コラム

相続放棄と限定承認~限定承認を適用すべき場合とは?~

被相続人の債務を相続したくない場合、相続放棄と限定承認のどちらを選択すれば良いのでしょうか? また、限定承認を適用すべき場合とは、どのような場合でしょうか? 相続に詳しい弁護士が解説いたします。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
日本大学法学部卒業、日本大学大学院法務研究科修了。個人法務及び企業法務の民事事件から刑事事件まで、幅広い分野で実績を持つ。離婚や相続などの家事事件、不動産法務を中心に取り扱う一方、新規分野についても、これまでの実践経験を活かし、柔軟な早期解決を目指す。弁護士会では、人権擁護委員会と司法修習委員会で活動している。

被相続人の債務を相続したくない場合

被相続人の財産に借入れなどの債務があり、債務を相続したくない場合、どのような手続をとることができるのでしょうか。
相続が発生すると、①単純承認、②限定承認、③相続放棄のいずれかの方法を選択することになります。

  1. ①単純承認は、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も全て相続することを言いますので、借入れを相続したくないという場合は、選択できません。
  2. ②限定承認は、被相続人のプラスの財産の範囲でマイナスの財産の責任を負うことを言いますので、債務を相続したくないという場合の選択肢の1つとなります。
  3. ③相続放棄は、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も全て相続しないことを言いますので、債務を相続したくないという場合の選択肢の1つとなります。

それでは、被相続人の債務を相続したくない場合、②と③のどちらを選択すれば良いのでしょうか。
以下、②と③について、詳しくみていきたいと思います。

相続放棄のメリット・デメリットについて

相続放棄は、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も承継しないことを言います。
相続放棄を選択すると、初めから相続人ではないものとみなされます。

相続放棄のメリットは、「被相続人の債務を一切承継しないこと」です。
そのため、被相続人の財産について、マイナスの方が明らかに大きい場合は、相続放棄を選択することが多いです。
また、後述の手続上の注意点で説明いたしますが、相続放棄の手続は、限定承認の手続に比べて簡易となります。

相続放棄のデメリットは、「被相続人のプラスの財産も一切承継できないこと」や、「次順位の相続人が法定相続人となる場合があること」です。
例えば、第1順位である子どもが全員相続放棄をすると、第2順位である親が相続人となりますが、親が亡くなっている場合には、第3順位である兄弟姉妹が相続人となります。他の親族に迷惑を掛けたくないという場合は、限定承認を検討することとなります。

限定承認のメリット・デメリットについて

限定承認のメリット・デメリットについて

限定承認は、被相続人のプラスの財産の範囲内でマイナスの財産の責任を負担することを言います。
限定承認を選択すると、被相続人の財産は換価され、債務の弁済に充てられます。
債務の弁済をしてもなお財産が残っている場合は、残っている財産を法定相続人で相続します。
マイナスの財産の方が多く、債務の弁済が完了しない場合、相続人は、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も承継しないということになります。

限定承認の手続で相続人に認められている権利として、「先買権(さきがいけん)」があります。
被相続人の財産を換価する場合は、原則として競売手続となりますが、法定相続人が「先買権」を行使して、競売手続を経ずに買い取ることができるのです。
ただ、買い取り金額については、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価額になります。

そのため、限定承認のメリットは、「被相続人の債務を一切承継しないこと」、「先買権の行使により、被相続人の財産のうち承継したいものがあれば、時価で買い取ることができること」や、「次順位の相続人を相続手続に巻き込まないこと」です。

限定承認のデメリットは、「被相続人の財産の換価や弁済の手続など、非常に手続が難しく、費用や時間が掛かること」や、「譲渡所得税が掛かる場合があること」です。
限定承認の手続についてですが、相続財産の換価や弁済などが行われますので、相続人で対応することが非常に難しく、専門家に依頼することとなります。
また、先買権を行使する場合に選任される鑑定人の費用も、原則として相続人側が負担することとなります。
そのため、専門家の費用や、鑑定費用などの手続費用が高くなることが多いです。
さらに、限定承認の手続をとると、相続開始時にその時の時価で被相続人から相続人に対し、相続財産の譲渡があったものとみなされるので、譲渡所得税が課税される場合があります。
後述の手続上の注意点でご説明いたしますが、限定承認は、相続人全員で申し立てを行わなければならないので、相続人全員でしっかりと話し合う必要もあります。

限定承認を適用すべき場合とは

前述のとおり、限定承認の手続については、メリットとデメリットがありますので、それらを考慮して、限定承認を選択するかどうかを検討しましょう。

限定承認を適用すべき場合の例としては、次順位の相続人を法定相続人としたくない場合、被相続人の財産にプラスが多いのかマイナスが多いのか分からない場合、相続人が先買権を行使したい場合などがあげられます。
ただ、限定承認は、費用や時間が掛かるので、限定承認を選択する場合は、事前に専門家に相談をして、費用の見込みやタイムスケジュールなどを教えてもらい、判断するようにしましょう。

相続放棄と限定承認の手続上の注意点

相続放棄と限定承認の手続上の注意点

相続放棄と限定承認はいずれも、自己のために相続があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所(被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所)に申述をしなければなりません。
相続放棄の場合は相続放棄を希望する相続人が単独で申述するのに対し、限定承認は相続人全員(相続放棄した人は除く。)が共同して申述を行います。
そのため、相続放棄か限定承認のいずれを選択するかは、時間に余裕をもって検討しなければなりません。

被相続人の財産が把握できないなどの理由で、申述期間内に相続放棄や限定承認の判断ができない場合は、家庭裁判所に対し、相続放棄や限定承認の申述期間の伸長を申し立てることも可能です。
検討に時間が掛かる場合は、「自己のために相続があったことを知ったときから3か月以内」に家庭裁判所に申述期間の伸長を申し立てるようにしましょう。

まとめ

相続放棄と限定承認の選択は、限定承認するメリットがあるかどうか、手続に掛かる費用などを考慮した上で、期間内に判断することになります。
また、財産の調査で連帯保証債務などの見落としがあると判断を誤ってしまうこともあるため、なるべく早めに弁護士などの専門家に相談し、相続放棄や限定承認の判断につきアドバイスをもらうことを強くお勧めいたします。

オーセンスの弁護士が、お役に立てること

・相続放棄と限定承認の選択をするにあたっては、まずは、できる限り相続財産を把握することが重要です。財産調査のご相談をいただくと、どのような相続財産の調査が必要なのかなどをアドバイスさせていただきます。また、財産調査をご依頼いただくと、弁護士が代理人として、相続財産の調査を行うことができます。
・相続放棄と限定承認のそれぞれについて、費用の見込みやタイムスケジュールなどをご説明し、個別の事案における、相続放棄と限定承認のメリットとデメリットをアドバイスさせていただきます。相続放棄や限定承認の手続をご依頼いただくと、家庭裁判所に提出する申立書や添付資料などをご用意いたします。

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