Authense Consulting株式会社(東京都港区)では、2024年12月に全国およそ500社(※有効回答数:488社)にリーガルテックツールの活用状況に関する一斉調査を行った。
どの程度リーガルテックツールは活用されているのか、どのツールが使われているのか、導入後の満足度はどの程度なのかなど、導入後の状況と合わせて、導入していない企業はなぜ導入しないのかまで、数字と合わせてお届けする。
自社の管理フローを契約書管理ツールは更新できるか

前号でお届けした「契約書作成・ レビューツール活用実態調査」では、50.4%が「自社内で活用している」との回答を得た。一方、締結した契約書を自社内で整理・管理する「契約書管理ツール」に関しては、38.6%と4割を下回る活用状況であることが分かった。

なぜ、契約書作成・ レビューツールと比較して導入割合が低いのか。導入していない企業に「なぜ契約書管理ツールの導入を見合わせたのか」について、具体的な理由を訊ねると、「価格」(44.0%)、「機能・サービス」(22.3%)、「他のツールとの連携」(11.4%)、「導入障壁の高さ」(11.4%)といった回答が上位を占める。
契約書管理ツールでは、「価格」がもっとも大きなネックになっている。業業務効率化を進めて実質的なコストダウンを図る契約書作成・レビューツールとは異なり、契約書管理ツールではコストダウンや業務効率化を図るのは難しいという判断がなされている可能性がある。
また、紙の契約書時代からオフィス内で「契約書管理」のノウハウ、下地はできあがっており、DX化によって導入せずとも何らかの形で契約署管理を行っている可能性も考えられそうだ。
「他のツールとの連携」を理由に導入を見送っている企業も10%程度ある。契約書作成・レビューツールや電子契約サービスとの連携、または自社開発した既存の管理ツールとの連携ニーズもあるのかもしれない。
契約書管理ツールの世界は百花繚乱の様相
もっとも使われている契約書管理ツールはどのサービスなのだろうか。LegalForceが55.3%と圧倒的なシェアを見せていた契約書作成・ レビューツールとは異なり、契約書管理ツールの分野では百花繚乱の様相を呈している。

トップは「LegalForceキャビネ」の17.2%。契約書作成・レビューの分野で大きなシェアを占めているLegalForceとの連携性の高さが支持を集めている理由だろう。とはいえ、その割合は17%台まで落ち込んでおり、LegalForceユーザーの多くを他社サービスに奪われている、または契約書管理ツールは契約できていない状況が透けて見える。
2位はHubbleの14.0%。契約書作成・レビューの分野ではHubbleは6.5%のシェアだったが、契約書管理ツールでは大きく割合を伸ばしている。
3位には「自社ツール」が入る。契約書管理ツールがあろうとなかろうと、自社内で契約書はすでに管理ノウハウが蓄積されており、わざわざコストを支払ってでも導入したいという決断を下すのが難しいという背景があるように見える。また、上長に稟議を通す際に「導入によってどれくらいの業務効率が改善され、どれほどのコスト削減を達成できるのか」を説得しづらいという側面もあるのではなかろうか。契約書管理ツールのベンダーは、見込み客の「このあたりの疑問」に応える必要があるのかもしれない。
使いやすく分かりやすい新たな業務フロー構築が必須か

「非常に満足している」「やや満足している」を合わせると65%と、契約書作成・レビューツールの満足度とほぼ同割合となった。一方で、「全く満足していない」「あまり満足していない」との不満を訴える声は12.3%と契約書作成・レビューツール(9.4%)よりも多く、ベンダー側は機能のアップデートまたはニーズの掘り起こしの余地がありそうだ。
導入後の不満として挙げられたのは「導入したのに使われない」「機能の不足」「想定 していた効果が出ない」「コスパが見合わない」など。せっかく高額の費用を支払って導入したにもかかわらず活用されてないのでは業務効率向上もへったくれもなくなってしまう。
別の問で「導入する時、難しかったこと、苦労したこと」について質問している。この問いに対して「導入後の業務フロー構築」「社内利用促進」といった回答が上位を占めており、すでに社内に構築されている契約書管理フローをアップデートし再構築する作業後、その新しいフローに則って社内での利用を促進することが導入前の想定以上に難しいということなのかもしれない。
契約書管理ツールを導入する際には、実際に活用する現場の社員たちが使いやすくわかりやすい新たな業務フローを構築することが効果的な活用につながるのかもしれない。
