コラム

公開 2021.02.16 更新 2023.01.27

副業人材を活用する会社が増加!ニューノーマル時代に考えるべき人事制度とコンプライアンス

副業人材を活用する会社が増加!ニューノーマル時代に考えるべき人事制度とコンプライアンス

新型コロナウイルスの流行により、副業人材の採用拡大やテレワークの導入など、働き方が大きく変化しています。
そのため、企業には人事制度の整備やコンプライアンスの遵守がより一層求められます。
働き方の変化に伴って必要となる企業の人事制度やコンプライアンスについて解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
一橋大学法学部法律学科卒業。元裁判官。企業法務、M&A、労働法、事業承継、倒産法(事業再生含む)等、企業に係わる幅広い分野を中心とした法律問題に取り組む。弁護士としてだけでなく、裁判官としてこれまで携わった数多くの案件実績や、中小企業のみならず、大企業や公的企業からの依頼を受けた経験と実績を活かし、企業組織の課題を解決する多面的かつ実践的なアドバイスを提供している。
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副業解禁による副業人材の流動性

政府が働き方改革の一環として副業を推進し、新型コロナウイルスの感染拡大も重なり、休業や収入減を余儀なくされる従業員のために副業を解禁する企業が増加しています。
副業が身近な存在になるに伴い、副業人材マーケットも拡大を続けています。

副業するワーカー側からすれば、収入の増加やスキル・経験の取得といったメリットがあります。
他方、副業人材を登用する企業側は、専門的なスキルを持つ即戦力となる人材を活用することで生産性向上を狙えます。

副業は、ワーカーと企業双方のニーズに応える新しい働き方と言えるでしょう。
最近では、副業人材と企業を結びつけるマッチングサービスも数多く誕生しており、副業人材が活躍しやすい環境が整いつつあります。
そのため、大企業が副業人材を活用する事例もあります。

ヤフー株式会社の事例

ヤフー株式会社では、2020年7月に「ギグパートナー制度」と銘打ち副業人材の採用を開始しました。※1
ギグパートナーは、原則としてリモートワークで、業務委託の形態で採用されます。
年齢制限はなく、未成年でも保護者の同意を得られれば応募可能と、幅広く副業人材を募集しました。

結果、このギグパートナーには定員100名を大幅に上回る4,500人以上から応募があり、ヤフー株式会社は、応募者の中から104名を選出し、ギグパートナーは既に業務を開始しているとのことです。※2
なお、採用されたギグパートナーの年齢層は10代~80代と幅広く、副業人材として活躍するために年齢は関係ないことを物語っています。
引き続きギグパートナーを募集しているとのことで、採用意欲の高さが窺われます。

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社の事例

同じく大企業の副業人材採用事例として、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社も挙げられます。
同社は「withコロナ時代のパラレルキャリアを応援」するとして、2020年7月からと銘打ち、副業人材の採用を開始しました。※3

採用された副業人材は「パラレルキャリアン」と呼ばれ、業務はすべてリモートワークで行われます。
採用選考もオンラインで行われるため、世界中から応募可能となっています。

同社は2016年から「WAAP」(Work from Anywhere & Anytime with Parallel careers)制度により、既に柔軟な働き方を実現しており、副業人材の採用はこの制度をさらに拡大させる形となっています。

このように、2020年は大企業も副業人材を積極的に採用しました。
中小企業に比べ、人材確保にそれほど困らない大企業も副業人材を活用していることからわかる通り、いまや副業人材は貴重な労働資源なのです。

自治体の事例

企業だけでなく、自治体も副業人材の活用を開始しています。
奈良県生駒市は、7つのポジションで「副業&テレワークOK」として副業人材を公募しました。※4

また、岡山県岡山市では「戦略マネージャー職」を副業人材から募集。※5
採用された副業人材は、業務委託として業務を開始しているようです。

このように、今や副業人材の活用は当たり前の時代となったといえます。
専門的知見を持つ即戦力となる人材を求めている企業は、副業人材の活用を検討してみても良いかもしれませんね。

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副業解禁には社内制度の整備が不可欠

副業を解禁したいけれど、社内制度が整っておらず、どのようにしたら良いのかわからないという企業も多いのではないでしょうか?
ここでは、副業解禁を成功させるためのポイントを3つ紹介します。

従業員に届出を義務付ける

労務提供上の支障や企業秘密の漏洩等がないか、また、長時間労働を招くものになっていないかを確認するために、どの従業員がどのような副業をしているのか把握できるよう、副業を行う従業員には届出を義務付けましょう。
届出項目は、その従業員が副業・兼業先に負う守秘義務に配慮し、必要以上の情報を従業員に求めないことが重要とされており、「業務内容」「雇用体系」「副業における就労先」といった基本的な項目があれば十分です。
副業をする場合には事前の届出が必要とルール化することで、社内での管理が容易になります。
また、新しい制度となりますので、労使間で十分にコミュニケーションをとり、双方が納得できるルールを作ることが重要となります。

副業解禁の条件を設定する

無条件に副業を解禁することはあまりおすすめではありません。
本業に支障をきたしたり、ノウハウが流出したりとったリスクが発生するからです。

そのため、副業が認められない条件を明確に定めておくと良いでしょう。※6
例えば、副業に従事することにより、①労務提供上の支障がある場合、②企業秘密が漏洩する恐れがある場合、③会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合、④競業により、企業の利益を害する場合には、副業を禁止又は制限することができる等と就業規則で定めることが考えられます。
これまでは、就業規則において、副業を原則禁止とし、会社の許可が必要とする定めが一般的だったかと思いますが、厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」において、原則、副業を認める方向とすることが適当であると指摘されており、今後、その方向性が強まるものと思われます。

また、本業に支障をきたさないようにすることや、優先度は本業の方が上であるといった基本的かつ重要な事項は、社内で共有しておく必要があります。
従業員が本業と副業の関係性や制限される副業の条件をよく理解したうえで副業を行えるよう、明確かつ適切な条件を設定しましょう。

労働時間を把握する

副業は、本業の業務時間外を利用して行うこととなります。
そのため、会社からすると、従業員がどれだけ副業に時間を費やしているかは不透明です。

副業とはいえ、仕事には変わりありませんから、従業員に負担がかかります。
そのため、会社が従業員の副業時間を把握しないままでいると、オーバーワークにより本業に支障が出る可能性があります。

副業を解禁することで本業に悪影響が出てしまっては本末転倒です。
従業員が副業に費やした時間を把握し、適切な管理ができる仕組みづくりが求められます。
基本的には、従業員の自己申告に任せるほかないのですが、コミュニケーションを十分にとって、本業に支障がでない範囲での副業時間を設定してもらったり、過労等にならないよう、健康管理等にこれまで以上に気を付けてもらったりする必要があります。

ニューノーマル時代のテレワーク

新型コロナウイルスの感染拡大により、生活様式や働き方が大きく変化し、新しいワークスタイルの構築が求められるニューノーマル時代へと突入しました。
ニューノーマルとは、従来とは全く異なる新しい常識、すなわち「新常態」を意味します。

ニューノーマル時代における働き方の面での最も大きな変化は、テレワークの普及ではないでしょうか?
元々テレワークという働き方の概念は存在していましたが、紙媒体での文書保管や、契約書類等への押印の必要性から、従業員の出社は避けられず、日本では普及が遅れていました。
それが、新型コロナウイルスの感染拡大を契機に加速度的に普及したのです。通信環境の整備や、クラウドサイン等の電子契約の普及等、これらのDX(デジタルトランスフォーメーション)を有効利用することで、出社しなくても勤務できる環境が整いつつあることが大きな要因といえます。

テレワークにおいては、感染リスクを抑えた働き方ができるとして、主に労働者側のメリットに注目が集まります。
しかし、テレワークは労働者だけでなく、導入する企業にもメリットのある働き方です。
例えば、オフィス面積の縮小によるコスト削減、柔軟な働き方を実現することによる求心力の向上など、企業側の競争力や生産性を向上させるものなのです。
テレワークはニューノーマル時代に不可欠であると同時に、企業の価値をも高める働き方と言えるでしょう。

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テレワークに伴う人事制度

テレワークを導入するうえで、テレワークを前提としたマネジメントや勤務時間管理、人事評価の確立、社内コミュニケーションの維持、従業員個人のセルフマネジメントといった社内の仕組みづくりは不可欠です。
特に、テレワークにおいては仕事ぶりを直接見ることができない分、テレワークに適する人事制度づくりは非常に重要です。

テレワークにありがちな「従業員の勤務態度や仕事ぶりがわからない」、「モチベーションや感情値が把握できない」といった問題に対処できるような人事制度の構築が求められます。

例えば、次のような取り組みが考えられます。

  1. 企業から従業員に対し、企業の指針や価値観およびそれらに基づく具体的な目標を提示する
  2. テレワークにより実践可能な業務や達成基準を提示する
  3. 2.を決定する際は、従業員と管理職の双方向コミュニケーションを取り、すり合わせする
  4. 業務内容や達成基準に達したか否か等について、個別ミーティングを定期的に行う

制度が構築できたら、実施状況を把握する必要があります。
日々のコミュニケーションを大切にしつつ、場合によっては制度の軌道修正を行いましょう。
働き方が変化した以上、制度も変えていかなければならないのです。

なお、Authense法律事務所では、多様な企業法務ニーズに対応するさまざまな料金プランをご用意しております。ぜひ一度ご覧ください。

副業やテレワークにおいてはコンプライアンス整備が重要

副業やテレワークを導入するうえで、コンプライアンスは非常に重要です。
これを疎かにすると、個人情報の安全管理義務違反や秘密情報の漏洩といったリスクが発生します。

また、会社側は従業員の労働時間を適正に把握・管理しなければなりません。
従業員の健康状態も然りです。
そのため、コンプライアンスの観点からは、会社がこれらの義務をきちんと履行していることを明らかにするため、記録・証拠化が求められます。

さらに、テレワークで言えば、残業代など諸経費の清算も適切に行わなければなりません。
また、従業員が自宅で使用したプリント用紙やインクといった消耗品についてもカバーする必要があります。なお、国税庁は、令和3年1月に、「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」を発出し、その課税関係について説明しておりますので、ルール作りにおいては、注意しておく必要があります。※7
さらに、これまで支払っていた通勤交通費についても、どのような処理にするのか検討する必要があります。
場合によっては就業規則を変更しなければならないでしょう。
従業員の働き方の変化に対応し、なおかつコンプライアンスを確保するには、適切なルールの策定・ルール明文化が重要です。

まとめ

副業やテレワークに関して、その実情や社内制度について検討しました。
働き方改革や新型コロナウイルスの感染拡大を契機にニューノーマル時代が到来した現代においては、変化に対する迅速な対応が求められます。
適切に対応できれば、企業の生産性向上も実現できるでしょう。

とはいえ、社内制度を整備するうえでコンプライアンスの観点は不可欠です。
コンプライアンスを確保するためには、法的な専門知識が不可欠です。
副業解禁やテレワークの導入を検討している方は、弁護士や、専門家のサポートを受けることも検討してみてはいかがでしょうか?

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