公開 2025.09.01Professional Voice

原点は学生時代の熱狂。「ワーク・アズ・ライフ」を体現し、選手の市場価値を最大化する高倉 裕紀の信念

インタビュー

学生時代の情熱を原動力に、異業種での経験を糧にしてスポーツビジネスの世界へ飛び込んだ高倉氏。株式会社ユニバーサルスポーツジャパンでは、アスリートの価値を最大化するエージェントとして、選手のキャリアに深く寄り添う。

「プレイヤーズファースト」の哲学と同社独自の支援体制の裏側には、日本サッカー界の未来を見据える熱い想いがあった。

目次
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学生時代の経験が人生を変えた

まず、高倉様のこれまでのキャリアについて伺いたいと思います。

私のキャリアはレッドブル・ジャパンから始まりました。大学時代に契約社員として「スチューデントブランドマネージャー」(SBM)を務め、各大学でレッドブルのブランドを広める役割を担いました。
大学では体育会フットサル部に所属しており、大会運営にも関わっていました。大会の運営を通じてレッドブル・ジャパンに出会い、イベントの価値を高める取り組みに魅力を感じました。
SBMとしてイベントやブランド構築に関わる中で、経済を活性化させ、人々を幸せにするスポーツの力に気づいたのです。

この経験を通じて、将来はスポーツやマーケティングに関わる仕事をしたいと思うようになりました。

今の事業につながる体験をされたのですね。

私の仕事観である「ワーク・アズ・ライフ」という考え方も形作られました。何事も「ワークハード、プレイハード」と全力で楽しむ姿勢を大切にしたいと思っています。
当時、飲料のジャンルとして認知されていなかったエナジードリンク市場を創り上げていくプロセスから、「新しいものは情熱を注ぎ込んで作り上げるもの」という感覚を身につけました。

人生を変える経験ですね。

「トライフ」(現在の「ワンキャリア」)という就職支援ベンチャー企業でもインターンをしており、そこでの経験も貴重でした。

就活生のメンタリングなどを通じて、人生と向き合う重さ、自分が関わった方の人生が少しでも良くなるかもしれない、という達成感を得られたのです。
この経験がスポーツと人の人生に関わる、現在のエージェント事業につながっています。

インタビュー_高倉 裕紀

自分の気持ちと向き合い、日本サッカー協会へ

新卒では三井物産に入社されたのですね。

はい、3年間在籍していました。次世代機能推進本部の金融部門で「コモディティデリバティブ」という金融商材を扱う仕事に携わりました。

原油や金といったコモディティ商材を対象とした金融商品を扱う事業特性上、マクロ経済の様々な事象が直接的に事業に影響を与えるスケール感が大きく学びの多い環境でしたが、学生時代の経験と比較し、仕事や事業に対する手触り感・仕事をゼロから作り上げていく感覚は中々当時の自分は感じられず、「このキャリアを追求したいのか」という思いが募るようになったのです。

当時は東京五輪の招致も決まり、人生のどこかでスポーツビジネスに関わりたい、という思いが強まり、2016年にJリーグ主催の「Jリーグヒューマンキャピタル」というプログラムに通学しつつ、日本サッカー協会のJYDデザインキャンプ ハッカソンに応募したご縁から、JFAに入局し、マーケティング部に配属されてサッカー界へとチャレンジすることになりました。

日本サッカー協会では、具体的にどのようなお仕事をされていましたか。

サッカー日本代表のスポンサーシップの仕事を主に行い、日本代表のユニフォームプロジェクト等に従事しました。
サッカー日本代表というスポーツコンテンツを協賛企業に活用していただき、共にプロモーションすることで、企業のブランド価値向上やセールスプロモーションなどに繋げる仕事です。

当時の日本代表の雰囲気はいかがでしたか?

私が協会に入った2017年からカタールワールドカップ初戦までは、チームの勝率も低く、ユニフォームの売上も芳しくありませんでした。苦しい時代でしたね。
そのような時だからこそ、マーケティング担当者として「代表チームをどう見せるか・いかにアイデアを広げて新しい価値を創るか」を意識していました。

SDGs×スポーツというテーマにも取り組み、なでしこジャパンの試合でピンクリボン活動の普及を促したり、サポーターとサステナブルなゴミ袋を作り、カタールワールドカップでの清掃活動に活用してもらうプロジェクトを行ったりしました。

日本のサポーターのマナーは世界でも話題になりましたね。そこから次のキャリアをどう考えられるようになったのでしょうか。

2019年のコパ・アメリカにマーケティング担当として、東京五輪ではザンビア女子代表のチームリエゾンとしてチームに帯同する機会を通じて、選手が試合に懸ける真剣さに触れる中で、改めて「価値の源泉は選手」という感覚を持つようになり、選手のことをもっと理解したい、という思いが強くなりました。
また、コロナ禍に海外のスポーツビジネスを学ぶ機会があり、ダイナミズムの違いに刺激を受けました。

日本サッカー協会に入った時点で「日本が世界からリスペクトされ、サッカーを通じてより良い社会を創っていきたい」という気持ちを抱いていましたが、自身がより世界と接点を持つ業務に携わり、世界基準に触れないとその未来を当事者としては実現できません。海外へ行く度に、その差を痛感しました。

スポーツビジネスの中でも選手側で、もっと世界との接点があるような仕事にチャレンジしたいという気持ちが強くなり、2023年に環境を変える決断をしました。

ユニバーサルスポーツジャパンに入社されるきっかけになったのですね。

そうです。日本から世界に飛び出して挑戦するアスリートの人生に深く関わり、彼らの現役生活の「価値」や「世界で戦う環境」を肌で感じながら、その価値を高める事に取り組んでいます。

インタビュー_高倉 裕紀

ユニバーサルスポーツジャパンはチーム一丸となって選手を支える

ユニバーサルスポーツジャパンの事業内容について教えていただけますでしょうか。

エージェント事業とマネジメント事業を展開しています。
エージェント事業は選手の年俸交渉や移籍交渉など、アスリートの経済条件を決める契約交渉の仕事です。

マネジメント事業では契約交渉以外の、選手に必要な幅広いサポートを行なっています。

事業イメージ

エージェント事業ではどのようなサポートをされるのでしょうか。

当社が関与した象徴的な海外移籍の事例として、遠藤 航選手のリバプールFCへの移籍、伊藤 洋輝選手のバイエルン・ミュンヘンへの移籍、川崎 颯太選手のドイツ・マインツへの移籍、関根 大輝選手のスタッド・ランスへの移籍などがあげられます。
選手が海外移籍する際、買い手となるクラブチームが獲得リストを作成し、選手をラージリストからショートリストに絞り込んで条件交渉を行い、オファーレターを受領し契約締結に至るまであらゆる面で当社はサポートをします。

例えば、海外のパートナーエージェントを日本に招へいしてJリーグの試合を見てもらい、選手自身のパーソナリティや英語レベルを含めたプレゼンテーションの場を設けます。
その機会に先立って我々から選手にオンライン英会話の受講を促すなど、プレー以外の魅力を自身の言葉で伝えるように努力もしてもらいます。このプロセスを通じて選手は海外移籍を現実的なチャレンジとして捉え直し、ピッチ上のパフォーマンス向上の意識も、ピッチ外での様々な準備に対する意識も高まるのではと感じています。

契約交渉以外のサポートも手厚くされるのですね。

海外移籍にあたって、契約交渉というのは全体のプロセスのほんの一部であり、それまでのプロセスをどのようにサポートするかが契約交渉の成否をわける部分だと感じています。

このような支援体制は他のエージェントにはないものでしょうか?

他社は選手に担当をつけてサポートする体制をとる形式が多いと伺っていますが、弊社はそれに加えてチームで選手を支援することを心がけています。
弊社では多様なバックグラウンドを持つプロフェッショナルが連携し、70人弱の選手をサポートしています。

例えば、「Jクラブでの通訳経験があり言語に堪能な者」「ドイツの街クラブで育成世代の監督経験があり、指導・分析能力に長けた者」「選手の感情の機微を捉え、人間関係構築に長けた者」、私のようなスポーツマーケティング・コミュニケーションの経験者といったプロフェッショナルが得意なことを活かし、チームとして選手を支えます。

Authenseグループに所属しているため、グループ内の弁護士や税理士によるサポートも提供し、選手にもプロフェッショナルとして認識されるチーム作りを心がけています。

グループならではの強みを発揮されているのですね。海外移籍以外にはどのようなサポートをされていますか?

分かりやすい形としては、スポンサーシップを通じて選手のブランド価値を高める取組があります。昨年、リシュモンジャパン様の傘下にあるハイブランド・ダンヒルジャパンに遠藤 航選手の広告起用をいただいたのは良い例です。
彼の誠実なパーソナリティ・英国で挑戦する日本人という印象とハイブランドであるダンヒルの世界観がマッチし、洗練されたプロフェッショナルなイメージを創出しました。この取組と選手本人のピッチ内外での活躍が後の様々な企業様とのパートナーシップにも繋がっているのではと感じております。

それ以外にも目立つ形ではないですが、選手の資産運用や栄養士の紹介等、選手のニーズに沿って適切なプロフェッショナルをチームに巻き込んでサポートすることを心がけています。
同じ会社でエージェントとマネジメントの価値提供ができることが私たちの強みです。エージェント事業を通じて選手のキャリアや価値観を理解することが、マネジメント事業における競争優位に繋がっています。

インタビュー_高倉 裕紀

「あいつがいたからうまくいった」と言われる仕事をしたい

ユニバーサルスポーツジャパンにおいて、最も大切にされていることは何でしょうか。

「プレイヤーズファースト」です。
選手とコミュニケーションを取り、私たちに見えているリスクやチャンス、選択肢を伝え、最終決定は選手自身が行うスタイルを大切にしています。

また、規模を追うのではなく、クオリティの部分でナンバーワンを目指しています。日本代表に選ばれた選手の数や、欧州5大リーグでプレーする選手の数など、質を代理変数とする形でナンバーワンを目指すことを事業上のKPIの一つとしています。

選手にとって信頼できる考えですね。高倉様ご自身の仕事の哲学や流儀があれば教えてください。

明確な哲学と呼べるかは分かりませんが、「関わった人間、プロジェクト、組織に対して全力を尽くす」という、ごく当たり前のことを実践するように心がけています。
「あいつがいたからうまくいった」と言われる仕事をしたいという思いはレッドブル時代から変わっていません。常に、関わった人々にポジティブな影響を与える気持ちでどんな仕事にも向き合っています。

このインタビューでもポジティブなエネルギーをいただいています(笑)。最後に、今後の展望についてお伺いしてもよろしいでしょうか。

エージェント事業を通じて、選手のキャリアを高みに引き上げていきたいです。
引退後のセカンドキャリアも含め、それぞれの人生のフェーズにちゃんと寄り添えるような個人、組織でありたいと思っており、選手が増える中でも、一人ひとりに向き合うことを大切にしたいです。

また、個人的な野望は、一人でも多くの日本人選手に海外で活躍してもらうことです。移籍によって世界で流れるビックマネーがJクラブや日本の街クラブ・高校に流れ、日本のサッカー界が活性化します。
未来を見据えた際に日本のサッカーのエコシステムを国内だけで捉えると世界との差は広がる一方であり、海外のお金を取り込んでくることが大切です。

しっかりと選手のキャリアを支援しながら、たくさんの海外組を輩出し、会社としても業界ナンバーワンを目指したいですね。

インタビュー_高倉 裕紀

Professional Voice

ユニバーサルスポーツジャパン
取締役

高倉 裕紀

ユニバーサルスポーツジャパン 取締役。神戸大学経営学部経営学科卒、慶應SDM Sports X Leaders Program 0期・公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル(SHC)2期・JOC主催 国際人養成アカデミー(JISLA)2019卒業生。 三井物産株式会社・公益財団法人日本サッカー協会を経て2023年11月よりユニバーサルスポーツジャパンに参画。翌年5月にFIFA Football Agent licenseを取得し、サッカー選手・監督のエージェント・マネジメント事業に従事。 本業と並行し、スポーツ業界における人材開発・キャリア支援活動に携わっており、一般社団法人Sports X Leaders Program理事を務める。

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