リーガルエッセイ

公開 2021.02.24 更新 2021.07.18

閣議で決まった少年法改正案の内容とは?

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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法教育の授業やります!

いつも思うのです。
報道で「法律の改正案 閣議決定」と見たとき、「なるほど、今後はこういう流れで法律になっていくのだな」とイメージできる人ってどれだけいるのでしょうか。
この仕事をしていながらとても恥ずかしいのですが、小難しい話がとても苦手な私は、新聞で読んでもいつもピンとこなくて、「あれ?閣議決定の後はどんな手続きになるんだっけ?」と毎度流れを確認して、ああそうだった、というのをやっています(ここでは本題からずれてしまうのであえて流れを書きませんが、内閣法制局の「法律ができるまで」というページを検索すると流れが書いてあります。本当は、もっと簡単に書かれているといいなとこれもいつも思います)。
なんでこんなことをつぶやくのかというと、報じられている少年法改正に関し議論されている内容って、ちゃんと肝心の少年たちに届いているのかなと思うからです。

今回、閣議(内閣で意思決定するために開かれる会議)で決まった少年法改正案というものは、大体、こんな内容です。

初めて「特定少年」という言葉が作られた

  • 「特定少年」というのは、18歳と19歳
  • 「特定少年」と17歳以下の少年とは別扱い

「特定少年」と17歳以下の少年とで別扱いになる点 3つのポイント

①「逆送」対象事件の拡大

少年事件は、警察、検察で捜査したら、まず家庭裁判所に事件が集まります。
家庭裁判所では、専門家による調査がされた上で、少年にはどんな処分がなされるべきか、検討されます。
この結果、少年院送致とか、保護司などの見守りのもと社会で少年の立ち直りを目指そうという保護観察とか、そのような保護処分が必要だと判断されることもあります。
でも、保護処分じゃなくて、大人と同じように起訴されて裁判になることもある。
それが、

  • ⅰそれまでの手続きを経ているうちに、少年が20歳になってしまった場合
  • ⅱ重大事件で、大人と同じように刑事裁判の場で責任を負わせるべきだと家庭裁判所が考える場合

で、これらのケースでは、家庭裁判所から検察庁に事件が送られます。
検察庁から家庭裁判所に送られた事件が、また戻ってくるから、これを「逆送」と呼ぶのです。
特定少年の場合には、この対象事件の範囲を今よりも広げましょう、というのが、この対象事件の拡大ということ。
つまり、結果として、刑事責任を問われる少年が増えることになると見込まれますよね。

②不定期刑廃止

「被告人を懲役5年以上10年以下の不定期刑に処する」などという判決を見聞きしたことはありませんか?
判決を言い渡すときに20歳未満である場合、有期懲役が選択されると、刑の長期と短期を決めて幅をもって懲役刑を言い渡すことになっています。
これは、少年の服役態度などから見て、早めに社会復帰をさせてもいいなと判断されたときには、この幅の中で弾力的に社会復帰の時期を決められるようにすることで少年の立ち直りを目指すことにその趣旨があります。
服役態度を見て行いがよければ、懲役5年で出られるが、行いが悪ければ10年になりうる、と言われたら、少しでも早く出るために努力するだろう、それが立ち直りにつながるだろうというわけです。
そして、この不定期刑、言い渡せる刑の長さに制限があります。
短期は10年まで、長期は15年まで。
だから、有期懲役の場合、懲役10年以上15年以下というのが最高刑となります。
この不定期刑の適用対象から、特定少年を外すというのが改正案。
特定少年については、大人と同じように、「懲役15年」などと判決が言い渡されます。

③起訴段階での実名報道解禁

これは、わかりやすいですね。
少年法61条には、家庭裁判所の審判に付された少年や少年の時に犯した罪で起訴された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼうなどによってその者がその事件の本人だと推知することができるような記事や写真を新聞や出版物に掲載してはいけない、という条文があります。
だから、起訴されても、今は、少年がどこのだれかわかるような情報は伏せられていますよね。
これが、特定少年について、起訴されたタイミングではあてはまらなくなり、実名報道も可能となるわけです。
もしかしたら、これが、一番わかりやすく社会にインパクトのある改正かもしれません。
この内容、ひとつひとつの言葉はなんとなくわかるようで、具体的にイメージできるかというと大人でもなんだかよくわかりませんよね。
これ、少年たちの中で理解している子はどれだけいるのでしょう。
先日もこちらのエッセイで取り上げましたが、犯行のとき20歳未満だったら、その後の手続きで20歳になっても、少年法が適用されて大人よりもはるかに軽い処分となるかのように勘違いしていたことが犯行を思いついたきっかけになっていると思われる事件もありました。
たしかに、この改正に関する話を、少年たちが知っていたら、じゃあ何かが大きく変わるかというとそれはわかりません。
もちろん、すべてを変えることなどできないと思います。
ただ、合わせてすべきことは山ほどあると思うのです。
それをせずして、単にこんな改正をしても、結局何がどこまで変わるのかなと思います。
やるべきことの一つとして思いつくのが、たとえば、法教育。
子どもたちに、早くから、法律の内容、なぜそんな法律があるのか、彼らの身近にひそむ法律がからむトラブルなどについて、わかりやすく、彼らの身近なものとして伝えていくことの重要性は間違いなくあると思うのです。
たとえば少年法について言えば、単に少年事件の流れを知ることができるにとどまらず、かつてどんないたましい事件が起き、そのかげに被害者や遺族が存在して、加害少年はどのような処分を受けることになったか、さらには、立ち直りを果たした少年の今のメッセージを伝えることなどができたらどうでしょう。
薬物犯罪、闇バイト、未成年の性被害、いじめ問題など、おそらくこれに関するある程度のアナウンスは、学校や自治体による濃淡の差はあってもそれなりになされているかもしれませんが、昨今の報道を見てもまだまだ十分に機能していないように思います。

もしよければ、小学校、中学校、高校で、ぜひ私に一コマ授業をさせてほしいと思います。
学校の抱える問題、ニーズをお聞かせいただけたら、こういう話を子どもたちにしてみたらいいのではないかという提案をさせていただきます。
そして、ニーズに合えば、弁護士として法教育の一環として授業をさせていただきたいと思います。
取り組みとしてはとても小さな一歩かもしれませんが、いつか、どこかで、子どもたちが、乗り越えてはいけない一線のちょっと手前に立たされたとき、「やっぱやめた」とその場に踏みとどまる力になれるように、また、「あのとき、学校に来た、たしか弁護士だったかな?あのときの話、聞いておいてよかったな」と思ってもらえる時間が作れるように、少しずつ取り組んでいきたいと思います。
ぜひお気軽にお問合せください。

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