コラム

交通事故でてんかんを発症 外傷性てんかんの後遺障害とは

交通事故の後遺症には様々なものがありますが、事故の外傷によって「てんかん」を発症することがあります。 しかし、てんかんという病気が交通事故のイメージと結びつかない方や、てんかんという病名しか知らないという方も多いのではないでしょうか。 交通事故によって発症したてんかんの症状は、申請によって後遺障害と認められる可能性があり、それによって加害者に請求できる慰謝料の金額も大きく変わります。 そこでこの記事では、交通事故によるてんかんで後遺障害等級の認定を受けるためのポイントや、受け取ることができる慰謝料についてご紹介します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部政治学科卒業、桐蔭法科大学院法務研究科修了。交通事故分野を数多く取り扱うほか、相続、不動産、離婚問題など幅広い分野にも積極的に取り組んでいる。ご依頼者様の心に寄り添い、お一人おひとりのご要望に応えるべく、日々最良のサービスを追求している。
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てんかんとは?

てんかんは、古くから知られている神経疾患です。
脳の神経細胞に発生する過剰な電気的興奮により、「てんかん発作」と呼ばれる発作を起こすという脳の病気です。

てんかん発作の症状としては、顔や手足に生じるつっぱり、痙攣、さらに突然意識を失うなど、さまざまなパターンが存在します。
発作は突発的に生じるため、転倒などによるケガの危険性もあります。

交通事故で発症するてんかん

てんかんには、幼少期に発症するもの、脳の何らかの病変を原因とするもの、脳の検査をしても原因が分からないものなどがあり、さまざまな分類が存在します。
その中でも、頭部に外傷を受けたことによって発症するてんかんは「外傷性てんかん」と呼ばれています。
交通事故によって引き起こされるのはこの外傷性てんかんです。

外傷性てんかんの診断基準

てんかんの診断においては、脳波検査によって脳の異常の有無を調べます。
また、てんかんの症状が外傷性のものかどうか診断するための基準としては、6項目からなるWalkerの診断基準が有名です。

  • (1)発作はまさしくてんかん発作である
  • (2)受傷前にてんかん発作はなかった
  • (3)外傷は脳損傷を起こすのに十分な程度の強さであった
  • (4)てんかん発作の初発が外傷後あまり経過していない時期に起こった(閉鎖性で2年、開放性で10年)
    ※閉鎖性外傷…頭蓋骨の開放を伴わず、脳が外部に露出しない頭部外傷 
    開放性外傷…頭蓋骨の開放により、脳が外部に露出する頭部外傷
  • (5)ほかにてんかん発作を起こすような脳や全身的疾患を有しない
  • (6)てんかんの発作型、脳波所見が脳損傷部位と一致している

ただし、「これら6項目のすべてを満たさなければ外傷性てんかんとは診断されない」というわけではありません。

外傷性てんかんで認定される可能性がある後遺障害等級

交通事故で外傷性てんかんを発症すると、治療を続けても治癒せず、後遺症として発作が続く場合があります。
また、発作が出なくても、脳波にてんかんであることを示す波形が残ることもあります。

このような後遺症について、「これ以上治療を続けても症状は治りきらず、将来にわたって事故による症状が残る」という状態のことを「症状固定」といいます。
この症状固定後も残った後遺症は、後遺障害等級の認定申請を行うことで「後遺障害」と認められる可能性があります。

後遺障害は、症状の程度によって1級から14級までの等級に分けられており、最も重い障害が1級です。
後遺障害等級が認定されると、加害者に請求できる損害賠償の金額が大きく変わってきます。

では、外傷性てんかんによる後遺障害にはどのようなものがあるのでしょうか?

てんかん発作

てんかんの後遺障害では、どのような発作が起きたか、またその頻度・回数はどの程度かによって認定される等級が変わってきます。

等級後遺障害
第5級2号1ヵ月に1回以上の発作があり、かつ、その発作が「意識障害の有無を問わず転倒する発作」又は「意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作」であるもの
第7級4号転倒する発作等が数ヶ月に1回以上あるもの又は転倒する発作等以外の発作が1ヵ月に1回以上あるもの
第9級10号数ヵ月に1回以上の発作が転倒する発作等以外の発作であるもの又は服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの
第12級13号発作の発現はないが、脳波上に明らかにてんかん性棘波を認めるもの

高次脳機能障害

もし1ヵ月に2回以上の発作がある場合は、てんかんの症状だけでなく、高度の高次脳機能障害を発症していると考えられます。

高次脳機能障害とは、脳の損傷により高次脳機能に障害が生じた状態のことです。
「高次脳機能」とは、注意力や記憶力、感情をコントロールする能力といった「脳の高度な機能」をいいます。

脳の高次脳機能障害として後遺障害等級が認定された場合は、3級以上の等級に該当する可能性があります。

等級後遺障害
第1級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
第2級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
第3級3号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

外傷性てんかんの後遺障害慰謝料

後遺障害等級の認定を受けると、加害者に「後遺障害慰謝料」を請求できるようになります。

後遺障害慰謝料とは

「慰謝料」とは、事故の被害者が受けた精神的な苦痛に対して支払われる金銭です。
その中でも、後遺障害等級が認定されなければ受け取れないのが「後遺障害慰謝料」です。

後遺障害慰謝料の金額は、1級~14級の等級と、3種類の算出基準によって決まります。

自賠責基準

車を運転する人なら必ず加入しなければならない「自賠責保険」で定められている基準が自賠責基準です。
被害者に対する最低限の補償であり、3つの基準の中では最も賠償金額が低い基準です。

任意保険基準

任意保険基準は、任意保険会社がそれぞれ独自に定めている基準です。
おおむね自賠責基準よりは高額であるものの、弁護士基準と比較すると低額となります。

弁護士基準

裁判基準とも呼ばれます。
自賠責基準や任意保険基準と比較して、最も高額となる基準です。
弁護士に依頼して交渉してもらうことで、この弁護士基準によって算出した金額の慰謝料を請求することができます。

外傷性てんかんによる後遺障害で請求できる可能性がある後遺障害慰謝料の金額を自賠責基準と弁護士基準で比較すると、以下のようになります。

*後遺障害等級ごとの後遺障害慰謝料額

・介護を要する後遺障害(自賠法施行令別表第一)

等級自賠責基準弁護士基準
第1級1650万円2800万円
第2級1203万円2370万円

・後遺障害(自賠法施行令別表第二)

等級自賠責基準弁護士基準補足
第3級861万円1990万円(以上は高次脳機能障害と認定された場合)
第5級618万円1400万円
第7級419万円1000万円
第9級249万円690万円
第12級94万円290万円

このように、後遺障害等級が何級に認定されるか、そして弁護士に依頼するか否かによって、後遺障害慰謝料の金額は大きく変わってくるのです。

交通事故による外傷性てんかんで後遺障害の認定を受けるポイント

てんかんの症状の程度は見極めが難しいうえ、先に説明したとおり、高次脳機能障害を発症している可能性もあります。
そのため、適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、医療機関で適切な検査を受けるとともに、交通事故に精通した弁護士に依頼して手続きを行うことが重要になります。

事故後はすぐに病院を受診する

てんかんを発症すると、実際に発作が生じていなくても、脳波検査によって「てんかん波」と呼ばれるさまざまな脳波異常が検知できます。

しかし、1回の検査では異常が検知されない場合もあります。
そのため、交通事故からしばらく経ってから病院を受診し、何回目かの検査でてんかん波が記録されたような場合には、交通事故と因果関係がないのではないか、という疑いを持たれる可能性があります。

事故で頭部に衝撃を受けた場合は、なるべく早く脳神経外科などを受診し、適切な検査を受けるようにしましょう。

発作を細かく記録しておく

外傷性てんかんの後遺障害等級認定では、発作の頻度が大きなポイントとなります。
家族などにも協力してもらい、いつどのような発作が起きたかをなるべく詳しく記録することはもちろん、交通事故以前にはなかった身体の変化を感じた場合も必ず医師に報告しましょう。

被害者請求で申請する

後遺障害等級認定の申請方法には、「事前認定」と「被害者請求」の2種類があります。

事前認定とは、加害者側の任意保険会社に申請手続きを任せる方法です。
被害者自身が手続きをしなくて済むので、負担は軽く済みますが、申請に必要な一連の書類を準備するのは相手方の保険会社であるため、被害者にとって透明性が低い状態で手続きが進められることになります。

対する被害者請求とは、被害者自ら申請手続きを行う方法です。
多くの書類を自分で集めなければならず、非常に手間がかかりますが、そのぶん書類の内容を十分にチェックしたうえで申請することが可能です。

とはいえ、被害者請求には時間と労力を要しますし、専門的な知識も必要です。
このような場合、交通事故に精通した弁護士に依頼すれば、申請においてどのような検査結果が必要かというアドバイスが得られますし、弁護士基準で算出した慰謝料の金額で交渉することもできるようになります。

交通事故による外傷性てんかんで後遺症が残り、後遺障害等級の認定を目指す際は、交通事故に詳しい弁護士に一度相談してみることをおすすめします。

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