コラム

2021.02.24

同乗していた車が交通事故に。ケガをした同乗者の治療費はどうすれば?

運転者としてではなく、他者が運転する車に同乗しているときに交通事故に遭ってケガをした場合、その治療費などはどうすればいいのでしょうか? 交通事故でケガを負うのは、運転者だけではありません。 同乗していた車での事故による損害は、誰に、どの範囲で賠償してもらえるのか、弁護士が詳しく解説いたします。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部政治学科卒業、桐蔭法科大学院法務研究科修了。交通事故分野を数多く取り扱うほか、相続、不動産、離婚問題など幅広い分野にも積極的に取り組んでいる。ご依頼者様の心に寄り添い、お一人おひとりのご要望に応えるべく、日々最良のサービスを追求している。
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誰に損害賠償を請求するか?3つのパターン

「同乗者」とは、車に乗っている人の中で、運転者以外の人のことです。
同乗者としての交通事故というと、家族や友人の運転する車に同乗中に事故に遭うことをイメージされる方が多いと思いますが、自家用車に限らず、乗っていたタクシーやバスが事故に遭った場合も「同乗中に交通事故に遭った」といえます。

自動車を運転しているときに交通事故の被害に遭ってケガをした場合であれば、治療費や、精神的損害に対する慰謝料などといった損害賠償は事故の相手方に請求することになります。
では、同乗中の交通事故の場合、誰に損害賠償を請求できるのでしょうか?
これは、事故の責任が誰にあったかによって異なります。

同乗していた自動車の運転者に過失がない場合

まず、事故の発生について、同乗していた自動車に何ら責任がないケースです。
停車中に他の車両から追突された場合など、被害者と加害者の過失割合が0:100である事故、いわゆる「もらい事故」で被害者側の自動車に同乗していた場合は、加害者である事故の相手方に損害賠償を請求することになります。

同乗していた自動車の運転者のみに過失がある場合

交通事故でケガをするのは、追突される側ばかりではありません。
停車中の車両に追突する等、100%の過失がある事故を起こした加害者側の自動車に同乗していた場合も、ケガをしてしまうことがあります。
このようなケースでは、事故発生の責任は自分が同乗していた自動車の運転者にありますので、一緒に乗っていた運転者に損害賠償を請求することになります。
ガードレールや電柱に衝突する等の「自損事故(単独事故)」を起こした車に同乗してケガをした場合も同様です。

双方に過失がある場合

同乗していた自動車と、事故の相手方の自動車の両方に事故の責任がある場合はどうなるのでしょう?
このパターンでは、実はどちらに損害賠償を請求しても構いません。

2台の車の運転者双方の過失によって事故が発生した場合、同乗者のケガは、双方の運転者によって生じた損害であるといえます。
このように、複数人の加害によって損害を生じさせることを、法的には「共同不法行為」といいます。

民法719条1項

数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。

ケガをした同乗者は、事故における過失割合とは関係なく、同じ車に乗っていた運転者・相手方の運転者のいずれか、または双方に任意の割合で損害賠償を請求できます。
このようなケースにおいては、「より資力のある方に請求する」あるいは「損害を補償できる任意保険に加入している方に請求する」という選択肢が現実的です。

なお、双方の運転者に過失があるにもかかわらず、一方の運転者だけに全ての損害賠償を請求するのは不公平にも思えます。
しかし、同乗者の損害をすべて賠償した方の運転者は、もう一方の運転者に対し、過失割合以上に賠償した分の金額を請求することができます。
これを「求償」といいます。

家族が運転していた場合の注意点

家族が運転していた場合の注意点

ここまで説明してきたとおり、同乗中の交通事故によってケガをしたとしても、事故の原因となった運転者に対して損害賠償を請求することは可能です。
しかし、事故を起こした車に同乗していて、その運転者が家族であった場合には、保険の契約内容によって保険金を受け取れない可能性があります。

例として、親の運転する車に同乗中の自損事故によってケガをした場合は、親が加入している任意自動車保険から治療費などとして保険金が支払われるイメージがある方も多いでしょう。
しかし、加入している保険が「対人賠償保険」のみの場合、これはあくまで他人にケガをさせた場合の補償であるため、保険契約者の家族のケガは対象外となり、保険金が支払われません。
事故に遭った際に同乗し、ケガをした家族が保険金を受け取るには、自動車保険の中でも「人身傷害保険」や「搭乗者傷害保険」といった保険を契約している必要があります。

同乗者の損害賠償が減額されるケース

過去の裁判例では、運転者の好意で無償同乗(好意同乗といいます)しただけで、交通事故に遭った場合に同乗者が運転者に請求できる損害賠償が減額されることがありました。

しかし、この背景には「対価を払わずに運転者に同乗させてもらうという利益を得たのだから、第三者に対するのと同じ金額の賠償責任を運転者に課すのは妥当ではない」という考えがありました。

近年では、他人を同乗させて自動車を運転することは珍しくないため、単に好意同乗というだけで損害賠償が減額されることは考えにくいと言っていいでしょう。

しかし、ただ車に同乗していて事故に巻き込まれたわけではなく、「同乗者にも過失があった」といえる場合には、請求できる損害賠償が減額されてしまい、損害の全額が賠償されない可能性があります。

シートベルトをしていなかった

シートベルトを着用していればケガをせずに済んだ、あるいは軽度のケガで済んだにもかかわらず、事故時に同乗者がシートベルトを着用していなかった場合、同乗者の過失として損害賠償が減額される可能性があります。
自動車の後部座席のシートベルトは、かつては着用が義務付けられていませんでしたが、2008年の道路交通法改正により、助手席だけでなく後部座席のシートベルトも着用が義務化されています。
助手席・後部座席問わず、同乗中は必ずシートベルトを着用しましょう。

飲酒運転や無免許運転を容認した

運転者が飲酒している、あるいは無免許であることを知っていながら同乗した場合や、長時間労働で疲弊しているにもかかわらず運転させた場合など、事故発生の危険が高いことを知りながら同乗していたケースにおいては、事故によってケガをしたとしても損害賠償が減額される可能性があります。
また、運転者の妨害をしたり、スピード違反をあおったりした場合にも、同乗者の損害賠償が減額される可能性があります。

同乗者として事故に遭った場合の示談交渉のポイント

同乗者として事故に遭った場合の示談交渉のポイント

ここまで説明してきたとおり、同乗中の交通事故でケガをした場合は、ケースごとに「誰に損害賠償を請求できるか」「運転者の保険が適用されるか」等、考えなければならないことが多くあります。
また、同乗していた車の運転者に損害賠償を請求するとしても、適切な金額を根拠立てて説明することは難しいかもしれません。
運転者同士で行われる通常の示談交渉と異なり、同乗者として相手方の保険会社と交渉するのも、交通事故に関する専門知識がなければ難易度が高いといえます。

そこで、同乗者として交通事故に遭った場合には、交通事故に精通した弁護士に相談してみることをおすすめします。
同乗中の事故では、個別の事例によって損害賠償を誰に請求できるのか、減額されることなく請求できるのか等が異なり、請求する相手との交渉がスムーズに進まないことも考えられます。
それに対し、弁護士に依頼すれば、専門的な知見に基づいて交渉を進めることができますし、請求できる損害賠償の金額が上がる可能性もあるのです。

まとめ

他者が運転する車に同乗中の交通事故は、「被害者対加害者」というような単純な構図ではなく、損害賠償を請求するまでが複雑です。
一般的な交通事故とは異なる点も多く、想定していた損害賠償が受け取れない可能性もあります。
同乗者として事故に遭ってケガをし、損害賠償の請求について不安がおありの方は、お早めにオーセンスの弁護士までご相談ください。

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