留学先で出会った弁護士の一言が、人生の方向を変えた。証券会社での海外案件をはじめ、インハウスロイヤーとしての経験を経て、法律事務所Authense大阪オフィス支店長に就任した川崎 賢介弁護士。依頼者に徹底的に寄り添うスタイルの原点を聞いた。
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1.
留学先での一言が弁護士への道を切り拓いた
弁護士を志したきっかけを教えてください。
大学時代に留学していた際、同じ学校に来ていた海外の弁護士と話す機会がありました。将来について「まだ考えていない」と答えると、「法学部なら弁護士にならないのか」と聞かれたのです。
「なれるならなりたい」と答えると、「弁護士になるのに何年かかる?」と。
「5年くらい」と言うと、「あなたは80年生きるんでしょう。80年のうちの5年でなれるなら、やってみればいい」と言われました。
当たり前のことかもしれません。しかし言われてみると、なるほどと思いました。
長い目で見れば、今やっている努力はそれほど長いものではない。やれるなら今やってみよう、という気持ちになったのです。
その言葉は今も響いているそうですね。
そうですね。今の仕事においても、時間がないとか大変だとかいう言い訳は聞かない、という姿勢につながっています。自分のスキルアップにおいても、あの言葉はずっと生きています。

2.
スリランカでの孤独な3ヶ月 弁護士人生で最もハードな経験
弁護士になられてから、特に印象深い経験を聞かせてください。
証券会社の法務部に在籍していた時のことです。ホテルの買収やIPOに関連した案件で、スリランカに長期滞在することになりました。
現地の弁護士から法的な意見書を取得するというのが主な仕事でしたが、これが想像以上に困難でした。
どのような点が大変でしたか。
英語で案件を説明し、アポイントを取り、1〜2週間待って意見書をもらう。それを5つの事務所で繰り返しました。5件中4件は、こちらの意向に沿わない内容でした。「これでは持ち帰れない」と感じる場面が何度もあったのです。
当時の社内では海外事業が最重要プロジェクトとして位置づけられており、「できません」と言えない状況でもありました。
チームは5人ほどいましたが、現地の弁護士事務所との交渉は実質的に自分一人で担わなければならず、孤独な戦いでした。日本にいるスタッフと電話はできても、現地の大変さがなかなか伝わらないし、なかなかプロジェクトが進まない。それも辛かったですね。
当初は数週間の予定が、3ヶ月に及んだのですね。
はい。食事も毎日カレーで、胃をやられて入院したこともありました。意見書がようやく取れた時は、泣きそうになりましたね。やっと帰れると思って。
弁護士人生の中で最もハードな経験だったとのことですが、その後への影響は。
「なんとかなる」という精神が身についたと思います。今どんなに大変な状況でも、あの頃と比べたら、と思えるのです。
また、辛い中でもチームのメンバーがフレンドリーに接してくれて、一緒に考えてくれた。自分の現状を共有してもらえたことが、大きな支えになりました。

3.
インハウス経験で気づいた、外部弁護士の価値
インハウスでのご経験は今の業務にも活きていますか?
法務部門の立場が事業部に比べて弱くなりがちだということを実感しました。
事業部サイドでは部長クラスがある程度道筋をつけた状態で質問してくるケースが多く、その方法で話が固まってしまうことがある。根本的な解決策が見えないまま投げられてしまうことも多かったのです。
だからこそ、今外部の弁護士として関わる時には、「そもそもこれはやらなくていいのではないか」という視点を持ち込むことが、新しい価値になると感じています。
法律的にNGだとブレーキだけをかけるのではなく、アクセルを踏みながらもこの点に注意してほしいというトーンで伝えることを心がけています。
依頼者がやりたいことを最優先に考えながら、一緒に最善の道を考える。それが大切だと思っています。
法務クラウドでも企業のご支援をされているそうですね。具体的にどのような支援内容ですか。
担当しているクライアントでは、契約書レビューは全体の約2割ほどです。8割は法律相談で、顧客からのクレームやトラブルへの対応方法など、具体的な問題解決の相談が中心になっています。
元々、「簡単な契約レビューは自分たちでやるから、難易度の高い案件をやってほしい」というご依頼だったので、自然とそういった内容が多くなっています。
企業のご支援をされる際、特に意識していることはありますか。
スピードと正確性、そして条文や判例に基づいた意見を示すことです。社内の法務部門だと、どうしても感覚ベースで議論が進んでしまうことがあります。
なんとなくの状態では、突っ込まれた時に根拠をすぐ示せません。外部の弁護士が入ることで、根拠の明確な意見が示せるのです。
4.
ネット誹謗中傷問題への思い 「事例を積み重ね、やり続けるしかない」
インターネット上の誹謗中傷案件にも注力されていると伺いました。
この分野の難しさは、損害賠償額の水準がまだ低いことです。
弁護士費用をかけて開示請求や損害賠償請求をしても、依頼者にとって経済的なプラスがなかなか出ません。大阪オフィスでは月20件ほどの問い合わせがあり、弁護士への相談まで進むのが10〜12件、実際の依頼に至るのは1〜2件というのが実情です。
XやInstagramなどの主要プラットフォームは削除及び開示対応が難しく、裁判手続きが必要になるケースがほとんど。削除だけでも数十万円の費用がかかってしまいますし、開示も同程度の費用がかかります。
それでも関わり続けるモチベーションはどこにありますか。
金銭的な回収が難しくても、開示請求の結果が出た時に「やはり違法だったんだ」と感じて救われる方がいます。
「私は悪くなかった、被害者だったんだ」と国に認めてもらえることの意味は、とても大きい。弁護士として「辛かったですね」と言葉をかけるだけでも救われる方もいるのです。
状況を変えるためには何が必要だと考えていますか。
裁判所が慰謝料の水準を引き上げていくしかないと思っています。
明確な誹謗中傷には当たらない一見グレーな言葉が、実は言われた側の心を傷つけます。
そうした行為が違法であり、責任を問われるという認識が社会に広がることが大切です。開示請求して損害賠償請求し続ける。事例を積み重ね、やり続けるしかないのです。

5.
登山で得る「無心」の時間と、ひらめきの瞬間
プライベートでは登山を楽しまれているそうですね。
そうですね。毎年、白山に登っています。実家から登山口まで2時間ほどで行けるので、ちょうどいいですね。
仕事へのリフレッシュ効果はありますか。
無心になれるんですよね。ひたすら登ることしか考えない。仕事中はどうしても常に何かを考えてしまいますが、登山中はそれがなくなる。森林限界を超えてパッと視界が開ける瞬間が特に好きです。別世界に来たような感覚で、気持ちよく頭が切り替わります。
肉体的に追い込まないと精神的にリフレッシュできないな、とも感じています。そして、リフレッシュしている時にふとアイデアが浮かぶことがある。下山中に案件の突破口を思いつくことも、実はよくあるのです。
6.
支店長として目指す姿 関西で「この先生に頼みたい」と思われる存在へ
今年1月に大阪オフィス支店長に就任されました。展望について教えてください。
関西エリアで「Authenseの川崎先生に頼みたい」と思ってもらえる弁護士になりたいですね。無料法律相談から依頼につながるというより、信頼関係の中で選んでもらえることが理想です。相続や誹謗中傷など、注力分野を着実に広げていきたいと思っています。
メンバーの育成についてはいかがですか。
育成という意識はあまりないかもしれません。後輩の弁護士とは、一緒に仕事をする仲間として接しています。案件について議論したり、文章を確認したり、電話対応についてついつい口を出したりすることもありますが、それは育成のためというよりも、一緒によいサービスをつくっていきたいからです。
私のやり方が必ずしも正しいわけではないので、議論を大切にしています。
大阪オフィスの雰囲気はいかがですか。
活発ですね。他のオフィスと比べても、メンバー間のやり取りは多い方だと思います。新しい分野への挑戦の声も、私から発信するよりメンバーから上がってくることが多い。そのエネルギーを大切にしながら、若いチームの機動力を生かして、色々なことにチャレンジしていきたいと思っています。

Professional Voice
川崎 賢介
(大阪弁護士会)大阪弁護士会所属。関西大学法学部法律学科卒業、東海大学法科大学院修了。司法試験合格後、企業内弁護士として証券会社に勤務、その後大阪市内の法律事務所を経てAuthense法律事務所入所。金融分野への深い造詣に加え、幅広い業種での企業法務経験を有し、依頼者の期待を超える「プラスアルファの選択肢」を提示する提案力が強み。
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