不在者がいる場合の遺産分割
ここで言う不在者とは、海外に在住していて一時的に日本にいないというような場合ではなく、従来の住所または居所におらず、容易に戻る見込みがない、あるいは行方不明、生死不明の状態である方のことを言います。
遺産分割協議は、相続人全員の同意が必要ですので、不在者がいる場合、遺産分割が頓挫してしまいます。
そこで、相続人に不在者がいる場合、2つの方法で遺産分割協議を進めていくことができます。
不在者財産管理人を選任する場合
不在者に財産管理人がいない場合、家庭裁判所への申立てにより、不在者自身や不在者の財産について利害関係を有する第三者の利益を保護するため、財産管理人を選任することが出来ます。選任には通常3ヶ月から半年程かかります。
選任された不在者財産管理人は、不在者の財産の管理・保存のほか、家庭裁判所の許可を得た上で、不在者に代わり、遺産分割や不動産の売却等を行うことができます。
失踪宣告の場合
失踪宣告とは、生死不明の者に対して、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。
不在者の生死が7年間明らかでないとき(普通失踪)、または戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後、その生死が1年間明らかでないとき(危難失踪)、家庭裁判所への申立てにより、失踪宣告をすることができます。
この失踪宣告は、家庭裁判所に申立てから認められるまでに1年程かかります。
申立てが認められると、普通失踪の場合は生死不明から7年間経過した時点で、危難失踪の場合は危難が去った時点で、本人は死亡したものとして扱われます。そのため、死亡したとみなされた時点が被相続人の死亡より前であれば生死不明者の子などの代襲相続人が、後であれば生死不明者の相続人が、遺産分割協議に参加することになります。
特別縁故者に対する相続財産分与
被相続人に法定相続人がおらず、遺言もない場合、相続財産管理人が被相続人の財産の管理や債務の清算などを行い、残った財産は国に帰属します。
しかし、被相続人と一緒に生活していた方や療養介護に努めた方のような、被相続人の特別縁故者と認められる方であれば、家庭裁判所へ相続財産の分与を請求することができます。家庭裁判所が認めれば、精算後に残った財産の全部又は一部は国に帰属せず、特別縁故者が取得することになります。