コラム

交通事故で自動車保険と労災は併用できる!重複する補償については要注意

仕事中や通勤退勤の際に交通事故に遭った場合には、自動車保険と労災を併用することができます。ただし重複する補償についてはどちらかしか受け取れません。治療を受ける際には労災か自動車保険のどちらかを選ぶ必要があります。重複する補償はどのようなものか、休業補償や後遺障害の取扱いなど、交通事故に詳しい弁護士が解説いたします。

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Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部政治学科卒業、桐蔭法科大学院法務研究科修了。交通事故分野を数多く取り扱うほか、相続、不動産、離婚問題など幅広い分野にも積極的に取り組んでいる。ご依頼者様の心に寄り添い、お一人おひとりのご要望に応えるべく、日々最良のサービスを追求している。
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1.労災保険と自動車保険は併用できる

労災保険とは、業務中や通勤退勤途中にけがをしたり病気をしたり死亡したりした場合に適用される保険です。労働者は全員労災保険に加入しているので、仕事中や通勤退勤時に交通事故に遭えば、労災保険が適用されます。
労災保険の支給内容は以下のようなものとなっています。

  • ・療養補償給付(治療費)
  • ・休業補償給付(休業補償)
  • ・障害補償給付(後遺障害に対する補償)
  • ・傷病補償給付(重傷の場合に行われる特別な補償)
  • ・介護補償給付(介護が必要になった場合の補償)
  • ・遺族補償給付(死亡事故の遺族への給付)
  • ・葬祭費(お葬式の費用)

実は労災保険と、任意保険や自賠責保険などの自動車保険は併用可能です。
自動車保険から慰謝料や逸失利益、車の修理費用(任意保険のみ)などを受け取りつつ、足りない分を労災保険から給付してもらえるので、両方をうまく活用しましょう。

2.重複する補償はどちらかしか受け取れない

重複する補償はどちらかしか受け取れない

ただし労災保険と任意保険や自賠責保険などの自動車保険が「重複する」場合には注意が必要です。たとえば治療費や休業補償(休業損害)についてはどちらからも支給される可能性がありますが、重複する部分については、「どちらか一方」しか受けられません。両方を受け取ると、交通事故に遭ったことによって被害者が「得をしてしまう」ためです。そうなったらかえって不公平となるでしょう。

では、どういった補償が重複し、どういったものは重複しないのかをご説明します。

2-1.重複する補償

  • ・治療費
  • ・休業補償
  • ・後遺障害逸失利益
  • ・遺族年金(死亡逸失利益)
  • ・介護費用
  • ・葬祭料

2-2.重複しない補償

労災のみに認められる補償

  • ・休業特別給付金
  • ・障害特別支給金
  • ・招待特別年金、一時金
  • ・遺族特別支給金
  • ・遺族特別年金
  • ・傷病特別年金、一時金

上記のような補償は労働者の福祉のために政策的に支給されるものです。損害の補填を目的とするものではないため、自動車保険と重複しないと考えられています。

自動車保険のみに認められる補償

  • ・慰謝料
  • ・労災保険の給付額を超える休業損害や葬祭料などの各種賠償金

労災保険からは慰謝料が支給されません。入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料は、自動車保険からしか支払われないと考えましょう。

では、治療の場面、休業損害の場面、後遺障害の場面に分けて労災保険と自動車保険の関係がどうなっているのか、確認していきましょう。

3.治療を受ける際、労災か自動車保険かを選べる

交通事故が労災になる場合、被害者は治療に際して労災保険か自動車保険のどちらを適用すべきか選ぶことができます。
労災保険を適用すれば、治療費を全額支給してもらえて限度額はありません。また過失割合が考慮されないので、被害者の過失が高いケースでも気にせず通院を継続できるメリットもあります。

一方、自賠責保険の場合には限度額がありますし、被害者の過失割合が高ければ支払額が減額されるケースもあります。こういったことを考えると、治療費の支払いはできるだけ労災を適用するのがよいでしょう。
なお当初は自動車保険を適用しても、途中で労災への切り替えが可能です。

4.休業補償、休業損害の取扱い

休業補償、休業損害の取扱い

労災保険からは「休業補償給付」、自動車保険からは「休業損害」というかたちで休業に対する補償が行われます。これらの補償も重複するので、どちらか一方しか受け取れません。

ただし労災保険の「休業特別支給金」については、重複しないと考えられています。労災の休業補償給付は賃金の60%、休業特別支給金は賃金の20%です。この20%の部分は重複しないので、自動車保険の休業損害に上乗せで支給されるイメージです。

そこで労災保険の休業補償と自動車保険の休業損害の両方を受け取ると、賃金の120%分の休業補償(休業損害)金を受け取れる計算になります。

被害者にとっては労災と自動車保険の両方へ休業補償、休業損害を請求するメリットが大きくなるでしょう。

5.後遺障害の取扱い

後遺障害が残った場合の補償も一部重複します。労災保険からは「逸失利益」が支払われます。支払方式は、後遺障害等級が8~14級の場合には一時金、1~7級の場合には年金方式です。
一方自動車保険の場合、すべての等級で「逸失利益」と「慰謝料」が支払われます。

5-1.慰謝料は自動車保険から受け取る必要がある

後遺障害が残ると、被害者は大きな精神的苦痛を受けるでしょう。精神的苦痛に対する賠償金が「慰謝料」です。慰謝料が支払われるのは自動車保険のみなので、慰謝料を受け取りたいと考えている場合には、自動車保険で後遺障害認定を受けなければなりません。

5-2.逸失利益の差額計算方法

後遺障害が残り、働けなくなったら生涯収入が低下するので「逸失利益」を請求できます。労災保険からの給付は逸失利益に相当するので、どちらかしか受け取れません。

認定等級が8~14級の場合、労災保険からは一時金が支給されます。この場合、自動車保険の逸失利益の金額と比較して不足するなら差額が支給されますし、不足しなければ支給されません。

認定等級が1~7級の場合、労災保険からは年金が支給されます。
この場合、自動車保険から逸失利益を受け取ったら年金は「8年目」から支給が始まります。
当初の7年間は重複するものとして支給を受けられないので注意しましょう。

なお労災保険と自賠責保険の後遺障害認定等級は一致するとは限りません。認定基準は同じですが認定機関が異なるので、等級がずれる可能性もあります。

まとめ

交通事故が労災に該当する場合、労災保険と任意保険・自賠責保険などの自動車保険の両方から補償(賠償金)を受け取れます。
任意保険と労災は併用できるのです。
労災保険については労基署へ申請しなければ支給されません。事故後の慌ただしさが落ち着いたら早めに手続きを進めましょう。同時に、加害者の任意保険会社との示談交渉も進める必要があります。

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