集団による行為でこれに抵抗または拒絶することが困難であるものなどは、パワハラに該当する可能性があります。

業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

2つ目の要件は、「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」です。
これは、その言動が社会通念に照らし、明らかに業務上必要性のないことや、その態様が相当でないことです。

この判断にあたっては、業種や業態、その言動の目的など、さまざまな要素を総合的に考慮するのが適当であるとされています。

労働者の就業環境が害されるもの

3つ目の要件は、「労働者の就業環境が害されること」です。
これは、その言動によって、労働者が身体的または精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることです。

この判断にあたっては、「平均的な労働者の感じ方」を基準とすることが適当であるとされています。

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厚生労働省によるパワハラの代表的な言動

厚生労働省は、パワハラにおける代表的な言動を6つに分けて紹介しています。
6つの類型とそれぞれに該当する行為の代表例は、次のとおりです。※2

身体的な攻撃

1つ目の類型は、身体的な攻撃型です。

たとえば、殴ったり蹴ったりして社員の体に危害を加える行為や、相手に物を投げつけるような行為によって部下や同僚を威嚇し、従わせようとする行為などがこれに該当します。

精神的な攻撃

2つ目の類型は、精神的な攻撃型です。

たとえば、労働者を脅迫するような言動や人格を否定するような侮辱、名誉棄損に当たる言葉、ひどい暴言などがこれに該当します。

人間関係からの切り離し

3つ目の類型は、人間関係からの切り離し型です。

たとえば、特定の労働者を仕事から外す行為や、別室への隔離、無視、仲間外しなどをする行為などがこれに該当します。

過大な要求

4つ目の類型は、過大な要求型です。

たとえば、業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害などの行為がこれに該当します。

過小な要求

5つ目の類型は、過少な要求型です。

たとえば、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや、仕事を与えないことなどがこれに該当します。

個の侵害

6つ目の類型は、個の侵害型です。

たとえば、労働者を職場外でも継続的に監視することや、個人の私物を写真で撮影したりすること、上司との面談で話した性的指向・性自認や病歴、不妊治療などの機微な個人情報について、本人の了解を得ずにほかの労働者に暴露することなどがこれに該当します。

パワハラで訴えられた人はその後どうなる?

パワハラで訴えられた人は、その後どうなるのでしょうか?
主な「その後」は、次のとおりです。

会社から懲戒処分を受ける

パワハラで訴えられ、実際にパワハラを行っていたと認定された場合には、会社から懲戒処分を受ける可能性があります。
最も重い懲戒処分の内容は懲戒解雇ですが、どのレベルの処分となるのかは、個々に検討されることとなるでしょう。

ただし、たとえば軽微なパワハラに対して、懲戒解雇をするなど重すぎる処分が下された場合には、会社に対して処分の無効や損害賠償を求める道があります。

被害者側から損害賠償請求をされる

パワハラを行った場合には、被害者側から損害賠償請求をされる可能性があります。
損害賠償の額は、行ったパワハラの程度や態様、期間、被害者が被った損害などから個別に判断されます。

特に相手が自殺をはかった場合や重大な後遺症が残った場合などには、損害賠償額が高額となる可能性があるでしょう。

刑罰を受ける

パワハラの態様によっては、暴行罪や傷害罪、名誉棄損罪、侮辱罪など、刑法上の罪に該当する可能性があります。
この場合には、損害賠償請求として民事上の責任を問われるほか、刑法上の罪に問われる可能性があるでしょう。

たとえば、傷害罪に該当する場合には、15年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される可能性があります。

パワハラに備えた会社の対応方法

社内でパワハラが起きてしまうことのないよう、会社としてはどのような対策をとることができるのでしょうか?
主な対策は、次のとおりです。

社内でパワハラ研修を実施する

どのような行為がパワハラに該当するのか、従業員がよくわかっていないケースも少なくありません。
パワハラに関する知識があいまいなままでは、パワハラに該当すると思わないままパワハラ行為をしてしまったり、業務上必要な叱責さえもパワハラとなるのを恐れて控えてしまったりといった事態となる可能性があります。

そのため、定期的に社内へ向けたパワハラ研修を実施し、パワハラに関する理解を深めるよう努めるべきでしょう。

なお、社内の人がパワハラ研修の講師を担う場合もありますが、より正しく最新の知識を得たい場合には、弁護士など外部の専門家へ講師を依頼することをおすすめします。

就業規則を整備する

社内でパワハラが起きてしまう事態を防ぐため、パワハラに備えた就業規則を整備して社内に周知しておくとよいでしょう。

具体的には、就業規則にパワハラ加害者に対する懲戒処分を明記したうえで、これを周知することなどです。

就業規則に定めることで、仮にパワハラが起きてしまったとしても、懲戒処分の対応がしやすくなるほか、パワハラへの抑止効果も期待できます。

ただし、懲戒処分について就業規則に定めていても、行ったパワハラに対して重過ぎる懲戒処分を下した場合には、その懲戒処分が無効とされる可能性があります。
そのため、就業規則にパワハラに関する規定を新た設ける際には、ぜひ弁護士へご相談ください。

パワハラをした場合の会社としての対応を周知する

社内でのパワハラを予防するため、パワハラをした場合には、会社として厳しい対応をとることを周知しておくとよいでしょう。

会社としてパワハラを許さない姿勢を示すことで、抑止効果が期待できます。

パワハラの相談窓口を設置する

万が一パワハラが起きてしまった場合に備えて、社内にパワハラに関する相談窓口を設置しましょう。
そのうえで、窓口の設置を社内に周知しておきます。

また、パワハラに関する相談を受けた際には、相談者に対して不利益な取り扱いをすることのないよう、関係者への指導も必要です。

なお、パワハラ相談窓口の設置は、パワハラ防止法においても要請されています。

相談先の弁護士を確保しておく

パワハラの中には、企業のみで対応をすることが困難な事例も少なくありません。
そのような事態に備えて、あらかじめ何かあった際に相談することができる弁護士を確保しておくとよいでしょう。

パワハラに関して問題が発生した際に、早期に弁護士へ相談することで、初動を誤ることなくスムーズに対応することが可能となります。

パワハラが起きた場合の会社の対応方法

社内でいざパワハラが起きてしまったら、会社としてはどのように対応すればよいのでしょうか?
主な対応方法は、次のとおりです。

弁護士へ相談する

社内でパワハラに関して問題が発生したら、早期に弁護士へ相談しましょう。
困難な問題であればあるほど、無理に社内のみで対応しようとすれば、対応を誤ってトラブルが拡大してしまいかねません。

早期に弁護士へ相談することで、会社がとるべきスタンスが明確となるほか、被害者や加害者などとの面談の際に弁護士に同席してもらうことが可能となり、対応がスムーズとなります。

被害者保護に努める

社内でパワハラが発生して被害者側から相談された場合には、まずは被害者の保護に努めましょう。

被害者を保護するどころか、被害を相談した従業員に対して、望まない配置転換や休職などを命じる不利益な取り扱いをすれば、会社の判断が問題視されかねません。

事実関係を確認する

パワハラに関する相談を受けたら、事実関係の把握に努めましょう。
特に、被害者側と加害者側との言い分が大きく食い違う場合には、慎重な対応が必要です。

場合によっては、当事者のプライバシーに配慮しつつ、社内の第三者などから聞き取りをすることなども必要となるでしょう。

パワハラ加害者の処分を検討する

パワハラ行為が事実であれば、加害者の処分を検討してください。

ただし、行為に対して重過ぎる処分を課してしまうと、加害者側から処分の無効や損害賠償を請求される可能性があります。
そのため、加害者の処分については、弁護士に相談しながら慎重に検討すべきでしょう。

再発防止策を講じる

社内でパワハラが起きてしまったら、早期に再発防止策を講じましょう。
具体的には、懲戒処分の就業規則への明示や、社内でのパワハラ研修の強化などです。

また、場合によっては社内体制の見直しが必要となります。
なぜなら、パワハラは加害者の問題であるケースもありますが、会社の体制に問題があることで発生する場合もあるためです。

たとえば、パワハラが起きた原因が、ノルマが厳し過ぎることで管理職が常に強いストレスを抱えてしまっていることにある場合、加害者を処分したところで、また別のパワハラが起きる可能性があります。

ただし、会社の体制に問題があることを、自社のみで気が付くことは容易ではありません。
そこで、弁護士など外部の専門家とともに問題を分析し、再発防止策を講じることをおすすめします。

Authenseのハラスメント防止対策プラン

Authense法律事務所では、「ハラスメント防止対策プラン」をご用意しております。アンケートなどで社内の実態調査を行い、企業の特徴・実態に合わせたパワハラ対策をご提案、
企業としてのパワハラ対策の方針を明確にします。ご要望に応じてオーダーメイドプランを作成いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

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まとめ

パワハラで訴えられた人は、その後、懲戒処分の対象となったり、損害賠償請求をされたりする可能性があるほか、刑事罰の対象となる可能性もあります。
パワハラの態様などによっては、社名とともに報道されるなどして、会社のブランドイメージの毀損につながる可能性があるほか、会社に対しても法的責任が問われる可能性があるでしょう。

そのような事態を避けるため、会社としては日頃からパワハラの防止に努めるとともに、万が一社内でパワハラが起きた際には、適切に対処することが求められます。

社内でのパワハラ予防策の構築や、実際に社内でパワハラが起きてお困りの際などには、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。
Authense法律事務所にはパワハラなど労使問題に詳しい弁護士が多数在籍しており、日々顧客企業の問題解決にあたっております。

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