コラム

公開 2024.03.14

傷害罪の時効は何年?成立要件は?弁護士がわかりやすく解説

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犯罪行為にはそれぞれ時効があり、行為から一定の期間を経過すると、その後は罪に問われることがなくなります。

傷害罪の時効は、何年なのでしょうか?
また、そもそも傷害罪は、どのような要件を満たすことで成立する罪なのでしょうか?

今回は、傷害罪の時効や成立要件、傷害事件を起こしてしまった場合の初期対応などについて、弁護士が詳しく解説します。

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(神奈川県弁護士会)
神奈川県弁護士会所属。中央大学法学部法律学科卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了。離婚、相続を中心に家事事件を数多く取り扱う。交渉や調停、訴訟といった複数の選択肢から第三者的な目線でベストな解決への道筋を立てることを得意とし、子の連れ去りや面会交流が関わる複雑な離婚案件の解決など、豊富な取り扱い実績を有する。
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傷害罪とは

はじめに、傷害罪の基本と刑罰、傷害罪と混同されることの多い暴行罪との違いなどについて解説します。

傷害罪の概要

傷害罪とは、「人の身体を傷害した者」が該当する罪です(刑法204条)。
傷害の罪を犯すと、15年以下の懲役または50万円以下の罰金刑の対象となります。
たとえば、次の場合などは傷害罪に該当する可能性が高いでしょう。

  • 人を殴ったり蹴ったりして怪我をさせた
  • 人に石を投げつけて怪我をさせた
  • 度重なる嫌がらせ電話によって相手に精神障害を発症させた

「傷害」は身体的な打撲や骨折、切り傷などに限られず、うつ病などの精神疾患を引き起こさせたり心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症させたりすることなども該当します。

暴行罪の違い

暴行罪とは、「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」に該当する罪です(同208条)。
暴行罪の刑罰は、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です。

傷害罪と暴行罪のいずれに該当するのかの分かれ目は、相手が怪我や精神疾患などの発症をしたかどうかです。
相手を殴りつけたり石を投げたりした結果として相手が怪我をした場合は傷害罪、結果的に相手が無傷であった場合は暴行罪に該当するということです。

このように、傷害罪と暴行罪は加害者の行為や意図(怪我をさせるつもりがあったかどうか)ではなく、結果によって区分されることとなります。

傷害罪の成立要件

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傷害罪の成立要件について、さらに詳しく解説します。
傷害罪が成立するには、次の4つの要件をすべて満たすことが必要です。

  1. 傷害罪の実行行為があること
  2. 傷害の結果をもたらしたこと
  3. 行為と結果との間に因果関係が認められること
  4. 故意であること

それぞれの要件の概要は、次のとおりです。

傷害の実行行為があること

1つ目は、傷害の実行行為があることです。
当然ながら、自身が何もしていないにも関わらず相手が怪我をしたり病気になったりした場合に、傷害罪が成立することはありません。

傷害の実行行為とは、たとえば次のものなどです。

  • 殴る、蹴る、叩く、押す、引っ掻く
  • 物を投げつける
  • 再三にわたって嫌がらせの電話を掛ける
  • 嫌がらせのために、毎日のように大音量でラジオやテレビ、アラームなどを鳴らす

実行行為について、法律上の制限はありません。
そのため、相手の身体に直接的な有形力を行使するもののほか、電話や音など間接的な行為も傷害の実行行為となり得ます。

傷害の結果をもたらしたこと

2つ目は、相手に傷害の結果をもたらしたことです。
行為の結果、人間の身体の生理機能を害する症状を生じさせることが、傷害罪の成立要件の一つとなります。

なお、先ほど解説したように、結果的に相手が怪我や精神疾患の発症などをしなかった場合は、暴行罪が適用されることとなります。

「傷害の結果」である人間の身体の生理機能を害する症状としては、次のものなどが挙げられます。

  • 打撲、切り傷、骨折などの怪我
  • 病気の発症
  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD)や睡眠障害など

このように傷害の結果は広く捉えられており、身体的な傷害に限定されていないことに注意が必要です。

行為と結果との間に因果関係が認められること

3つ目は、相手に傷害の行為と結果との間に因果関係が認められることです。

たとえば、加害者が相手を殴った結果として、相手が殴られた箇所を打撲したのであれば、因果関係は明白でしょう。
また、ナイフを持った加害者に脅された結果、逃げようとした被害者が転んで怪我をした場合も、因果関係があると判断される可能性が高いと考えられます。

一方で、いわゆる「風が吹けば桶屋が儲かる」のように、行為と結果との間が遠く因果関係の証明ができない場合は、傷害罪を成立させることは困難となります。
特に、相手がうつ病などの病気を発症したケースでは因果関係が不明確である場合が多く、因果関係の有無が争点となることも少なくありません。

故意であること

4つ目は、故意であることです。

ここで要求される「故意」とは「殴る行為などに対する故意」であり、「相手に怪我をさせる故意」ではありません。
そのため、たとえ相手に怪我をさせるつもりまではなかったとしても、相手を殴った結果相手が怪我をした場合は、暴行罪ではなく傷害罪が成立し得ます。

一方で、行為自体に対する故意がない場合(相手を突き飛ばしたのではなく、自分がよろけて相手にぶつかって転倒させ、相手が怪我をしてしまった場合など)には、傷害罪は成立しません。
ただし、この場合は過失傷害罪などに該当する可能性があります(同209条)。

傷害罪の公訴時効は?

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傷害罪の公訴時効は何年なのでしょうか?
ここでは、傷害事件を起こしてしまった場合における刑事上の時効について解説します。

公訴時効とは

公訴時効とは、検察官が公訴を提起(「起訴」といいます)することができる期間の制限です。

傷害罪を犯して事件が発覚すると警察や検察によって捜査や取り調べがなされ、その結果を踏まえて起訴か不起訴かが決まります。
不起訴となった場合は事実上の無罪放免であり、勾留されている場合は釈放され、その事件で罪に問われることはなくなります。
一方で、起訴がされると刑事裁判が開始され、この刑事裁判において有罪・無罪や具体的な量刑が決まります。

この「起訴」をすることができる期限について法律で制限が付されており、これが「公訴時効」です。
つまり、実際に傷害などの罪を犯してしたとしても、この公訴時効を過ぎるとその件で処罰を受ける可能性がなくなるということです。

傷害罪の公訴時効は10年

公訴時効は、法定刑の重さごとに定められています。
傷害罪による懲役刑の上限期間は15年であり、この場合(長期15年以上の懲役または禁錮に当たる罪)の公訴時効は10年です(刑事訴訟法250条2項3号)。
そのため、傷害から10年を経過すると、原則として罪に問われることはなくなります。

ただし、次の期間は公訴時効のカウントが停止するため注意が必要です(同254条、同255条)。

  • 公訴の提起から管轄違または公訴棄却の裁判が確定したときまでの期間
  • 犯人が国外にいる期間
  • 犯人が逃げ隠れているため、有効に起訴状の謄本の送達や略式命令の告知ができない期間

そのため、犯行後すぐに国外に逃亡して10年以上経ってから帰国したとしても、刑罰から逃れるこことはできません。
どのような場合であっても10年の経過と同時に時効が成立するわけではないため、誤解のないよう注意してください。

傷害罪の民事上の時効は?

傷害の罪を犯すと、刑事上の問題のほか、民事上の問題ともなります。
平たくいえば、刑事は「国対犯人」の問題であり、犯人の有罪・無罪や量刑などが問題となります。
こちらは、「刑法」が根拠であり、警察や検察などが登場します。

一方、民事は「加害者対被害者」の問題であり、加害者から被害者に対する損害の賠償などが問題となります。
こちらはあくまでも当時者同士の問題であり、原則として警察や検察が関与するものではありません。

傷害罪は民事上の損害賠償請求の対象にもなる

傷害事件を起こした場合、被害者から損害賠償請求や慰謝料請求がなされる可能性があります。
これは、加害者の不法行為によって被害者が被った損害や精神的苦痛を、金銭で償うよう請求するものです。

繰り返しとなりますが、これはあくまでも民事上の話であり、刑事とは別の問題です。
しかし、実際は被害者に対して損害賠償を行って示談が成立することで、刑事上も不起訴となることが少なくありません。

損害賠償請求の時効は原則5年

損害賠償請求にも、時効があります。
損害賠償請求の時効は、被害者が被害事実や加害者などを知ってから、原則として5年間です(民法724条1号、同724条の2)。

ただし、加害者などがわからないまま時間が過ぎた場合であっても、行為から20年が経過するともはや損害賠償請求をすることができなくなります(同724条2号)。

傷害事件を起こしてしまった場合の初期対応

傷害事件を起こしてしまったら、まずはどのように対応すればよいのでしょうか?
最後に、傷害事件を起こした場合の初期対応を解説します。

被害者との示談を目指す

傷害事件を起こしてしまったら、まずは被害者との示談成立を目指します。

示談とは、事件の加害者と被害者が、裁判外で民事上の紛争を解決することです。
一般的には、加害者が被害者に対して謝罪の意を示し、被害者に対し相応の示談金を支払うことで示談交渉を目指すこととなります。

本来、示談は民事の世界の話です。
しかし、実際は被害者との示談成立により被害者が警察に告訴する事態を避けることが可能となるほか、すでに告訴していても告訴状を取り下げてもらうことが可能となります。

また、被害者との示談が成立した場合、不起訴となる可能性も高くなります。
つまり、被害者との示談を成立させることこそが、傷害罪で罪に問われないための一番の近道であるということです。

とはいえ、傷害事件において自身で示談交渉をまとめることは容易ではありません。
加害者と被害者が直接連絡を取り合えばさらなるトラブルに発展する危険性があるほか、被害者に恐怖を感じさせてしまう可能性もあるでしょう。
反対に、被害者から法外な示談金を要求されるおそれも否定できません。

そのため、被害者との示談交渉は弁護士が代理で行うことが一般的です。

弁護士へ相談する

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傷害事件を起こしてしまったら、できるだけ早期に弁護士へご相談ください。
早期に依頼することで、弁護士が被害者との示談交渉を進めることが可能となります。
弁護士が代理することで適正な示談金で示談交渉がまとまる可能性を高めることが可能となるほか、示談成立後に取り交わす書面についても抜かりなく用意してもらえるため安心です。
示談交渉がまとまれば、逮捕の回避や不起訴などの効果が得やすくなります。

また、すでに逮捕されている場合であっても逃亡や証拠隠滅のおそれなどがないことを主張し釈放を目指します。
さらに、職場への対応などについても弁護士へ任せることが可能です。

そのため、傷害事件を起こしてしまった場合や家族が傷害罪で逮捕されてしまった場合などには、できるだけ早期に信頼できる弁護士へコンタクトをとるとよいでしょう。

まとめ

傷害罪とは、人の身体を傷害した場合に問われる可能性のある罪です。
相手を怪我させてしまった場合のみならず、相手の病気やPTSDを発症させてしまった場合なども傷害罪の対象となります。

傷害罪の公訴時効(刑事事件としての時効)は、事件から10年です。
ただし、国外にいる間や逃亡している間などは時効のカウントが停止されるため、注意しなければなりません。
また、民事上の損害賠償請求や慰謝料請求の事件は、事件から20年、被害者が被害事実と加害者を知ってから5年です。

傷害罪の時効期間は長く、容易に逃げ切れるようなものではありません。
そのため、事件の影響を最小限に抑えるためには早期に弁護士へ相談のうえ、被害者との示談成立や逮捕の回避・早期釈放を目指すことをおすすめします。
示談が成立することで事件化する事態を防げる可能性があるほか、逮捕後であっても不起訴となる可能性が高くなるためです。

Authense法律事務所には傷害罪などの刑事事件に強い弁護士が多数在籍しており、被害者との示談交渉についても豊富な実績があります。
傷害事件を起こしてしまった場合や家族が傷害の容疑で逮捕されてしまった場合などには、Authense法律事務所までできるだけ早期にご相談ください。

傷害罪など刑事事件に関する初回のご相談は、無料で対応しています。

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