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INNOVATORS
公開 2026.02.16

世界最速の 「ガラスの天井」を打ち破れ!若き天才ドライバーが追い求める「夢」と背負う「覚悟」
レーシングドライバー Juju(こと野田樹潤)氏 インタビュー(中編)

Juju 氏

日本人女性初のF1ドライバーという大きな夢を追い、世界の舞台で戦い続けるJuju。
死と隣り合わせの極限状態において、彼女はいかにして鋼のメンタルを維持し、チームとの絆を深めているのか。
失敗を成長の糧へと変える独自の休息法や思考法、そして急造チームと共に挑む覚悟の裏側に迫る。

取材・文/山口和史 Kazushi Yamaguchi 写真/西田周平 Shuhei Nishida

失敗を成長の糧に変える〜Jujuのメンタル管理術

―  Jujuはレースという、勝負の世界を生きている。勝負である以上勝ち負けが存在し、勝つこともあれば負けることもある。

メンタルの不調がドライビングに直接影響を及ぼしてしまうレースの世界において、負けたとき、失敗したときであっても心身ともに健康を保つために、彼女はなにを気をつけているのだろうか。

Juju(こと野田樹潤)氏 (以下 Juju氏):とにかく寝ます(笑)。そういう時って心身ともに疲れていますので、その状態で何かを考えても良い答えは見つからないと思うんです。とにかく寝て、体も心もリフレッシュして、良い状態で物事を考えるようにしています。
そもそも失敗すること自体は悪いことだと思っていません。失敗が自分を成長させてくれると思いますし、失敗したからと諦めてしまったらただの挫折になってしまいますが、諦めずに改善してチャレンジし続ければ、その失敗は自分を成長させるチャンスになります。ですので、失敗から多くを学ぶ、課題を見つけるための行動を取る際に、いかに心身ともに健全な状態で行うのかというのは常に意識しています。

― 失敗を次への改善につなげ、負けをさらなる能力向上のための糧とする。世界各国を転戦し死と隣り合わせの緊張感の中レースを戦ってきた経験は、弱冠19歳の「少女」の精神を、鋼のように鍛え上げている。

Juju氏 :勝ったら嬉しいですよね。勝ったというのはひとつの自信になります。その自信はすごく大切なんです。ただ、勝ち続けるのは不可能ですよね。どんな偉大なドライバーも、勝ったレースより負けたレースの方が多いんです。その「負け」をどう自分の力にしていくかというのはとても大切だと思います。
完璧に走れたレースなんてほとんどありませんから。勝ったレースでさえ、あそこはもっとこうしておけば良かったと、レース後に思い返します。

行動で示すJujuの「感謝」と「覚悟」

Juju 氏

― 2025年、Jujuは、トリプルツリーレーシングに所属しスーパーフォーミュラを戦った。父で監督の野田英樹氏、代表の村司宏樹氏そしてJuju(樹潤)。3つの「樹」を表現した名前が付いたこのチームは、2025年1月に準備期間わずか2ヵ月という、急ごしらえで作られた。前年まで所属していたチームが2025年は別メーカー配下のチームに身売りしたことが原因だった。

Juju氏 :現在、30~40人のメンバーが支えてくれています。彼らと接する際、もちろん言葉によるコミュニケーションも大切なのですが、もっと重要なのは行動だと思うんです。口先ではなんとでも言えますが、行動が伴わないと信頼を得られません。
ただ「勝ちたい」と言うだけではなく、必要があればエンジニアと何時間でも打ち合わせをしたり、勝つために効果的な練習量をこなしたり、日々の行動が大切だなと思っています。
その源泉は父にあるんだと思います。トリプルツリーレーシングを立ち上げたのは、シーズンが始まるわずか2ヵ月前でした。普通、その段階からチームを立ち上げると言われても無理です。でも、今まで父とずっとやってきて、父がやると言ったからにはきっと実現させるだろうと思っていましたし、実際に実現させてくれました。父のこれまでの言動から、不可能だと思っていたことも実現させる人だと信頼していましたので、そういった父の背中を見て「行動は大事だ」と私も思うようになりました。

― 監督である英樹氏の依頼を受けて集まったメンバーに、Jujuは信頼とともに感謝の気持ちを抱き続けている。チームに寄せる信頼と感謝の思いがメンバーに伝わり良いコンディションを生み出す。その循環が結果へと繋がっていくのかもしれない。

Juju氏 :メンバーには本当に感謝しています。チームを作ろうと決めた段階では誰もいませんでした。そこから集まってきてくれたメンバーは、周りからは無謀だと言われるようなチャレンジを、一緒に戦ってくれると宣言してくれた人たちなんです。そういう覚悟を持って来てくれただけでも感謝です。最初は苦戦するだろうって、誰もが想像できますよね。そんな中でも、一緒にチャレンジしようって集まってくれているわけで、感謝しかありません。
レーシングチームで結果を出すのは、ドライバーである私ひとりだけでは無理なんです。モータースポーツは個人競技に見られがちですが、実際にはチームスポーツです。たとえば私に車は作れません。車を作るためにメカニックやエンジニアがいてくれる。ですから、私ひとりで結果を出すぞという気負いはないんです。私はここまで車を作り上げてくれたんだから、かっこ悪い走りはできないなという気持ちで、チーム全員で戦っています。

<後編に続きます>

<前編はこちら>

Profile

Juju 氏

2006年生まれ。3歳でカートを始め、9歳でFIA-F4マシンでの最年少デビューを果たすと、11歳で「U-17大会」に出場するなど早くから経験を積む。2018年にF3マシンへ挑戦、2020年にはデンマークF4でデビューウィンを飾った。2022年には「Wシリーズ」ドライバーオブザイヤーを獲得。2023年はユーロフォーミュラのウィナー、Zinox F2000のチャンピオンといずれも女性初の快挙を成し遂げた。2024年には、日本最高峰のスーパーフォーミュラに史上最年少かつ日本人女性として初デビュー。同年8月にはFORBES JAPAN 30 UNDER 30 2024「世界を変える30歳未満」にも選出された。
「日本人初の女性F1/フォーミュラEのドライバーになって、チャンピオンになること」を目標に掲げ、挑戦を続けている。