コラム

公開 2022.07.15 更新 2024.03.22

相続での不動産名義変更は自分でできる?必要書類と費用相場について解説

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相続が起きると、不動産の名義変更手続きが必要となります。
不動産の名義変更までの流れや必要となる書類を解説するとともに、自分で名義変更をするための条件、手続きにかかる費用などをわかりやすく解説します。

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相続での不動産名義変更が必要な理由

土地や建物といった不動産を持っていた身内が亡くなると、その不動産の名義変更が必要となります。
しかし、正直なところ不動産の名義変更を面倒に感じたり、費用をかけてまで名義変更をする意味があるのかと考えてしまったりする方もいるのではないでしょうか?

しかし、相続が起きたらできるだけ早く不動産の名義変更は済ませておくべきだといえます。
その主な理由は、次の2点です。

第三者に自分の権利を主張するため

売買など不動産についての取引をする際には、本当にその取引相手が不動産の所有者であるのかどうかを確認したうえで取引することが一般的です。

せっかく相続で不動産を取得したにもかかわらず、名義変更の手続き(「相続登記」といいます)をしないままでいると、その間に他の法定相続人が自分の名義を登記してしまい、その登記を信じた第三者に勝手に売却されてしまうかもしれません。

たとえば、法定相続人が長男と二男の2名で、長男がその不動産を長男が取得することとなったにもかかわらず名義変更手続きをしないままでいる間に、二男が勝手に二男の法定相続分である2分の1の持分を登記して、その分を第三者に売却してしまうなどです。
共有持分の売買が一般的によく行われるわけではありませんが、万が一このような事態が生じれば、売却されてしまった持分を取り返すことは困難となります。

こうしたトラブルを防ぐため、やはり不動産を取得したらできるだけすみやかに名義変更の手続きを済ませておいたほうがよいでしょう。

故人名義のままでは売却などができないため

不動産を売却したり抵当権などの担保に入れてお金を借りたりするためには、不動産の相続登記が済んでいなければなりません。
故人名義のままの不動産は、そのままでは売却や抵当権の設定などの登記ができないためです。

たとえ当面は売却や担保提供の予定がなかったとしても、将来このような事情が生じた際にはきちんと相続登記をする必要が生じます。

相続が起きてからいざ相続登記をしようとした時点までの期間が長ければ長いほど、名義変更手続きが大変になってしまう可能性が高いでしょう。
なぜなら、元々の相続人が死亡して代替わりが起きていたり相続人が認知症になっていたりなど、事情が変わっている可能性が高まるためです。

時間が経ってからの相続登記はより手間がかかる可能性が高いため、不動産の取得が決まったらできるだけすみやかに名義変更をしておくことをおすすめします。

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相続で不動産を名義変更するまでの流れ

相続で不動産の名義変更をするまでの一般的な流れは、次のとおりです。

相続財産を洗い出す

はじめに、亡くなった人(「被相続人」といいます)の持っていた財産の洗い出しをします。
次のステップで行う遺産分割協議をおこなうためには、財産の全体像がある程度見えている必要があるためです。

相続人のうち誰がその不動産を受け取るかを決める

被相続人が持っていた財産それぞれについて、相続人のうち誰が取得するかを決めるための話し合いを行います。

この話し合いを「遺産分割協議」といい、遺産分割協議を成立させるためには相続人全員の合意が必要です。
1人でも意見が一致しない相続人がいる場合には、遺産分割協議を成立させることはできません。

仮に当人同士で遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所での話し合いである調停や、最終的に家庭裁判所に決断をくだしてもらう審判へと移行します。
できるだけ早期の解決を図るため、遺産分割協議がまとまらない懸念が生じた場合には、早いうちに弁護士へご相談ください。

なお、被相続人がそれぞれの財産について取得者を明確に定めた有効な遺言書を遺していた場合には、その遺言書に従って不動産の名義変更をおこなうことができます。
そのため、遺言書があれば原則として遺産分割協議は必要ありません。

必要書類を準備する

不動産の取得者が決まったら、相続登記をするために必要となる書類を準備します。
必要書類については、後ほど詳しく解説します。

法務局へ相続登記を申請する

必要書類の準備ができたら、法務局に相続登記を申請します。

登記の申請先は、その不動産の所在地を管轄する法務局です。
事前に、どこの法務局に申請すればよいのか確認しておきましょう。

相続登記を申請するには、次の3つの方法があります。

  • 窓口へ持参して申請する
  • 郵送で申請する
  • オンラインで申請する

管轄の法務局が遠方であれば郵送で手続きせざるを得ない場合もあるかと思いますが、不動産の名義変更に慣れていない場合には、できるだけ窓口での申請を選択するとよいでしょう。
その場で不備が発見された場合には、軽微なものであればその場で修正ができる可能性があるためです。

オンラインでの申請には申請ソフトなどの準備が必要であり手間がかかるため、自身の登記を数回程度行うのみであればおすすめできません。

相続で不動産を名義変更するための必要書類

相続で不動産を名義変更するための必要書類

相続で不動産の名義変更をする際の主な必要書類は、次のとおりです。
ここでは、遺産分割協議で不動産の取得者を決めた場合の必要書類の例を紹介します。

ただし、登記の内容や状況によっては必要書類が異なる場合があるため、事前に管轄の法務局に確認してください。

登記申請書

登記申請書は、不動産を名義変更する際のメインとなる書類です。
預貯金などの相続手続き用紙のように様式を埋めるものではなく、自分でイチから作成する必要があります。

代表的なケースであれば法務局のホームページに記載例がありますので、こちらを参考に作成をするとよいでしょう。
そのうえで、法務局の登記相談を予約して申請の前に確認をしてもらうと安心です。

法務局のホームページはこちら

遺産分割協議書

遺産分割協議書とは、遺産分割協議の結果を記した書類です。
どの財産を誰が相続するのかがわかるよう、明確に記載する必要があります。

相続人全員が協議の内容に合意していることの証明として、相続人全員の実印での捺印が必要です。

相続人全員の印鑑証明書

遺産分割協議書に押した印が実印であることの証明として、相続人全員の印鑑証明書を添付します。

被相続人の出生から死亡までの連続した除籍謄本等

遺産分割協議に参加した人が本当に相続人なのか、そして他に相続人はいないかどうかなどの確認のため、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本が必要です。

これらはそれぞれ、被相続人がその時点で本籍をおいていた市区町村役場で取得します。

被相続人の兄弟姉妹や甥姪が相続人になるケースでは、これに加えて被相続人の父母それぞれの出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本も必要です。

相続人全員の戸籍謄本

相続人が生存していることの確認のため、相続人全員の現在の戸籍謄本が必要です。

不動産を相続する人の住民票

新たに不動産の所有者となる人の情報を正しく登記するため、不動産を取得する相続人の住民票が必要です。

不動産の固定資産評価証明書

不動産の名義変更をする際には、登録免許税という税金を支払わなければなりません。
登録免許税は、その不動産の固定資産税評価額に税率を乗じて算定します。

この登録免許税を正しく計算するため、不動産の固定資産評価証明書が必要です。
固定資産評価証明書は、その不動産が所在する市区町村役場の税務課などで取得できます。

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相続での不動産名義変更に期限はある?

相続での不動産名義変更には、従来、期限はありませんでした。
しかし、2021年に成立した改正不動産登記法などにより、2024年度以降は期限が設けられることとなっています。

2021年現在は相続での不動産名義変更に期限はない

相続登記は本来、不動産を取得した人の権利を守るために行う手続きです。
そのため、2021年現在では特に期限は設けられていません。

とはいえ、きちんと名義変更をしておかなければ、上で記載をしたとおり第三者に自分の権利を主張できないなどのリスクが生じます。
期限がないからといって手続きを先送りにしていてはトラブルの原因となる可能性がありますので、不動産を取得することが決まったら早期に手続きを済ませるようにしましょう。

2024年度以降は3年以内の名義変更登記が義務化される

相続手続きをしないままで放置されて、もはや現在の所有者がわからなくなっている「所有者不明土地」が急増し、社会問題となっています。
そのため、相続登記を義務化し期限を設ける不動産登記法などの改正法が、2021年に成立しました。
改正法の施行は、2024年度中となる予定です。

改正法の施行後は、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内」に相続登記をすべきこととされます。
正当な理由のないまま期限を超過した場合には10万円の過料の対象となる可能性がありますので、今後は期限にも注意しつつ手続きを進めるようにしましょう。

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相続での不動産名義変更は自分でできる?

相続での不動産名義変更は自分でできる?

相続での不動産名義変更を自分でおこなうことは、特に法令などで禁じられているわけではありません。
そのため、司法書士へ依頼して名義変更を行うことのほか、自分で手続きをすることも選択肢の一つとなります。

しかし、不動産の名義変更は決して簡単な手続きではありません。
費用と手間、リスクなどを総合的に考慮のうえ、自分で行うのか司法書士へ依頼するのか検討されるとよいでしょう。

相続での不動産名義変更をするための条件

自分で不動産の名義変更をすることに、法的な条件はありません。
しかし、現実的にいえば、自分で不動産名義変更をするためには次の条件をすべて満たす必要があるでしょう。

数次相続が起きているなど複雑な案件でないこと

数次相続とは、数回にわたって相続が繰り返されている状態です。
たとえば、名義変更をしようとする不動産が最近亡くなった父の名義ではなく、先代の祖父名義になっているような場合がこれに該当します。

数次相続が起きている場合には、自分で不動産の名義変更をすることはおすすめできません。
なぜなら、数次相続が起きている場合の名義変更手続きは申請書の記載方法なども特殊であり、かつ必要書類なども多くなるためです。

書類を正確に作成することができること

不動産の名義変更をするには、書類を正確に作成する必要があります。

法務局で聞いても、イチから申請書の書き方の指導まではしてくれないことが一般的です。
そのため、自分で調べながらある程度正確に書類を完成させられることが、自分で名義変更をするための条件の一つといえるでしょう。

相続登記を長期間していないことによって、この間所有権者に住所の変更があった場合など、相続登記以外の登記も必要となる場合もありますから、どのような登記手続きが必要かについて正しく判断できなければ、書類を正確に作成することも難しいでしょう。

平日の日中に何度も時間を取ることができること

法務局や書類を取得する際に訪問すべき役所は、原則として夜間や土日祝日は開庁していません。

中でも、法務局は登記の申請時はもちろん申請前の登記相談や申請後の補正などで、平日の日中に何度も出向く必要が生じるでしょう。
そのため、平日の日中にある程度自由に身動きが取れることが、自分で名義変更をする条件の一つとなります。

不動産の名義変更を急ぐべき事情がないこと

自分で不動産の名義変更をする場合、申請書の記載方法を調べたり必要書類を集めたりといった手続きに時間がかかることが一般的です。
さらに、申請後も修正の必要が生じ、さらに時間がかかる場合が少なくありません。修正にあまりに時間を要する時には、法務局から一度登記申請手続きを取り下げるよう指示を受けることもあります。

そのため、たとえばその不動産の売却を控えているなど不動産の名義変更を急ぐ事情がある場合には、自分で登記手続きをすることはおすすめできません。

専門家のアドバイスを必要としないこと

相続での不動産名義変更にあたって、たとえば被相続人である父名義の不動産を母名義にすべきか長男である自分名義にすべきかなど、専門家のアドバイスをもらいたい場合もあるでしょう。
法務局で行うことができるのは、あくまでも登記手続きの相談のみであり、手続きの前提となるこのような相談には乗ってもらえないことが一般的です。

専門家のアドバイスが欲しい場合には、専門家へ手続きを依頼すべきでしょう。

相続での不動産名義変更でかかる費用

相続での不動産名義変更にかかる費用は、主に次の3点です。

司法書士報酬

不動産名義変更手続きを司法書士へ依頼した場合には、報酬が発生します。
報酬体系は事務所によって異なり、一律ではありません。

報酬相場はおおむね6万円から10万円程度といわれていますが、名義変更をする不動産の数や相続人の人数、遺産分割協議書の作成などから依頼するのかといった依頼の範囲などによって異なります。
正確な報酬を知るためには、依頼を予定している事務所へ事前に見積もりを依頼するとよいでしょう。

登録免許税

不動産の名義変更をする際には、登録免許税という税金を納めなければなりません。
相続での名義変更にかかる登録免許税の額は、次のとおりです。
相続登記の登録免許税=不動産の固定資産税評価額×1,000分の4

たとえば、固定資産税評価額が2,000万円の不動産を相続登記する際の登録免許税は8万円となります。

必要書類の取得費用

不動産の名義変更をする際には、上で記載をしたとおり多くの書類が必要となります。

その書類の取得にかかる費用は相続人の状況や不動産の数などによって異なりますが、おおむね1万円から2万円前後のことが多いでしょう。
ただし、相続人が兄弟姉妹や甥姪である場合には必要となる書類が多くなる傾向にあるため、2万円から3万円程度となる場合が多いとえいます。

まとめ

相続での不動産名義変更は、自分でおこなうことも可能です。
しかし、不動産の名義変更には多くの書類が必要となるほか、登記申請書も穴埋め形式などではないため、決して容易ではありません。

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記事を監修した弁護士
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(第二東京弁護士会)
上智大学法学部国際関係法学科卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了。企業法務や顧問業務、個人法務など幅広い分野に対応。個人法務では、離婚、相続、労働事件などを取り扱う。
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