コラム

公開 2024.03.14

暴行罪と傷害罪の違いは?弁護士がわかりやすく解説

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暴行罪と傷害罪は、似て非なるものです。
暴行罪と傷害罪はどのような点で異なるのでしょうか?

また、暴行罪や傷害罪の容疑で逮捕されてしまったら、どのような対応をとればよいのでしょうか?
今回は、暴行罪と傷害罪の違いや逮捕された場合の対応などについて、弁護士が詳しく解説します。

記事を執筆した弁護士
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暴行罪と傷害罪の概要と刑罰

はじめに、暴行罪と傷害罪それぞれの概要と、それぞれの罪に該当した場合の刑罰を解説します。

暴行罪とは

暴行罪とは、暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときに該当する罪です(刑法208条)。

「暴行」について刑法に明確な定義はないものの、一般的には人の身体に対する不法な有形力の行使を指すとされています。
たとえば、殴る、蹴る、突き飛ばす、引っ張る、物を投げるなどの行為がこれに該当します。

暴行罪で有罪となった場合は、次のいずれかの刑に処されます。

  • 2年以下の懲役
  • 30万円以下の罰金
  • 拘留
  • 科料

「拘留」とは1日以上30日未満の期間、刑事施設に身柄を拘束される刑罰であり、「科料」とは1,000円以上1万円未満の金銭の納付を命じられる刑罰です。

なお、暴行の相手は限定されておらず、相手が他人である場合はもちろんのこと、配偶者や子どもなど家族に対する行為であっても、逮捕されて有罪となる可能性があります。

傷害罪とは

素材_法律
傷害罪とは、人の身体を傷害した者が該当する罪です(同204条)。

「傷害」について刑法に明確な定義はないものの、人の生理機能に傷害を与えることのほか、人の健康状態を不良に変更することがこれに該当すると解されています。
典型例は相手に怪我をさせることですが、相手に外傷がなくても相手を病気にさせたりPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症させたりした場合も、「傷害」にあたる可能性があります。

傷害罪の刑罰は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
こちらも対象者の限定はなく、家族に対する行為であっても逮捕され、有罪となる可能性があります。

暴行罪と傷害罪の主な違い

暴行罪と傷害罪は、行為自体によって区別されるわけではありません。
ある行為が暴行罪にあたるのか傷害罪にあたるのかの違いは、不法な有形力行使の結果、相手が怪我をしたかどうかです。

たとえば、殴る、蹴る、物を投げつけるなどの行為をした結果、相手が外傷を負ったりPTSDを発症したりした場合は、原則として傷害罪にあたります。
一方で、同じ行為をしたものの、結果的に相手が怪我をしたり病気にかかったりしなかった場合は、暴行罪となります。

なお、これらの行為をした結果として相手が死亡した場合は、傷害致死罪に該当します(同205条)。
また、この傷害致死罪と殺人罪との区別は、殺意があったかどうかです。

暴行罪と傷害罪のどちらに該当するか迷いやすいケース

暴行罪による懲役刑は最大2年である一方、傷害罪による懲役刑は最大15年であり、両者には大きな違いがあります。
では、暴行罪であるか傷害罪であるかは、どのように判断されるのでしょうか?

ここでは、暴行罪と傷害罪のいずれに該当するのか、迷いやすいケースを2つ解説します。

怪我をさせるつもりまではなかったものの相手が怪我をした場合

自己の意思として相手に怪我をさせるつもりまではなかったものの、結果的に相手が怪我をしてしまった場合は、原則として傷害罪に該当します。
暴行罪に該当するか傷害罪に該当するかは相手に生じた結果によって区分されるものであり、加害者の意図によって区分されるわけではありません。

反対に、相手に怪我をしても構わないと考えて殴りかかったものの、結果的に相手が怪我や病気などをしなかった場合は、原則として暴行罪に該当することとなります。
なぜなら、傷害罪には未遂罪は設けられていないためです。

他人の髪を無断で切った場合

髪を切っても、痛みなどはないことが一般的です。
では、他人の髪を無断で切った場合は、傷害罪と暴行罪のいずれに該当するのでしょうか?

他人の髪を勝手に切った場合は、原則として暴行罪に該当すると解されています。
なぜなら、傷害罪は人体の生理的機能に障害を及ぼした場合に該当し得る罪であるところ、髪を切ることは生理的機能に障害を及ぼしたとまではいえないと考えられるためです。

自己のしてしまった行為が暴行罪と傷害罪のいずれに該当しそうであるかが知りたい場合は、できるだけ早期に弁護士へご相談ください。

暴行罪や傷害罪で逮捕されることはある?

傷害や暴行の罪を犯した場合、これによって逮捕されることはあるのでしょうか?
順を追って解説します。

暴行罪や傷害罪で逮捕されることはある

素材_逮捕
暴行や傷害の罪を犯した場合、逮捕されることは十分にあり得ます。
なお、逮捕は刑罰ではなく捜査の手段ですので、逮捕されたからといってその時点で有罪が確定したということではありません。

逮捕とは

逮捕とは、犯人の逃亡や証拠の隠滅などを防ぐため、捜査機関が被疑者(罪を犯したと疑われている者)の身柄を拘束することです。
被疑者が逃亡や証拠隠滅をする可能性が低い場合は、逮捕されず在宅のまま事件の捜査が進むこともあります。

また、逮捕には次の3つが存在します。

  • 現行犯逮捕:犯行に及んでいる最中やその直後に行われる逮捕。一般私人が行うことも可能であり、逮捕状も不要である
  • 通常逮捕:犯行の後、後日に行われる逮捕。逮捕できるのは警察官など一定の者に限られ、裁判所が発した逮捕状が必須となる
  • 緊急逮捕:法定刑の比較的重い犯罪について、その嫌疑の程度が充分な理由があり、急速を要し裁判官仮名の逮捕状を求めることが出来ない場合に行われる逮捕

暴行罪や傷害罪などの場合、相手を殴るなどしている最中に逮捕される場合や、殴った直後にその場から逃げようとしたものの追いかけられて身柄を拘束される場合などが「現行犯逮捕」に該当します。
一方で、後日逮捕状を持った警察官などが自宅や職場などを訪れて警察署などへ連行され、身柄を拘束される場合が「通常逮捕」です。

逮捕後の流れ

暴行や傷害の容疑で逮捕されると、まずは最大48時間警察署にて身柄が拘束され、その間に捜査が進みます。

その後は検察に身柄が送られ(「送検」といいます)、そこから最大24時間拘束されて捜査を受けます。
この期間内に検察官から裁判官に対して勾留請求が行われ、この請求が認められるとここからさらに10日間(勾留が延長されると最大20日間)身柄の拘束が続きます。

この勾留期間内にも捜査が進み、起訴か不起訴かが決まります。
起訴とは被疑者を刑事裁判にかけることです。

一方、不起訴とは被疑者を起訴しない(刑事裁判を開始しない)ことであり、不起訴となった場合はその時点で事件はそこで終結することとなります。
被害者との示談が成立している場合や、証拠が不十分である場合は、不起訴となる可能性があります。
起訴されると刑事裁判が行われ、有罪・無罪や量刑が決まります。

ただし、執行猶予付きの有罪となる可能性はあります。
執行猶予とは一定期間を問題なく過ごすことで刑の言い渡しの効果を消滅させることであり、問題なく所定の期間を満了すれば、この事件に関する前科はないと扱われます。

暴行罪や傷害罪で逮捕された場合の初期対応

暴行罪や傷害罪で逮捕されてしまった場合や、暴行や傷害をしてしまい逮捕されるおそれがある場合は、どのような対応をとればよいのでしょうか?
最後に、暴行や傷害をしてしまった場合の初期対応について解説します。

弁護士へ連絡を取る

素材_弁護士相談
暴行や傷害の罪を犯してしまった場合や、自身が逮捕されそうな場合、家族が逮捕されてしまった場合などには、早期に弁護士へ連絡をとります。
刑事事件に関する弁護士の依頼は、一刻も早く行うことをおすすめします。
早期に弁護士のサポートを受けた方が、不利な状況となりづらいためです。

暴行罪や傷害罪で逮捕された場合、弁護士は主に次のことを行います。

身体拘束が短くなるよう働きかける

暴行罪や傷害罪で逮捕された場合、弁護士は逮捕や勾留を回避したり、逮捕や勾留の期間ができるだけ短くなったりするように働きかけます。

逮捕や勾留などは刑罰ではないものの、身柄が拘束されている期間中は外部と連絡をとることができないうえ、会社などにも出勤できず、これ自体が不利益となります。
そのため、本来は逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断した場合にしか、行うことはできません。

そこで、弁護士は逃亡や証拠隠滅のおそれがないことなどを説明したうえで、身柄拘束の回避や早期の釈放を目指します。

職場へ対応する

暴行罪や傷害罪で突然逮捕されてしまうと、その後は外部へ連絡をとることができません。
そのため、職場へは逮捕を知った家族などが連絡を入れない限り、無断欠勤となってしまいます。

しかし、逮捕された場合は家族も気が動転しており、職場に対してどのように連絡を入れてよいのかわからないことも少なくないでしょう。
そこで、必要に応じて弁護士が勤務先へ連絡を入れます。

また、逮捕イコール有罪が確定したと勘違いをしている人も少なくないことから、必要に応じて有罪が確定したわけではないことを説明したり、解雇しないよう申し入れをしたりします。

被害者との示談を目指す

弁護士は、被害者との示談を目指します。
先ほど解説したように、被害者との示談交渉が成立すると、不起訴となる可能性が高くなるためです。
示談については、後ほど詳しく解説します。

不起訴を目指す

弁護士は、被害者との示談などを通じて、事件の不起訴を目指します。
また、起訴されてしまった場合は、執行猶予付きの判決を目指します。

被害者と示談交渉をする

暴行や傷害の罪を犯してしまった場合は、被害者との示談を目指します。
なぜなら、示談が成立すれば被害者が警察に被害届を出す事態を避けることが可能となるほか、すでに被害届を提出していても取り下げてもらうことが可能となるためです。
また、すでに逮捕や勾留されている場合であっても、被害者との示談が成立すれば、不起訴となる可能性が高くなります。

しかし、自分で被害者との示談を成立させることは容易ではありません。
自分で示談交渉をしようとすれば感情的になりさらなるトラブルに発展するおそれがあるほか、被害者から法外な示談金を要求されるリスクも生じます。
また、状況によっては、相手を怯えさせてしまうおそれもあるでしょう。

弁護士へ依頼することで示談交渉がまとまりやすくなるほか、示談交渉がまとまった場合に取り交わす示談書の作成などについても安心して任せることが可能です。

まとめ

暴行罪と傷害罪の違いは、相手に対する不法な有形力の行使の結果、相手が怪我や病気をしたかどうかです。
相手が怪我や病気をした場合は傷害罪に該当する一方で、結果的に怪我や病気をしなかった場合は原則として暴行罪に該当します。

暴行や傷害をしてしまった場合などには、早期に弁護士へご相談ください。
弁護士に相談することで具体的な状況に応じた今後の見通しが立てやすくなるほか、被害者との示談交渉がまとまり不起訴となる可能性を高めることも可能となるためです。

Authense法律事務所には、暴行や傷害など刑事事件に強みを持つ弁護士が多数在籍しています。
暴行や傷害の罪を犯してしまってお困りの際や、家族が暴行や傷害の罪で逮捕されてお困りの際などには、Authense法律事務所までできるだけ早期にご相談ください。
初回のご相談は、無料でお受けしています。

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