リーガルエッセイ

公開 2019.11.22 更新 2021.07.18

女優 合成麻薬MDMA所持で逮捕 尿鑑定の結果陰性で起訴できるのか

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。

尿からその違法薬物の成分が検出されなかったことがどう影響するのか

先日、女優が合成麻薬MDMA所持で逮捕されたという事件が大きく報道されました。
そして、それ以降、連日、「逮捕された事実を認め、自分の薬物であると供述している」「数種類の違法薬物の使用歴があると供述している」などと報道されています。
さらに、11月20日には、彼女が提出した尿から違法薬物が検出されなかったとの報道を受けて、「もし、彼女が、薬物所持について、『自分のものではない』などと否認し始めたら、不起訴となるのではないか?」などという意見も報じられていました。

事実関係や彼女が具体的にどのような供述をしているのか、正確なところはわかりません。

そこで、報じられている内容を前提に一般論として考えてみるに、違法薬物が、ある人物(Aとしましょう)の自宅から発見され、Aが、一度はそれが自分のものであると認め、その上で薬物使用歴を供述していたという事実があるとして、にもかかわらず、その後、供述を翻したら、Aは不起訴になるということなどあるのか?と思うかたもいらっしゃるのではないでしょうか。

前提として、Aが違法薬物の所持で起訴されるためには、その違法薬物を自分が所持していたという認識があったことが必要となります。
この点、たしかに、Aの自宅の、しかもAの生活スペースから違法薬物が発見されたのであれば、たとえAが「そんなものがそこにあるなんて知らなかった」と認識を否定しても、そのような言い分を信じてもらうのはなかなかハードルが高そうです。
しかし、自宅から違法薬物が発見されたら、それだけで、必ず、違法薬物の所持の認識があったなどということはいえません。
Aがその違法薬物を所持している認識があったかどうかを判断するためにとても大事になってくるのは、警察官がAの自宅で捜索差押の手続きを行った際のAの供述です。
つまり、Aが違法薬物の存在に身に覚えがなかったら、警察官が来ても「いったいなんの用で来たのか?」「部屋の中を気が済むまで調べていいですよ。何もありませんよ」などという対応をとるでしょうし、また、そこで違法薬物が発見された瞬間は、Aは、思わず、「え?それはなんですか?自分のものじゃない!」などと発言するのが自然であろうかと思います。
警察官が来て、「なにか持っていてはいけないものを持っているんじゃないか?」と言われたときに、警察官から、具体的に、何かという特定もされていないのに、自ら、その違法薬物のしまってある場所を指示して、「ここに麻薬のMDMAがあります」などと供述し、これに基づいて警察官がその場所を調べたところ、供述どおりに薬物と思われるものが発見され、成分を調べたらたしかにMDMAだった、というときには、Aは、もともと、自分が違法薬物であるMDMAを所持しているという認識があったはずだという評価がされるでしょう。
こうなってきますと、捜索時、警察官とAが具体的にどのようなやりとりをして違法薬物発見に至ったかという経過が非常に重要であることがわかると思います。
ですので、警察官も、その経過を詳細な報告書を作成して証拠化しますし、Aが、その報告書に書かれた内容が不正確だと主張するときには、のちの裁判で、捜索に赴いた警察官の証人尋問を行うこともあるのです。

起訴されない?違法薬物を「所持」したことと「使用」していたこととは別の事実

では、違法薬物を所持したという罪で起訴できるかどうか、という判断にあたり、Aの尿からその違法薬物の成分が検出されなかったことがどう影響してくるのでしょうか?
たしかに、違法薬物を所持したことと使用していたこととは別の事実です。
ですから、仮に、違法薬物の成分が尿から検出されなくても、部屋から発見された違法薬物を所持していたとして起訴することは、もちろんあります。
しかし、Aが、もし、「自分の部屋からなぜ違法薬物が発見されたのかわからない」と供述したときに、そのAの尿から、発見された違法薬物と同じ種類の違法薬物の成分が検出されれば、Aにはその違法薬物の使用歴があって、発見された違法薬物も自分で使おうと思って持っていたのだろうと推認されやすいでしょう。
したがって、捜査機関としては、尿から違法薬物の成分が検出されなかったとなると、その他の事実、つまり、捜索時のAの言動、その部屋にA以外のだれかが出入りする余地があったか、捜索前、内偵捜査の時点でAが違法薬物に関わる人物らと接触するような行動が認められたか、携帯電話の履歴等を慎重に捜査して、Aと発見された違法薬物との関係性を十分に捜査することが必要になると思われます。

薬物犯罪については、事実関係の争いに加え、違法薬物押収プロセスの適法性をチェックするなど見るべきポイントが多くあります。
ご自身、ご家族が薬物犯罪の嫌疑をかけられ、ご不安に思うことがありましたら、早めに弁護士にご相談に行かれることも検討してみるとよいと思います。

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