公開 2025.05.21Professional Voice

15年の社会人経験を経て法曹界へ
城 哲弁護士が語るAI時代の「人間力」

インタビュー

料理人、設備工事、そして弁護士。

異色のキャリアを歩み、法曹界に飛び込んだ城 哲弁護士。中学卒業後に社会に出てから約15年間、全く異なる業界での経験を重ねた末に、法の世界を志しました。

きっかけは、アートを通じて出会った「美しい島の過去」への関心と、環境問題に挑んだ弁護士の姿。
現在は、「人の気持ちに寄り添うこと」を大切にしながら依頼者と向き合う日々を送っています。

AIの進化が進む時代において、「人間らしさ」で勝負したい。

挑戦を続ける城弁護士の半生と、今後の展望に迫ります。

目次
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1.

15年の社会人経験を経て弁護士へ

城先生は社会人経験を積まれてから弁護士になられたそうですね。どのような経緯だったのでしょうか?

約15年の社会人経験を積んで、もう1度勉強し直したいと考えて大学に通い始めました。そのタイミングで司法制度改革があり、弁護士を目指したきっかけの1つでもあります。

あと、私は芸術が好きで、香川県の豊島で開催された瀬戸内国際芸術祭に参加した事があります。豊島は非常に美しい島ですが、地元の方からかつて産業廃棄物で苦しんでいたという話を聞きました。

興味を持って調べ始めたところ、中坊公平弁護士が環境問題に取り組んで、美しい島を取り戻したという事実を知りました。やりがいのある仕事だと感じ、弁護士を志すきっかけとなりました。

元々はどういうお仕事をされていたのでしょうか?

高校を卒業せずに就職しました。最初は料理店に勤め、特に割烹料理の美しい盛り付けに興味があったのですが、若かったこともあり、あまり長続きはしませんでした。

その後、名古屋から東京に出てきて、設備工事の会社に勤めました。横浜のランドマークタワーなどに冷暖房を設置しましたね。

社会人経験は今のお仕事の中で生きていますか?

社会人経験を積んで法曹に来る方って、いわゆる法律を扱う仕事をしていた方が多い印象を持っています。例えば公共団体、銀行、保険会社といった、法律に接している方です。

私のような経歴の人間がこの業界に来ることは、稀なんですよね。

社会人経験が今の業務に直接活かされてはいませんが、この環境に飛び込んだチャレンジ精神は今の仕事にも生きていると思います。どんな仕事でも、まずはご依頼を受けたらやってみようと考えます。

司法試験に合格されて、Authense法律事務所を働く場所として選んだ理由を教えてください。

最初に所属した事務所では医療過誤を扱っている事務所でした。自分の志向ともずれを感じて新しい環境を探していました。

Authenseは代表の元榮も若いですし、働く環境も割と自由で、色々なことに挑戦させてくれそうな事務所だったので選択しました。

入所されてみて、印象はいかがだったでしょうか?

基本的には事務所から依頼される業務が中心になりますが、比較的自由に業務を担当できる環境です。入所前の印象と違いはありませんでした。

インタビュー_城 哲

2.

クライアントとの対話を通じて引き出す「気持ち」が案件を良い結果に導く

これまで先生が取り組まれてきた案件の中で印象的なものをお聞かせください。

建築関係の訴訟が印象深いです。建築物に過誤があると言われて代金を支払ってもらえなかった、という案件で私は建設会社側の代理人でした。最終的には和解というかたちで終了したのですが、依頼者にも納得できる額で和解できました。

クライアントにも喜んでいただいて、顧問契約にもつながりました。

訴訟において、先生がこだわったポイントがあれば伺えますか?

事実を確認すると、先方が主張している過誤は「機能の不足」ではなく、「発注主が思い描いていたものとのずれ」でした。

現場を見せてもらった時に、「これは過誤ではなく、イメージのギャップ」と受け止めて裁判で負けることはない、と認識していました。

事実をもとにした先生の考えが裁判でも証明されたのですね。本件に限らず、特にクライアントとのコミュニケーションの中で意識されていることがあれば伺えますか?

とにかく話してもらうこと。なるべくリラックスして話してもらうことを心掛けています。

弁護士に会うのが初めての方もいらっしゃるので、あまり緊張されないように平易な言葉で、ざっくばらんに話せるように意識していますね。

クライアントと接する中で、こうしたキャラクターの人だと知ることも大切だと考えています。案件に関係ない事も含めて、クライアントの気持ちもできるだけ聞いてあげたいですね。

ちゃんと気持ちを伝えていけば、相手方もそれに答えて譲歩してくれて、合意しやすい空気になることもあります。

そういった案件の場合は精神的な負担も大きいのではないでしょうか?

負担はあります。感情的なわだかまりをどうやって解いていくのか、というところに気を使います。

少しずつ心がほぐれて前に進めるのであれば、聞いてあげよう、という気持ちです。

調停は長い時間がかかりますので、お話を聞いているうちにある程度、心がほぐれていくんですね。だから話を聞くことがすごくクライアントの助けになる。人間なので、合理性だけでは動けないんです。

AIが問題解決を行える時代なので、そういう形でクライアントの力になれないと、人に頼んでいる意味がないと思うのです。

先生がお仕事の中で1番やりがいを感じるのは、どういう場面ですか?

関与している全員が100%納得できる解決ってなかなかないですが、そういった中でも、なんとか調停で合意にたどり付けて、感謝の気持ちをいただいた時は良かったなと思います。やりがいを感じますね。

インタビュー_城 哲

3.

多様化の時代、AIにはできない「人間らしさ」を発揮したい

今後の展望についてもお聞かせください。

これから日本は少子化が進み、海外の方を受け入れていく方向に舵を切っていくと思います。その結果、多様化が進み、色々な価値観が入ってくることで紛争も増えると推測しています。

海外からきた人たちが差別される可能性もあると思います。そうした問題に関わっていきたいと考えていますね。

また、先ほども申し上げた通り、 いずれは法律相談の対応もAI が担う事になると思います。AI ではできない部分、特に家事事件などで人間らしさを発揮したいですね。

そういったクライアントの方に寄り添いたい、という気持ちは元々お持ちだったものなのか、お仕事で経験を積まれる中で育まれたものでしょうか?

弁護士になる前に経験した仕事で培われた部分が多いかもしれません。中学校を卒業して働き始めた時は、恵まれた環境の人が多いわけではありませんでした。

頑張っても家庭の事情で大学や大学院に行けない方も多くいます。

仕事での経験を通じてそういった人たちの目線に立てるようになった事は1つの財産だと思います。

インタビュー_城 哲

料理人、設備工事、そして弁護士。

異色のキャリアを歩み、法曹界に飛び込んだ城 哲弁護士。中学卒業後に社会に出てから約15年間、全く異なる業界での経験を重ねた末に、法の世界を志しました。

きっかけは、アートを通じて出会った「美しい島の過去」への関心と、環境問題に挑んだ弁護士の姿。
現在は、「人の気持ちに寄り添うこと」を大切にしながら依頼者と向き合う日々を送っています。

AIの進化が進む時代において、「人間らしさ」で勝負したい。

挑戦を続ける城弁護士の半生と、今後の展望に迫ります。

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Authense法律事務所
弁護士

城 哲

(第一東京弁護士会)

第一東京弁護士会所属。神奈川大学法学部法律学科卒業、立教大学大学院法務研究科修了。15年間の社会人経験を経て弁護士を志し、弁護士登録後、都内法律事務所を経て2020年Authense法律事務所入所。建物明渡訴訟を中心とした不動産法務の取扱い実績を豊富に有し、その経験を活かした建築訴訟(施工業者側)や、医療過誤訴訟(病院側)など、損害賠償請求をはじめとする訴訟案件にも注力。その他、フランチャイズビジネスなどの企業活動に関わる法的問題の紛争解決に加え、一般民事や離婚といった案件も取り扱う。

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