コラム

公開 2023.02.21 更新 2024.04.20

誹謗中傷では逮捕されない?逮捕された事例や法的措置を弁護士が解説

誹謗中傷_アイキャッチ_11

インターネット上での誹謗中傷が、社会問題となっています。
ときに人の命をも奪いかねない誹謗中傷は倫理上問題があるのみならず、刑法上の罪に該当して逮捕される可能性もある行為です。

では、誹謗中傷で逮捕された事例にはどのようなものがあるのでしょうか?
今回は、誹謗中傷で逮捕された事例を紹介するとともに、誹謗中傷に対してとり得る法的措置などについて、弁護士がくわしく解説します。

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誹謗中傷とは

誹謗中傷は法律用語ではなく、「誹謗中傷をしたら〇〇の刑に処する」などと法令に記載されているわけではありません。
一般的には、相手を傷付ける悪口などのことを誹謗中傷ということが多いでしょう。

誹謗中傷は、インターネット上で行われる場合もあるほか、ビラを撒くなど現実社会で行われる場合もあります。

誹謗中傷に対する法的措置

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誹謗中傷の被害を受けた場合には、相手に対してさまざまな法的措置が検討できます。
誹謗中傷に対してとることができる主な法的措置は、次のとおりです。

ただし、どのような内容であれば違法となるのかなどの明確な基準があるわけではありませんので、お困りの際にはまず弁護士へご相談ください。

刑事告訴

誹謗中傷に対する法的措置の1つ目の方法は、刑事告訴です。
刑事告訴とは、警察などに事件を申告し、相手の処罰を求める意思表示のことです。

特に、誹謗中傷に該当しうる侮辱罪や名誉毀損罪は、告訴がなければ相手に刑事責任を追及できない「親告罪」とされています。
そのため、相手の刑事責任を追及したい場合には、刑事告訴をしなければなりません。

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一般的に、刑事告訴をするためには、あらかじめ相手の身元を特定したうえで行う必要があります。
しかし、インターネット上での誹謗中傷の場合には、相手が誰であるのかわからない場合も少なくないでしょう。

そのような際には、誹謗中傷の舞台となったSNSなどの運営企業(X(旧Twitter)社など)とプロバイダ(KDDIなど)に発信者情報の開示請求を行い、相手の特定を行ったうえで刑事告訴を行う流れとすることが多いです。

なお、「誹謗中傷罪」などという罪名は存在せず、次の罪への該当などを検討することとなります。

名誉毀損罪

名誉毀損罪とは、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者」が該当する罪です(刑法230条)。
なお、「事実」とは本当のことという意味ではなく、嘘の内容であっても具体的な内容であれば、これに該当する可能性があります。

たとえば、「〇〇社の〇山A男は会社の金を横領して、不倫三昧」などと多くの人が閲覧できるSNSなどに投稿した場合には、名誉毀損罪に該当する可能性があるということです。

信用毀損罪の刑罰は、3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金です。

侮辱罪

侮辱罪とは、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者」が該当する罪です(同231条)。
名誉毀損罪と異なり、事実の適示が必要とされていないことが特徴です。

たとえば、「〇〇社の〇山A男は無能だ」など具体的な内容を挙げずに相手を侮辱する内容を多くの人が閲覧できるSNSなどに投稿した場合には、侮辱罪に該当する可能性があるでしょう。

侮辱罪の刑罰は、1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です。
従来は勾留もしくは科料のみであったところ、令和4年(2022年)7月7日から「1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金」が追加されました。

脅迫罪

脅迫罪とは、相手や相手の親族の「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者」が該当する罪です(同222条)。
ブログのコメント欄で「お前を殺してやる」などと書き込んだ場合などには、脅迫罪に該当する可能性があるでしょう。

脅迫罪の刑罰は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。

業務妨害罪・信用毀損罪

信用毀損罪とは、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者」が該当する罪です(同233条)。
嘘の情報を流してお店や会社などの評価を下げた場合には、これに該当する可能性があるでしょう。

業務妨害罪・信用毀損罪の刑罰は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

損害賠償請求

誹謗中傷に対する法的措置の2つ目は、損害賠償請求です。
こちらは刑事責任とは異なる民事責任の話であるため、警察や検察は関係ありません。
また、仮に裁判で損害賠償請求が認められたとしても、相手に前科がつくわけではありません。

誹謗中傷をした相手に対して損害賠償請求をするには、まず相手が誰であるのか特定することが必要となります。
たとえば、匿名のアカウントに対して「慰謝料として〇〇円を支払え」という趣旨のメッセージを送ること自体はできたとしても、メッセージを無視されたりアカウントを消されてしまったりすれば、それ以上手の出しようがなく、請求手法として現実的ではないためです。

相手が特定できたら、相手に対して内容証明郵便を送るなどして損害賠償請求を行います。
任意での支払いに応じない場合には、裁判で請求をする流れとなります。

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逮捕とは何か

誹謗中傷での逮捕について解説する前に、そもそも逮捕とは何であるのか解説しましょう。
逮捕イコール有罪(前科がつく)と思っている人も少なくないようですが、実はそうではありません。

逮捕とは

逮捕とは、容疑者の身体を一時的に拘束することです。
誤解される場合がありますが、逮捕をされた時点ではあくまでも罪を犯したと「疑われている」状態でしかなく、有罪が確定したわけではありません。

また、罪を犯した疑いがあるからといってどのような場合でも逮捕ができるわけではなく、現行犯逮捕など一定の場合を除き、逮捕をするには裁判官の発した逮捕状が必要です(刑事訴訟法199条)。
そして、「被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるとき」には逮捕状が発せられず、逮捕することができません(刑事訴訟規則143条の3)。
つまり、たとえ罪を犯した可能性が高い場合であっても、逃亡や証拠隠滅の恐れがない場合には逮捕されないということです。

逮捕されると、警察署の留置施設などで最大48時間身柄が拘束されたのち、検察官に身柄が送致(送検)され、そこでも最大24時間身体拘束を受けることがあります。
その後、検察官が事件の起訴・不起訴を決定します。

在宅起訴とは

在宅起訴とは、逮捕や勾留がされないまま事件の捜査が進み、検察官によって起訴されることをいいます。
起訴がされると刑事裁判に進み、有罪無罪が決定されます。

なお、略式起訴の場合、裁判期日は開かれません。
逃亡や証拠隠滅などの恐れがない場合には、逮捕されず在宅起訴にて捜査が進むことがあります。

逮捕されるかどうかと有罪になるかどうかは別問題

ここまで解説したように、逮捕されるかどうかと、有罪になるかどうかは別の問題です。
逮捕されず、在宅起訴をされた結果有罪となる場合もあれば、逮捕されたものの不起訴とされる場合などもあります。

誹謗中傷をすると逮捕される?

誹謗中傷をした場合、逮捕される可能性は高いのでしょうか?
ここでは、誹謗中傷と逮捕について解説していきましょう。

ネットでの誹謗中傷で逮捕されることは稀

インターネット上での誹謗中傷が原因で逮捕されることは、実はあまりありません。
インターネット上で誹謗中傷をしたことによって逮捕される事例は、有名人に対するものなど、特殊な事情があることが多いでしょう。

これに対して、たとえばビラを撒くなど現実世界での誹謗中傷の方が逮捕されやすい傾向にあるようです。

なお、先ほど解説をしたように、逮捕されることと有罪となることはイコールではありません。
インターネット上での誹謗中傷をした場合、逮捕はされないものの、在宅起訴がされたうえで有罪になることがあり得ます。

誹謗中傷で逮捕された事例

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誹謗中傷で逮捕された事例には、どのようなものがあるのでしょうか?
ここでは、主な事例を3つ紹介します。

難病の男児を誹謗中傷した事例

難病を抱えた男児について、不特定多数が閲覧できる自身で開設したSNS(会員制交流サイト)内で男児について「生まれてきてはいけない子」などの文章を投稿したり、落書きをした男児の画像を投稿したりした事例です。
容疑者は、三重県警松阪署に逮捕されました。

参照元:伊勢新聞:難病男児を誹謗中傷、SNS投稿疑い 三重県警松阪署、群馬の男を逮捕

ショッピングセンターで客を侮辱した事例

客として訪れていた容疑者が、客として訪れていた他の男性に対して「こいつ頭おかしい」などと大声で言い公然と侮辱した事例です。
容疑者は侮辱の疑いで、石川県警津幡署に逮捕されました。

参照元:北國新聞:大声で「こいつ頭がおかしい」 侮辱の疑いで自称会社役員の男逮捕 津幡署 厳罰化以降、石川県内で初

知人男性を中傷するビラをトイレに貼った事例

研修医の女性が病院のトイレに、知人男性について「〇〇(被害男性の実名)は最低最悪の人間です。存在価値がありません。」などと中傷するビラを貼ってまわった事例です。
容疑者は名誉毀損容疑で大阪府警に逮捕されましたが、その後釈放され不起訴となっています。

参照元:産経新聞:「○○○は最低最悪の人間」美形研修医が病院のトイレに貼り回った中傷ビラ ネットに乱れ飛んだ憶測

まとめ

インターネット上での誹謗中傷が後を絶ちません。
中には、「匿名だしバレないだろう」などと考えて安易に誹謗中傷してしまうケースもあるようです。

しかし、誹謗中傷をした発信者を特定することは可能であり、逮捕されたり、前科がつく可能性があります。
誹謗中傷の被害に遭った場合には諦めず、早期に弁護士にご相談ください。

Authense法律事務所では、誹謗中傷にまつわるトラブル解決に力を入れております。
誹謗中傷をした相手を逮捕してほしい場合や、誹謗中傷をした相手に損害賠償請求をしたい場合などには、ぜひAuthense法律事務所までお早めにご相談ください。

記事を監修した弁護士
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Authense法律事務所記事監修チーム
Authense法律事務所の弁護士が監修、法律問題や事例についてわかりやすく解説しています。Authense法律事務所は、「すべての依頼者に最良のサービスを」をミッションとして、ご依頼者の期待を超える弁護士サービスを追求いたします。どうぞお気軽にご相談ください。
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