リーガルエッセイ
公開 2026.10.13

「今の弁護士の代わりに」に思うこと

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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「今の弁護士の代わりに、私の弁護士になってくれませんか」に思うこと

ときどき、すでに、他の弁護士にご依頼になっているかたから、相談したいとおっしゃっていただき、お話しすることがあります。

そして、そのようなときは、多くの場合、お話が終わると、「今の弁護士の代わりに代理人(弁護人)になってくれませんか?」とおっしゃっていただきます。

そのようにおっしゃっていただくことは、とてもありがたいこと。

一方で、私は、そのようなときに、今一度よくお考えいただくようお伝えしています。

たしかに、「ぜひ。私が代理人になりますよ」と言うことは簡単です。

でも、私は、必ずしも、そのようにお伝えすることがお客様にとって最善だとは思えないのです。

というのも、今、すでに弁護士がいらっしゃるというお客様が相談にお見えになる場合って、今の代理人の弁護士について、何らかの不安や不満を抱いていらっしゃることが多いです。

そして、私に相談いただくにあたっても、その不安や不満を口にされることが多いです。

すると、それって、大きな方針に対する不安や不満があるというよりは、たとえば、「態度がすごく事務的な気がするんです」とか「私の気持ちを聴いて、その言いなりになるばかりで、ちゃんと提案してくれなくて不安なんです」とか「メールばかりで電話してくれないんです」とかそういう部分での不安や不満である場合も多くあるように思います。

それをおうかがいしている私は、そのお客様について、「そうか、この方は、代理人に淡々とした対応でなく、感情を入れながら、共感しながら話を聴いてほしいのだな」と思う機会を得られるし、「そうか、この方は、ご自身の希望を聴かれるというよりは、弁護士の方から積極的な提案をしてほしいとお考えなんだな」と思う機会を得られるし、「そうか、この方は、大事な局面では、メールだけではなくて、お会いしたり電話したりして、直接言葉を交わすことをご希望なんだな」と思う機会を得られるわけです。

ですから、自然と、そのようなお客様のご要望を意識した対応をすることになります。

だから、お客様としては、「ああ、この弁護士は、今の弁護士と全然違う。この弁護士に依頼すれば、今の弁護士について不安な部分がすべて解消されるはず」とお考えになるでしょう。

そう思えたから代理人を代えるという選択を否定するつもりは全くなくて。

そのように考えて、代理人を代えるというのももちろんあり得ることだと思います。

一方で、「それって、弁護士を代えなくては実現しないことなのか?」ということは今一度ちゃんと考えた方がよいのかなと思っています。

というのも、今お話ししたように、今の弁護士に関する不安や不満をうかがった上でご相談をお受けした私は、(やや適切でない表現かもしれませんが)お客様が求める弁護士像についての解像度が高くなっているという点において、今の弁護士に比べると圧倒的に有利だと思うからです。

私は、お客様が今の弁護士に関して抱いている不安や不満を認識しているのだから、そりゃ、そういった不安や不満に配慮しながらお話ししているはずなのです。

弁護士を代えるということは、今の弁護士に依頼を継続する場合と比べて、余分な費用がかかることが多いです。

また、今の弁護士に依頼して長期間経っているという場合は、その内容を、後任の弁護士が理解するまでに結構な時間がかかることもある。

さらに言うと、今の弁護士についてよくよく考えてみると、今は、その不安な点や不満な点に隠れてしまっているかもしれないけど、違う側面から見たときに、ご自身にマッチしている側面もあるんじゃないかなとも思うのです。

だから、まずは、その不安な点や不満な点を、今の弁護士に率直に伝えてみたらどうかなと思います。

そして、指摘を受けた弁護士は、その指摘にどのように向き合うのか、というところを見てみた上で代理人の変更を考えてみても遅くはないのかなと。

たしかに、お客様が、弁護士に対し、不安や不満を伝えるってとてもハードルが高い場合もあるんじゃないかなと思います。

そんなことを言ったら、今後関係を築きづらくなっちゃうのかなと。

また、本当なら、弁護士自ら、「お客様は、何かご不安になっていないかな。自分は、お客様が求める対応をしっかりできているだろうか」と考え、お客様のご意向を踏まえた対応をしていくべきだともいえますよね。

でも、やっぱり、どうしても、弁護士の想定と、実際のお客様のお気持ちとの間にギャップが生まれてしまうこともある。

そんなとき、お客様からの不安や不満に関する指摘を受けて、弁護士が改善点に気付き、その後は、そのご要望に沿った対応をしていけるよう尽力する。

弁護士の側からも、積極的に、お客様からその後のフィードバックをいただくよう努める。

そのような関わりは、お客様にとっての大事な問題をともに乗り越えていくために必要な信頼関係を築いていくために、必要なことなのかもしれないなと思います。

だから、私は、そのようなお話をした上で、一度、今の弁護士のかたに今のご不安なお気持ちをしっかりお伝えになってみて、それでもやはりご不安が残るようであれば、改めてご相談いただくようお伝えするようにしています。

先日、知り合いと話しているときに、どんな話の流れだったのか、私がそんな話をする機会がありました。

すると、彼が、「それって、こういうことか?つまり、おれが、女友達から、『私の彼が、お酒を飲み過ぎて羽目を外すことがあって嫌なのよ』っていう愚痴を聞かされたとする。そんなとき、おれは、その子から気に入られようと、会話の端々で『おれは、酒は飲まないことにしているんだ。だっていい大人が酒で騒ぐのってダサいじゃん』みたいなことをちょいちょい差し込んでいく。すると、彼女は、おれに対し、『ああ、この人は、今の彼と違って、大人ですてきな人だわ』と思って、今の彼と別れて、おれに乗り換えたいなって思うに至る。そういうことだよな?」と言ってきました。

それを聞いて、「果たしてそういうことなのだろうか」としばらく黙って考えてみました。

私の長々とした熱弁を聴いて、自分なりに考えてくれた彼に最大限の敬意をこめて返答すべきだとも思いました。

私は、「たしかに、どこか通じるところが全くないとも言えない気がする。でも、そもそも全く違う話であるという気もする。どこに引っかかるのか、うまく言えないが、弁護士においては、『今の弁護士とお客様の契約を終わらせてやろう』とか『この機会に乗じて自分が代理人になってやろう』とかいう思いはなく、ただただ目の前のお客様にとって何が最善かということを頭に置いて対応している一方、あなたは、「あわよくば、この状態につけこんで自分がうまいこと入り込んでやろう」という極めて卑怯で下品な下心をもっているという点において、そもそも目の前のお相手と向き合う姿勢が全く違う。だから、私が話した弁護士の対応についての話とあなたがした話とは、似ても似つかない、というか、そもそもそんな事例と並べて、例えてほしくないというか、そんな感じかな」と伝えました。

本当にどうでもよい話をさしはさんでしまいました。

私が言いたかったのは、ご縁があって、私にご相談くださったお客様には、その方が自分にご依頼になるのかどうかは別として、その方にとって、最善の解決にたどり着けることをいつも願っていて、そのために自分には何ができるのかを考え、任務を果たしていきたいということです。

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