Authense社会労務士法人のこれまでとこれから
代表 桐生由紀インタビュー

家事、育児、業務を抱えながらの社労士資格挑戦

― そもそも、社労士の資格を取ろうと思ったきっかけはなんだったのですか?

Authense法律事務所には、いまから14年前に入所しました。当時のAuthense法律事務所に管理部門はなく、管理部門最初の社員として採用されました。当時、事務所は急成長を迎えており、管理部門の構築が急務でした。専門だった人事経理業務だけでなく、引っ越しの手配から増床・名刺のデザイン作成までありとあらゆることを、右も左も分からない状態でやっていたんです。
組織の成長と共に人員が増え、部下が増える中で、自分の仕事もゼネラリストからスペシャリストへ特化していく時期がやってきたと感じました。
組織において、人は財産だと思っていて、その財産に関わる仕事が自分には向いているかもしれないと思いました。以後、人事にある程度特化して仕事をしていくことになりました。

― 当時は社労士資格はお持ちではありませんでしたね?

はい。役割としては人事に専門化していたのですが、資格を取るとなると話は別。とはいえ、Authense法律事務所に貢献したいという思いも強かったので、チャレンジしてみようと思いました。
法律事務所としては国内でもトップクラスの能力を持った弁護士が揃っています。そこに、私が社労士資格を取れば、お客さまにもワンストップでサービスを提供できる。Authenseブランドに社労士を加える事が出来る。これはチャンスかも知れないと思って勉強を始めました。

― Authense法律事務所での業務を続けながら並行して勉強していたんですね。

勉強のために仕事量の調整をして、やりたい仕事を諦めたくなかったので、誰にも言わずに勉強を始めました。インターネットで「合格までの所要勉強時間」を検索すると、800〜1000時間必要だと言うんですね。思い立ってから試験まで8ヵ月しかありませんでしたから、1日最低3時間の勉強が必要だと分かりました。
とはいえ、考え始めたら「やらない理由」なんていくらでも浮かぶ、というか家事、育児も含めると「できない理由」しかありませんでしたから(笑)、「やる」と決めてからはやり切る事だけに集中して勉強しました。

― 勉強を始めた当時の典型的な1日のスケジュールを教えてください。

夕方までオフィスで仕事をして、帰って家事と育児。でも仕事が残っているので20時からまた仕事を始めて2時間ほど仕事をし、22時から寝るまで勉強していました。
また、通勤の電車や休日の買い物の待ち時間など、ありとあらゆるスキマ時間を勉強に充てました。
当時、一番下の子どもがまだ3〜4歳で手がかかる時期でした。でも土日も勉強しないと間に合わないことは分かっていたので、土日は夫と一緒に子どもを連れて遊びに出かけ、子どもを夫に預けて公園のベンチで勉強する、そんな毎日でした。

― 1回目の試験は残念ながら不合格でした。

1点足りなかったんです。全体の点数は超えていたのですが科目で足切りされてしまいました。大幅に足りていなければ無理だと諦めていたかもしれませんが、1点だったので諦めきれなくて。試験が終わった翌日から勉強を再開し、翌年合格できました。

― 社労士登録後、現在では多くの顧問先を抱えていますが、どのようにクライアントを増やしていったのですか?

同じ士業としてAuthense法律事務所に属しているメリットがありました。基本的に最初は紹介経由です。Authense社労士事務所を設立してから早い段階からお話をいただきそこから顧問契約という流れです。他にも知り合いの税理士の方からのご紹介も多くいただきました。
最近では紹介以外の新規のお問い合わせも多くいただくようになっています。

― 現在、社労士として活動しながら、同時にAuthense法律事務所のディレクターや代表室の室長、グループ会社の取締役も兼務していますね。

業務のバランスは難しいですよね。ただ、社内の人事業務を実際の実務として対応していることで、社労士としてクライアントに提供するサービスに付加価値が加わると思っています。またグループ会社の取締役についても、1から管理部門を作るという0→1業務は非常に遣り甲斐がありますし、創業間もないクライアントへのアドバイスにも生きています。そういった相乗効果がすごいので、マルチな兼務はメリットがあると感じています。また、人事に関してはシステム導入もサポートしているのですが、自社内で実際利用することで、実務に即したアドバイスやフォローが可能になっています。

代表 社会保険労務士 桐生由紀インタビュー風景1

現場を知り尽くしているからこそできるアドバイス

ー 社労士の業務は多岐にわたります。桐生さんが専門にしている分野はなんですか?

社労士の業務には、①コンサルティング、②手続代行(労働保険、社会保険)③給与計算と、大きく分けて3つあります。
私はコンサルティング単独なら受けていますが、手続きだけや給与計算だけの業務は受けないようにしています。受ける際には、必ずコンサルティングをセットにしてもらっています。
私の長所を活かすにはコンサルティングだと思っているんです。
企業で発生する人事課題や制度構築は、法律で決まられていない答えのないことが大半なんです。そういったことに対して、長年の実務経験と社労士という法的な知識を合わせて、その組織にとって最適の提案をし、その実行をサポートする。それが、私が社労士としてこれまでにやってきた仕事です。これは資格だけを取った社労士には難しい領域なんですね。
たとえば、人事として自分で採用活動をしたことがある社労士からアドバイスを受けるのと、採用活動をやったことがない社労士から話を聞くのとでは、話す内容も説得力も異なります。また、人事だけでなく、管理部門全般の経験がある事による全体を見据えたアドバイスも可能です。私自身のキャリアを活かせるのが、そういった業務だと思っています。

ー 女性に関わる課題解決も桐生さんの得意分野のひとつですね。

女性活躍支援や男女共同参画のための制度構築といった点のコンサルティングでもお喜びいただいています。私自身が3人の子供を育てるひとりのワーキングマザーとして、働く女性の気持ちや直面する課題などをすぐに理解できるのも強みだと思います。
また、これからは女性だけが家事や子育てをしながら仕事をするのではなく、男女ともに仕事をしながら家事や子育てと共存しキャリアも築いていく、そんな社会になっていくと思っています。そのためのお手伝いができればと思っています。
相談してくれる方々も、私自身が3人の子供を育てながらキャリアを築いてきた経験があることもあってスムーズに心を開いてくれますし、社労士の資格を活かした制度作りやコンサルティングが出来るので、社労士の資格を取って良かったと改めてうれしく思います。

ー 女性に関するテーマで、どのような問い合わせが増えているのですか?

最近は、女性社員のための制度づくりはどうすればいい? といったお問い合わせです。入社当時は独身だったけれども結婚した。妊娠をして出産を控えているんだけど、当社では始めての育休になる、育休から復職した後の働き方はどう支援したらいい? といったケースですね。
継続して働く女性が増え、結婚、妊娠で辞める人も減りました。そういった風潮に合わせて、課題もまたたくさん出てきています。上場を目指す企業だと役員の女性比率にも厳しい目が向けられます。
最近では、社外役員のお話も多くいただくようになりました。男女ともに仕事をしながら子育てをし、継続して勤務していける体制の構築などを取締役として参加させていただく事で、より経営に近い立場でサポートさせていただいています。

ー 人事労務制度のコンサルティングも多く手掛けていらっしゃいますが、具体的にどのようなサービスを提供しているのでしょうか?

たとえば、社員30人の会社で人事組織がない企業で管理部門のスタッフが1人。その企業にコンサルティングに入って、組織図を作ったり人事制度を整えたりしています。人事制度を多大な費用をかけて構築しても、実際、その後の運用や改定が出来ない企業も多いのが現実です。人事制度は実際作るより、その後の運用や改定の方が難しいんです。
こういった人事制度も顧問という形で私が入って、一緒に進めていく中で話を伺いながら作っていって、最初はシンプルに、だんだん軌道に乗ってきたら適切な形で細分化していくことが大事だと思っています。もちろん、運用についても人事考課や面談といった具体的な運用も私が一緒に進めていきます。優秀な人事部長を顧問という形でパートタイムに利用していただく、そんなイメージです。
大企業になって人材も豊富に揃っていて、優秀な人事担当がいればそれも不可能ではありませんが、多くの企業では、そこまで持っていくことのほうが大変なんです。

ー 長年、実務の現場で働いていた経験がまさに活きる瞬間ですね。

また、IPOに関する労務DDもコンサルティングとしてお受けしています。
IPOを目指されている企業なら必ず通らなければならない労務DDです。昨今基準も厳しくなり、早めに計画を立ててDDを実施し、改善していく必要があります。
スタートアップ・ベンチャー企業は、攻めは強いけれど、守りが弱い傾向にあります。バックオフィスの構築が追い付かず、後になって慌てるという事も少なくありません。
普段から顧問として体制構築の支援をさせていただきながら、労務DDが必要なタイミングが来たら、DDも実施し基準に基づいた改善も支援する。こんな形です。
スタートアップ・ベンチャー企業は、管理部門や人事の方が1人担当の場合も多いです。
普段の制度構築や労務DDなど1人で様々な事を考え判断するのはとても大変ですので、気軽に相談できる人事部長が顧問としていると思ってくださいとお伝えしています。

代表 社会保険労務士 桐生由紀インタビュー風景2

海千山千の経営者から信頼を集める「コツ」

ー 人にまつわる分野だからこそ、人に合わせた運用が求められますね。

働いている社員の温度感や肌感を知っている点が、コンサルティングに生きています。実際、そういう疑問に関するお問い合わせも多いんです。
採用した社員に遅刻が多いのですが、どう対応したらいいのでしょうか? とか夏休みはどうやって運用すればいいのでしょうか?長期の体調不良の社員の対応をどうしたらいいのでしょうか?など、インターネットで検索しても明確な回答はないんですよね。法律で絶対にやってはダメという事柄はたくさんありますが、そうではない、臨機応変に対応するべき事柄もまた幅広くあるんです。
就業規則においても絶対に書かなければならない事項はありますが、それ以外は法律で決まっているわけではありません。なにを入れたらいいのか、正解がないんです。
また、経営者の方と信頼関係を築いて行くために、相手が何を大事にしていて、何を求めているのかを早い段階でキャッチアップするようにしています。
そして、レスポンスは早く、部分最適ではなく全体最適を考えて提案する、先読みで行動する、相手の立場に立ったコミュニケーション、この4つは常に心がけています。

ー 弁護士、起業家、国会議員と三足のわらじを履き、多忙を極めるAuthense法律事務所の代表、元榮太一郎の隣でずっと仕事をしてきた影響もあるのかもしれませんね。

入所したときから元榮さんの近くにいますから、考え方ややり取りも含めてなんとなく習得しているのかもしれません(笑)。高い理想と未来志向は確実に影響を受けています。

ー Authense法律事務所の現場で培った数々の事例と、社労士として顧問先から得た事例、双方が相まってさらに引き出しが増えているのではないですか?

法律で決まっている部分以外の、正解がない事例が頭の中に溜まっています。ですので、問題を目の前にしてご提案がしやすくなりました。
たとえば、この企業ではこれが正解だったから、この企業でも正解とは限らないんです。こういう状況ならこれはやらないほうがいいといったこともありますし、そのパターンの引き出しが増えました。
また、私は管理部門や人事以外の仕事もやってきましたので、その経験も幅広く紐付けて話ができるのも強みです。
人事にまつわる話をするにしても、税務や経理知識も頭に入っていると、アドバイスできる事や提案内容の幅が広がる事は確かです。

ー ご自身を客観的に見た際の「強み」について教えてください。

少し精神論っぽく聞こえるかもしれませんが、諦めない、ポジティブでいる、上手くいく方法を考える、この3つは得意です。
また、お問い合わせに対するレスポンスを単純に早くするといった基本的な部分も重視しています。
お客さまは、たとえ80%の回答でもいいから取り急ぎすぐに聞きたいという思いをお持ちです。5日後に完璧な回答をするのではなく、翌日、なんとなくこんな感じというのでもまずはレスを返す、そういったことも心がけています。
というのも、ベンチャーに限らず企業は事前準備を完璧にしてから、というのでは立ち遅れてしまうんです。
すべてが整ってからしずしずと出すのではなく、経営者や担当者の皆さんと一緒に、考えながら走るのが私のポリシーです。
とりあえずやる、この精神は元榮太一郎に叩き込まれました。
私の顧問先の皆さんに、この姿勢は大変喜んでいただいています。

― 最後に、今後広げていきたい領域についてお聞かせください。

今後、大きく分けて3つの領域を広げていきたいと思っています。ひとつはスタートアップ・ベンチャー企業の経営者の力になっていくという領域です。人事として社労士として、その他さまざま人生経験で得られたものを役に立たせることができると感じています。
組織作り、制度作り、IPO準備など、企業として元気になっていくお手伝いをしたいんです。彼らはお金も人手も不足しています。人事がほしいと言っても優秀な人事部長を採用できません。そんなとき、存分にご活用いただきたいと思っています。
2つ目は、社外役員です。企業の経営の部分に入らせていただき、社外から今までの経験や知見を活かしたアドバイスが出ればと思っています。
これまでの企業での管理部門の実務経験や役員経験を他社でも活かすことでより多くの企業の成長のサポートができると考えています。
最後に女性活躍支援です。
女性が働き続けることができる仕組みは、社会の変化と共に作りやすくなり、定着できるようになってきました。Authense法律事務所もその領域には達していると思います。ただ、子供を育てながらやりたい仕事を諦めずキャリアを築いていく事は大変な道のりです。「意思決定層のジェンダーギャップ」もまだまだ課題が沢山あります。男女共に、子育てが、キャリアブレイクにならない仕組みを作って行く必要があると思うのです。
男性の育児休業取得など社会も変わろうとしています。
社会全体を見ても、ここから先がかなり重要なフェーズではないかと感じています。男女共に活躍できる組織作りを支援していきたいと思っています。

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