リーガルエッセイ

公開 2021.01.27 更新 2021.07.18

女性4人への強制性交等の罪に問われた男性の判決について

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。

「未成年のうちなら」で犯行

私は、無類の漫画好きです。
好きな漫画はいろいろあるのですが、「家栽の人」は大好きな漫画のひとつです。
司法試験を受験する前年、つかの間の休憩時間(ちなみに、1日10分)に読んでいました。
少年事件に関わることの意味、その奥の深さ、やりがい、厳しさなど感じることの多かった漫画です。
「家栽の人」を読んで、私も、何らかの形で少年事件には関わりたい!絶対に次の試験で合格するぞ!と思いを強くしたものです。
でも、実際、現場で仕事をするようになると、なかなか私自身の感情と折り合いがつかず、少年事件に携わる機会を今はほとんど持てずにいます。
被害者の存在する犯罪において、被害者やご遺族にとっては、加害者が成人だろうと少年だろうと全く関係ない。
にもかかわらず、少年事件については、少年の可塑性、つまり、施す教育や与えられた環境の影響を受けやすく、これにより柔軟に矯正が図られるという性質があるために、成人事件とは異なる手続きが用意されていることについて頭では理解できても、その少年法の趣旨に沿った最善の活動ができるのか、少し自信がないからかもしれません。

先日、ある20歳の男性に対し、4人の被害女性への強制性交罪等の事実が認められ、懲役5年6月の判決が言い渡されました。
強制性交罪の法定刑は、5年以上の有期懲役。
複数件の犯罪が成立したとすると、併合罪として加重し、5年以上30年以下の範囲で判決を言い渡せるはずです。
報道によれば、一部犯行については既遂に至っていないものもあるということを踏まえても、4人の10代女性に対し、それぞれ、自転車がパンクしたから見てほしいなどとうそを言って人気のない場所に連れ込んで犯行に及んだという男性の刑事責任として懲役5年6月というのは、あまりにも軽すぎると思いませんか?
そもそもの求刑が懲役6年。
これもずいぶん軽すぎるのではないかと思いませんか?

この量刑に大きな影響を与えたと思われるのは、男性の犯行時の年齢です。
この男性は、犯行時未成年だったとのこと。
少年法は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的としています。
この男性は、刑事処分を受ける時点ですでに成人であったために、少年法に従った手続きでなく、成人同様の刑事手続きを踏むことになりましたが、犯行当時未成年だったということで、少年法の趣旨のようなものを組み込んで量刑について考える必要があったのだと思います。
たしかに、それは一定程度やむを得ないとは思うのです。
でも、報道によれば、この男性は、捜査機関に対し、「未成年のうちにレイプをいっぱいして20歳になったらやめようと思っていた」と供述したとのこと。
実際、そのような供述をしたのか否かは報道だけからは定かではありませんが、仮にこれが事実であったとしたら、そのような未成年であることに乗じて今のうちに重大犯罪を敢行しようなどという卑劣な犯行について、こんな刑事責任でよいのかと思わざるをえません。
一方で、この供述をしたことが事実だとしたら、このような供述自体が非常に稚拙で、未成熟さを表しているともいえそうです。

そもそも、このような動機付けが働いてしまうこと自体に問題を感じます。
「未成年だったら前科はつかない」「犯行時未成年だったら、大人のように裁かれない」「未成年だったら、何をやっても、結局なかったことになる」そんなことが常識として出回ってしまうことを防ぐために何ができるかを考えなければなりません。
報道だけを見ると、実際は、犯行時未成年であっても、処分時に成人に達していれば成人同様の手続きになるところ、本件の男性はそれを認識していなかったようにも思えます。
未成年者が犯罪を犯したら、どのような手続きになるのか?
それにより、未成年者が今後受けるであろう試練はどのようなものになるのか?
未成年者による犯行の被害者が、どのような苦しみを負い続けているのか?
このような教育が中高生のうちに丁寧に行われることは、いたましい事件、その事件に存在する被害者をなくすることに少しでもつながるかもしれません。
弁護士として、法教育を行う使命も感じます。

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