「できない」を「できる」に変える
リーガル・エンジニアリング
——須摩大樹弁護士が挑んだ
クロスボーダー資金調達とガバナンス改革

須摩大樹弁護士は企業法務を重点的に取り扱い、中でも広告審査・スポーツ法務に注力。
景品表示法・ガイドラインなどの関連法規や業界規制に精通し、企業のブランドイメージを守りながら、
効果的な広告展開を実現するための助言を行っている。
さまざまな企業案件を手掛けるなか、困難な案件にも直面してきた。
「壁」にぶつかったとき、須摩弁護士はどのように解決してきたのか、その発想の原点について話を聞いた。
01どんな状況でも諦めない。須摩弁護士の執念と閃き
複雑な法規制が絡む金融・渉外法務。生き馬の目を抜くような世界において、一秒たりとて無駄にできない。クライアントの求める「成果」を最大限の効果をもって達成するために最適な選択肢を探し出す、そのための時間も豊富に用意されているとは限らない。
その代表例が、須摩大樹弁護士が手掛けた日本企業と中国企業からのクロスボーダー資金調達案件だった。

須摩弁護士
「とにかく最速で資金調達をしたいというお客様のご要望でした。ですが、状況を分析していくとだんだん『これは一筋縄ではないかない』と分かってきました。
外国企業も絡んでいる難しさもありましたし、通常、資金調達は証券会社が中心となって弁護士と共に発行会社をサポートしますが、本案件では証券会社側がこうした手続きに不慣れだったようで、アドバイザリー的な役割を十分に果たせていない状況だったんですよね。そのため、我々がリードする形で『ここはこうしましょう。この手続きはこう進めましょう』と、お客様の手を引いて、リードタイムの短縮を提案しました」
最大の課題はスピードだった。
クライアントは迅速な資金調達を求めていたが、なかなか思い通りに進まない。クライアントが「進まない理由の法的根拠を出してくれ」と証券会社に泣きついてものれんに腕押し。あれやこれやと言葉を濁してごまかされてしまう。
その上、当初予定していた通常の新株発行によるスキームでは、金融商品取引法に基づく有価証券届出書の作成や、対象が外国企業であったため、日本の会社法や金融商品取引法だけでなく、外国企業からの出資に伴う外国為替及び外国貿易法の事前届出が必要となることが分かった。これでは数ヵ月のタイムロスが生じ、クライアントが求める期日までに間に合わない。

須摩弁護士
「本来であれば準備するのに数ヵ月を要する有価証券届出書の提出が必要なケースでした。でも、その手続きを進めていたらお客様が求める日程にとても間に合わないことは明白でした。そこで、なにか回避できる例外規定はないかを探し出し、早期の資金調達を実現できるよう動くことにしました」
調達の遅れは事業計画の頓挫に直結する危機だったが、須摩弁護士は法的な手続きに時間がかかるのは仕方ないと妥協することなく、2つの高度な解決策を構築した。
日本企業からの調達では、本来、プロジェクトを主導するべき証券会社からの有用なアドバイスが得られない中、須摩弁護士自らが陣頭指揮を執った。
金商法の膨大な規制を徹底的にリサーチした結果、相手方企業に特定の手続きを履行させることで、有価証券届出書の提出義務が免除できるルートをついに見つけ出した。

須摩弁護士
「対象が外国企業だったため、通常の日本企業同士の案件で考慮するべき会社法や金融商品取引法だけでなく、外為法(外国為替及び外国貿易法)の規制をクリアする必要がありました。私自身、それまで外為法を扱った経験はありませんでしたが、書籍や判例などを徹底的に読み込み、リサーチを重ねました。
ただ、投資家側の代理人が大手法律事務所だったこともあり、こちらが法的に整理して投げたボールを、向こうもプロとして適切に受け止めて議論を進めてくれました。緊張感漂う交渉でしたが、そのおかげでスムーズに話がまとまったという側面もありました。
私自身も、大変勉強になりました。たとえば、こちらからなにかを提案したり資料を提出した際、『特になにも言ってこないということは、この判断やこの資料の内容には問題がないんだな』と考えたりもしましたね(笑)」
須摩弁護士が膨大な資料のなかから見つけ出した新たなスキームによって、本来であれば数ヵ月かかる開示手続きをスキップすることに成功した。
さらに難易度が高い中国企業からの調達においては、外為法の事前届出による時間の壁に直面した。

須摩弁護士
「外為法上の要件に抵触せずに進めるにはどうすればよいのか、あるいはどのように例外規定を適用させるかという非常にニッチな判断が求められました」
ここでも須摩弁護士は思考を止めることはなかった。
新株発行という当初の手段そのものを見直し、「転換社債型新株予約権付社債」を発行するというスキーム変更を提案した。この革新的なアプローチにより、外為法の煩雑な手続き完了を待つことなく、即時の資金調達を実現した。

須摩弁護士
「正直なところ、最後まで不安はありました。相手が外国企業だったので、日本の会社法や金商法だけでなく外為法などの検討が不可欠でしたが、当時は手探りで調べ尽くした状態でした。しかし、リサーチの結果には自信がありましたし、経験豊富な相手方の弁護士からも異論が出なかったため、それで『大丈夫だ』と確信を持ちました。
進めていくなかで、証券会社側から『有価証券届出書を出さない法的根拠を教えてほしい』と泣きつかれるような場面もありました。結果として、我々が法的根拠を明確に提示したことで、クライアントの希望する日程での資金調達を完遂することができました」
緻密なリサーチに裏打ちされた須摩弁護士の的確な提案は、案件をスムーズなクロージングへと導いた。
須摩弁護士は、法律の壁を理由に「できない」とストップをかけるのではなく、クライアントの最速での資金確保というビジネスの生命線を守るために、複数領域の法律を横断して最適解を組み上げた。
誰もが「無理だ」と思った状況であっても諦めずにクライアントのために力を尽くす。その精神を体現した。
02ビジネスのスピードを圧倒的に加速させる「力」
クライアントが抱える宿痾のような課題について、「仕方がない」と諦めるのではなく画期的な手段で解決へと導いた例は他にもある。
Authense法律事務所が手掛ける法務外注サービス「法務クラウド」。このサービスを活用しているある企業に、須摩弁護士は担当弁護士として常駐していた。

須摩弁護士
「そのお客様の企業では、総資産の1%以上の取引は取締役会の決議が必要という基準がありました。その頻度の高さから意思決定がなかなか進まないという課題を抱えていたんです。顧問弁護士に相談しても具体的なフィードバックは得られず、長年解決に至っていませんでした。『さすがに取締役会が多すぎないか』と皆さんお困りでした」
須摩弁護士は「法務クラウド」の担当弁護士としてクライアントの内部に深くコミットしている立場を活かし、解決へと動いた。
まずは他社の事例を徹底的にリサーチ。複数の大企業が公表するコーポレートガバナンス報告書を読み込み、記載内容から各社の意思決定体制や権限設計を丁寧に読み解きながら、意思決定のスピードを維持するための共通点を抽出した。

須摩弁護士
「他社のエンタープライズ企業がどのように意思決定をしているのかを調べました。
たとえばある大企業グループの例です。中核となる会社を頂点に、その下に多数の事業会社が連なる構造になっています。上から下に受注・発注が降りていく、絶対に取引金額が多いにもかかわらず『なぜ、あんなに意思決定のスピードが早いんだろう』と疑問に思ったことがきっかけでした。大量の資料を調査すると、共通点が見つかりました」
見つけた共通点をレポートにまとめ、クライアントに提出する。クライアントは喜び、すぐに自社内に取り入れることを決めた。

須摩弁護士
「新たなルール運用を進めることで、取締役会の頻度を半分に減らすことができました。スピード感としては単純に2倍ですよね、これは大きいと思います。また、取締役会を経ずに『社長案件』として決済を通せるようにもなりました。社長が判子さえつけばそのまま取引ができるんです。それまでは、ビジネスを進めたくても次の取締役会まで待ち、決議を経てからの受注・発注でしたので、体感としては何倍も速くなったのではないかと思います」
「法務クラウド」の担当弁護士として、企業内部の細かい事情についても精通していたからこその「改革」。一見、解決が難しいように見える状況でも諦めず、徹底的なリサーチと閃きによって課題解決を続ける須摩弁護士への、クライアントからの信頼は厚い。
担当弁護士Attorney-at-law

須摩 大樹Daiki Suma
弁護士 / 企業法務
第二東京弁護士会所属。國學院大学法学部法律学科卒業、中央大学法科大学院修了。企業法務を重点的に取り扱い、中でも広告審査・スポーツ法務に注力。情報を精査して過不足なく提示することを心がけており、法的トラブルの全体像を俯瞰的に捉えてベストな解決策を提案することを得意としている。