コラム

公開 2023.11.28

盗撮で後日逮捕されることはある?逮捕された場合の流れを弁護士がわかりやすく解説

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盗撮をしてしまった場合、その場で逮捕されなくても、後日に逮捕される可能性があります。

盗撮というと、その場でスマートフォンなどの証拠とともに取り押さえられる現行犯逮捕をイメージするかもしれません。
しかし、防犯カメラなどの映像が決め手となり後日逮捕されるケースもあります。

では、盗撮で後日逮捕されると、その後はどのような流れになるのでしょうか?
また、盗撮の嫌疑がかかった際に弁護士へ相談することにはどのようなメリットがあるでしょうか?

今回は、盗撮での後日逮捕について弁護士が詳しく解説します。

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(神奈川県弁護士会)
神奈川県弁護士会所属。中央大学法学部法律学科卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了。離婚、相続を中心に家事事件を数多く取り扱う。交渉や調停、訴訟といった複数の選択肢から第三者的な目線でベストな解決への道筋を立てることを得意とし、子の連れ去りや面会交流が関わる複雑な離婚案件の解決など、豊富な取り扱い実績を有する。
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盗撮事件の後日逮捕とは

盗撮事件の後日逮捕とは、盗撮をしたその場で取り押さえられるのではなく、逮捕令状をもとに後日に逮捕されることです。
後日逮捕が本来の逮捕の形であることから、「通常逮捕」とも呼ばれます。

盗撮事件では犯行現場で取り押さえられる現行犯逮捕が多いものの、防犯カメラの映像などがもととなり後日逮捕がされることも少なくありません。
現行犯逮捕と後日逮捕との主な違いは、次のとおりです。

逮捕のタイミングが違う

現行犯逮捕が認められるのは、現に罪を行っているときと、現に罪を行い終わったときのみです(刑事訴訟法212条)。
また、次に該当する場合にも、罪を行い終わってから間がないと認められる場合には現行犯逮捕が認められます。

  1. 犯人として追呼されているとき
  2. 明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器などを所持しているとき
  3. 身体や被服に犯罪の顕著な証跡があるとき
  4. 声をかけられて逃走しようとするとき

一方、これら以外のタイミングで行う場合は、原則として後日逮捕に該当します。

令状の要否が違う

現行犯逮捕では、令状の発布を受ける必要がありません。
そもそも現行犯逮捕の性質上、令状をとるだけの時間的な余裕がないことが一般的です。

一方、後日逮捕をするためには逮捕令状が必須とされます。

逮捕できる人が違う

現行犯逮捕は、誰でも行うことが可能です。
一方、後日逮捕をすることができるのは、警察官など一定の人に限定されます。

盗撮事件で後日逮捕される主なケース

盗撮事件では、その場で取り押さえられる現行犯逮捕が多いといえます。
しかし、次の場合は盗撮事件で後日逮捕される可能性があります。

現場から逃走した場合

その場で犯行が発覚したものの、被疑者(犯罪の嫌疑をかけられている者)がその場から逃走した場合は、後日逮捕がされる可能性があります。

盗撮が後日発覚した場合

たとえば、トイレや更衣室に隠しカメラを仕掛けて盗撮を行った場合など、盗撮自体が後日発覚した場合は後日逮捕がされる可能性があります。

逮捕される2つの要件

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逮捕とは、被疑者に対する短時間の身体拘束を指します。

勘違いしている人も少なくありませんが、「逮捕=有罪」ではありません。
逮捕後に起訴されて有罪となることも多い一方で、逮捕されず在宅のまま(通常の生活を送りながら)必要なときだけ捜査機関に呼び出され、その後起訴されて有罪となることもあり得ます。

また、逮捕がされたものの証拠が不十分であったり被害者と示談が成立したりしたことなどによって、不起訴(刑事裁判にかけないこと。)が決まることもあります。

盗撮で後日逮捕されるための主な要件は次のとおりです。

要件1:嫌疑の相当性があること

1つ目の要件は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることです(同199条1項)。

ただし、30万円以下の罰金や拘留、科料にあたる罪について逮捕ができるのは、次のいずれかの要件を満たすときのみとされています。

  • 被疑者が定まった住居を有しない場合
  • 正当な理由がなく出頭の求めに応じない場合

とはいえ、盗撮は次のいずれかの罪にあたる可能性が高く、いずれも「30万円以下の罰金や拘留、科料にあたる罪」には該当しません。

  1. 各都道府県の迷惑行為防止条例違反:6か月以下の懲役または50万円以下の罰金、実際に撮影した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金(東京都の場合)
  2. 性的姿態撮影等処罰法違反(通常「撮影罪」):3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金

要件2:逮捕の必要性があること

2つ目の要件は、逮捕の必要性があることです。

たとえ罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があったとしても、「明らかに逮捕の必要がないと認めるとき」は逮捕をすることができません(同条2項)。
被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがない場合は、この「明らかに逮捕の必要がないと認めるとき」に該当する可能性が高く、これらのおそれがないことを弁護士から説明してもらうことで逮捕を回避できる可能性があります。

盗撮で後日逮捕された場合の流れ

盗撮で後日逮捕がされた場合、どのような流れとなるのでしょうか?
一般的な流れは次のとおりです。

警察が盗撮事件を捜査する

盗撮事件が起きたことを捜査機関が知ると、事件の捜査が開始されます。

盗撮は被害者からの告訴がないと起訴することができない「親告罪」ではありません。
そのため、被害者からの被害届の提出や告訴によって捜査が開始されることもありますが、目撃者による通報などによって捜査が開始されることもあります。

逮捕される

捜査が進行して被疑者が特定され、逮捕の必要性があると判断されると、逮捕がなされます。
逮捕後は、警察の留置施設(留置所)に最大48時間身柄が拘束され、取り調べを受けることとなります。
なお、逮捕されるとスマートフォンなどの通信機器は留置施設内では使用できず、、弁護士以外の外部とも連絡がとれなくなります。

送致される

逮捕から48時間以内に送致されます。
送致とは、検察に身柄が送られることです。

送致されると拘束場所が拘置所に変わることが一般的であるものの、警察の留置所にそのまま勾留されることもあります。
送致されると検察による捜査が開始され、24時間以内に勾留請求か釈放かが決定されます。

検察で勾留される

勾留が決まると、そのままさらに10日間の身体拘束がなされます。
この間にも捜査が進行します。

必要に応じて勾留が延長される

検察が裁判所から許可を得ることで、勾留期間はさらに10日間延長される可能性があります。
ここまでの期間を総合すると、最大でトータル23日間(=警察:2日+検察:1日+10日+延長分:10日)身柄が拘束される可能性があります。

勾留期間中は、当然ながら会社に出勤することなどはできません。
また、外部との連絡も著しく制限されます。
そのため、勾留期間が長くなればなるほど社会生活に影響が及ぶ可能性が高くなります。

起訴・不起訴が決まる

捜査が終わると、検察により起訴か不起訴かが決定されます。
起訴とは、被疑者を刑事裁判にかけることです。

一方、不起訴とは刑事裁判にかけないことです。
不起訴が決まるとその時点で釈放され、前科などはつかないままで事件は終結します。

刑事裁判が開かれ刑が確定する

起訴がされると刑事裁判が開かれ、被疑者の刑が確定します。
日本では、起訴されると99%以上の確率で有罪になるといわれています。

ただし、たとえ有罪となっても執行猶予付きの判決が得られれば、釈放されて日常生活を送ることが可能です。
執行猶予とは、一定期間中刑の執行が猶予され、トラブルを起こすことなくその期間を過ごすことで、刑の言渡しの効力を失わせる制度です。
起訴されてしまった場合は、執行猶予付きの判決を目指すこととなります。

盗撮の嫌疑をかけられた際に弁護士へ相談する主なメリット

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盗撮をしてしまった場合や盗撮の嫌疑をかけられてしまった場合は、早期に弁護士へご相談ください。
弁護士へ相談する主なメリットは次のとおりです。

逮捕を避けられる可能性がある

弁護士へ相談することで、逮捕を避けられる可能性があります。
先ほど解説したように、逮捕をするには「明らかに逮捕の必要がないと認めるとき」には逮捕をすることができません。
そこで、弁護士を介して逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを主張することで、逮捕を避けられる可能性が高くなります。

示談交渉によって不起訴となりやすくなる

弁護士へ相談することで、示談交渉がまとまり不起訴となりやすくなります。
示談とは、加害者が事件の被害者に対してまとまった示談金を支払うとともに謝罪をして、被害者から宥恕(許し)を受けることです。

示談と不起訴との関係

示談は本来民事の世界の話であり、逮捕や起訴などといった刑事の世界の話ではありません。
しかし、実際は示談がまとまることで不起訴になりやすいほか、たとえ起訴されても執行猶予が付く可能性が高くなります。
そのため、盗撮事件を起こしてしまった被疑者は、まず被害者との示談を目指すこととなります。

示談交渉で弁護士が必要となる理由

被害者と示談交渉を進めるには、弁護士への依頼が必須といっても過言ではありません。

まず、示談交渉をしようにも、加害者は被害者の連絡先を知らないことが一般的です。
そこで捜査機関を経由して、加害者に連絡先を教えてよいか被害者に尋ねてもらうこととなります。

しかし、盗撮という犯罪の性質上、加害者に直接連絡先を開示してよいとの回答が得られることはほとんどありません。
そこで、加害者には直接連絡先を知らせないとの条件で、加害者側の弁護士にのみ連絡先を開示してくれるよう交渉することとなります。
これにより、連絡先の開示について承諾が得られれば、示談交渉を始めることが可能となります。

また、被疑者が逮捕されている場合には、被害者と直接示談交渉をすることができません。
このような理由から、盗撮事件での示談交渉は弁護士が代理して行うことが一般的です。

示談がまとまったら示談書を作成する

無事に示談交渉がまとまったら、示談金の支払いと引き換えに示談書に署名をもらいます。
示談書には、次の事項を記載することが一般的です。

  • 事件の概要
  • 加害者が謝罪の意を示している旨
  • 合意した示談金の額
  • 被害者がその示談金を受け取った旨
  • 被害者が加害者の刑事処分を求めない旨
  • 他に債権債務がないことの確認文

示談書に署名をもらったら、これを捜査機関に提示します。

なお、示談書には被害者の住所や氏名を記載することが一般的ですが、この原本は加害者側の弁護士が保管し、加害者本人には被害者の情報をマスキングしたものを渡すことが一般的です。

まとめ

盗撮事件を起こした場合、現行犯逮捕がされることが多いものの、状況によっては後日逮捕がされる可能性もあります。
そのため、盗撮をすべきでないことはもちろん、万が一盗撮事件を起こしてしまったら早期に弁護士へご相談ください。
弁護士へ相談することで逮捕が回避できる可能性があるほか、示談交渉の結果によっては不起訴となる可能性もあるためです。

Authense法律事務所では性犯罪トラブルの解決に力を入れています。
盗撮事件を起こしてしまった場合や盗撮の嫌疑をかけられてお困りの際などには、Authense法律事務所までお早めにご相談ください。

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