コラム

公開 2022.08.17 更新 2024.02.26

相続の順位はどう決まる?確認方法や相続の割合をわかりやすく解説

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相続の順位や遺言による指定がない場合の相続分は法律で定められています。
今回は、法律で決められている相続の順位や相続分についてわかりやすく解説します。
また、相続分を譲渡したり、異なる相続分で財産を渡したりすることができるのかといった点についても解説します。

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相続の順位はどう決まる?

人が亡くなった際、亡くなった人(以下「被相続人」といいます。)の相続人が誰になるのかは、民法という法律で定められています。
はじめに、法律で決まっている相続の順位について確認しておきましょう。

常に相続人:配偶者

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被相続人に配偶者(夫や妻)がいれば、配偶者は常に相続人となります。

相続の権利がある配偶者は、法律上の婚姻関係にある配偶者に限定されており、たとえ長年法律上の夫婦同然に暮らしてきたとしても、内縁の配偶者には相続権はありません。

また、正式に離婚をした元配偶者は、離婚した時点で相続の権利がなくなります。

第一順位の相続人:子や孫

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ここから解説する第一順位から第三順位の相続人は、配偶者がいれば配偶者と一緒に、配偶者がいなければその順位の人のみが相続人となります。
なお、第一順位の相続人が1人でもいれば第二順位や第三順位の人は相続人にはならず、第一順位の人がいなくても第二順位の人が1人でもいれば第三順位の人は相続人とはなりません。

第一順位の相続人は、被相続人の子です。
なお、離婚をした前妻が養育している子も被相続人の子には変わりありませんので、相続人です。
また、認知をした子や養子縁組をした子も、同様に相続人です。

一方で、配偶者の連れ子と長年一緒に暮らしていても、養子縁組をしていなければその子は相続人ではありません。

子が被相続人よりも先に他界している場合には、その他界した子の子である被相続人の孫が代襲して相続人となります。
第一順位の相続人に代襲回数の制限はありませんので、理論上は何代でも代襲が可能です。

例えば、被相続人より先に子が死亡し、その子である孫も死亡し、その孫の子であるひ孫が存命の場合には、このひ孫が相続人となります。

第二順位の相続人:親や祖父母

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第二順位の相続人は、被相続人の父母です。
父母がいずれも他界している場合にのみ、祖父母の中に存命の人がいれば、その存命の祖父母が相続人となります。

第三順位の相続人:兄弟姉妹や甥姪

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第三順位の相続人は、兄弟姉妹です。
父母の片方だけを同じくする、いわゆる異父兄弟や異母兄弟も相続人となります。

兄弟姉妹の中に被相続人より先に他界している人がいれば、その他界した兄弟姉妹の子である被相続人の甥姪が代襲して相続人となります。
ただし、第三順位の相続人の代襲は、第一順位の相続人とは異なり、1回のみに制限されているので、甥や姪の子が相続人となることはありません。

相続人にならない:叔父や叔母、いとこ、内縁の妻など

法律で定められた相続人は、ここまで解説したとおりです。
そのため、仮に、配偶者相続人も第一順位から第三順位までの相続人が誰もいない場合であっても、次の人が法律上の相続人となることはありません。

  • 内縁の配偶者
  • 叔父や叔母
  • いとこ
  • 甥や姪の子

相続の割合はどうなる?事例で解説

相続人が1人である場合には、その相続人が全財産を相続することとなります。

では、相続人が複数いる場合には、それぞれの相続分はどのようになるのでしょうか?
法律で決められた相続分(以下「法定相続分」といいます)について解説します。

同じ順位の相続人が複数いる場合

同じ順位の相続人が複数いる場合の法定相続分は、相続人間で等分となります。
事例を出しながら解説していきましょう。

事例1:配偶者は先に他界、長男と長女、二女が相続人である場合

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被相続人の配偶者が既に他界しており、被相続人の長男、長女と二女の3名が相続人であるとしましょう。
この場合、法定相続分は次のようになります。

  • 長男:3分の1
  • 長女:3分の1
  • 二女:3分の1

離婚をした前妻との子、認知をした子や養子縁組をした子を問わず、被相続人の子であればみな等分となります。

配偶者と第一順位の相続人が相続する場合

配偶者と第一順位の相続人が相続する場合には、まず、配偶者の法定相続分は2分の1となります。
その上で、第一順位の相続人が複数いれば、複数いる第一順位の相続人の法定相続分は等分です。

2つの事例を出しながら解説していきましょう。

事例2:配偶者と、2名の子が相続人である場合の相続分

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配偶者と、その配偶者との間の2名の子(長男と二男)が相続人である場合、それぞれの法定相続分は次のとおりです。

  • 配偶者:2分の1
  • 長男:4分の1(2分の1×2分の1)
  • 二男:4分の1(2分の1×2分の1)

事例3:配偶者と、その配偶者との間の子1名、前妻の子2名が相続人である場合の相続分

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配偶者と、その配偶者との間の子(長男)1名、被相続人と前妻との間の子2名(長女と二女)が相続人である場合の法定相続分は、それぞれ次のとおりです。

  • 配偶者:2分の1
  • 長男:6分の1(=2分の1×3分の1)
  • 前妻との間の長女:6分の1(=2分の1×3分の1)
  • 前妻との間の二女:6分の1(=2分の1×3分の1)

前妻との間の子と後妻との間の子で、法定相続分に差はありません。

代襲相続が起きている場合

代襲相続が起きている場合には、代襲者の相続分は代襲をされた人の法定相続分となり、代襲者が複数いる場合は代襲者間で等分することとなります。
事例で確認しましょう。

事例4:配偶者と、他界した長男の孫2名、長女、二女が相続人である場合

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元々、配偶者との間には長男、長女と二女の3人の子がいたものの、長男は被相続人よりも先に他界していたとします。
他界した長男には、2人の子がいます。

この場合、それぞれの法定相続分は、次のとおりです。

  • 配偶者:2分の1
  • 長男の子である孫1:12分の1(=2分の1×3分の1×2分の1)
  • 長男の子である孫2:12分の1(=2分の1×3分の1×2分の1)
  • 長女:6分の1(=2分の1×3分の1)
  • 二女:6分の1(=2分の1×3分の1)

配偶者と第二順位の相続人が相続する場合

配偶者と第二順位の相続人が相続する場合の相続分は、配偶者が3分の2、残りの3分の1が第二順位の相続人の相続分となります。

事例を出しながら解説しましょう。

事例5:配偶者と両親が相続人である場合

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配偶者と被相続人の父母が相続人である場合の法定相続分は、それぞれ次のとおりです。

  • 配偶者:3分の2
  • 父:6分の1(=3分の1×2分の1)
  • 母:6分の1(=3分の1×2分の1)

配偶者と第三順位の相続人が相続する場合

配偶者と第三順位の相続人が相続する場合の法定相続分は、配偶者が4分の3、残りの4分の1が第三順位の相続人です。

第三順位の相続人が複数いる場合には頭割りで等分し、代襲相続が発生している場合の代襲者の相続分は、代襲をされた人の法定相続分を等分することとなります。

では、事例を出しながら解説しましょう。

事例6:配偶者と3名の兄弟が相続人である場合

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配偶者と、被相続人の3名の兄弟姉妹(兄、弟、妹)が相続人である場合の法定相続分は、それぞれ次のとおりです。

  • 配偶者:4分の3
  • 兄:12分の1(=4分の1×3分の1)
  • 弟:12分の1(=4分の1×3分の1)
  • 妹:12分の1(=4分の1×3分の1)

事例7:配偶者と、既に他界した兄の子3名、弟、妹が相続人である場合

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被相続人には配偶者がおり、元々、兄、弟と妹の3名の兄弟姉妹がいたものの、兄は被相続人よりも先に他界したとします。
その兄には、3名の子がいました。

この場合のそれぞれの法定相続分は、次のとおりです。

  • 配偶者:4分の3
  • 兄の子1:36分の1(=4分の1×3分の1×3分の1)
  • 兄の子2:36分の1(=4分の1×3分の1×3分の1)
  • 兄の子3:36分の1(=4分の1×3分の1×3分の1)
  • 弟:12分の1(=4分の1×3分の1)
  • 妹:12分の1(=4分の1×3分の1)

法律で決まった相続の順位は変更できない?

相続の順位は、先ほど解説したとおりです。
では、相続の順位を変更することはできないのでしょうか?

相続分の譲渡は可能

法律で決まった相続人が、他の人に相続分の譲渡を行うことによって、元々相続人ではなかった人に共同相続人の包括的持分等を譲渡することは可能です。

例えば、被相続人の長男がいとこのA氏に対し、自分の全ての相続分を譲渡することにより、Aは、長男が遺産全体に対して有していた包括的持分を取得することになります。

ただし、相続分の譲渡は贈与税の対象となる点に注意が必要です。
例の場合には、A氏が長男から贈与を受けたものとして、贈与税の申告と納税をしなければなりません。
また、場合によっては譲渡所得税の対象となる場合もあります。

この贈与税や譲渡所得税は相続税とは別物ですので、相続税が掛かる場合には二重で税金の対象となります。
相続分の譲渡を検討する際には、事前に税理士等の専門家へ相談することをお勧めします。

遺言があれば原則として遺言が優先する

被相続人が生前に遺言を遺しておくことで、法律上の相続人ではない人に財産を渡すことが可能となります。
ただし、配偶者、第一順位の相続人と第二順位の相続人には、遺留分があることに注意しなければなりません。

遺留分とは、一定の相続人に保証された、相続での最低限の取り分を指します。

遺留分を侵害した内容の遺言であっても、遺言書自体は有効です。

もっとも、例えば子がいるにもかかわらず、内縁の配偶者に全財産を遺贈するなど、極端な内容の遺言書を遺してしまうと、相続が起きた後で子から内縁の配偶者に遺留分侵害額請求がなされて、トラブルに発展する可能性があります。

遺言書を作成する際には、弁護士等の専門家へ相談することをお勧めします。

先順位の相続人が全員放棄をすれば次の順位の人が相続人になる

先順位の相続人の全員が家庭裁判所で相続放棄をすることで、次の順位の相続人が繰り上がって相続人となります。

例えば、第一順位の相続人である子が2名いて、子が2名とも相続放棄をした場合には、はじめから第一順位の相続人が誰もいなかったことと同じ状態となります。
これにより、第二順位の相続人や第三順位の相続人が相続人となるのです。

法律で決まった相続の割合は変更できない?

素材_悩んでいる人

法定相続分について詳しく解説してきました。
では、必ず、法律で決まった相続分である法定相続分で遺産を分けなければならないのでしょうか?

遺言があれば原則として遺言が優先する

まず、被相続人が遺した遺言があれば、原則として、その遺言どおりに遺産が分割されます。
遺言で誰にどの程度の遺産を渡すのかは原則として被相続人の自由であり、必ずしも法定相続分に従う必要はありません。

例えば、「自宅不動産と預貯金は長男に相続させ、賃貸用不動産は二男に相続させる」など、具体的な財産ごとに渡す相手を決めることも可能です。

ただし、後のトラブルを避けるためには、前述のとおり遺留分には注意しなければなりません。

相続人全員が合意すれば原則としてどのように分けてもよい

遺言書がなかったとしても、相続人の全員が合意するのであれば、必ずしも法定相続分どおりに分割する必要はありません。
むしろ、円満な相続では、法定相続分どおりにきっちり分けることの方が稀だといえます。

例えば、相続人全員が納得するのであれば、他の相続人は一切相続せずに配偶者が全財産を相続しても構いませんし、長女はわずかな財産しか相続せずに長男が財産の大半を相続しても構いません。

ただし、相続人の中に未成年者や認知症で成年後見人が就いている人などがいる場合は、これらの人の利益を守る必要があるため、自由な分割に一定の制限がなされることが多いです。

遺言がなければ遺産分割協議で決める

遺言がない場合には、相続人全員で話し合いをして、財産の取得者を決めることとなります。
この話し合いのことを「遺産分割協議」といいます。

遺産分割協議を成立させるには全員での合意が必要ですので、一人でも納得しない相続人がいる場合には、遺産分割協議を有効に成立させることはできません。

当事者同士で話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所での話し合いである調停や、裁判所に分割内容を決めてもらう審判へと移行します。

まとめ

相続の順位や法定相続分は、法律で定められています。
もっとも、事前の対策を講じることで法律の規定とは異なる相手に財産を渡したり、法律の規定とは異なる配分で相続させたりすることが可能です。

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記事を監修した弁護士
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弁護士 
(第二東京弁護士会)
日本大学法学部卒業、日本大学大学院法務研究科修了。個人法務及び企業法務の民事事件から刑事事件まで、幅広い分野で実績を持つ。離婚や相続などの家事事件、不動産法務を中心に取り扱う一方、新規分野についても、これまでの実践経験を活かし、柔軟な早期解決を目指す。弁護士会では、人権擁護委員会と司法修習委員会で活動している。
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