コラム

公開 2023.03.29 更新 2024.04.15

職場での悪口などに名誉毀損は成立する?弁護士がわかりやすく解説

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名誉毀損とは、相手の社会的評価を下げる事実を適示することなどです。
最近では、インターネット上での名誉毀損や誹謗中傷が、社会問題となっています。

では、職場での悪口などであっても、名誉毀損罪は成立するのでしょうか?
また、会社の悪口などを口コミサイトなどに書き込んだ場合にはどうなのでしょうか?

今回は、職場での悪口や職場である会社の悪口などと名誉毀損について、弁護士がくわしく解説します。

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名誉毀損とは

名誉毀損とは、相手の社会的評価を下げる事実を適示することなどを指します。
刑法には「名誉毀損罪」という罪が存在し、その内容は次のとおりです(刑法230条)。

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する

軽い気持ちで発した悪口であっても、名誉毀損罪に該当する可能性があります。
名誉毀損罪が成立する要件については、後ほどくわしく解説します。

名誉毀損罪は職場での悪口にも成立する?

名誉毀損罪は、インターネット上に限らず、職場での悪口などであっても成立するのでしょうか?
実際に名誉毀損罪が成立するかどうかは発言の悪質性や内容、影響の大きさなどによって異なるものの、基本的な考え方は次のとおりです。

1対1のメールでは原則として成立しない

まず、対象となる相手に直接1対1のメールでした発言は、名誉毀損罪にあたりません。

また、他者に聞こえない会議室内で相手に対して1対1でした発言も、名誉毀損罪の成立要件を満たさないでしょう。
なぜなら、後ほど解説をするとおり、名誉毀損罪が成立するためには、その発言が「公然と」行われたものである必要があるためです。

ただし、名誉毀損罪が成立しないとしても、行った言動の内容などによっては、パワハラなどとして損害賠償請求の対象となる可能性などはあります。

複数人が知れる状態なら成立し得る

相手の社会的評価を下げる発言が複数人に知れる状態でされたのであれば、たとえ職場での発言であったとしても、名誉毀損罪は成立する可能性があります。
たとえば、同僚などがいる場での大声での発言や、複数人に対するメールの送信などです。

職場での悪口などだからといって名誉毀損罪が成立しないわけではないため、誤解のないよう注意しましょう。

名誉毀損に対してとれる法的手段

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職場で名誉毀損の被害にあった場合、どのような法的手段が検討できるのでしょうか?

名誉毀損への法的手段としては、「刑事」と「民事」の2つがあります。
そして、これら両方の責任を追及する場合もあれば、いずれか一方の責任のみを追及する場合もあります。

これは、被害者の希望や行われた名誉毀損の内容などによって決めていくことになりますので、弁護士と相談したうえで検討するとよいでしょう。
それぞれの法的措置の概要は次のとおりです。

刑法上の罪に問う(刑事)

名誉毀損への法的措置の1つ目は、刑事上の責任を問うことです。
こちらの最終的なゴールは、相手の行為について警察や検察に捜査してもらい、相手を罪に問うことにあります。

名誉毀損に関する罪には、「名誉毀損罪」があり、それに似た罪としては「侮辱罪」が存在しますが、いずれも親告罪とされています(同法232条)。
親告罪とは、被害者側からの告訴がない限り、検察が独自に起訴することができない罪です。
そのため、名誉毀損罪や侮辱罪で相手を有罪にしたい場合には、まず被害者側が告訴をしなければなりません。

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一般的に、告訴は警察に対して告訴状を提出する形で行われます。
その後、警察が事件の捜査をして、検察に送致されます。
この際、逃亡の恐れなどがあると判断されれば身柄の拘束(逮捕)がされることもありますが、逮捕されずに在宅のまま捜査が進むことが多いです。

検察に送致がされると、検察官が取り調べなどをしたうえで、起訴するか不起訴とするかを決定します。
不起訴となればそこで事件が終了する一方で、起訴されれば刑事裁判が開始されます。なお、略式起訴の場合には公判は開かれません。
この刑事裁判で有罪か無罪かが決定されます。

名誉毀損罪と侮辱罪の概要は、それぞれ次のとおりです。

名誉毀損罪

名誉毀損罪とは、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者」が該当する罪です(同法230条)。
これに該当した場合には、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処される可能性があります。

名誉毀損罪の成立要件については、後ほどくわしく解説します。

侮辱罪

侮辱罪とは、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者」が該当する罪です(同法231条)。
名誉毀損罪とは異なり、「事実の摘示」は要件とされていません。
そのため、抽象的な悪口の場合には名誉毀損罪には該当しない一方で、侮辱罪に該当する可能性があります。

これに該当した者は、次のいずれかの刑罰に処される可能性があります。

  • 1年以下の懲役
  • 1年以下の禁錮
  • 30万円以下の罰金
  • 拘留
  • 科料

なお、侮辱罪の以前の刑罰は「拘留又は科料」のみであったところ、令和4年(2022年)7月7日より厳罰化されました。

損害賠償請求をする(民事)

名誉毀損へのもう1つの法的措置は、民事上の責任を追及して損害賠償請求をすることです。
損害賠償請求とは、相手の行為によって生じた損害を、金銭で賠償してもらうための請求です。
こちらのゴールは、相手方に相当の金銭を支払わせることにあります。

なお、損害賠償請求はあくまでも民事上の手続であり、損害賠償請求が認められたからといって、相手の刑事責任も当然に認められるわけではありません。

職場での名誉毀損に対して損害賠償請求をする際には、まず相手に対して直接損害賠償請求をすることとなるでしょう。なお、多くの場合そうではありませんが、その態様等によっては会社を訴えるということもあり得ます。
弁護士へ依頼した場合には、弁護士から内容証明郵便を送るなどして請求することが一般的です。
相手が任意での支払いに応じない場合には、裁判を提起することとなります。

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名誉毀損罪の成立要件

職場での悪口などに刑法上の名誉毀損罪が成立するための要件は、次のとおりです。

「公然と」に該当すること

1つ目の要件は、「公然と」行われたものであることです。
そのため、第三者に聞こえない場所や第三者が通常は見ない1対1のメールなどで行われた発言は、名誉毀損罪には該当しないでしょう。

一方、他に多くの人がいる場で行われた場合や、複数の者が見る可能性のある場所に書き込まれた場合などには、この要件を満たす可能性が高いといえます。

「事実を摘示」すること

名誉毀損罪を成立させるには、「事実の摘示」が必要です。

たとえば、単に「営業課の〇〇太郎は役立たず」といった発言であれば、何ら具体的な事実を示していないため、名誉毀損罪には該当しません(ただし、発言の態様などによっては侮辱罪などに該当する可能性はあります)。
一方、「営業課の〇〇太郎は顧客の金を着服している」という発言は、事実を摘示していると判断される可能性があるでしょう。

なお、ここでの「事実」とは「真実」という意味ではなく、具体的な内容でさえあれば、嘘の内容であってもこれに該当します。

「人の名誉を毀損」したこと

名誉毀損罪の成立には、「人の名誉を毀損」したことが必要です。
「名誉を毀損」するとは、その人の社会的評価を低下させることを指します。

そのため、いくら発言によって本人の感情が傷ついたとしても、社会的評価を低下させるとは認められない発言であれば、名誉毀損罪は成立しません。

同定可能性があること

名誉毀損罪が成立するためには、同定可能性が必要であるとされています。
同定可能性とは、その投稿が誰を指しているのかわかることを意味します。

なお、これは「〇田一郎」など一部を伏せ字にしたからといって、同定可能性がないといえるわけではありません。
仮に伏せ字やイニシャルであっても、見た人が誰のことであるの判別できるような場合には、同定可能性があると判断される可能性があります。

違法性阻却事由に該当しないこと

他の要件をすべて満たす場合であっても、次の要件をすべて満たす場合には、犯罪とはなりません。

  • 公共の利害に関する事実に係るものであること
  • その目的が専ら公益を図ることにあったと認められること
  • 真実であることの証明があったこと

これに該当する典型的なものとしては、政治家の不祥事に関する報道が挙げられるでしょう。

名誉毀損罪は会社の悪口でも成立する?

名誉毀損罪は、会社に対する悪口などであっても成立するのでしょうか?
たとえば、職場である会社の悪口などを転職サイトの口コミとして投稿した場合や、会社の評判を下げるような内情をSNSなどに投稿した場合などです。

会社だからといって成立しないわけではない

結論としては、名誉毀損の相手が企業であるからといって、名誉毀損罪が成立しないわけではありません。
名誉毀損罪の成立要件である「人の名誉を毀損」の「人」には、会社などの法人も含まれると解されるためです。

そのため、転職サイトやSNSなどで職場など会社の悪口などを書き込んだ場合には、名誉毀損罪に該当する可能性があります。会社に対するものであるからといって名誉棄損罪が成立しないというわけではないことに注意しましょう。

評判を下げる書き込みなどでお困りの企業様は、Authense法律事務所までご相談ください。

職場で名誉毀損の被害に遭ったときの対処方法

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職場で名誉毀損の被害に遭った場合には、どのように対処すればよいのでしょうか?
基本の対処方法は、次のとおりです。

証拠を残す

職場で名誉毀損の被害にあった場合には、まず名誉毀損がなされたことの証拠を残しましょう。
たとえば、メールなどで名誉毀損が行われた場合には、そのメールを保存するなどです。

一方、口頭での名誉毀損などの場合には、証拠が残っていないことも少なくありません。
録音をすることも一つの方法ですが、むやみに録音すればそれ自体がプライバシー侵害に該当する可能性もあり、注意が必要です。

証拠についてお困りの際には、まず名誉毀損の内容や状況などをメモに残したうえで、弁護士へご相談ください。

弁護士に相談する

職場での名誉毀損に対して、自分で対応することは容易ではありません。
名誉毀損でお困りの際には、早期に弁護士へご相談ください。

なお、仮に名誉毀損で法的措置をとることが難しい事案であっても、発言の態様などによってはパワハラなどとして責任を追及できる可能性もあります。
自分で判断して法的措置を諦めてしまう前に、弁護士へご相談ください。

まとめ

最近ではインターネット上での誹謗中傷が社会問題になっており、「名誉毀損」というとSNS上でなされるものをまずイメージするかもしれません。
しかし、名誉毀損罪はインターネットが普及する前から存在する罪であり、職場などリアルな場でなされた悪口などであっても、対象となります。
また、会社に対する悪口なども、名誉毀損罪に問われる可能性があります。

名誉毀損でお困りの際には、インターネット上でなされたものかリアルな場でなされたものかにかかわらず、早期に弁護士へご相談ください。
Authense法律事務所には名誉毀損や誹謗中傷問題にくわしい弁護士が多数在籍しており、これまで多くのトラブルを解決してきました。
名誉毀損についてのご相談は、原則として初回60分無料です。
名誉毀損や誹謗中傷の被害でお困りに際には、ぜひ Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。

記事を監修した弁護士
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Authense法律事務所記事監修チーム
Authense法律事務所の弁護士が監修、法律問題や事例についてわかりやすく解説しています。Authense法律事務所は、「すべての依頼者に最良のサービスを」をミッションとして、ご依頼者の期待を超える弁護士サービスを追求いたします。どうぞお気軽にご相談ください。
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