コラム

公開 2022.12.14 更新 2024.04.24

SNSで誹謗中傷を受けたらどうする?対処方法や事例を弁護士がわかりやすく解説

誹謗中傷_アイキャッチ_03

SNS上での誹謗中傷が、社会問題となっています。

では、もし自分がSNSで誹謗中傷を受けたら、相手に対してどのような法的責任が追及できるのでしょうか?
今回は、インターネット上の誹謗中傷について相手を訴えたり慰謝料請求したりする方法やポイントを弁護士がわかりやすく解説します。

  • オペレーター
  • ささいなお悩みもお気軽に
    お問合せください

    初回相談60分無料※一部例外がございます。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

誹謗中傷とは

「誹謗中傷」について、法令に明確な定義があるわけではありません。
ただし、警察庁のホームページには誹謗中傷について、「悪口や根拠のない嘘等を言って、他人を傷つけたりする行為」と説明がされています※1
こちらは、多くの人がイメージする誹謗中傷と違いはないものと思われます。

SNSでの誹謗中傷はなぜ起こる?

誹謗中傷とは、悪口や根拠のない嘘などを言って、他人を傷つけたりする行為です。
誹謗中傷は損害賠償請求を受ける理由となる場合があるほか、刑法上の侮辱罪や名誉毀損罪などに該当する場合もあります。

では、SNSでの誹謗中傷は、なぜ起きてしまうのでしょうか?
その主な理由は、次のとおりです。

匿名であるため

多くのSNSでは、ユーザーが匿名で利用できます。
そのため、自分が誰だかわからないであろうとの安心感から、安易に相手を攻撃する可能性があります。

相手の顔が直接見えないため

SNSでは対面での悪口などとは異なり、相手の顔を直接見ることができません。
そのため、相手が傷ついていることへの想像力が働かず、エスカレートしやすいといえるでしょう。

法的請求のハードルが高いため

後ほど解説するように、SNSでの誹謗中傷へ法的責任を追求するためには、まず相手を特定しなければならず、法的責任を追及するハードルは低いものではありません。

そのため、「どうせ法的責任の追及まではしてこないだろう」との算段で誹謗中傷をする場合もあります。

表現の自由との線引きが難しいため

表現の自由とは、外部に向かって思想・主張などを表現する自由であり、日本国憲法21条にある「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」との規定を根拠とする権利です。

SNSでの投稿にも当然表現の自由があります。
表現の自由として保障される範囲内なのか範囲外なのかは、事例ごとに判断されることとなります。

誹謗中傷をする人の中には、「表現の自由があるから、何を言っても自分の自由だ」と誤解している人もおり、これもSNSで誹謗中傷が起きる理由の一つでしょう。

SNSでの誹謗中傷事例

SNS上での誹謗中傷は後を絶ちません。
SNS上での誹謗中傷事例には、次のものなどが存在します。

プロレスラーの女性への誹謗中傷

テレビのリアリティ番組に出演していたプロレスラーの女性に対し、SNS上で「死ねや、くそが」「きもい」などと書き込んだ事例です。※2
この女性は誹謗中傷を苦に、自ら命を絶っています。

加害者の男性は侮辱罪に問われ、科料9,000円の略式命令を受けましたが、ときに人の命をも奪う誹謗中傷への罪が軽すぎるとして社会問題へと発展しました。
このような社会的関心の高まりなどもあり、侮辱罪の罪が厳罰化されるに至っています。

なお、これに関連しては亡くなったプロレスラーの女性の母親に対する誹謗中傷も多く、2023年2月までに3人が書類送検されています。※3

女性タレントへの誹謗中傷1

がんの手術を受けた女性タレントに対して、インターネット上の掲示板に「住所が判明し次第、殺しに行く」「首を切断して殺す」などと書き込んだ事例です。
この事件では、書き込んだ男性は侮辱罪と脅迫罪に問われており、検察側から懲役1年6か月を求刑されました。※4

男性は「仕事がうまくいかず、自分のイライラを発散するためにやった。ヤフーニュースや目立つところに出ている芸能人にイラッとした。」などと話しており、自分勝手な理由から関係のない芸能人を誹謗中傷していた背景が伺えます。

女性タレントへの誹謗中傷2

女性タレントに対し、インターネット掲示板で、海外滞在中に「放火するチャンス」などと書き込んだ事例です。
この事例では、2人の女性が侮辱罪で書類送検されています。※5

書類送検された女性は「ほかの人も書いているし大丈夫だろう、バレないだろうと思った。」などと話しているといい、安易な思いで誹謗中傷をしたようです。

SNSで誹謗中傷を受けた場合の対応方法の全体像

素材_悩んでいる人
SNSで誹謗中傷を受けた場合には、どのように対応すればよいのでしょうか?
まずは法的な対応のみに限らず、対応方法の全体像について解説していきましょう。※6

投稿を削除して欲しい場合

誹謗中傷する投稿を削除して欲しい場合には、SNS運営企業などに削除請求をすることができます。
ただし、SNSの投稿は相手の表現の自由とのバランスが難しく、SNS各社が任意で請求に応じてくれる可能性は高くありません。

また、刑事告訴や損害賠償請求を検討している場合には、削除請求をするかどうかについて慎重に検討する必要があります。
なぜなら、先に削除請求をして証拠である投稿が削除されてしまうと、適切に証拠保全を行っていない場合などにおいては、刑事告訴や損害賠償請求が難しくなる可能性が高いためです。

削除請求のタイミングなどで迷ったら、誹謗中傷問題にくわしい弁護士へご相談ください。

相手を刑事告訴したい場合

誹謗中傷は、刑法上の「名誉毀損罪」や「侮辱罪」などに該当する可能性があります。※1

  • 名誉毀損罪(刑法230条):「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず」該当する罪(ただし、後ほど解説をするとおり、一定の「違法性阻却事由」があります)
  • 侮辱罪(同231条):「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者」が該当する罪

名誉毀損罪は、公然と事実を摘示して人の名誉を毀損する罪です。
たとえば、X(旧Twitter)の投稿やYouTubeのコメント欄で「X氏は部下と不倫三昧だ」などと書き込む行為は、名誉毀損罪にあたる可能性が高いでしょう。

一方、侮辱罪とは、事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱する罪です。
名誉毀損罪とは異なり、抽象的な暴言であっても該当しうることが特徴です。
たとえば、X(旧Twitter)やYouTubeのコメント欄に「不細工」「でぶ」「キモい」などと書き込む行為は、侮辱罪にあたる可能性があるでしょう。

なお、名誉毀損罪と侮辱罪は、いずれも被害者側から告訴があってはじめて起訴することができる「親告罪」です。
そのため、誹謗中傷をした相手をこれらの罪に問うためには、被害者側から刑事告訴をする必要があります。
また、刑事告訴をする場合であっても、それに先立ち後述の発信者情報開示請求を行う必要がある場合もあります。

刑事告訴をしたい場合には、弁護士へ相談してください。

関連記事

相手へ損害賠償(慰謝料)請求をしたい場合

損害賠償請求とは、自分が受けた損害を金銭で賠償してもらう請求です。
慰謝料請求というと、イメージが湧きやすいかもしれません。

先ほど解説した刑事告訴は刑法上の概念である一方で、損害賠償請求は民法上のものであり、根拠となる法律が異なります。
そのため、損害賠償請求には告訴や被害届の有無は関係ありません。

また、刑法上の名誉毀損罪に該当しなかったとしても、損害賠償請求ができる可能性があります。
相手へ損害賠償請求をしたい場合には、できるだけ早期に弁護士へご相談ください。

  • オペレーター
  • ささいなお悩みもお気軽に
    お問合せください

    初回相談60分無料※一部例外がございます。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。


SNSで誹謗中傷をした相手に損害賠償請求をする流れ

SNSで誹謗中傷をした相手に対して損害賠償請求をする場合、いきなり損害賠償請求をすることができるケースは多くありません。
ほとんどないと言って良いかもしれません。
なぜなら、SNSで誹謗中傷をする相手は匿名であることが多く、アカウント情報のみでは誰であるのかがわからないためです。

インターネット上での誹謗中傷に対して損害賠償請求をするための主な流れは、次のとおりです。

SNSに発信者情報開示請求をする

はじめに、X(旧Twitter)やYouTubeなど誹謗中傷が行われたSNSなどの運営企業等に対して、発信者情報の開示請求を行います。
この開示請求によって、次のステップで必要となるIPアドレスやタイムスタンプなどの情報開示を受けます。

多くの場合、裁判所の手続きを利用して、発信者情報の開示を受けることとなります。

プロバイダに発信者情報開示請求をする

SNS運営企業等から発信者情報の開示を受けたら、そこで開示された情報をもとにプロバイダへ次の段階の発信者情報開示請求を行います。
こちらも多くの場合、裁判所の手続きを利用します。

ここまでを行って、ようやく発信者の氏名などの情報が判明します。
ここまでの手続きにかかる期間は、ケースにより変動しますが、おおむね3ヶ月から半年、長い場合1年ほどと言われています。

損害賠償請求をする

開示請求によって相手の身元が判明したら、そこでようやく損害賠償請求を行うことが可能となります。
相手に対して損害賠償請求を行い、相手が任意に支払わなければ訴訟等による請求を検討する必要があります。

SNSでの誹謗中傷で認められる損害賠償額の目安

SNS上での誹謗中傷に対して認められる損害賠償の金額は、その内容や頻度などによって異なります。

あくまでもおおまかな目安となりますが、被害者が一般個人である場合で1万円前後から30万円程度、事業を営んでいる者や有名人などの場合で5万円前後から50万円程度といわれています。

判断が難しい誹謗中傷への対応

誹謗中傷の中には、法的措置が可能かどうか判断に迷うものもあるでしょう。
次の誹謗中傷への対応や考え方はそれぞれ次のとおりです。

VTuberへの誹謗中傷

VTuberとは、2Dや3Dのアバターを使って活動しているYouTuberのことです。
ただし、最近ではYouTubeのみならず、他の動画配信サイトなどで活動している場合もあり、この場合にもVTuberとの呼称が使用されているようです。

ほとんどのケースにおいて、このVTuberの「中の人」は公開されていません。
そのため、たとえばVTuberである「Aちゃん」をいくら誹謗中傷したところで、中の人である「〇田花子氏」の社会的地位が低下する場合は非常に少ないでしょう。

しかし、誹謗中傷をした人を名誉毀損罪などの刑事罰に問うためには、誹謗中傷によって人の社会的地位が低下したことが必要です。
そこで、VTuberである「Aちゃん」への誹謗中傷に対して法的措置がとれるかどうかが問題となります。

VTuberの運用形態が一律ではないため一概に判断できるものではないものの、現状の法制度においてVTuberに誹謗中傷をした人を刑事罰に問うことは難しいかもしれません。
一方で、VTuberへの誹謗中傷であっても、発信者情報開示請求や損害賠償請求は認められる傾向にあります。

関連記事

著名人のスキャンダル報道

「公然と事実を摘示し、人の名誉毀損した者は、その事実の有無にかかわらず」、名誉毀損罪に該当する可能性があります(刑法230条)。
しかし、仮にこれに該当するすべてが名誉毀損罪に該当するのであれば、政治家の汚職事件や芸能人のスキャンダルなどを報じる記事や報道番組は、すべて名誉毀損罪に該当することとなるでしょう。

現状そのような事態となっていないのは、名誉毀損罪には「違法性阻却事由」が設定されているためです。
違法性阻却事由とは、その要件に該当する限り違法とはならない要件を指します。

次の要件をすべて満たす場合には名誉毀損罪の違法性が阻却され、名誉毀損罪に問われることはありません(同230条の2)。

  1. 公共の利害に関する事実に係るものであること
  2. その目的が専ら公益を図ることにあったと認められること
  3. 事実の真否を判断し、真実であることの証明があったこと

そのため、政治家の汚職が事実であればこの違法性阻却事由に該当する可能性が高く、これを報じた記者などは罪に問われないということです。

SNSで誹謗中傷した相手に損害賠償請求をする際の注意点

素材_ポイント_注意点

SNSで誹謗中傷をされた場合、相手に対して損害賠償請求をしたいと考えている場合には、次の点に注意しましょう。

スクリーンショットで証拠を保存する

誹謗中傷の投稿に対して発信者情報開示請求や損害賠償請求などを検討している場合には、誹謗中傷された投稿のスクリーンショットを撮影するなどして証拠を保全しておきましょう。
スクリーンショットを撮影する際には、次の項目が写るように撮影しましょう。

  • 該当する投稿の内容
  • 投稿者名
  • ユーザー名(Xでは「@」から始まるもの)
  • 投稿の前後になされた一連の投稿
  • 投稿された日時
  • 投稿に番号が付されるような場合にはその番号
  • URL

投稿のスクリーンショットのみでは相手のアカウント名は掲載されても、ユーザー名の表示が不完全である可能性があります。
そのため、投稿画面のほか、相手のプロフィール画面などのスクリーンショットも撮影しておくとよいでしょう。

できるだけ早く行動する

インターネット上での誹謗中傷に損害賠償請求をするためには、できるだけ早く行動しましょう。
なぜなら、投稿から時間が経過するとSNS運営企業やプロバイダなどでのログ保存期間が過ぎてしまい、責任の追及が困難となってしまうためです。

ログの保存期間は企業などによって異なりますが、おおむね3か月から6か月程度としていると言われています。
また、保存期間内であっても、相手が投稿を削除してしまえば損害賠償請求が困難となる可能性があります。

そのため、誹謗中傷を受けたらできるだけ早く、可能であれば投稿された当日や翌日に弁護士へ相談するとよいでしょう。

早期に弁護士へ相談する

誹謗中傷への対応を無理に自分で行うことはおすすめしません。
相手から一方的に誹謗中傷をされれば反論したくなるかとは思いますが、言い返したり先にダイレクトメールを送ったりすると、発信者情報開示請求や損害賠償請求などにおいて不利となる可能性があるためです。

その場では無視を装ったうえで、すぐに弁護士へ相談しましょう。

まとめ

SNSで誹謗中傷を受けた際、損害賠償請求をするためにもっとも重要なポイントは、できるだけすぐに弁護士へ相談することです。
トラブルの発生からすぐに弁護士へ相談することで解決までの期間が早まるほか、損害賠償請求が認められやすくなる可能性もあるでしょう。

Authense法律事務所ではSNS上での誹謗中傷の解決に力を入れており、これまでも多くの案件で損害賠償請求を成功させてきました。
初回の60分は無料相談としていますので、SNSで誹謗中傷をされたらできるだけすぐにAuthense法律事務所までご相談ください。

記事を監修した弁護士
authense
Authense法律事務所記事監修チーム
Authense法律事務所の弁護士が監修、法律問題や事例についてわかりやすく解説しています。Authense法律事務所は、「すべての依頼者に最良のサービスを」をミッションとして、ご依頼者の期待を超える弁護士サービスを追求いたします。どうぞお気軽にご相談ください。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら
  • オペレーター
  • ささいなお悩みもお気軽に
    お問合せください

    初回相談60分無料※一部例外がございます。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

  • オペレーター
  • ささいなお悩みもお気軽に
    お問合せください

    初回相談60分無料※一部例外がございます。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

初回相談60分無料※一部例外がございます。