コラム

公開 2022.10.21 更新 2024.04.02

相続税を金銭で納付できない場合はどうすれば?相続税の物納について

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相続税は、金銭で納付することが原則です。では、相続税を金銭で納付できない場合はどうしたらよいのでしょうか?
今回は、金銭で相続税が納税できない例外的措置である『物納』について、要件や注意点などについてくわしく解説いたします。

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相続税の物納とは

相続税は、金銭で納付することが原則となっております。
ただし、延納によっても金銭で納付することが困難な場合は、納税者の申請により、その納付を困難とする金額を限度として、一定の相続財産によって相続税を納付すること(以下、「物納」といいます。)が認められています。

物納は、金銭で相続税が納税できない例外的措置となりますので、その要件が厳格に定められています。
ここでは、「物納」の要件について、詳しく解説していきます。

「物納」の要件


相続税を「物納」するためには、以下の①~④の要件を全てみたす必要があります。

  • ①延納によっても金銭で納付することを困難であり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること
  • ②物納する財産(以下、「物納申請財産」といいます。)は、納付すべき相続税額の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち、次に掲げる財産及び順位(以下の1~3)で、その所在が日本国内にあること
    1. 不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等
    2. 非上場株式等
    3. 動産
  • ③物納に充てる財産は、「管理処分不適格財産」に該当しないものであること及び物納劣後財産に該当する場合には、他に物納に充てるべき適当な財産がないこと
  • ④物納しようとする相続税の納期限又は納付すべき日(物納申請期限)までに、物納申請書に物納手続関係書類を添付して税務署長に提出すること

③の「管理処分不適格財産」とは、不動産であれば、担保権の設定の登記がなされている、境界が明らかでない、耐用年数を経ている建物(通常の使用ができるものを除く。)、権利の帰属について争いがあるものなどをいいます。

また、株式であれば、譲渡制限株式や質権その他の担保権の目的となっている株式、共有に属する株式などをいいます。
いずれにせよ、換価が困難なものは、管理処分不適格財産に該当する可能性が高く、物納の要件③をみたさないこととなりますので、物納しようとする財産が「管理処分不適格財産」に該当するか、事前に確認するようにしましょう。
(参考:(参照:国税庁HP 「No.4214相続税の物納」)

以上のとおり、物納については、物納できる財産に制限があったり、手続きの期限も設けられているため、早めの準備が重要となります。
相続税の納税資金が不足して、どうしても捻出できない場合は、物納が可能か、早めに税理士などの専門家に相談をして確認をするようにしましょう。

物納申請の手続き

物納をするためには、上述のとおり、相続税の納税期限までに、被相続人の住所地を管轄する税務署に各種必要書類を提出する必要があります。
もし、必要書類を相続税の納税期限までに提出できない場合は、提出期限の延長を求めることも可能です(延長は最長1年間です。)。
ただし、提出期限を延長する場合は、延長期間について利子税を納める必要もありますので、注意が必要です。

物納申請をするための必要な書類は、「相続税物納申請書」や「金銭納付を困難とする理由書」、「物納財産目録」などです。
客観的な裏付け資料等を添付することもありますので、これらの書類の作成については、税理士などの専門家に依頼されるとよいでしょう。

これらの書類を提出すると、税務署は、物納の要件を充たしているか調査を行い、原則として、申請の期限から3ヵ月以内に許可または却下をすることになります。
却下された場合には、1回限り再申請を行うことが可能です。

物納を検討したら…

以上のとおり、相続税の「物納」は非常にハードルが高く、申請をしても却下される事例が少なくありません。
相続財産の中に十分な金融資産があったり、相続人に納税しうる十分な資力がある場合などは、当然「物納」は認められません。

そのため、「物納」を検討する場合は、まずは「物納」の要件を充たしているか、早めに税理士の先生に確認しましょう。
「物納」の要件を充たしている場合は、申請書類の作成を進め、なるべく相続税の納税期限までに物納の申請をするようにしましょう。

相続税の納税対策

相続税の「物納」は、以上のとおり、要件も厳しく、申請をしても許可してもらえないこともあります(令和2年度の申請件数は65件、許可件数は53件)。
そのため、相続財産が多く、多額の相続税を納税が生じる場合は、被相続人の生前に、相続税の納税金額の試算を行い、納税対策をとるようにしましょう。
相続財産の中で「管理処分不適格財産」に該当するものがあれば、事前に処分しておくことも一案です。
相続税に詳しい税理士に事前に相談をして、納税に必要な資金を相続人が承継できるよう、準備をしておくとよいでしょう。

まとめ

相続税の「物納」は、「物納」ができる財産が制限していたり、手続きが複雑だったりします。
そのため、なるべく早く税理士などの専門家に相談をして、「物納」が可能かを確認するようにしましょう。

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