コラム

公開 2022.10.14 更新 2024.03.13

遺産分割証明書を作るメリットや入れるべき項目、協議書との違いを弁護士が解説

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遺産分割証明書とは、遺産分割協議書と同じく、遺産分割協議がまとまったことを証明する書類です。
しかし、遺産分割証明書と遺産分割協議書には違いがあります。

今回は、遺産分割証明書の作り方や遺産分割協議書との使い分けなどについて、詳しく解説します。

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遺産分割証明書とは

遺産分割証明書とは、遺産分割の内容を記したうえで、相続人が個々に署名捺印をする書類のことです。
それぞれの相続人が署名捺印をした遺産分割証明書を相続人全員分そろえることで、この書類を使って不動産の名義変更や預貯金の解約などの相続手続きをすることが可能となります。

遺産分割「協議書」との違い

遺産分割「証明書」と似たものに、遺産分割「協議書」が存在します。
これらは様式こそ異なるものの、効力に違いはありません。

つまり、その相続ごとに便利な方を作成すればよいこととなります。
遺産分割「証明書」と遺産分割「協議書」との違いは、次のとおりです。

違い1:同じ用紙に署名捺印するか別の用紙に署名捺印するか

遺産分割「協議書」では、遺産分割協議の結果を記した1枚の同じ用紙に、相続人全員が署名捺印します。

一方、遺産分割「証明書」では、遺産分割協議の結果を記した個々の用紙に、個々の相続人がそれぞれ署名捺印をします。

違い2:作成数が1枚か相続人の数だけ作成するか

遺産分割「協議書」は、原本1部を作成したうえ、相続人各自がその写しを保管することもできます。

一方、遺産分割「証明書」は個々の用紙にそれぞれの相続人が署名捺印をすることから、相続人の数だけ作成されます。
この、各相続人が署名捺印をした用紙をすべて揃えることで、遺産分割協議書と同じ効力を発揮します。

違い3:作成日が統一されているか

遺産分割「協議書」は1枚の用紙であるため、その日付を記載する欄も1箇所しかありません。
そのため、おのずと作成日が統一されます。
この日付は、遺産分割協議がまとまった日を記載するのが通例です。

一方、遺産分割「証明書」は個々の相続人が署名捺印をする用紙に日付の記載欄があり、ここにはそれぞれ、その相続人が署名捺印をした日を記載します。

このうち、もっとも遅い日付が、遺産分割協議の成立日となります。

遺産分割証明書を作るメリット

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遺産分割「協議書」ではなく、遺産分割「証明書」を作成するメリットは、次のとおりです。

署名捺印にかかる時間を短縮できる

遺産分割協議書は1枚の用紙に相続人全員が署名捺印をするため、1人が署名捺印をした用紙を次の相続人に回していき、順に署名捺印をもらう必要があります。
そのため、全員の署名捺印が完了するまでに、時間がかかることが多いといえます。

一方、遺産分割証明書は個々の相続人のみがそれぞれの用紙に署名捺印をすればよいものであるため、署名捺印にかかる時間を短縮することが可能です。

遠方の相続人に対応がしやすい

相続人が簡単には集まることのできない遠方に散らばっている場合には、1枚の遺産分割協議書に全員の署名捺印をそろえることは大変です。
1枚の用紙を、郵送などで順に回していく必要があるためです。

一方、遺産分割証明書は、各相続人に書類を送ってそれぞれから返送してもらえばよいため、遠方の相続人への対応がしやすいといえるでしょう。

途中での紛失や毀損リスクを下げることができる

1枚の用紙に相続人全員の署名捺印を揃えていく遺産分割協議書の場合には、せっかく途中まで署名捺印が集まった用紙を一部の相続人が紛失したり誤って毀損したりしてしまった場合、改めて他の相続人からも署名捺印をもらいなおさなければなりません。

気難しい人がいる場合には、再度の押印に応じてくれない可能性もあるでしょう。

一方、遺産分割証明書は相続人ごとに用紙が分かれていますので、仮に一部の相続人が用紙を紛失したり毀損したりした場合でも他の相続人の署名捺印には影響しないため、安心です。

遺産分割証明書を作るデメリット

遺産分割「協議書」ではなく、遺産分割「証明書」で手続きを進める場合のデメリットは、次のとおりです。

十分な話し合いがないまま押印を求められる場合がある

本来、遺産分割協議書も遺産分割証明書も、あらかじめ遺産分割協議を行い、その結果を書面にまとめたものであるはずです。

しかし、遺産分割証明書の場合、十分な話し合いのないまま突然書類が送られてくるなどして、署名捺印を求められる場合もあるようです。
納得ができない場合には押印してしまうことのないよう注意しましょう。
(とはいえ、遺産分割協議書の場合でも同様の対応がなされることもありますので、同じく注意は必要です。)

相続人の数だけ必要となるため書類がかさばる

相続人の数が多い場合には、その人数分だけの遺産分割証明書が必要となります。
そのため、書類がかさばりやすいといえるでしょう。

他の相続人の押印状況が見えにくい

遺産分割協議書の場合には、自分より先に書類がまわってきた相続人の署名捺印がある状態で書類が手元に来ますので、他の相続人が押印したことや進捗状況が見えやすくなります。

一方、遺産分割証明書では、他の相続人の押印状況はわかりません。
この点は、見方や立場によってはメリットともいえ、デメリットともいえるでしょう。

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協議書と証明書、どのように使い分ける?

遺産分割「協議書」と遺産分割「証明書」のどちらを使うべきなのかについては、明確なルールがあるわけではありません。
法律上や手続上では、どちらでもよいこととなっています。

そのため、状況に応じて使いやすい方を選択すればよいでしょう。
選択の目安は、次のとおりです。

相続人が一堂に会しやすい場合:協議書

相続人が一堂に会しやすい場合には、遺産分割協議書を選択するとよいでしょう。
その場で用紙を回して署名捺印をもらうことができるため、スムーズです。

また、全員が同じ用紙に署名捺印をすることで、「よくわからない用紙に署名捺印をさせられた」とも感じにくく、安心感や納得感を得やすいでしょう。

相続人の数が多い場合:証明書

相続人の数が多い場合には、遺産分割証明書を選択するとよいでしょう。

相続人の数が多い場合に遺産分割協議書を使用すれば、全員の署名捺印がそろうまでに時間がかかってしまいやすいためです。

相続人がさまざまな地域に散らばっている場合:証明書

相続人がさまざまな地域に散らばっている場合には、遺産分割証明書を選択するとよいでしょう。

1人ずつ遺産分割協議書に署名捺印をして、順に回していくことには、手間や時間がかかってしまうためです。

遺産分割証明書に必要な項目

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遺産分割証明書には、次の項目を記載しましょう。

亡くなられた方の情報

被相続人について、次の情報を記載します。

  • 氏名:戸籍どおりに記載します。
  • 最後の住所:住民票(除票)どおりに記載します。
  • 最後の本籍地:戸籍どおりに記載します。
  • 死亡年月日:戸籍や住民票(除票)と違いがないように記載します。
  • 生年月日:戸籍や住民票(除票)と違いがないように記載します。

ここは、この用紙を渡す相続人によって、記載に違いはありません。

相続財産と分割内容

相続財産を明記したうえで、どの相続人がどの財産を取得するのか、明確に記載します。
記載があいまいな場合には、名義変更などの手続きに使えないリスクがあるため注意してください。

ここは、この用紙を渡す相続人によって、記載に違いはありません。

相続人

その遺産分割証明書に署名捺印をする相続人の情報を記載します。
住所を印字したうえで、署名欄と押印欄を設けておくとよいでしょう。

生年月日や被相続人との続柄を記載する場合もあります。
この部分は、用紙を渡す相続人によって異なります。

作成年月日

作成年月日を記載する欄を設けます。
ここは、各相続人が署名捺印をする際に、その用紙に署名捺印をした日付を記載してもらいましょう。

相続人によって、日付が違ってもまったく問題ありません。
相続人全員分の遺産分割証明書のうち、最後の日付が遺産分割協議の成立日となります。

署名と実印

遺産分割協議書の様式が作成できたら、各相続人に署名と捺印(実印)をもらいます。

なお、いきなり用紙だけを送るのではなく、あらかじめ対面や電話などで話をまとめてから送るべきでしょう。
相手が納得していない状態や話し合いさえできていない状態で、いきなり遺産分割証明書を送ってしまえば、トラブルに発展する可能性があります。

割印

遺産分割証明書が複数枚にわたる場合には割印も忘れずに押印しましょう。

捨印

可能な限り捨印をもらっておくと安心です。
捨印があることで、仮に後から誤字や脱字が判明した場合などに、押印をもらいなおすことなく軽微な修正をおこなうことが可能となります。

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証明書作成時の注意点

遺産分割証明書を作成する際には、次の点に注意しましょう。

印鑑証明書の添付

原則として、遺産分割証明書は捺印をした各相続人の印鑑証明書とセットとなってはじめて効力を生じます。
印鑑証明書があることで、捺印をした印が実印であることが証明できるためです。

遺産分割証明書へ捺印を求める際には、併せて印鑑証明書を受け取ることを忘れないようにしましょう。

放棄する場合

相続放棄とは、家庭裁判所で申述をすることにより、はじめから相続人ではなかったこととされる手続きです。
相続放棄が認められると、相続で財産を受ける権利が一切なくなる一方で、借金も引き継がずに済むこととなります。

また、相続手続きに関与する必要もなくなりますので、遺産分割証明書に署名をしたり印鑑証明書を渡したりする必要もありません。

ただし、相続手続きを進めるに際して相続放棄をしたことの証明は必要となりますので、相続放棄受理証明書を家庭裁判所から取得して、他の相続人に渡しておくとよいでしょう。

関連記事

数次相続の場合

数次相続とは、数回にわたって相続が繰り返されている状態です。
たとえば、亡くなった祖父名義の土地の相続手続きをしたい場合、祖父が亡くなった後で祖父の子である父も亡くなった場合などがこれに該当します。

この場合、誰に遺産分割証明書をもらうべきか、判断が難しい場合が少なくありませんので、あらかじめ弁護士などの専門家へ相談するとよいでしょう。

元の相続からかなりの時間が経っている場合には、数次相続が各所で発生し、相続人の数が非常に多くなっているケースも珍しくありません。

遺産分割証明書が送られてきたら

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遺産分割証明書は、本来、書類作成の前に対面や電話など他の方法で協議内容に合意ができたうえで作成すべきものです。
しかし、事前の話し合いなどのないまま、突然遺産分割証明書が送られてくる場合などもあることでしょう。

この場合にはまず、必ずその内容をよく確認します。
そのうえで、内容を理解し納得ができた場合にのみ、署名や捺印をしてください。

よくわからないまま署名や捺印をして返送してしまうことは、絶対に避けましょう。
自ら署名や捺印をした以上、後から「よくわからないまま署名捺印をしてしまった」と主張しても、そのような主張は通らないことが一般的であるためです。

内容に納得ができない場合や内容の理解ができない場合などには、署名や捺印をする前に弁護士へご相談ください。

まとめ

遺産分割証明書は、遺産分割協議書と同じ効力を持つ書類です。
しかし、遺産分割協議書とは異なり各自が別の用紙に署名捺印をするものであることから、相続人が多い場合や遠方に散らばっている場合などには非常に使い勝手がよいといえます。
状況に応じて、遺産分割協議書と遺産分割証明書を使い分けるとよいでしょう。

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遺産に関する問題を弁護士にご依頼いただくことには、さまざまなメリットがあります。
相続に関する知識がないまま遺産分割の話し合いに臨むと、納得のできない結果を招いてしまう可能性がありますが、弁護士に依頼することで自身の権利を正当に主張できれば、公平な遺産分割に繋がります。
亡くなった被相続人の財産を調査したり、戸籍をたどって全ての相続人を調査するには大変な手間がかかりますが、煩雑な手続きを弁護士に任せることで、負担を大きく軽減できます。
また、自身の財産を誰にどのように遺したいかが決まっているのであれば、適切な内容の遺言書を作成しておくなどにより、将来の相続トラブルを予防できる可能性が高まります。

私たちは、複雑な遺産相続の問題をご相談者様にわかりやすくご説明し、ベストな解決を目指すパートナーとして供に歩んでまいります。
どうぞお気軽にご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(千葉県弁護士会)
早稲田大学法学部卒業。早稲田大学大学院法務研究科修了。企業法務を中心に活動。ベンチャー企業から上場企業まで幅広く支援。エンタメ業界、バイオ・繊維業界、ファッション業界、インターネット権利侵害問題に注力、豊富な実績を有する。離婚・相続問題、刑事事件、交通事故被害などの一般民事案件の実績も多数。
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