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INNOVATORS
公開 2026.08.24

建築家から「ちょい悪オヤジ」、そして米づくりへ
姿を変えても揺るがない
唯一無二の「ジローラモ」という生き方
タレント・実業家 パンツェッタ・ジローラモ氏 インタビュー(中編)

パンツェッタ・ジローラモ氏

マナーと品格を武器に、日本社会で40年近くにわたり信頼を築いてきたジローラモ氏。誰と組み、誰と距離を置くべきか、その見極めの基準とは。組織を率いる者に必要な「二つの顔」や人を惹きつける流儀について話を聞いた。

取材・文/山口和史 Kazushi Yamaguchi 写真/西田周平 Shuhei Nishida

装いと品格は
信頼を勝ち取る最強の武器

企業を率いる経営者たちが、常に頭を悩ませるのが、信頼を勝ち取るための自己演出だ。装いや所作、品格は、ビジネスの場で本当に武器になるのか。この日、取材のあとに大使館での公務を控え、隙なくスーツを着こなしていたジローラモ氏は、「マナー」という言葉から語り始めた。

「仕事に対しては、やっぱりマナーが必要です。今日スーツを着ているのは、このあと大使館に行くから。イタリアの記念の日だから、ネクタイを締める。それがマナーです。清潔感のある格好をしていれば、この人とまた会いたい、一緒に仕事をしたいと思ってもらえますよね。逆に、二度と会いたくないと思われることもある。自分の顔が、そのまま看板になるんです。」

仕事の性質に応じて、ふさわしい装いがある。TPOを外さないことは、それだけで信用の担保になる。だが、生真面目一辺倒でもいけない、とジローラモ氏は続ける。鍵を握るのは「心のなかの子ども」だ。

「人は誰でも、心のなかに子どもの気持ちを持っている。死ぬまでいるんですよ。その子どもを、ときどき遊ばせてあげないといけない。それが『ちょい悪』の真の意味です。ずっと真面目な顔ばかりでは、息が詰まってしまいます。人間は100%パーフェクトじゃない。隙があっていいんです。」

真面目さと遊び心。相反するふたつを同居させる感覚は、組織を率いる者の身の処し方にも通じる。実際、会社の代表には「二つの顔」が求められる、とジローラモ氏は説く。

「会社の代表は、お父さんみたいな立場でしょう。厳しいことを言わないと、守れないことだってある。ある小さな国を立て直した指導者は、当時はずいぶん嫌われました。でも、厳しいルールを徹底して国を創り上げたからこそ、いまや世界でも有数の豊かな国になりました。企業も同じです。事業が大きくなればなるほど、詐欺師のような人物も寄ってきます。サメの世界と同じで、優しい気持ちだけでいると食べられてしまいます。少しはずる賢くもならないといけない。けれど、嘘だけで固めるのは良くない。ずる賢さと、きれいな心。その両方が必要なんです。」

人を率いる立場には、冷徹な判断もついて回る。一方で、誰と組むかの見極めも、事業の成否を分ける。ジローラモ氏が距離を置くのは、周囲の力を吸い取っていくタイプの人間だ。

「ポジティブなエネルギーを持っていると、どうしてもマイナスの考え方を持った人も寄ってきてしまいます。そういう人は、文句ばかりでこちらのエネルギーを吸い取っていくんです。そういう人とは、できるだけ距離を置いたほうがいいですよね。本当に信頼して相談できる友だちなんて、一人か二人。山ほどはいらないんです。」

見極めの拠りどころは、最後は直感だという。一度きりの印象を、人はつい上書きしてしまう。

パンツェッタ・ジローラモ 氏

「ファーストインプレッションで感じるんです。ただ、二度三度と会ううちに、その第一印象を忘れてしまう。あとで何かあって、『ああ、最初の印象は間違っていなかったんだ』と思う。だから、最初の感覚は大事にしたほうがいいんです。」

その直感は、仕事の選び方にも及ぶ。全員が賛成する案件を、ジローラモ氏はむしろ警戒する。

「みんながOKな仕事はつまらないことが多い。誰かが『それは大変ですよ』と言うくらいのほうが価値が高い仕事になる。やきもちで『やめたほうがいい』と言ってくる人もいるけれど、そんな話は聞かないほうがいいんです。」

もっとも、事業に重圧はつきものだ。とりわけ、人を抱える責任は重い。さまざまなビジネスを手掛けてきたからこそ、その実感は深い。

「社員がいれば、その家族の生活もかかっている。会社が苦しくなったとき、守るのか、守らないのか。昔の日本の会社は、社長がお父さんのような存在で、みんなを守っていた。いまは、ずいぶん変わりましたね。」

長く日本社会を見つめてきた目には、この国独特の「義理」の文化も、捨てがたい美点と映る。

「お世話になった人が新しい会社に移って声をかけてきたら、やっぱり行かなくちゃ、と思ってしまいますよね。これはイタリアにはない感覚です。でも、その義理を大事にすると、関係は長く続くんですよ。」

前を向いて楽しんでいれば、人は自然と集まってくる。それでも、惹きつけるコツを尋ねると、答えは拍子抜けするほど淡白だった。

「コツなんて、分かりません。自然、自然ですよ。あんまり考えていない。何かをやれば、人が来てくれる。ありがたいことです。」

意図して作られたものではない。長い時間をかけて内面からにじみ出た佇まいこそが、ジローラモ氏のカリスマの源なのだろう。

<後編に続きます>

<前編はこちら>

Profile

パンツェッタ・ジローラモ 氏

1962年9月6日、イタリア・ナポリ生まれ。建築一家に育ち、ナポリで建築を学んだのち、政府の依頼で歴史的建造物の修復に携わる。1988年に来日し、NHKイタリア語会話の講師としてデビュー。多数のテレビ番組で人気を集め、雑誌『LEON』の表紙モデルとして「ちょい悪オヤジ」ブームの象徴となった。2014年、「連続して最も多くファッション誌の表紙を飾った男性モデル」としてギネス世界記録に認定。(現在継続中)近年は有機米づくり「GIRO米プロジェクト」を通じて、地方創生にも取り組んでいる。曲、イベント企画、プロデュースなど多方面にわたって活動を続けている。