リーガルエッセイ

公開 2019.12.06 更新 2021.07.18

元俳優 強制性交等の罪により懲役5年の実刑判決 裁判所はどのような判断をしたのか

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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元俳優に懲役5年の実刑判決「強制性交等の罪」とは

12月2日、東京地方裁判所で、元俳優に対し、強制性交等の罪により懲役5年の実刑判決が言い渡されました。

この件は、元俳優が、映画、テレビ番組に多く出演している有名な方だったことに加え、①元俳優が暴行を加えたのか否か、②元俳優は性交について被害者が合意していたと誤信していたのか否かという点が争いになり、これについて裁判所の判断が下されることで注目を集めました。
ここでは、①の暴行について裁判所がどのような判断をしたかについて説明します。

刑法177条は、「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。」と定めています。
つまり、強制性交等の罪が成立するためには、「暴行又は脅迫」が要件となっているのです。

殴ったり蹴ったりする行為だけが「暴行」ではない?

「暴行」と聞いたとき、殴ったり蹴ったりという行為を思い浮かべるのではないでしょうか?

しかし、ここでいう「暴行」は、必ずしも、殴ったり蹴ったりという行為を指すものではありません。
裁判例では、通常、暴行が、被害者の反抗を著しく困難ならしめる程度のものであったかどうか、ということを、被害者の年齢、精神状態、行為の場所、時間等さまざまな事情を考慮して社会通念にしたがって客観的に判断することとされています。

ですので、行為としては、手を抑えつける、というものであったとして、たとえば、夜間、密室で、ほかに助けを求めたり脱出したりすることが到底できない場所で、体格差もあり、被疑者との面識もない被害者が、もしその手を払いのけたり叫んだりしたら、自分の身にさらなる危険があって身動きがとれない精神状態になってしまった、などという事情があった場合などに、その手を抑えるという行為が暴行として評価される可能性もあるといえるでしょう。

このたびの判決においても、当時の具体的な状況として、深夜の時間帯に、明かりが消された元俳優の自宅寝室でマッサージの施術をしていたという事実を前提に、元俳優のとった一連の行動、元俳優と被害者との体格差などに照らし、被害者が元俳優に物理的、心理的に抵抗することが困難な状況であったろうと評価した上、暴行の事実があったと評価しています。

被害に遭われた方の中には、意思に反して被害にあったにもかかわらず、ご自身で、「もっと抵抗できたのではないか?」「殴られたわけではなかったから、犯罪にならないのではないか?」などという思いから、被害申告をすることができずにおひとりで問題を抱えている方がいらっしゃるかもしれません。
そのような思いを周囲に打ち明けること自体、非常にご負担であると思います。
一方でおひとりでこのような気持ちを抱えているのもおつらいことと思います。
お力になれることがありましたら、ぜひ弁護士までご相談ください。

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