コラム

2021.06.14

遺言書の「検認」とは?どんな時に必要?

遺言書の「検認」とはどのようなことを指し、どのような場合に必要となるのかについて分かりやすく解説します。遺言書の検認が必要となるケースや検認の流れ、検認の手続きにかかる費用などをご紹介します。遺言書の有効性との関係についてもお伝えします。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(千葉県弁護士会)
東北大学法学部卒業、大阪大学大学院高等司法研究科修了。個人法務から法人法務まで幅広い案件を手がける。相続や離婚など親族関係の法律トラブルについて、数多くの案件に携わり、交渉から裁判所での訴訟手続きまで、様々な解決実績を有する。

代表的な遺言書の種類

検認について解説する前に、まずは遺言書の種類について解説しておきましょう。
危機が迫った際などに使う特別方式の遺言ではなく、普通方式の遺言である「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3つについて解説します。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証人の面前で作成をする遺言書のことです。
証人2名以上の立会いのもと、遺言者が公証人に遺言の趣旨を口授し、公証人がそれを筆記して読み聞かせ、遺言者と証人が署名捺印をすることにより作成します。

公正証書で作成した遺言書の原本は公証役場で保管されるため、通常、原本が遺言者の手元にあることはありません。
遺言者の手元にあるのは、その原本をもとに作成された「正本」や「謄本」です。
相続の手続きには、原本ではなく、この「正本」や「謄本」を用います。

なお、公正証書で作成した遺言の場合には、手元の正本や謄本には通常、遺言者や証人の署名や捺印そのものはありません。
その代わりに作成をした公証人の署名や捺印がありますので、この点で公正証書遺言であることを確認しましょう。

また、公正証書遺言は、全文がワープロ打ちのような形で作成されていることが通常です。ただし、次で紹介する「自筆証書遺言」はこれと異なり、本文をワープロ打ちすると原則として無効となってしまうため、ここは混同しないようにしておいてください。
公正証書遺言は、公証役場で作成をすることや、2名の証人が必要な点で手間や費用はかかるものの、最も問題が生じにくい遺言の方式であるといえます。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、全文を遺言者の自筆で作成する遺言書のことです。
添付する財産目録のみ、2019年1月13日から施行されている改正民法により自書が不要とされましたが、本文や氏名、日付は、引き続き自書が要件とされています。
また、遺言者が押印をすることも、要件として定められています。

訂正の際の要件も厳密に定められており、様式から外れてしまうことで無効になってしまうリスクの高い遺言の方式といえます。

なお、2020年7月10日より、法務局における遺言書の保管制度が新たに始まっています。
この制度の施行後は、作成した自筆証書遺言を法務局で保管してもらうことができるようになりました。
法務局での保管制度を利用することで、遺言書の偽造や変造などを防ぐことが可能となります。

一方で、保管制度が施行されたからといって、必ず遺言書を法務局へ提出しなければならないわけではなく、保管制度の施行後も、これまでどおり自宅などで保管をすることも可能です。

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言者が署名、捺印をした遺言書を封印し、封印をした状態で公証役場へ提出する形式の遺言書です。
公証人と2名の証人にその封書を提出し、自己の遺言書である旨と自身の住所、氏名を申述することで作成します。

秘密証書遺言は制度としては存在しているものの、他の方式に比べてメリットがあるとは言いがたいことから、実際にはほとんど利用されていないのが現状です。

遺言書の「検認」とは

検認とは、一定の遺言書につき、家庭裁判所で行う開封式のような手続きのことです。
検認は、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、検認の日現在における遺言書の内容を明確にすることで、その後の遺言書の偽造・変造を防止するために必要とされています。

遺言書には、相続が起きた後で検認が必要なものと不要なものが存在します。
それでは、遺言書のうち、どの遺言書は検認が必要で、どの遺言書は検認が不要なのでしょうか?
下記にまとめたので、見ていきましょう。

遺言書の検認が必要な場合

まず、検認が必要な遺言書は次の通りです。

  • ・法務局での保管制度を利用していない「自筆証書遺言」
  • ・「秘密証書遺言」

相続が起きた後、これらの遺言書を見つけた際には、速やかに検認の手続きをするようにしてください。
これらの遺言書は、まず検認の手続きを経ないことには、不動産の名義変更や預貯金の解約などの相続手続きに利用することはできません。

遺言書の検認が不要な場合

一方で、見つけた遺言書が下記のものであった場合には、検認の手続きは必要ありません。

  • ・「公正証書遺言」
  • ・法務局での保管制度を利用している「自筆証書遺言」

これらの遺言書は検認を経ず、そのまま相続手続きに使用できます。

検認の目的と遺言書の有効・無効

検認の目的と遺言書の有効・無効

さて、そもそも遺言書の検認は何の目的で行う、どのような手続きなのでしょうか?
ここでは、検認の目的や、検認を受けた遺言書の有効性との関係について解説します。

遺言書の検認の目的

遺言書の検認は、家庭裁判所で行います。
その目的は、前述の通り、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きその時点での遺言書の状態を保存することにあります。

検認を行うと、その時点での遺言書の状態が家庭裁判所で保存されますので、それ以後の偽造や変造が不可能となるということです。
また、封のされた遺言書は検認の前に開けてはならないことになっていますが、これも、遺言書の偽造などを防ぐための決まりです。

検認を受けた遺言書は必ず有効か

誤解が少なくないところですが、無事に家庭裁判所での検認を終えたからといって、このことをもってその遺言書が有効なものであるというお墨付きを得られるわけではありません。

前述の通り、検認の目的は遺言書の偽造や変造を防ぐことにあり、遺言書が有効か無効かを判断する目的で行う手続きではないためです。
ですので、例えば第三者が遺言者の筆跡を真似て偽造したような無効な遺言書であったとしても、検認自体は受けられます。

検認は遺言書の有効・無効を判断する制度ではありませんので、遺言書の有効性を争いたいのであれば、検認とは別に訴訟を申し立てる必要があります。

遺言書検認手続きの流れや費用

それでは、遺言書の検認手続きに関する期限や全体の流れ、そして検認にかかる費用について解説いたします。

遺言書の検認の期限

結論からお伝えすれば、遺言書の検認に期限はありません。
例えば、相続が起きてから何ケ月を経過したらもう検認ができなくなる、というような決まりはないのです。

ただし、検認について民法の規定には、「遅滞なく」検認を請求しなければならないと記載されています。
また、検認が必要な遺言書は、検認を経ないことには相続手続きに使用することができません。
そのため、期限がないからといって先延ばしにするのではなく、できるだけ速やかに検認の手続きを開始するようにしましょう。

遺言書の検認は誰が申し立てるのか

では、遺言書の検認は誰が申し立てるべきなのでしょうか?
検認を申し立てるべき人は、「遺言書の保管者」もしくは「遺言書を発見した相続人」とされています。
これらの人は、相続開始後、遅滞なく検認を申し立てましょう。

遺言書の検認手続きの流れ

検認の手続きは、次のような流れとなります。

必要書類を収集する

検認の申し立てには、添付書類が必要となります。
まずは、これらの必要書類を収集することから始めましょう。

検認の申し立てに必要な書類は、次の通りです。

  • ・遺言者の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • ・相続人全員の戸籍謄本
  • ・遺言者の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

なお、これはあくまでも相続人が配偶者や子である場合などの一例であり、誰が相続人であるかによって、これら以外の書類も必要となる場合があります。
実際に検認の手続きを行う際には、必要書類につき、家庭裁判所に確認されるとよいでしょう。

申立書を作成する

次に、検認の申立書を作成します。申立書は、家庭裁判所のウェブサイトからダウンロードが可能です。
家庭裁判所のウェブサイトに記載例もありますので、そちらを参考に作成してください。

家庭裁判所に検認を申し立てる

申立書と必要書類の準備ができたら、家庭裁判所に検認を申し立てます。
申し立てをする家庭裁判所は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

申し立ては郵送でも可能ですが、慣れていない場合には書類の不備などがある場合もありますので、家庭裁判所へ直接出向いて申し立てをした方が安心です。

検認の期日が決まる

申し立てをすると、検認の期日が決まります。

法定相続人全員に検認の通知がされる

検認の期日が決まったら、家庭裁判所から、法定相続人全員へ、郵送で検認の期日の通知がなされます。この通知で、他の相続人も遺言書の存在を知ることとなります。

検認当日に家庭裁判所へ出向く

検認期日当日に、検認を受ける遺言書や印鑑など家庭裁判所から指示されたものを持って、家庭裁判所へ出向きます。
なお、検認当日、申立人は出席が必要であるものの、法定相続人の中に検認の場へ来ない人がいたとしても、検認手続きには特に影響はありません。

検認済証明書の申請をする

検認が無事に終わったら、検認済証明書の申請をします。
遺言を執行するにはこの検認済証明書が必須ですので、必ず申請するようにしましょう。
この手続きが終わると、検認済証明書が添付された遺言書が、申立人に返還されます。

遺言書の検認にかかる費用

検認手続きを自分で申し立てる場合、検認の手続きにかかる費用は、遺言書1通につき800円の手数料と、家庭裁判所から他の相続人への連絡に使用する切手代です。
家庭裁判所へ納める切手の金額は相続人の人数などにより異なりますので、個別の状況に応じて家庭裁判所へ確認してください。

その他、検認を申し立てる際の添付書類である、戸籍謄本や除籍謄本などの取得費が別途かかります。
また、検認済証明書の申請には、別途150円の手数料が必要です。

検認をしないとどうなる?

検認をしないとどうなる?

それでは、検認が必要な遺言書を発見したにもかかわらず、検認をしないとどうなるのでしょうか?
状況ごとに分けて解説していきます。

検認の前に遺言書の入った封筒を開けてしまった場合

民法の規定により、封のしてある遺言書は勝手に開封してはならず、検認の場で開封しなければならないとされています。
仮に、検認の前に開封してしまった場合には、5万円以下の過料が科される可能性があるほか、他の相続人から偽造や隠匿などを疑われることにもなりかねません。

検認の前に開封をしてしまったからといって、遺言書がただちに無効となるわけではありません。
ただ、過料を科されてしまったり余計なトラブルに発展してしまったりしないためにも、遺言書は勝手に開封せず、きちんと検認の場で開けるようにしましょう。

検認をせずに放置した場合

では、遺言書を保管しているにもかかわらず、検認をせず放置した場合にはどうなるのでしょうか?
まず、検認が必要な種類の遺言書は、検認をしなければ、不動産の名義変更や預貯金の解約などの相続手続きに使用することはできません。
ですので、遺言書の検認をするまで、遺言書を使った相続手続きはできないということです。

また、遺言書があることを知りながら検認をせず、他の相続人にもその存在を秘密にしたような場合には、遺言書を隠匿したとして、相続人の欠格事由に該当してしまいます。
相続人の欠格事由に該当すると、その相続で財産を受ける権利が一切なくなってしまうという非常に強いペナルティを科されてしまいますので、注意しましょう。

まとめ

法務局で保管をしていない自筆証書遺言などを見つけたり、生前に遺言者から遺言書を預かっていたりした場合には、相続発生後、速やかに検認の手続きを行う必要があります。
まずは、検認の手続きの流れや申し立ての方法について、知っておきましょう。

その一方で、無事に検認の手続きを経たからといって、その遺言書が有効か無効かとは別問題だということも知っておいてください。

相続や遺言については、個別で判断すべき事項が多く、遺言書が有効か無効かと言った判断さえ、書籍やインターネット上の情報などを参照しただけでは分からないことも少なくありません。
遺された遺言書が有効かどうか分からない場合や、遺言書の無効を主張したい場合、遺言書を保管している人が一向に検認を申し立てない場合や、他の相続人から遺言書は無効だと主張されている場合など、遺言や相続について悩んだときには、ぜひ弁護士へご相談ください。

オーセンスの弁護士が、お役に立てること

・検認手続きの申立書の作成や戸籍などの添付資料の収集などを相続人本人が行うのは手間と時間がかかるとともに、裁判所での検認手続きでの不安も生じやすいと思います。
弁護士にご依頼いただくことで、検認手続きの完了まで、一切を任せることができるので、相続人に負担もなく、円滑に手続きを進めることができます。
・検認手続きは自筆証書遺言に関するものであるので、遺言の有効性や相続全体の問題に派生することも間々あることから、弁護士に相談・依頼しながら進めることで、その後の紛争の予防、拡大防止につなげることができます。

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