基本知識・用語集

労働問題に関する基本知識・用語を紹介します。

年俸制の残業代

「年俸制」とは、賃金の全部または一部を、労働者の成果・業績を評価して、年単位で決定する賃金体系のことをいいます。法律上の特別の賃金形態ではないため、労働時間や賃金に関する労働基準法上の規制が適用されるのが原則となります。

「年俸制は、時間管理や割増賃金の支払いが必要ない」と誤った理解をしている会社(使用者)が多いため、注意が必要です。
労働基準法第24条第2項には、「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と定められているため、年俸制であっても、年俸額を12で割った賃金額が毎月支払われなければなりません。

また、年俸制にあらかじめ一定時間分の残業代を含めることは、以下の条件をすべて満たしていれば適法とされます。

以下の条件をすべて満たしていれば適法
・労働契約に、年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていることを明示する。
・時間外労働等の割増賃金と、通常の労働時間の賃金が区別されている。
・あらかじめ、年俸に含められた割増賃金は、時間外労働等の何時間分なのかを明示する。
・区別された割増賃金部分が、法律で決められた割増額以上である。 

例:
年俸600万円とする。
年俸600万円の12分の1である50万円を月例給与として支給する。
月例給与の内訳は基本給425,551円、各月20時間分の時間外労働割増賃金74,449円とする。
各月20時間を超えた時間外労働については、法定の割増率で計算した割増賃金(時間外手当1時間当たりの額425,551円/142.9時間×1.25=3,722円)を支払うこととする。

そして、所定労働時間を超える労働に対して、法律上必要な割増賃金は支払われなければなりません。

年俸制をめぐる民事裁判例

いずれも、年俸制をめぐる民事裁判例です。

日本システム開発研究所事件
(東京地判 平18・10・6 労働判例934号69頁、東京高判 平20・4・9 労働判例959号6頁)
Yの研究室長及び研究室員であるXらが、Yが一方的に組織編成及び年俸賃金の制度を改定した上で、Xらの給与(賞与を含む)を減額したことから、差額分の賃金等を請求したもの。

システムワークス事件
(大阪地判 平14・10・25 労働判例844号79頁)
Xが、年俸制の労働契約をYと締結し、時間外労働を行ったとして、Yに対し、未払賃金等の支払を求めたもの。

山本香料事件
(大阪地判 平10・7・29 労働判例749号26頁)
Xは、平成6年11月28日、調香師としてYに雇用された。(Xの賃金は年額570万円であり、月額38万円を毎月20日に支払い、残額を賞与として支払う約定であった。)
Yは、平成7年6月26日、就業規則違反行為、あるいは懲戒処分該当事由があったとしてXを解雇した。
Xが、Yの従業員たる地位を有することの確認(未払賞与の支払・賃金の支払)、Y会社の上司からセクハラや嫌がらせを受けたことに対する慰謝料の支払を請求し、他方、Yが、Xに無償貸与していたマンションの明け渡しを請求したもの。

創栄コンサルタント事件
(大阪地判 平14・5・17 労働判例828号14頁)
Yの従業員であったXが、Yに対し、退職金の支払い、在職中の時間外割増賃金及び休日労働割増賃金の支払、有休休暇未消化分の買上げ等を請求し、これに対し、Yは退職金の支払いを約束したことはない、Xの賃金は残業代も含めた年俸制である、有給休暇の未消化分を買い上げるとの定めも、労使慣行もない等、争った。

みなし労働時間制

みなし労働時間制には、「事業場外みなし労働時間制」「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」があります。

事業場外みなし労働時間制
事業場外で労働する場合で労働時間の算定が困難な場合に、原則として所定労働時間労働したものとみなす制度。

専門業務型裁量労働制
デザイナーやシステムエンジニアなど、業務遂行の手段や時間配分などに関して使用者が具体的な指示をしない19の業務について、実際の労働時間数とはかかわりなく、労使協定で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度。

企画業務型裁量労働制
事業運営の企画、立案、調査及び分析の業務であって、業務遂行の手段や時間配分などに関して使用者が具体的な指示をしない業務について、実際の労働時間数とはかかわりなく、労使委員会で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度。

裁量労働制の時間外手当の計算方法

裁量労働制であっても、時間外労働や深夜労働、休日労働に対する割増賃金が支払われなくてはなりません。

たとえば、労使協定などによって、あらかじめ定められたみなし労働時間が10時間であれば、法定労働時間8時間を超えた2時間分は、時間外労働として時間外手当(通常の賃金に25%以上の割増賃金を上乗せされたもの)が支払われます。

みなし労働時間10時間、1時間あたりの賃金2500円の労働者の1日当たりの時間外手当
1日あたりの法定時間外労働=10時間-8時間=2時間
1日あたりの時間外手当=2時間×2,500円×1.25=6250円

※裁量労働制を適用しているかどうかにかかわらず、深夜労働(夜10時~翌朝5時)や休日労働(日曜日などの法定休日)をした場合には、労働時間数に応じた割増賃金が支払われます。

1時間あたりの賃金3,000円、所定休日(日曜日などの法定休日以外)に12時間労働し、その週の合計労働時間が50時間となった場合(時間外労働の割増賃金率を25%とした場合)
週40時間を超えた労働時間数=50時間-40時間=10時間
時間外手当=10時間×3,000円×1.25=37500円

専門業務型裁量労働制が対象となる業務

専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分などを大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として、法令により定められた19業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使協定であらかじめ定めた時間を労働したものとみなす制度です。(労働基準法第38条の3)


専門業務型裁量労働制の対象業務(法令で定める19業務)と詳細
法令とは、労働基準法施行規則第24条の2の2第2項と、同項第6号により厚生労働大臣が指定する業務を定める平成9年2月14日労働省告示第7号のことです。

―労働基準法施行規則第24条の2の2第2項

1. 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
「新商品若しくは新技術の研究開発」とは、材料、製品、生産・製造工程等の開発又は技術的改善等をいうものであること。

2. 情報処理システムの分析または設計の業務
「情報処理システム」とは、情報の整理、加工、蓄積、検索等の処理を目的として、コンピュータのハードウェア、ソフトウェア、通信ネットワーク、データを処理するプログラム等が構成要素として組み合わされた体系をいうものであること。

「情報処理システムの分析又は設計の業務」とは、(i)ニーズの把握、ユーザーの業務分析等に基づいた最適な業務処理方法の決定及びその方法に適合する機種の選定、(ⅱ)入出力設計、処理手順の設計等アプリケーション・システムの設計、機械構成の細部の決定、ソフトウェアの決定等、(ⅲ)システム稼働後のシステムの評価、問題点の発見、その解決のための改善等の業務をいうものであること。プログラムの設計又は作成を行うプログラマーは含まれないものであること。

3. 新聞・出版・テレビなどの記者・編集者
「新聞又は出版の事業」には、新聞、定期刊行物にニュースを提供するニュース供給業も含まれるものであること。なお、新聞又は出版の事業以外の事業で記事の取材又は編集の業務に従事する者、例えば社内報の編集者等は含まれないものであること。

「取材又は編集の業務」とは、記事の内容に関する企画及び立案、記事の取材、原稿の作成、割付け・レイアウト・内容のチェック等の業務をいうものであること。記事の取材に当たって、記者に同行するカメラマンの業務や、単なる校正の業務は含まれないものであること。

「放送番組の制作のための取材の業務」とは、報道番組、ドキュメンタリー等の制作のために行われる取材、インタビュー等の業務をいうものであること。取材に同行するカメラマンや技術スタッフは含まれないものであること。

「編集の業務」とは、上記の取材を要する番組における取材対象の選定等の企画及び取材によって得られたものを番組に構成するための内容的な編集をいうものであり、音量調整、フィルムの作成等技術的編集は含まれないものであること。

4. 衣服、室内装飾、工業製品、広告等のデザイナー
「広告」には、商品のパッケージ、ディスプレイ等広く宣伝を目的としたものも含まれるものであること。
考案されたデザインに基づき、単に図面の作成、製品の制作等の業務を行う者は含まれないものであること。

5. 放送番組、映画等の制作におけるプロデューサーやディレクター
「放送番組、映画等の制作」には、ビデオ、レコード、音楽テープ等の制作及び演劇、コンサート、ショー等の興行等が含まれるものであること。
「プロデューサーの業務」とは、制作全般について責任を持ち、企画の決定、対外折衝、スタッフの選定、予算の管理等を総括して行うことをいうものであること。
「ディレクターの業務」とは、スタッフを統率し、指揮し、現場の制作作業の統括を行うことをいうものであること。

― 労働基準法施行規則第24条の2の2第2項第6号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務

6.コピーライター
「広告、宣伝等」には、商品等の内容、特長等に係る文章伝達の媒体一般が含まれるものであり、また、営利目的か否かを問わず、啓蒙、啓発のための文章も含まれるものであること。
「商品等」とは、単に商行為たる売買の目的物たる物品にとどまるものではなく、動産であるか不動産であるか、また、有体物であるか無体物であるかを問わないものであること。
「内容、特長等」には、キャッチフレーズ(おおむね10文字前後で読み手を引きつける魅力的な言葉)、ボディコピー(より詳しい商品内容等の説明)、スローガン(企業の考え方や姿勢を分かりやすく表現したもの)等が含まれるものであること。
「文章」については、その長短を問わないものであること。

7. システムコンサルタント
「情報処理システムを活用するための問題点の把握」とは、現行の情報処理システム又は業務遂行体制についてヒアリング等を行い、新しい情報処理システムの導入又は現行情報処理システムの改善に関し、情報処理システムを効率的、有効に活用するための方法について問題点の把握を行うことをいうものであること。

「それを活用するための方法に関する考案若しくは助言」とは、情報処理システムの開発に必要な時間、費用等を考慮した上で、新しい情報処理システムの導入や現行の情報処理システムの改善に関しシステムを効率的、有効に活用するための方法を考案し、助言(専ら時間配分を顧客の都合に合わせざるを得ない相談業務は含まない。)することをいうものであること。

アプリケーションの設計又は開発の業務、データベース設計又は構築の業務は含まれないものであり、当該業務は則第24条の2の2第2号の業務に含まれるものであること。

8. インテリアコーディネーター
「照明器具、家具等」には、照明器具、家具の他、建具、建装品(ブラインド、びょうぶ、額縁等)、じゅうたん、カーテン等繊維製品等が含まれるものであること。
「配置に関する考案、表現又は助言の業務」とは、顧客の要望を踏まえたインテリアをイメージし、照明器具、家具等の選定又はその具体的な配置を考案した上で、顧客に対してインテリアに関する助言を行う業務、提案書を作成する業務、模型を作製する業務又は家具等の配置の際の立ち会いの業務をいうものであること。
内装等の施工など建設業務、専ら図面や提案書等の清書を行う業務、専ら模型の作製等を行う業務、家具販売店等における一定の時間帯を設定して行う相談業務は含まれないものであること。

9. ゲーム制作
「ゲーム用ソフトウェア」には、家庭用テレビゲーム用ソフトウェア、液晶表示装置を使用した携帯ゲーム用ソフトウェア、ゲームセンター等に設置される業務用テレビゲーム用ソフトウェア、パーソナルコンピュータゲーム用ソフトウェア等が含まれるものであること。
「創作」には、シナリオ作成(全体構想)、映像制作、音響制作等が含まれるものであること。
専ら他人の具体的指示に基づく裁量権のないプログラミング等を行う者又は創作されたソフトウェアに基づき単にCD-ROM等の製品の製造を行う者は含まれないものであること。

10. 証券アナリスト
「有価証券市場における相場等の動向」とは、株式相場、債券相場の動向のほかこれに影響を与える経済等の動向をいうものであること。
「有価証券の価値等」とは、有価証券に投資することによって将来得られる利益である値上がり益、利子、配当等の経済的価値及び有価証券の価値の基盤となる企業の事業活動をいうものであること。
「分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務」とは、有価証券等に関する高度の専門知識と分析技術を応用して分析し、当該分析の結果を踏まえて評価を行い、これら自らの分析又は評価結果に基づいて運用担当者等に対し有価証券の投資に関する助言を行う業務をいうものであること。
ポートフォリオを構築又は管理する業務、一定の時間を設定して行う相談業務、専ら分析のためのデータの入力・整理を行う業務は含まれないものであること。

11. 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
「金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発」とは、金融取引のリスクを減らしてより効率的に利益を得るため、金融工学のほか、統計学、数学、経済学等の知識をもって確率モデル等の作成、更新を行い、これによるシミュレーションの実施、その結果の検証等の技法を駆使した新たな金融商品の開発をいうものであること。
ここでいう「金融商品」とは、金融派生商品(金や原油などの原資産、株式や債権などの原証券の変化に依存してその値が変化する証券)及び同様の手法を用いた預貯金等をいうものであること。
金融サービスの企画立案又は構築の業務、金融商品の売買の業務、市場動向分析の業務、資産運用の業務、保険商品又は共済の開発に際してアクチュアリーが通常行う業務、商品名の変更のみをもって行う金融商品の開発の業務、専らデータの入力・整理を行う業務は含まれないものであること。

12.大学における教授研究の業務
当該業務は、学校教育法に規定する大学の教授、助教授又は講師の業務をいうものであること。
「教授研究」とは、学校教育法に規定する大学の教授、助教授又は講師が、学生を教授し、その研究を指導し、研究に従事することをいうものであること。患者との関係のために、一定の時間帯を設定して行う診療の業務は含まれないものであること。
「主として研究に従事する」とは、業務の中心はあくまで研究の業務であることをいうものであり、具体的には、講義等の授業や、入試事務等の教育関連業務の時間が、多くとも、1週の所定労働時間又は法定労働時間のうち短いものについて、そのおおむね5割に満たない程度であることをいうものであること。
なお、患者との関係のために、一定の時間帯を設定して行う診療の業務は教授研究の業務に含まれないことから、当該業務を行う大学の教授、助教授又は講師は専門業務型裁量労働制の対象とならないものであること。

13. 公認会計士
「公認会計士の業務」とは、法令に基づいて公認会計土の業務とされている業務をいうものであり、例えば、公認会計士法(昭和23年法律第103号)第2条第1項に規定する「他人の求めに応じて報酬を得て、財務書類の監査又は証明をする」業務、同条第2項に規定する「公認会計士の名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の調整をし、財務に関する調査若しくは立案をし、又は財務に関する相談に応じる」業務がこれに該当するものであること。

14. 弁護士
「弁護士の業務」とは、法令に基づいて弁護士の業務とされている業務をいうものであり、例えば、弁護士法(昭和24年法律第205号)第3条第1項に規定する「当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって、訴訟事件、非訴訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他の法律事務」が、これに該当するものであること。

15. 建築士
「建築士の業務」とは、法令に基づいて建築士の業務とされている業務をいうものであり、例えば、建築士法(昭和25年法律第202号)第3条から第3条の3までに規定する設計又は工事監理がこれに該当するものであること。
例えば他の「建築士」の指示に基づいて専ら製図を行うなど補助的業務を行う者は含まれないものであること。

16. 不動産鑑定士
「不動産鑑定士の業務」とは、法令に基づいて不動産鑑定士の業務とされている業務をいうものであり、例えば、不動産の鑑定評価に関する法律(昭和38年法律第152号)第2条第1項に規定する「土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利の経済価値を判定し、その結果を価格に表示する」業務が、これに該当するものであること。

17. 弁理士
「弁理士の業務」とは、法令に基づいて弁理士の業務とされている業務をいうものであり、例えば、弁理士法(平成12年4月26日法律第49号)第4条第1項に規定する「特許、実用新案、意匠若しくは商標又は国際出願若しくは国際登録出願に関する特許庁における手続及び特許、実用新案、意匠又は商標に関する異議申立て又は裁定に関する経済産業大臣に対する手続についての代理並びにこれらの手続に係る事項に関する鑑定その他の事務」が、これに該当するものであること。

18. 税理士
「税理士の業務」とは、法令に基づいて税理士の業務とされている業務をいうものであり、例えば、税理士法(昭和26年法律第237号)第2条第1項に規定する税務代理又は税務書類の作成がこれに該当するものであること。

19. 中小企業診断士
「中小企業診断士の業務」とは、法令に規定されている中小企業の経営の診断又は助言の業務をいうものであり、例えば、中小企業支援事業の実施に関する基準を定める省令(昭和38年通商産業省令第123号)第4条第3項に規定する一般診断業務(中小企業者に対して個別に行う診断若しくは助言又はその手段に対して行う診断若しくは助言)等がこれに該当するものであること。
中小企業診断士の資格を有する者であっても、専ら中小企業診断士の業務以外の業務を行う者は含まれないものであること。

事業場外みなし労働時間制の対象となる業務

労働者が業務の全部又は 一部を事業場外で従事し、使用者の指揮監督が及ばないために、当該業務に係る労働時間の算定 が困難な場合に、使用者のその労働時間に係る算定義務を免除し、その事業場外労働については 「特定の時間」を労働したとみなすことのできる制度です。(労働基準法第38条の2)

事業場外労働のみなし労働時間の対象となる業務

事業場外で業務に従事し、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難な業務を対象としています。

事業場外労働のみなし労働時間の対象にできない業務

事業場外で業務に従事する場合であっても、使用者の指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるので、みなし労働時間制の適用はできません。

1. 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
2. 無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら事業場外で労働している場合
3. 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後、事業場に戻る場合

在宅勤務(労働者が自宅で情報通信機器を用いて行う勤務形態)について
次に掲げるいずれの要件をも満たす形態で行われる在宅勤務については、原則として、労働基準法第38条の2に規定する事業場外労働に関するみなし労働時間制が適用されます。

1. 当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること。
2. 当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと。
3. 当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと。

※ただし、例えば、労働契約において、午前中の10時から17時までを勤務時間とした上で、労働者が自宅内で仕事を専用とする個室があり、勤務時間帯と日常生活時間帯が混在することのないような措置を講ずる旨の在宅勤務に関する取決めがなされ、随時使用者の具体的な指示に基づいて業務が行われる場合については、労働時間を算定し難いとは言えず、事業場外労働に関するみなし労働時間制は適用されません。

事業場外労働のみなし労働時間制における労働時間の計算例

労働時間の算定困難な事業場外での業務の遂行に通常必要とされる時間を「通常必要時間」とします。

計算例)
所定労働時間が7時間30分
休憩時間が1時間(午前12時から午後1時までの間)
始業時刻が午前9時、終業時刻が午後5時30分



①労働時間の全部について事業場外で労働した場合(直行・直帰)



通常必要時間が所定労働時間以内であれば、所定労働時間労働したものとみなして、1日の労働時間は7時間30分と算定して労働基準法が適用されます。

※ただし、事業場外労働が常態として所定労働時間(7時間30分)を超えて 8時間行われるなど、所定労働時間を超えることが通常必要となるときは、通常必要時間を労働したもの(この場合は8時間)とみなされます。

②労働時間の一部について事業場外で労働した場合(内勤後、外勤を行ってそのまま直帰)



外勤の通常必要時間(例えば3時間の場合)と内勤の時間(上の例2の場合は4時間)を合計すると7時間となり、所定労働時間以内であるので、外勤については内勤と合わせて所定労働時間労働したとみなされ、1日の労働時間は7時間30分となります。

※ただし、外勤の通常必要時間が例えば5時間のとき、内勤の時間の4時間を加えると9時間となり所定労働時間を超えるので、この外勤は5時間労働したものとみなして、別途把握した内勤の時間の4時間を加えて、1日の労働時間は9時間となります。

みなし労働時間制の時間外労働・休日労働・深夜労働

■時間外労働


1日8時間を超えるなど法定労働時間を超える場合、法定労働時間を超えた時間は時間外労働となり、2割5分増以上の割増賃金が支払われます。

■休日労働
事業場外労働のみなし労働時間制により労働時間が算定される場合であっても、労働基準法第35条の休日(以下「法定休日」という。)の規定は適用になりますので、法定休日に労働させた場合、その日については、例えば、労働時間の全部が事業場外で業務に従事してその労働時間の算定が困難であり、通常必要時間が所定労働時間以内であるときには、所定労働時間労働したものとみなしますので、この所定労働時間に対して3割5分増以上の割増賃金を支払う必要があります。

この場合、休日労働の日の所定労働時間は労働日の所定労働時間によります。

また、労働時間の一部が事業場内労働であり、通常必要時間と、別途把握した事業場内における時間の合計が所定労働時間を超えるときは、その合計時間に対して3割5分増以上の割増賃金を支払う必要があります。

なお、法定休日以外の所定休日労働の場合も法定休日と同様に、所定休日労働の時間を算定して、法定労働時間を超える時間は時間外労働となるので、上の(1)の時間外労働と同様に2割5分増以上の割増賃金を支払う必要があります。

■深夜労働
事業場外労働のみなし労働時間であっても、深夜労働の規定(労働基準法第37条第4項)は適用されますので、午後10時から午前5時までの間に実際に労働したときは、その時間については2割5分増以上の割増賃金を支払う必要があります。

固定残業代制とは

「固定残業代(定額残業代)」とは、その名称にかかわらず、一定時間分の時間外労働、休日労働および深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金のことです。

固定残業代制(定額残業代制)は、労働基準法の法令に規定されている制度ではありませんが、裁判例により、「一定の要件を満たす限り、適法であり、有効な制度である」とされています。つまり、一定の要件を満たさない場合は、違法であり、無効となります。

固定残業代制(定額残業代制)の要件
固定残業代制(定額残業代制)の場合、就業規則などに以下の内容すべてが明確に定められていなければなりません。

固定残業代を除いた基本給の額
固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨

時間外労働について固定残業代制(定額残業代制)の記載例
  • 基本給 ××万円(固定残業代を除いた基本給の額)
  • □□手当(時間外労働の有無にかかわらず、○時間分の時間外手当として△△円を支給)
  • ○時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給
※「□□」には、固定残業代(定額残業代)に該当する手当の名称が記載
※「□□手当」に固定残業代以外の手当を含む場合、固定残業代を分けて記載
※深夜労働や休日労働について固定残業代制を採用している場合も、同様の記載が必要

例えば、固定残業代制(定額残業代制)において、就業規則等で「1ヶ月あたり45時間の残業をしたものとして、固定残業代(定額残業代)10万円を支給する。」と定められている場合、従業員の1ヶ月あたりの残業時間が45時間を超えた場合、会社(使用者)から、その従業員に対して、固定残業代(定額残業代)として、定額の10万円の支給のほかに、45時間を超えて労働した時間分について、別途割増賃金が支給されます。

もっとも、従業員1ヶ月あたりの残業時間が45時間より少なかったからといって、固定残業手当(定額残業手当)が減額されることはありません。

管理監督者とは

「管理監督者」は労働条件の決定、その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限を受けません。
「管理監督者」に当てはまるかどうかは、役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態によって判断されます。

管理監督者の判断基準
判断基準に基づき、総合的に判断した結果、労働基準法上の「管理監督者」に該当しない場合には、労働基準法で定める労働時間等の規制を受け、時間外割増賃金や休日割増賃金の支払が必要となります。

職務内容
労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していること。
労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあり、労働時間等の規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していなければ、管理監督者とは言えません。

責任と権限
労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有していること。
労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあるというためには、経営者から重要な責任と権限を委ねられている必要があります。
「課長」「リーダー」といった肩書きがあっても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事項について上司に決裁を仰ぐ必要があったり、上司の命令を部下に伝達するに過ぎなかったりするような場合は、管理監督者とはいえません。

勤務態様
現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること。
管理監督者は、時を選ばす経営上の判断や対応が要請され、労務管理においても一般労働者と異なる立場にある必要があります。労働時間について厳格な管理をされているような場合は、管理監督者とは言えません。

待遇・賃金等
賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること。
定期給与、賞与、その他の待遇において、一般労働者と比較して相応の待遇がなされていなければならなりません。

管理職の残業代とは

労働基準法では、「監督若しくは管理の地位にある者」については、「労働時間、休憩及び休日に関する規定」についての適用はなく、時間外労働や休日労働に対する残業代を請求することはでません。
しかし、「管理職」と労働基準法上の「管理監督者」は異なりますので、所謂「名ばかり管理職」である場合、残業代を請求することができます。

「管理監督者」の判断要素
労働条件の決定その他労務管理について、経営者から重要な責任と権限を委ねられている。
時を選ばす経営上の判断や対応が要請され、労務管理においても一般労働者と異なる立場にあること。自分の労働時間等について裁量権を有していること。
定期給与、賞与、その他の待遇において、一般労働者と比較して、相応の待遇がなされていること。

店長は残業代を支払われない?
店長職であっても、「管理監督者」の判断要素に当てはまらなければ、「管理監督者」とはならないため、残業代が発生します。一般的に、店長・部長など「管理職」に該当すると思われている役職であっても、労働基準法上の「管理監督者」に該当することは少ないため、時間外労働・休日労働など対する残業代を請求することができる場合が多いです。

管理監督者に深夜割増賃金は支払われない?
管理監督者は、労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用されませんが(労働基準法41条)、深夜業(午後10時から午前5時までの労働)に関する規定については、適用を除外していません。したがって、深夜労働をした場合には、その時間分については、25%以上の割増賃金が支払われます。

歩合給制とは

歩合給制とは、「出来高払制」「インセンティブ給制」ともいわれ、「売上に対して○%、契約成立1件に対して○円」といった一定の成果(業績)に対して定められた金額が支払われる賃金制度のことです。

労働基準法27条(出来高払制の保障給)では、「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。」と定めています。
保証給の額についての定めはありませんが、休業手当に準じて、少なくとも平均賃金の100分の60程度を保障とすることが妥当とされています。

また、歩合給制を採用している場合、会社(使用者)が「時間外割増賃金が歩合給の中に含まれているから」と主張(反論)する場合がありますが、歩合給制であっても、法定労働時間を超えて労働した場合(時間外労働・休日労働・深夜労働)は、その部分について労働基準法37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)に基づき、割増料金が支払われなければなりません。

歩合給制(実績給)の割増賃金計算

歩合給制の場合は、歩合給の額を総労働時間で割って1時間あたりの賃金を計算します。

例:
ある月の歩合給(実績給)の合計が216,000円であった労働者が、その月に法定労働時間外労働18時間を含めて180時間労働した場合



216,000円÷180時間=1,200円 … 1時間あたりの歩合給(歩合給÷総労働時間)
1,200円×0.25(※)=300円 … 1時間あたりの歩合給の割増賃金
300円×18時間=5,400円 … 歩合給の割増賃金額

※0.25である理由
出来高払制その他の請負制によって賃金が定められている場合、時間外の労働に対する時間当たり賃金(1.0に該当する部分)は、すでに基礎となった賃金総額のなかに含められていますので、加給すべき賃金額は、計算額の2割5分以上であれば足りることになります。」(昭23.11.25 基収第3052号)

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