コラム

公開 2023.08.21 更新 2024.04.24

誹謗中傷の判例は?裁判の流れと進め方のポイントを弁護士がわかりやすく解説

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一口に誹謗中傷に関する裁判といっても、相手に対して損害賠償請求をするための裁判や相手に刑事罰を科すための裁判、相手を特定するための裁判手続きなど、さまざまなものが存在します。
誹謗中傷の被害に遭った場合には、希望や状況に応じて最適な方法を検討しなければなりません。

では、誹謗中傷の裁判は、どのように進めればよいのでしょうか?
今回は、誹謗中傷にまつわる裁判について弁護士が詳しく解説します。

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誹謗中傷の裁判とは

誹謗中傷トラブルの解決には、しばしば裁判手続きが登場します。
そのため、一口に「誹謗中傷の裁判」といっても、複数の手続きが考えられます。

誹謗中傷にまつわる主な裁判は次の3つです。

1. 発信者情報開示の裁判手続き

1つ目は、発信者情報の開示に関する裁判手続きです。

インターネット上の誹謗中傷では、投稿をしたのが誰であるのかわからないことが少なくありません。
そのため、相手に対して損害賠償請求をしたり相手を刑事告訴したりする際には、原則としてこれらに先立って相手を特定する必要があります。

しかし、プロバイダ(誹謗中傷の舞台となったX(旧Twitter)などのコンテンツプロバイダや、相手が接続に使ったNTTなどのアクセスプロバイダ)に対して任意で(裁判外で)情報の開示を請求しても、応じてもらえる可能性は低いでしょう。
なぜなら、法的な理由が明確でないにもかかわらず情報を開示してしまえば、開示をしたプロバイダが相手方から法的責任を追及される恐れがあるためです。

そのため、一般的に発信者情報開示請求は裁判上の手続きによって行います。

2. 相手に対する損害賠償請求

2つ目は、誹謗中傷をした相手に対する損害賠償請求です。

損害賠償請求とは、相手の誹謗中傷によって被った損害や精神的な苦痛を、金銭で賠償するよう相手に対して請求することです。
損害賠償請求はいきなり裁判上で申し立てるのではなく、まずは裁判外で支払いに応じるよう交渉をすることが多いでしょう。

この交渉を、「示談交渉」などといいます。
そして、示談がまとまらなかった場合には、裁判上での請求を検討する必要があります。

3. 相手の刑事処分を決める刑事裁判

3つ目は、誹謗中傷をした相手の刑事処分を決める刑事裁判です。

誹謗中傷は、刑法上の名誉毀損罪や侮辱罪などに該当する可能性があります。
これらはいずれも、被害者からの告訴がなければ罪に問うことができない「親告罪」です。
そのため、相手の刑事責任を追及したい場合には、まず刑事告訴をしなければなりません。

告訴が受理されると、その後は警察で事件が捜査され、検察に事件が送られます。
その後、検察によっても捜査がなされ、「起訴」か「不起訴」かが決まります。
起訴されると、略式裁判を除き刑事裁判が開始され、ここで相手の有罪・無罪や量刑が決まるという流れです。

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誹謗中傷に対して損害賠償請求が認められた裁判例

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誹謗中傷に対して損害賠償請求が認められた裁判例は数多く存在します。
中でも、比較的最近の主な裁判例は、次のとおりです。

事件と無関係の者をあおり運転の加害者であるとしてインターネット掲示板に投稿した事例

神奈川県の東名高速道路において、いわゆるあおり運転を発端とする死傷事故が発生しました。
原告であるA氏は、この事故であおり運転をしたとして逮捕された者と同姓であったことから、事故とは無関係であるにもかかわらず、インターネット掲示板である5ちゃんねるにおいて、A氏は事故加害者の親である、A氏が代表取締役を務める会社に事故加害者が勤務しているなどの虚偽の投稿がなされました。※1

この事件では名誉毀損が認められ、書き込みをした5名のうち1名に対して22万円、残りの4名に対してそれぞれ16万5000円の支払いが命じられています。

なりすましによる掲示板への投稿へ損害賠償請求が認められた事例

被告が原告になりすまし、インターネット上の掲示板において差別用語や侮蔑表現を用いて第三者を罵倒するような投稿をしたり、名誉毀損的発言を行ったりした事例です。※2
これらの発言は、第三者からするとあたかも原告が他者を罵倒したりトラブルを起こしたりする人物であるかのように見えるものであり、原告の社会的評価を下げるものであると認定されました。

この事件では、被告に対して130万6000円の支払いが命じられています。

市長である原告が週刊誌出版社を提訴した事例

こちらの事例はインターネット上での誹謗中傷ではなく、市長である原告が週刊誌出版社を提訴した事例です。

原告である市長は、被告が運営するウェブサイト「FRIDAYデジタル」に「茨城守谷市長の『黒すぎる市政』に地方自治法違反疑惑」などと称する記事が掲載されたことについて、名誉毀損であるとして損害賠償請求を提起しました。※3

この事件では、被告である週刊誌出版社に対して165万円の支払いが命じられています。

なお、公共の利害に係る内容であり公益を目的としたものであれば、その内容が真実である限り法的責任は問われません。
このケースでは、記事内容が真実であるとの証拠が不十分であったことなどにより、損害賠償請求が認められました。

誹謗中傷で裁判をする流れ

誹謗中傷について裁判をするには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか?
基本的な流れは次のとおりです。

なお、ここでは相手に対して損害賠償請求をする前提で解説します。

誹謗中傷の証拠を残す

誹謗中傷の被害に遭ったら、すぐに誹謗中傷の証拠を残しましょう。
誹謗中傷に関して裁判をする際には、証拠の存在が重要となるためです。

インターネット上での誹謗中傷の場合、証拠はスクリーンショットで残します。
スクリーンショットは、次の情報が漏れなく掲載されるように撮影しましょう。

  • 誹謗中傷投稿の内容
  • 誹謗中傷投稿のURL
  • 誹謗中傷投稿の前後になされた一連の投稿
  • 誹謗中傷投稿がなされた日時
  • 誹謗中傷投稿に番号が付される場合にはその番号
  • SNSの場合には、誹謗中傷投稿をした相手のアカウントページとそのURL

なお、スクリーンショットはスマートフォンからでも撮影できるものの、URLなどの表示が不完全となる傾向にあります。
そのため、スクリーンショットの撮影はパソコンから行い、撮影漏れがないことを早期に弁護士へ確認してもらうことをおすすめします。

誹謗中傷問題に強い弁護士に相談する

誹謗中傷の証拠を残したら、誹謗中傷問題に強い弁護士へ相談しましょう。
相談は、誹謗中傷投稿を見つけた当日や翌日など、できるだけ早く行うことをおすすめします。
なぜなら、時間が経つとプロバイダでのログが消えてしまい、裁判上での責任追及が困難となるためです。

ログの保存期間はプロバイダによって異なりますが、おおむね3か月から6か月程度とされていることが多いでしょう。

誹謗中傷をした相手を特定する

インターネット上での誹謗中傷である場合には、誹謗中傷をした人が誰であるのかわからないことが少なくありません。
そのため、損害賠償請求に先立って、相手を特定するための発信者情報開示請求を行います。

なお、先ほども触れたように、裁判外での請求では開示に応じてもらえる可能性が低いため、裁判手続きによって開示請求を行うことが一般的です。

発信者情報開示請求は、原則として次の2段階で行います。

  1. 誹謗中傷の舞台となったSNSやインターネット掲示板の管理者に対して情報開示を請求し、IPアドレスやタイムスタンプなどの情報を入手する
  2. 1で得た情報をもとに相手が接続に使ったプロバイダに情報開示を請求し、契約者の住所や氏名の情報を入手する

ただし、2022年(令和4年)10月に施行された改正プロバイダ制限責任法により、この2つの手続きを1つに併合できる発信者情報開示命令が新設されました。
すべてのケースでこの発信者情報開示命令を使用できるわけではありませんが、これが使用できるケースでは手続きの迅速化が期待されています。

相手と示談交渉をする

相手の特定ができたら、まずは弁護士から内容証明郵便を送るなど、裁判外で損害賠償請求をすることが一般的です。
相手が素直に請求に応じたり、謝罪の上で多少の減額交渉がまとまったりすれば、この時点で事件は終結します。

無事に示談がまとまったら、以後誹謗中傷をしない旨の書面などを取り付けることも多いでしょう。

裁判上で損害賠償請求をする

相手が請求を無視するなど不誠実な対応をする場合には、裁判上での損害賠償請求をする必要があります。

裁判では、裁判所が損害賠償請求の可否や賠償すべき金額を決定します。

損害賠償額を裁判所が決定したにもかかわらず相手が支払わない場合には、差押えによって強制的に賠償を得ることが可能となります。

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誹謗中傷で裁判をする際のポイント

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誹謗中傷の被害に遭った場合において、損害賠償請求などの裁判を検討している場合にはどのような点に注意すればよいのでしょうか?
主な注意点は次のとおりです。

できるだけ速やかに対応する

1つ目にして最大のポイントは、できるだけ速やかに対応することです。
なぜなら、投稿から時間が経ってしまうと投稿のログが消えてしまい、発信者情報請求をしても相手を特定することが困難となってしまうためです。

ログの保存期間はプロバイダによって異なりますが、おおむね3か月から6か月程度とされていることが多いでしょう。
なお、X(旧Twitter)などのコンテンツプロバイダへ請求をしてからNTTやKDDIなどのアクセスプロバイダへ請求するまでにも、タイムラグが生じます。

誹謗中傷に対する法的措置でもっとも避けるべきなのは、長期間悩んで時間を浪費してしまうことです。
長期間悩まず、できるだけすぐに弁護士へご相談ください。

無理に自分で対応しない

誹謗中傷への対応を無理に自分で行うことは、おすすめできません。

特に、相手に対して直接反論をしたり相手に対して投稿を消すよう直接求めたりすることは避けるべきです。
なぜなら、誹謗中傷がエスカレートしたり、他のユーザーを巻き込んで炎上状態となったりするリスクがあるためです。
また、言い返した内容によっては裁判において不利となったり、反対に相手から誹謗中傷であるなどとして訴えられたりする可能性もあります。

そして、発信者情報開示請求などを自分で行うこともおすすめできません。
なぜなら、発信者情報開示請求をして情報の開示が認められるためには、法令や裁判手続きへの理解が不可欠であるためです。

自分で無理に対応しようとして時間がかかると、その間にログの保存期間が過ぎてしまうかもしれません。
そのため、誹謗中傷の被害に遭ってお困りの際には、誹謗中傷トラブルに強い弁護士へ早期にご相談ください。

まとめ

誹謗中傷に関する裁判には、発信者情報開示請求をするための裁判や刑事裁判などが存在します。
誹謗中傷をした相手に対して損害賠償請求などの法的措置をとるためには、まず相手を特定しなければなりません。
しかし、投稿から時間が経ちすぎてしまうと、投稿のログが消えてしまい相手の特定が困難となります。
そのため、誹謗中傷の被害に遭ってしまったら、できるだけ早く誹謗中傷問題に詳しい弁護士へ相談するとよいでしょう。

Authense法律事務所は誹謗中傷トラブルの解決に力を入れており、誹謗中傷にまつわる裁判手続きを数多くサポートしてきました。
誹謗中傷をした相手に法的措置をとりたい場合など、誹謗中傷の被害に遭ってお困りの際には、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。
誹謗中傷に関する初回のご相談は無料です。

記事を監修した弁護士
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Authense法律事務所記事監修チーム
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