コラム

公開 2022.08.24 更新 2024.02.26

遺留分の計算方法を弁護士がわかりやすく解説!割合や請求手順は?

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相続では、「遺留分」という、一部の相続人への最低限度の相続分が保証されています。
仮に遺言があったとしても、この「遺留分」を無視することはできません。
ここでは、遺留分を請求できる人、遺留分の割合、遺留分の具体的な計算方法を、相続に詳しい弁護士が解説いたします。

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遺留分とは?「遺言」があっても請求できる?

「遺留分」とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限度の相続分のことです。

最近相続の現場では「遺留分」の請求が増えてきています。遺留分は遺言があっても請求できますが、請求金額をめぐって訴訟になることも少なくありません。
また遺留分は遺産分割とは異なり、請求しないと認められない権利となります。

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「遺言」がある場合は、いったんは遺言どおりに遺産が分けられます。
しかし、遺言によって取得した財産が「遺留分」より少ない場合は、「遺留分」より少ない財産しか取得しなかった相続人が、多く財産を取得した相続人に対し、遺留分を請求することができます。
そのため、「遺留分」は、「遺言」に優先するといわれています。

遺留分を請求できる人は誰か?

遺留分を請求できる人は、「兄弟姉妹以外の法定相続人」となります。
兄弟姉妹以外の法定相続人であれば、代襲相続人や養子も、遺留分を請求することができます。

兄弟姉妹が法定相続人となる場合は「遺留分」の請求はできませんので、「遺言」があれば遺言どおり遺産が分けられることになります。

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遺留分として認められる割合は?

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遺留分として認められる割合は、以下のとおりです。
ほとんどのケースでは、【法定相続分×1/2=遺留分割合】となります。

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遺留分割合の例

ケース1 :相続人が配偶者、長男、次男の場合

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  • 配偶者の遺留分割合 1/2(法定相続分)×1/2=1/4
  • 長男の遺留分の遺留分割合  1/4(法定相続分)×1/2=1/8
  • 次男の遺留分の遺留分割合  1/4(法定相続分)×1/2=1/8

ケース2:相続人が、父と母のみ

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  • 父の遺留分 1/2(法定相続分)×1/3=1/6
  • 母の遺留分 1/2(法定相続分)×1/3=1/6

ケース3:相続人が、配偶者と兄

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  • 配偶者の遺留分 3/4(法定相続分)×1/2=3/8
  • ※「兄」には、遺留分請求権はありません。

遺留分の計算方法

それでは、実際に請求できる遺留分金額は、どのように算出するのでしょうか。
(2019年7月1日以降に生じた相続の場合、「遺留分」請求は金銭での請求となります。以下、2019年7月1日以降に生じた相続であることを前提に解説いたします。)

遺留分の金額を算出するには、まず、被相続人の全体の財産額を計算し(ステップ1)、遺留分を請求する人の遺留分金額を計算します(ステップ2)。

ステップ1:「遺留分の基礎となる財産額」を計算する

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(④については、2019年6月30日までに生じた相続の場合は、「特別受益」に該当すれば、10年という期間制限はありません。)

※「特別受益」とは、相続人間の公平を図るため、被相続人から生前贈与などの特別な受益を受けた相続人がいる場合、当該受益を相続分の前渡しとして、相続分の算定をする制度です。
被相続人が相続発生時に所有していた財産だけではなく、①~④の生前贈与等の財産も計算に入りますので注意しましょう。

①~④や債務については、法的判断も必要となりますので、基礎となる財産を正確に知りたい場合は、必ず弁護士に相談するようにしましょう。

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ステップ2:遺留分の金額を計算する

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※「相続分の金額」の計算式における「特別受益」には、期間制限はありませんので、ご注意ください。

遺留分金額の計算の例

ケース1

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  • 被相続人父、相続人長男、同次男
  • 被相続人の遺産:1000万円
  • 被相続人から相続人等への生前贈与:なし

被相続人は、長男に全部相続させる遺言をのこしていました。

  • ①基礎となる財産:1000万円
  • ②遺留分の金額:次男の遺留分割合 1/2×1/2=1/4

この場合、次男が請求できる遺留分の金額は、1000万円×1/4=250万円(次男が請求できる遺留分金額)となります。

ケース2

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  • 被相続人父、相続人長女、同次女
  • 被相続人の遺産:2000万円
  • 被相続人から相続人等への生前贈与:5年前に長女に対して1000万円(特別受益)、15年前に次女に対して500万円(特別受益)

※なお、次女への特別受益は、「②当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってなされた贈与」に該当しないものとします。

被相続人は、長女に全部相続させる遺言をのこしていました。

  • ①基礎となる財産:2000万円+1000万円(長女への特別受益)=3000万円
  • ②遺留分の金額:次女の遺留分割合 1/2×1/2=1/4

次女が請求できる遺留分の金額は、3000万円×1/4-500万円(次女への特別受益)=250万円(次女が請求できる遺留分金額)となります。

遺留分は請求しないと認められない権利

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ここでは、遺留分請求の手順について、解説いたします。

遺留分の請求をするにあたってのポイントは、下記2点です。

  • ①遺留分は請求をしなければ認められない権利である
  • ②遺留分の請求には期限がある

①遺留分は請求をしなければ認められない権利である

遺留分は、請求をしてはじめて認められる権利となります。
そのため、遺言によって取得する財産が遺留分金額より低い場合、自動的に遺留分金額を取得できるというものではなく、遺留分を請求したい場合は、遺留分を超える財産を取得している相続人や受遺者等に対し、「遺留分を請求する」旨の意思表示をしなければなりません。

具体的には、書面で、遺留分を請求するということを通知します。

②遺留分の請求には期限がある

遺留分の請求は、下記期間を過ぎると、請求ができなくなります。

  • ①遺留分権利者が相続の開始および遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年が経過したとき

又は、

  • ②相続開始から10年が経過したとき

上記のように、遺留分の請求は期間制限があるため、遺留分の通知は、いつ相手に届いたかが分かるように、内容証明郵便で行うようにしましょう。

期限を過ぎてしまうと、遺留分の請求ができなくなりますので、もしかしたら自分は遺留分を請求できるのかな…と思ったら、なるべく早く弁護士に相談をして、遺留分の通知を出してもらうようにしましょう。

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まとめ

遺言等で財産を承継したときに、自分の取り分が少ないなと感じたら、一度遺留分の請求を検討するようにしましょう。
また、遺留分の請求には、期限がありますので、なるべく早く弁護士に相談をして、遺留分を請求できるか、遺留分の請求金額等についてアドバイスをもらうようにしましょう。

Authense法律事務所の弁護士が、お役に立てること

遺留分の基礎となる財産の範囲や、遺留分の金額を算定するためには法的な知識が必要です。法律家に相談することによって、法律上認められた正当な金額を請求することが可能になります。そのため、遺留分侵害額請求を考えている場合には、相続に詳しいAuthense法律事務所の弁護士に一度ご相談ください。

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記事を監修した弁護士
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弁護士 
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。創価大学法学部卒業。創価大学法科大学院修了。不動産会社やIT企業などの顧問弁護士として企業法務に携わるとともに、離婚や相続をはじめとする一般民事、刑事弁護など、様々な案件に取り組んでいる。また、かつてプロ選手を志した長年のサッカー経験からスポーツ法務にも強い意欲を有し、スポーツ法政策研究会に所属し研鑽を重ねる等、スポーツ法務における見識を広げている。
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