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INNOVATORS
公開 2026.05.25

なぜモーニング娘。は30年も人気を維持できたのか?稀代の名プロデューサーが語る「原石」を「宝石」へと生まれ変わらせる方法論
ミュージシャン/音楽プロデューサー つんく♂氏 インタビュー(前編)

つんく♂ 氏

1997年の結成から30年弱。日本が「失われた30年」の悪夢の中をさまよい続けているなかで、モーニング娘。はなぜ今もなお唯一無二の輝きを放ち続けているのか。稀代のヒットメーカーであり、ハロー!プロジェクト生みの親であるつんく♂氏に、その秘密とグループ維持の秘訣について話を聞いた。

取材・文/山口和史 Kazushi Yamaguchi 写真/西田周平 Shuhei Nishida

時代が変わらなかったから続けていくことができた

― モーニング娘。の正式な「誕生日」を何月何日にするのかについては諸説あるが、1997年9月にテレビ東京のバラエティ番組『ASAYAN』内で始まったオーディション企画からデビューに至ったという点についてはコアなファンも異論がないだろう。来年2027年で30年という長い時間が流れたが、モーニング娘。は今もなお、メンバーを変えてファンを魅了し続けている。この長期にわたる人気を維持した秘訣について、プロデューサーのつんく♂氏は自身をこう分析している。

つんく♂氏:僕たちがシャ乱Qでデビューした1992年よりも前の世代のミュージシャンたち、たとえばCHAGE and ASKAさんや小室哲哉さんたちが200万枚や300万枚といった大ヒット曲を次々と作っていました。でも、96年あたりから市場の流れが鈍化しCDが売れなくなる。それでもまだテレビというメディアには影響力があったように思う、そんな時代でした。モーニング娘。はその頃にテレビの企画から生まれたんです。

それまではエンタテインメント・コンテンツの消費サイクルが早かったですね。今年のヒットは来年には時代遅れ。なのでモーニング娘。も2年くらいは頑張れても3年は難しいだろうと思っていました。ただ、幸か不幸かテレビや雑誌などの今で言うオールドメディアが、徐々にSNS含む他のメディアに場所を取られて分散化しましたよね。なので逆にアーティストやアイドルの影響力も薄まって、その分、寿命が伸びたように思うんです。

つんく♂ 氏

― インターネットの発達やコンプライアンス意識の高まりなど理由はさまざまだろう。たしかに現在、マスメディアが持つ社会への影響力は80年代から90年代中盤の全盛期と比べたら格段に縮小している。そのことが、モーニング娘。が今日まで活躍できていることにどう繋がっていくのか。

つんく♂氏:最近、「失われた30年」といった表現を聞きませんか?モーニング娘。が生まれてからの期間と重なりますよね。この期間って、まさに失われた30年。時代が止まっているような錯覚を起こしますよね。

80年代前半に田原俊彦さんや松田聖子さんの時代があって、80年代後半からはバンドブームがありました。90年代以降は小室さんの時代を経てSPEEDやMAXなどの女性アーティストが人気を集め、その後にモーニング娘。が出てきます。ここまでは時代に合わせてファッションも音楽界もどんどん変革しました。ついていきたいけど、振り落とされるようなそんなスピード感でした。でも、この30年を振り返ってどうでしょうか。秋元康さんが手掛けたAKB48やももいろクローバーZといった新たなアイドルがたくさん世に生まれました。大改革というよりは緩やかなカーブでの時代の変化です。バンドの方も、Mrs.GREEN APPLEやLittle Glee Monsterなど新しいスタイルのスターも出てきました。Mr.Childrenやスピッツもまだまだ現役であることも確か。何が言いたいかというと時代の流れのカーブが穏やかになったからこそ、ビジネスが安定し、モーニング娘。も30年近く続けることが出来たんだと思います。

― インパクトのある楽曲、華のあるキャラクター、ファンが飽きる前に展開を仕掛けるユニット戦略など、人気を維持してきた背景にはさまざまな理由がある。つんく♂氏の言葉には多分に謙遜が含まれているが、「時代が変わらなかったから」という指摘は鋭い。

つんく♂氏 :だからモーニング娘。も「LOVEマシーン」(1999年)が大ヒットして、本来ならそこから落ちていくのが従来のサイクルだったのに、僕らはプッチモニ、ミニモニ。、松浦亜弥、藤本美貴と繋げていけたんですよね。あの時期に、5年を超えて10年くらいまではいけるのではと思うようになり、同時に継続していくためのスキームもできていきました。正直、30年もやるとは思っていませんでしたけど(笑)。

― 97年のモーニング娘。結成当時、芸能界では「アイドル冬の時代」と言われていた。しかし、モーニング娘。は国民的な人気を博し、子どもから大人まで、誰もがそのヒット曲を口ずさめる最後のアイドルとして君臨、冬の時代に終止符を打った。

現在、活動しているメンバーは8名。全員、初代モーニング娘。デビュー後に生まれた面々となっている。

<中編に続きます>

Profile

つんく♂ 氏

1968年10月29日生まれ、大阪府出身。ロックバンドシャ乱Qのボーカルとして1992年にメジャーデビュー。その後、モーニング娘。やハロー!プロジェクトのプロデューサーとして「LOVEマシーン」などのヒット曲を量産。数々のアーティストへ楽曲提供も行う。2015年に喉頭がんで喉頭全摘手術を受けたことを公表したが、現在でもTNX株式会社代表取締役として作詞・作曲、イベント企画、プロデュースなど多方面にわたって活動を続けている。