コラム

公開 2023.08.23 更新 2023.10.17

源氏名への暴言は誹謗中傷になる?水商売(夜職)の誹謗中傷被害について、具体的な対策を弁護士が解説

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世の中には、本名ではなく仮名で仕事をする職業が多く存在します。
たとえば、芸名で活動する芸能人のほか、YouTuberやVTuberもYouTube上での名前を使って活動しています。
そして、キャバクラやホストクラブなどで働くホステスやホストといった、いわゆる夜職と呼ばれる方々も本名ではなく源氏名で活動しています。

では、本名を名指しした誹謗中傷を受けているわけではなく、ペンネームやハンドルネーム、源氏名、芸名を指して誹謗中傷を受けた場合であっても、法的責任は生じるのでしょうか?
このような問題について、法的手続きにおける注意点を踏まえながら解説します。

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水商売をしている方の誹謗中傷被害は増えている?

まずは、最近のネット誹謗中傷の実情を見てみましょう。

一般社団法人セーファーインターネット協会が2020年6月29日から運用している「誹謗中傷ホットライン」の活動報告によると、2022年に受理した連絡件数は2152件あり、そのうち誹謗中傷情報に該当するとされた件数は556件でした。※1
これらの連絡は、誹謗中傷を受けたという本人からの申告がほとんどでした。

水商売をしている方に対する誹謗中傷が増加しているかどうかの公的な統計はありませんが、いわゆる夜職の方々は相対的に誹謗中傷のリスクに晒されやすく、ご相談いただく傾向としても比較的多いといえます。
特に、妬み嫉みや愛憎を原因として事実無根な誹謗中傷をしつこく行ったり、職業差別をするかのような内容や、容姿をおとしめる悪質な内容の書き込みが散見され、早急に手続きを進める必要がある場合が多いです。
書き込まれるウェブサイトとしては、爆サイ.comやホストラブ、V系初代たぬきの掲示板といったネット掲示板が多いほか、X(旧Twitter)やInstagramでも誹謗中傷の投稿が行われています。

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源氏名に対する悪口は、本人への誹謗中傷になるのか

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一言で「誹謗中傷」といっても、その意味は多義的です。
「言われて嫌になることをネットに書き込まれたこと」と、「その内容が権利侵害と評価できるかどうか」はしっかり区別する必要があります。

たとえば、名誉権が侵害されたとして不法行為が成立するためには、大前提として「ある人の社会的評価を低下させた」と評価できなければなりません。
もし誹謗中傷の書き込みに「大阪の人」や「東京都港区在住の男性」とだけしか書かれていなかった場合、誰に対する誹謗中傷なのかが一見して分からないので、「この書き込みは自分に対する名誉棄損だ」と主張することは困難です。
そのため、源氏名といった本名ではない名前を指して誹謗中傷を受けた場合には、「ある人」を特定できているのかどうか、法的に言えば「同定可能性」が認められるのかどうかが問題となるわけです。

このことは他の権利侵害も同様で、投稿内容が「ある人」といった特定の人のプライバシーを侵害しているといえるのか、特定の人の名誉感情を侵害したといえるのかが問題となります。

では、源氏名を指して誹謗中傷をした場合、同定可能性は認められるのでしょうか?

結論からいえば、本名ではない源氏名に対して誹謗中傷をしたとしても、同定可能性が認められる可能性は十分にあります。
ただし、同じ源氏名を使用している方はたくさんいらっしゃるので、よっぽど特徴的な源氏名ではない限り、源氏名のみで特定することは難しい場合があるでしょう。
そこで、誹謗中傷が書き込まれた掲示板のスレッド名やレスの前後の状況、そのお店で働いている実態などを踏まえ、「ある人を特定したうえで誹謗中傷している」と評価できるということになります。

もちろん、同定可能性が認められると判断できた場合には、事実を摘示して社会的評価を下げたといえるかどうか、プライバシーとして保護される内容かといったことを検討する必要があります。

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まず確認したい!誹謗中傷にあったときの3つの注意点

ログの保存期間に注意

各プロバイダ会社によりますが、アクセスログの保存期間は3か月程程度であり、その期間を超えると既に消えてしまっていたということが多いです。
もちろん、3か月よりも短い場合や長い場合がありますので、あくまで一種の目安といえるでしょう。

そのため、せっかくコンテンツプロバイダからIPアドレスやタイムスタンプが開示されたとしても、既にアクセスログが消えてしまっていたということが起きてしまいます。
そうならないためにも、誹謗中傷を受けたと感じられた場合にはすぐに弁護士にご相談いただき、弁護士側で誹謗中傷であると判断できた場合には、スピード感をもって申し立てる必要性があります。

証拠の残し方に注意

弁護士にご相談いただく前に、事前にスクリーンショットで証拠を保存していただいている場合があります。
ただ、誹謗中傷を内容とする投稿が記載されていても、投稿されたURLを含めての保存ができていないことがあります。
その場合は、残念ながら証拠として使用できない場合があります。また、技術的な観点から少し特殊な証拠保存を求められる場合もあります。

そこで、弁護士に相談をする際には、誹謗中傷を内容とする投稿を必ずご共有いただくことで、円滑にご相談をお受けして今後の見通しを把握するための検討ができます。
また、ログの保存期間の関係で、極めてスピード感を重視して対応する必要がありますので、弁護士側が証拠として使用できる形で証拠を保存しておき、効率的に事前準備を進めることができます。

相手を刺激しないよう注意

いわれのない誹謗中傷をされたら極めて気分が悪いですし、反論したくなる気持ちになるのは当然だと思います。
ですが、反論することでかえって誹謗中傷が加速し、いわゆる炎上状態になることもあり得ます。
まずは冷静に、誹謗中傷を受けた証拠をしっかりと保存しておきましょう。
たとえばYouTubeだと、アカウントをブロックをしたことによって誹謗中傷を内容とするコメント自体が消えてしまい、開示請求が困難になるなどの弊害があるので注意が必要です。

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誹謗中傷されたときの4つの対処法

無視する

誹謗中傷されたときの対応手段として、無視するという方法は考えられます。
たとえば、一時的な炎上が原因だったり、または誰から見ても嘘だと判断できるような内容で実害を被っていないといった場合には、無視することも1つです。

ただ、無視しておくことで派生したトラブルが起きることは十分にあり得ます。
いわれのない噂が出回ったり、放置することで繰り返し誹謗中傷がなされるリスクは存在します。
そのため、無視して放置するよりも、どこかのタイミングで少なくとも弁護士や警察に相談することをおすすめします。

削除請求をする

誹謗中傷をされた場合には、まずは証拠を保存しておくことを前提に、「法的に削除を請求することができるかどうか」を検討する必要があります。
そのうえで、コンテンツプロバイダ(サイト管理者)に対して削除請求を行います。
コンテンツプロバイダによっては独自の削除フォームを用意しているので、各コンテンツプロバイダの利用規約や削除基準を参照しながら、任意での削除を求めていくことが考えられます。

任意での削除請求は、裁判手続きに比べて迅速に削除できる可能性がありますが、必ず削除されるとは限らないため、サイト管理者を対象に、裁判手続き(仮処分)を利用して削除していくことを検討する必要があります。
ただ、注意点として、今後、発信者を特定するために開示請求をしたいと考えられている場合には、投稿内容について証拠を保全しておかなければいけません。
そのため、削除請求をする際には、手順を誤らないことが重要になります。

また、せっかく削除できたにもかかわらず、執拗に誹謗中傷を行う方は一定数いますし、かえって誹謗中傷を内容とする投稿数が増加して被害が拡大することは否定できません。
削除をしてはまた投稿するといったいたちごっことなる可能性もあるので、削除をすることだけが根本的な解決に適さない場合があります。

そこで、実際に投稿した人物を特定するために、プロバイダ責任制限法に基づき発信者情報開示請求手続き(仮処分・訴訟)または発信者情報開示命令(非訟手続)の申立てを行っていく必要があります。

発信者情報開示請求をする

前述した削除請求のデメリットの1つである、削除してもまた誹謗中傷が繰り返されることを防止するため、「投稿者を特定して損害賠償請求や今後誹謗中傷しない旨の合意をする」、そして「捜査機関に対して刑事告訴をして刑事処罰を求める」ということが考えられます。

発信者情報開示請求をして投稿者を特定することにより、「今後、同じような誹謗中傷を行えば、法的に厳粛に対処する」といった強いメッセージを発信することができます。
そうすることで、根本原因を取り除いたうえで、今後の誹謗中傷を予防しておくことが可能となります。

デメリットとしては、申立てを行ったからといって、必ずしも情報が開示されて投稿者を特定できるわけではないということです。
そもそも法的に誹謗中傷であるかどうかに大きな争いがあり、請求が認められないということもあり得ます。
また、請求が認められたとしても、例えばコンテンツプロバイダであれば「保有情報を確認する」として事実上開示が遅延する場合、既に情報が消えてしまっている場合などがリスクとして存在します。
また、IPアドレスやタイムスタンプが開示され、契約者を特定しようとしても、不特定多数が使用する回線で誰が使用しているのかわからなかったり、技術的な問題からプロバイダ間の相性が悪いなど、様々な理由で発信者の特定に至らない場合があります。

損害賠償請求をする

発信者情報開示請求により投稿者を特定できた場合や、誹謗中傷をしている相手方が既に判明している場合には、今後誹謗中傷をしない旨の警告書を送付したり、誹謗中傷されたことをもって慰謝料請求をしていくことになります。
まずは任意で交渉することが多いですが、そもそも話し合いにならない場合や合意の条件面に折り合いがつかない場合には、訴訟で解決を図ることを検討します。

デメリットとして、訴訟によって認定される慰謝料の金額は比較的低額になることが多く、数千円程度から100万円程度と幅があります。
また、慰謝料を認める判決を取得したとしても、相手にお金がなければ最終的に回収できないこともあり得ます。
そのため、時間と費用をかけてどこまで投稿者の責任を追及するかは、その後の見通しを踏まえて慎重に検討する必要があります。

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発信者情報開示請求の具体的プロセスを解説

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プロバイダ責任制限法に基づき、まずはコンテンツプロバイダに対して発信者情報開示請求(仮処分)または発信者情報開示命令(非訟)の申立てを行います。
そのうえで、請求が認められれば、発信者のIPアドレスとタイムスタンプの情報を得ることができます。

その後、コンテンツプロバイダから開示された情報をもとに、アクセスプロバイダ(NTTやKDDIなど)に対して発信者情報開示請求訴訟または発信者情報開示命令の申立てを行います。
その際には、アクセスログが消されてしまわないように、訴訟手続であればアクセスログの消去禁止の仮処分を、開示命令であれば消去禁止命令の申立てを行なっておきます。

そして、裁判所が請求を認めれば、アクセスプロバイダの契約者である発信者の住所や氏名が判明することになります。

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弁護士に依頼するメリット

Authense法律事務所では、誹謗中傷に関する多数のご相談をお受けしております。
特に、発信者情報開示命令は新設された制度であることや、各プロバイダやサイト管理者の対応が日々変化していることもあり、変化に応じた実務上の対応が求められます。
また、ログの保存期間の関係で、迅速かつ正確に申し立てることが要求されますので、初めて誹謗中傷を受けてどうしようと悩まれているうちに、既にログが消えてしまっていたということにもなりかねません。
そこで、弁護士に依頼することで迅速かつ正確に申立てを行い、適切に対処をしていくことが可能となります。

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まとめ

源氏名に対して誹謗中傷を受けた場合であっても、名誉棄損などであるとして不法行為が成立する可能性は十分にあります。
特に、夜職の方々に対する誹謗中傷は比較的多い部類であることから、いわれのない誹謗中傷を受けることで心も傷つきますし、お店の営業にも支障をきたす場合があるでしょう。
また、仕事以外のプライバシー情報が流出していると言った場合には、ストーカー被害といった二次被害が起きる可能性もあります。
誹謗中傷を受けたと考えられた際には、法的に誹謗中傷といえるのかどうかを判断するためにも、一刻も早くご相談いただければと思います。

記事を監修した弁護士
authense
Authense法律事務所記事監修チーム
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