コラム

2020.10.20

自転車事故の過失割合について

交通事故の中でも身近なものといえるのが、自転車による事故です。 昨今、自転車がかかわる交通事故のニュースを目にすることも増えてきました。 しかし、自転車事故といっても自動車対自転車や自転車対歩行者など、さまざまなパターンがあります。 そこで今回は、自転車での事故における過失割合について、ケースごとに解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部政治学科卒業、桐蔭法科大学院法務研究科修了。交通事故分野を数多く取り扱うほか、相続、不動産、離婚問題など幅広い分野にも積極的に取り組んでいる。ご依頼者様の心に寄り添い、お一人おひとりのご要望に応えるべく、日々最良のサービスを追求している。
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自転車事故の分類

まず、自転車の交通事故で被害に遭うケースとしてどのようなパターンがあるのか見ていきましょう。

自転車と車

自転車と自動車(またはバイク)の事故では、自転車が被害者側となるケースが大半です。
この場合は、当然ながら自転車側が車に対して損害賠償の支払いを求めることになります。

加害者側が車の場合、強制加入の保険である自賠責保険があります。
そのため、自転車で車にはねられるような交通事故においては、過失割合で争う可能性はあるものの、「加害者が保険に未加入だった、保険金が支払われない」という問題が生じるケースは少ないといえるでしょう。

自転車と自転車

自転車と自転車の事故の場合、加害者も被害者も自転車ということになります。
ここで問題になるのが、自転車が保険に入っていないケースです。

2015年に兵庫県で自転車の保険加入が義務化されて以降、自転車保険への加入を義務付ける自治体も増えていますが、全国的に見ればまだまだ保険未加入の自転車は多いものと思われます。

自動車事故であれば、当事者間の交渉に保険会社が入ってくれることが多いです。
保険会社は交通規則や事故状況ごとの過失割合に精通しています。

ですが、保険未加入の自転車の事故だと、知識があまりない当事者同士で直接示談交渉を行うことになり、ほとんどの場合この交渉は難航します。
また、被害者が加害者に損害賠償の支払いを求めても、保険に入っていないと、支払い能力の有無が問題になります。

自転車と歩行者

自転車と歩行者の事故では、自転車が加害者、歩行者が被害者となります。

自転車は道路交通法において「軽車両」と定められており、交通規則に従わなければなりません。
そして、歩行者と事故を起こした場合には加害者として自転車側の責任が問われます。
また、このケースでも自転車が保険未加入であれば、当事者間の交渉や支払い能力の有無が問題になります。

自転車事故における過失割合

過失割合とは、事故における加害者と被害者の責任の割合を言います。

交通事故は「加害者に100%の責任があり、被害者は一切悪くない」という事例ばかりではなく、被害者側にも前方不注意や速度違反などの過失が認められるケースが少なくありません。
そういった場合に、被害者側の過失の分を賠償額から差し引くことを過失相殺と言います。

例として、加害者と被害者の過失割合が50:50であれば、事故について被害者にも半分の責任があるということになります。
この場合、過失相殺により、加害者から被害者に支払われる賠償金は50%に減額されます。

過失割合に影響する要素

では、自転車事故で過失割合に影響するポイントとしてはどのようなものがあるのでしょうか。
そのいくつかを紹介します。

誰と誰の事故なのか

自転車の事故において、相手が車なのか自転車なのか、また歩行者なのかによって、過失割合は大きく変わってきます。

例えば自転車と自動車の交通事故であれば、同じ態様の自動車同士の事故に比べて、加害者である自動車の過失割合がかなり高くなります。
自動車に対して、自転車は事故に遭いやすく、弱い立場とみなされるためです。

これに対し、自転車の事故の相手が歩行者の場合、自転車が加害者となる可能性が高く、歩行者が弱い立場となります。
そのため、自転車の過失割合の方が高くなります。

信号の色や信号機の有無

過失割合では信号が重要な要素となってきます。
信号機が設置されているのか、設置されていないのか、設置されているなら何色だったのか(どちらが信号を守っていたか)という点が過失割合に影響します。

事故の時間帯

夜間は車のライトが点灯しているため、自転車が車を発見するのは容易です。
しかし、車が自転車を発見するのは難しくなります。
そのため、同じ事故でも夜間の場合、昼間と比べて自転車の過失割合が上がります。

自転車事故の過失割合の例

では、自転車事故の典型的なケースにおける過失割合を見ていきましょう。
なお、以下に記載している過失割合はあくまでも基本となる割合です。
事故の個別具体的な状況により、過失割合には修正が加えられます。

自転車と自動車の出会い頭事故

異なった方向から進入してきた車両が交差する時に衝突する事故が「出会い頭事故」です。
自転車と自動車の出会い頭事故では、以下のような過失割合になっています。

(1)信号機がある場合

  • ・自転車が青で進入、自動車が赤で進入
    自転車0:自動車100
  • ・自転車が赤で進入、自動車が青で進入
    自転車80:自動車20

(2)信号機がない場合

  • ・自転車側には標識がなく、自動車側に一時停止の標識がある
    自転車10:自動車90
  • ・自転車側に一時停止の標識があり、自動車側には標識がない
    自転車40:自動車60

自転車と自動車の右直事故

交差点を右折する車両と、直進する対向車の衝突事故を「右直事故」といいます。
自転車と自動車の右直事故では、交差点を右折する自動車が、反対方向から直進してきた自転車をはねるというパターンが多く見られます。

(1)信号機がある場合

  • ・直進する自転車、右折する自動車いずれも青で進入
    自転車10:自動車90
  • ・直進する自転車、右折する自動車いずれも黄で進入
    自転車20:自動車80
  • ・自転車が赤で進入、自動車は右折可の矢印信号で右折
    自転車80:自動車20

(2)信号機がない場合

  • 自転車10:自動車90

自転車と自動車の巻き込み事故

巻き込み事故の典型的な例として挙げられるのは、交差点を左折する自動車が、左後ろを走る自転車を巻き込んでしまうというものです。
類似の事故としては、交差点を直進する自転車を、後ろから走ってきて左折する自動車がはねてしまうというケースもあります。

  • ・先行する自動車が左折する際、後行する自転車に接触
    自転車10:自動車90
  • ・先行して直進する自転車に、後行する自動車が左折で接触
    自転車0:自動車100

道路を横断中の歩行者と自転車の事故

横断歩道は歩行者優先であり、自転車にもこの交通ルールを守ることが求められます。

(1)信号機がある横断歩道の場合

  • ・歩行者が青信号で横断、自転車が青信号で右左折
    歩行者0:自転車100
  • ・歩行者が青信号で横断、自転車が別方向から赤信号で進入
    歩行者0:自転車100
  • ・歩行者が赤信号で横断、自転車が別方向から青信号で進入
    歩行者80:自転車20

(2)信号機がない横断歩道の場合

  • 歩行者0:自転車100

自転車事故における損害賠償

自転車事故_損害賠償

自転車事故で被害に遭った場合に、加害者に支払いを求めることができる損害賠償にはどのようなものがあるのでしょうか。

積極損害

交通事故の損害のなかで、実際にお金を支出した損害のことを「積極損害」といいます。
転倒によってケガを負った場合の治療費や入院・通院にかかる費用はこの積極損害に該当します。

また、例えば自転車の運転中に車と接触して転倒した場合、自転車の破損について修理代がかかります。
加えて、衣服や持ち物など、物的損害について損害賠償を請求することが可能です。
ただし、物的損害については購入額のすべてではなく、事故当時の時価で損害額が算定されることに注意しましょう。

消極損害

交通事故が原因で、本来得られるはずだった利益が得られなくなってしまったという損害が「消極損害」です。
ケガの治療中に仕事ができず、収入が減った場合の休業損害や、後遺障害が残ったことで将来に渡る収入が減少してしまった場合の逸失利益などがこれに該当します。

慰謝料

事故によって被った精神的苦痛に対する慰謝料も損害賠償のひとつです。

過失割合

これらの金額をすべて合計したものが損害額となりますが、ここで過失割合の問題が出てきます。
もしこの事故で、加害者と被害者の過失割合が80%対20%と判断された場合、損害額として算出した金額の80%を加害者に請求することができる、ということになります。

まとめ

多くの人にとって身近な交通手段である自転車ですが、自転車の運転中の交通事故では、被害者にも加害者にもなる可能性があります。

事故の状況や交通ルールを守っていたかなど、ケースごとに過失割合も変わってきますが、先に説明したとおり、自転車同士の事故や自転車対歩行者の事故で当事者間の示談交渉をスムーズに進めることは困難です。
また、保険未加入の自転車にはねられる事故に遭った場合には、加害者に対していかに損害賠償の支払いを求めるかという問題も出てきます。

自転車による事故で被害に遭ったあとの交渉でお困りの場合は、交通事故に精通した弁護士に一度相談してみることをおすすめします。

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