今回は、商標・特許・意匠の国内外対応に加え、知財経営やスタートアップ支援にも精通した弁理士・五味和泰氏が、改正法のポイント、注目判例、行政の動きを踏まえ、企業実務に直結する“今押さえるべき視点”をコンパクトにお届けします。
目次隠す表示する
登壇者紹介
弁理士 五味 和泰(日本弁理士会)
Authense弁理士法人代表弁理士。早稲田大学理工学部卒、米国南カリフォルニア大学法学修士。
大手建設会社エンジニアを経て、大手特許事務所に入所し弁理士資格取得。10年間、特許の権利化業務に従事した後、2015年にはつな知財事務所を設立、2016年にcotobox株式会社を設立。オンライン商標プラットフォーム「Cotobox」は、2018年経済産業省のグレーゾーン解消制度を利用し、知財DXビジネスモデルの先駆けとなった。
商標、特許、意匠の国内外の権利化及び知財経営の指導を手がけており、自らのスタートアップの創業者としての経験を活かして、知財経営、マーケット、事業リスク、プロダクト開発及び企業価値といった領域における知財視点でのアドバイスを得意とする。
セミナー概要
- 2024年~2025年 法改正のポイントと実務対応
- 注目判例と企業への示唆
- 行政動向・実務トレンドの最新情報
- これからの知財トレンド予測と備え方
資料の中身を一部公開
【知財の歩き方 Vol.2】速報!知財最新トレンド~今知りたい注目トピック~

近年、知財戦略がビジネス全体の成否を大きく左右するケースが増えているように感じています。
特許、意匠、商標の権利取得や保護に加えて、不正競争防止法や著作権が、単なる法務的な課題にとどまらず、企業価値や競争力そのものに直結していることを、多くの皆様が実感されているのではないでしょうか。たとえば、企業の強みである技術を十分に保護できなかったために、競合企業に市場を奪われてしまうケースや、海外進出時に商標登録が遅れたことで、先に現地企業に商標権を奪われてしまうといった話を、耳にしたり、実際に経験された方もいらっしゃるかと思います。
一方で、早い段階から知財を経営戦略の中核に据えることで、マーケットで圧倒的なポジションを築いた事例もあります。たとえば、ソフトバンクの例が挙げられます。2025年 4月2日と3日の2日間で、合計約3500件の特許出願が公開されました。いずれもAI関連の特許出願で、2023年秋頃にソフトバンク代表の孫さんが、AI関連の出願を加速させると発表していたことが思い出されます。
その時点で、市場への参入障壁を高く築き、競合他社の参入を大きく制限することに成功している可能性があります。これは、知財戦略が競争環境そのものを変えてしまう典型的なケースであると考えています。 また最近では、メタバースやデジタルコンテンツといった分野でも、新たなリスクが顕在化しています。ハイブランドのエルメスに関して、NFTというデジタルアートの領域において、バーキンバッグをモチーフとした「メタバーキン」というNFTアートとの間で商標権侵害の訴訟が起こされた例もあります。
デジタル空間でのブランドの模倣や知財侵害をどのように防ぐか、またデジタル知財をどのように積極的にビジネスチャンスとして活用するかが、今後の企業競争力を左右する要素になりつつあると考えています。
知財戦略は、単に権利取得や侵害対応にとどまらず、ビジネスそのものの成長戦略の一環として捉える時代になってきています。本日は、そのような視点も踏まえ、皆様が今押さえておくべき最新の知財トレンドについて、具体的かつ実践的な情報をお届けします。
ただし、本日はトピック数が非常に多く、本来であれば一つのトピックについて30分から1時間かけてお話しする内容も含まれています。
本セミナーのゴールとしては、皆様が知財トレンドの中から自社で気を付けるべきテーマに気づいていただくこと、そのきっかけにしていただければと思っています。ぜひ、このセミナーの後に各社・各部門、または部門間でトピックを深掘りしていただければ幸いです。 それでは、まず近年の注目の法改正と実務への影響についてご説明いたします。

まず、2024年に施行された特許法改正の中でも特に重要な「特許出願非公開制度」の導入についてご説明いたします。この制度は、経済安全保障の観点から、国家安全保障上重要とされる技術を保護することを目的としています。 具体的には、国家安全保障上の機微技術を含む発明に対して保全指定がかかると、通常は出願から18ヶ月後に公開される特許情報の公開が停止されます。実際には、特許出願時に特定の技術領域に該当する旨を願書に記載し、出願後3ヶ月以内に特許庁が審査を行うことで、保全指定の有無が判断されます。 保全指定を受けた場合、出願人自身による技術情報の開示は厳しく制限され、さらに外国への出願も禁止されます。違反した場合には、2 年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。また、この制度の対象となった技術については、日本国内で最初に出願する義務、いわゆる「第一国出願義務」も発生します。

この制度の導入により、実務上特に注目すべきポイントは三点あります。 第一に、自社技術が非公開対象となる可能性を事前に認識しておくことです。 特に、防衛関連や半導体などの先端技術に取り組んでいる企業においては、制度の対象となり得る技術領域をあらかじめ特定し、社内の情報管理体制を強化することが求められます。
第二に、この制度に該当した場合には、外部への情報発信はもちろんのこと、海外の研究機関や子会社との情報共有にも制約が生じます。そのため、グローバルに事業を展開している企業では、技術管理と事業運営のバランスを取るための体制整備や、社内外におけるコミュニケーション戦略の見直しが必要になります。 第三に、この制度に該当する場合には、特許出願に関わる審査や手続きも通常とは異なります。 特許庁の運用方法について、今回は詳しくはご説明しませんが、社内で正しく理解を深めること、また必要に応じて外部の特許事務所などに確認を行い、手続き上の漏れやミスが発生しないよう、社内ルールを整備する必要があります。この特許出願非公開制度は、単に出願情報の公開が停止されるだけでなく、事業の国際展開や知財の管理体制そのものに大きな影響を及ぼします。そのため、早急に対策を検討し、制度に適合した業務プロセスを再設計・見直しすることが重要です。

次に、2024年4月に施行された商標法改正の目玉である「コンセント制度」についてご紹介します。この制度は、すでに登録されている先行商標と類似する商標であっても、先行商標権者の承諾(コンセント)があれば、新たに商標登録を認めるという仕組みです。 これまでの商標実務では、類似する商標の併存登録は非常に難しく、実務上は「アサインバック」と呼ばれる手法が取られていました。これは、出願人が一度先行商標権者に商標権を譲渡し、登録後に再び戻すという煩雑な手続きで、企業間においても相応の負担がありました。 しかし、今回のコンセント制度の導入により、企業はより柔軟なブランド戦略を取ることが可能になります。
続きは会員の方限定となります。
無料会員登録いただくと続きをお読みいただけます。
記事監修者
五味 和泰
Authense弁理士法人代表弁理士。早稲田大学理工学部卒、米国南カリフォルニア大学法学修士。 大手建設会社エンジニアを経て、大手特許事務所に入所し弁理士資格取得。10年間、特許の権利化業務に従事した後、2015年にはつな知財事務所を設立、2016年にcotobox株式会社を設立。オンライン商標プラットフォーム「Cotobox」は、2018年経済産業省のグレーゾーン解消制度を利用し、知財DXビジネスモデルの先駆けとなった。 商標、特許、意匠の国内外の権利化及び知財経営の指導を手がけており、自らのスタートアップの創業者としての経験を活かして、知財経営、マーケット、事業リスク、プロダクト開発及び企業価値といった領域における知財視点でのアドバイスを得意とする。
-
この記事に関するお問い合わせ Contact
掲載内容や業務に関するお問い合わせは
Contact
こちらまで -
資料請求はこちらから Request Documents
弁護士法人Authense法律事務所の
資料請求
サービス資料をダウンロードいただけます。 -
会員登録はこちらから Sign Up
会員にご登録いただくと、ここでしか読めない
新規会員登録
全ての会員記事をお読みいただけます。


