準確定申告のやり方

準確定申告とは、亡くなった人について行う確定申告です。
相続に関する税金といえば、「相続税」がまず思い浮かぶ人も多いでしょう。
しかし、準確定申告も忘れてはなりません。

では、準確定申告は、誰がいつまでに行う必要があるのでしょうか?
また、準確定申告が必要なのはどのようなケースなのでしょうか?

今回は、準確定申告について詳しく解説します。

準確定申告とは

相続人が被相続人の確定申告をすることを「準確定申告」といいます。
亡くなった被相続人が個人事業主であったり不動産所得があったりして確定申告をする立場にあった場合、相続人は準確定申告をする必要があります。
申告期限は、原則として相続人が相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。
被相続人が1月1日から死亡日までに確定した所得金額および税額を計算して、申告と納税をします。
なお相続放棄をした場合、その相続放棄をした方については準確定申告が不要となります。

  • 申告期限 相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内
  • 提出先 被相続人の死亡当時の納税地の税務署長
  • 届出人 法定相続人

必要書類

  • 確定申告書(準と書き加えて代用します)
  • 被相続人の給与明細や年金の源泉徴収票
  • 被相続人の生命保険や損害保険の控除証明書
  • 被相続人の医療費の領収書(医療費控除を適用する場合)
  • 死亡した者の○年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表

準確定申告の基本

準確定申告の基本は次のとおりです。

申告先

準確定申告の申告先は、亡くなった人(「被相続人」といいます)の住所地を管轄する税務署です。

申告義務者

準確定申告の義務者は、相続人と包括受遺者(相続人ではないものの、遺言書で「全財産を遺贈する」や「全財産の2分の1を遺贈する」など包括的な遺贈を受けた人)です。
原則として相続人等が共同して行うこととなりますが、他の相続人等の氏名を付記して各人が別々に提出することもできます。
なお、準確定申告はすべてのケースにおいてすべきということではなく、被相続人に一定の所得があった場合にのみ必要です。
後ほど解説しますが、被相続人が亡くなる直前に資産を譲渡していた場合や、亡くなる直前まで事業を営んでいた場合などには、準確定申告が必要となる可能性が高いでしょう。
一方、被相続人が給与所得しかなかった場合には、原則として準確定申告は必要ありません。
ただし、給与所得者であっても次のいずれかに当てはまる場合には、原則として確定申告が必要です。

  • 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
  • 1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
  • 2か所以上から給与の支払を受けている人で、主たる給与以外の給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人(※)
  • 同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
  • 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人
  • 源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人
  • 退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人

※給与所得の収入金額から、雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下の人は、申告の必要はありません。

準確定申告の期限

準確定申告の期限はそれぞれ次のとおりです。
通常の確定申告とは期限が異なるため注意してください。

前年分の確定申告を済ませて亡くなった場合

たとえば、被相続人が令和4年分の確定申告を済ませ、その後令和5年8月20日に亡くなったとします。
この場合には、令和5年1月1日から令和5年8月20日(死亡日)までの分に係る確定申告をしなければなりません。
この場合の期限は、次のとおりです。

例1: 前年分の確定申告を済ませて亡くなった場合

1月1日
↓申告の計算期間
8月20日(被相続人が亡くなった日)
↓準確定申告書の作成・提出
12月20日(相続人が相続の開始を知った日の翌日から4か月以内)

前年分の確定申告をしないまま亡くなった場合

たとえば、被相続人が令和4年分の確定申告をしないまま令和5年2月3日に亡くなったとします。
この場合には、次の2つの準確定申告をしなければなりません。

  1. 令和4年分
  2. 令和5年1月1日から2月3日(死亡日)までの分

それぞれの期限は、次のとおりです。

例1:前年分の確定申告をしないまま亡くなった場合

前年1月1日
↓前年の準確定申告の計算期間
前年12月31日

本年1月1日
↓本年の準確定申告の計算期間
2月3日(被相続人が死亡した日)
↓前年・本年両方の準確定申告書の作成・提出
6月3日(相続人が相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内)

所得税の還付を受けたい場合

申告義務はなくても、準確定申告をすることで所得税の還付が受けられる場合があります。
たとえば、医療費がかさんだ場合などには年金や給与から源泉徴収された所得税が一部戻ってくるかもしれません。
この場合には、特に期限はないものの還付請求権が5年で消滅します。
そのため、還付を受けたいのであれば5年以内に準確定申告をする必要があるでしょう。

準確定申告が必要かどうかの判断方法

準確定申告は、すべてのケースで必要となるわけではありません。
そもそも支払うべき所得税がない場合には、準確定申告は不要です。

しかし、準確定申告が必要かどうか相続人の立場では判断が難しい場合も多いでしょう。
次の場合には準確定申告が必要である可能性が高いため、早めに専門家に相談することをおすすめします。
なお、これらに当てはまらず準確定申告の義務はなくても、準確定申告をすることで所得税の還付を受けられる場合もあります。

毎年の確定申告で所得税を納めていた形跡がある

被相続人が毎年確定申告をしており、所得税を納めていた形跡がある場合には、準確定申告が必要となる可能性が高いでしょう。
たとえば、自宅に確定申告書の控えや納付書の控えが残っていた場合や、通帳から所得税が引き落とされた形跡がある場合などです。

亡くなる直前まで事業を営んでいた

被相続人が亡くなる直前まで事業を営んでいた場合には、準確定申告が必要となる可能性があります。
事業の収支のわかる資料を取りまとめ、早期に専門家へ相談しましょう。

なお、事業を営んでいた者が突然亡くなった場合には、代金の未収や仕入れ代金の未払いなどが発生している可能性も否定できません。
そのため、特に他の家族が事業内容を把握できていない場合には早期に弁護士へご相談ください。

賃貸不動産を保有していた

被相続人が賃貸不動産を所有していた場合には、準確定申告が必要となる可能性があります。
通帳など収入や経費の支払いがわかる資料を取りまとめ、早期に専門家へ相談してください。

なお、この場合には今後の賃料収入の受け取り方法についても早期に検討しなければなりません。

2,000万円を超える給与所得や複数社からの給与所得があった

1か所から給与収入を得ており他に収入がない場合には、勤務先の会社で源泉徴収や年末調整がなされます。
そのため、あえて自分で確定申告や準確定申告をする義務はありません。

一方で、給与収入が2,000万円を超える場合には年末調整がなされないため、確定申告や準確定申告が必要です。
また、複数社から給与収入がある場合や一定以上の副業収入がある場合も、確定申告や準確定申告をしなければなりません。

亡くなる直前に大きな資産を譲渡した

亡くなる直前に大きな財産を譲渡した場合には、準確定申告が必要となる可能性があります。
たとえば、不動産や株式、会員権などが挙げられます。

準確定申告の進め方・手順

準確定申告の進め方や手順は次のとおりです。

相続人代表者を決める

準確定申告は相続人がそれぞれ行うこともできますが、この場合にはそれぞれが被相続人の収支を調べたり申告書を作成したりする必要が生じます。
また、申告書の内容を他の相続人にも通知しなければなりません。

そのため、相続争いが激化しているなど例外的なケースを除き、相続人が共同で申告することが一般的です。
しかし、実際には専門家と打ち合わせをしたり申告書類を作成したりといった手続きを、相続人の誰かが代表して行うことになるでしょう。

そこで、初めに相続人代表者を決め、他の相続人がこの相続人代表者に手続きを委任することが一般的です。
また、準確定申告による納税額をどこから捻出するかについても、この段階で話し合っておくと良いでしょう。
たとえば、「準確定申告で納める税金はいったん長女が負担して、あとから法定相続分に応じて精算する」などです。

必要書類を準備する

次に、準確定申告の必要書類を準備します。
必要書類は被相続人の収支状況など申告内容によって異なりますが、一般的には次のものなどです。

  • 被相続人の給与明細や年金の源泉徴収票
  • 被相続人の生命保険や損害保険の控除証明書
  • 被相続人の医療費の領収書(医療費控除を申請する場合)

その他、収支状況のわかる書類が必要となります。

申告書を作成する

必要書類を参照のうえ、申告書を作成します。
準確定申告の申告書は通常の確定申告で使用するのと同じものになります。

被相続人に事業所得や不動産所得があった場合には「収支内訳書(青色申告の場合には「青色申告決算書」)」も必要となります。
自分で行う場合には、手引きを参照したり管轄の税務署へ相談に出向いたりしながら、誤りのないよう作成してください。

税務署へ提出する

申告書類の準備ができたら、期限内に税務署へ提出します。
提出は管轄の税務署へ持ち込んだり郵送したりするほか、e-Taxを使った電子申告も可能です。

準確定申告を自分でやるための条件

準確定申告は、自分で行うことができないわけではありません。
これまで毎年被相続人の確定申告を相続人が代わりに行っていた場合などには、自分で行える可能性が高いといえます。

一方、確定申告に馴染みがない人がいきなり準確定申告を行うことは容易ではないでしょう。
この場合に無理に自分で行えば、大きなミスをして後から税務調査で指摘されたり、受けられるはずの控除が漏れて税金を払いすぎてしまったりするかもしれません。

そのため、準確定申告を専門家へ依頼せず自分で行うのは、次の条件をすべて満たした場合のみとすることをおすすめします。

所得種別が事業所得ではない

被相続人が事業を営んでおり、事業所得の申告をする場合には自分で行うことはおすすめできません。
事業所得の申告をするには事業の収入や経費を正しく把握しなければならず、専門的な知識が必要となるためです。

平日の日中に時間が取りやすい

自分で準確定申告をする際には、管轄の税務署に何度か相談に出向く必要が生じるでしょう。
そのため、税務署が開庁している平日の日中に時間が取りやすいことも一つの条件となります。

調べながら書類を作るのが苦痛ではない

準確定申告を自分で行おうとすれば、一つずつ調べながら申告書類を仕上げる必要があるでしょう。
そのため、不明点を調べながら書類を作ることが苦痛である場合には、自分での準確定申告はおすすめできません。

申告期限までに余裕がある

準確定申告を自分で行うのは、申告期限までに時間的な余裕がある場合のみとした方がよいでしょう。
調べながら準確定申告を行うには、相当の時間を要するためです。
また、慌てて申告をすれば、ミスをするリスクも高くなります。

お困りの際はAuthense法律事務所へご相談ください

相続に関連する代表的な税金は相続税です。
しかし、これとは別に所得税の準確定申告が必要となる場合もあります。

準確定申告の期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内とされており、非常にタイトなスケジュールといえるでしょう。
相続が起きたら早めに資料の整理を始め、申告に備えることをおすすめします。

Authense法律事務所では、相続に関する手続きのサポートやトラブル対応に力を入れています。
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都内大手税理士法人に勤務後、池袋にて藤野税理士事務所を開業。相続・事業承継を専門とし、累計300件超の相続税申告・事業承継案件に対応。提案型の税理士として、相続対策・事業承継の提案・アドバイスを得意とする。
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