リーガルエッセイ

公開 2023.10.26

日本大学アメフト部 大麻問題について

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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日大アメフト部内における薬物問題

先日、日本大学アメフト部の男子学生が、学生寮で大麻などを所持していたとして逮捕されましたが、その後、同じ大学の同部に属する別の部員が、大麻とみられる違法薬物を購入していたとして麻薬特例法違反の被疑事実で逮捕されたと報じられました。

このニュースを見てのコメントとしては、やはり、「なんで今さら発覚するの?」というニュアンスのものが多く寄せられていたように思います。

たしかに、報道を見る限りでしかその事実関係を知りませんが、仮に、大学で、アメフト部内における大麻使用の事実を認識してから警察に通報するまでの間に時間が空いていたのだとすると、それは、薬物事犯の捜査と言うことを考えたとき望ましいものではないと思います。

薬物は、それ自体、処分が比較的容易であるし、使った証拠も時間の経過とともに消滅してしまうため、速やかに捜査に着手することが必要。
それが、どのような背景によるかは不明ですが、報道されているように、大学側が事態を把握してから警察に通報するまでに2週間程度間が空いたということが事実であれば、大学側の対応は、薬物犯罪捜査に支障をきたすようなものだったと言わざるを得ません。

同じ家の中で誰かが規制薬物を使用したことが明らかになった場合、同居の家族についても、尿の提出を求められたり、所持品を確認されたりし、薬物との関係性を慎重に確認されますし、自身が使用しているとはいえなくても、同じ家の中で薬物を使用している者がいたということは、それについて、認識があるかもしれないという疑いをもって事情聴取されるのが通常です。

大学の学生寮において一人が規制薬物を使用した疑いが浮上したのであれば、もちろん、その寮の構造(同部屋に複数人が生活していたのか、それとも、各人が鍵付きの個室に独立して住んでいたのかなど)によっても必要性の度合いは違ってくると思いますが、同じ寮内で生活する人たちにおいても同居の家族同様、薬物使用の疑い、事情認識の疑いが高まり、早期に事情聴取されるべき場合はあるはず。
仮に大学側の対応が原因で、警察がそのような通常どおりの捜査をする機会を逸したのであれば、大学側の警察への報告経緯には重大な問題があったのではないかという疑いの目を向けられても仕方ないのではないかと思います。

なお、後に逮捕された部員が、大麻取締法違反の罪ではなく、麻薬取締法違反の罪で逮捕されたことについて、なぜだろうかと思われる方もいるかもしれません。

大麻を譲り受けた場合、大麻取締法違反3条1項に違反することになります。
にもかかわらず、今回、麻薬取締法違反の罪で逮捕されているのは、すでに、その譲り受けた薬物が存在しないからだと考えます。

「大麻を譲り受けた」という場合、当然のことながら、譲り受けたものが大麻であったことを示す証拠が必要です。
通常は、譲り受けた物が存在していることを前提として、それを鑑定したら、大麻だったという鑑定結果が必要になります。
しかし、すでに、その譲り受けた大麻が存在しないとなると、譲り受けたものが大麻であったかどうかを今さら立証する手立てがない。
そこで、麻薬特例法の「薬物犯罪を犯す意思をもって、薬物を規制薬物として譲り受けた」場合に該当するとして逮捕しているのです。
この麻薬特例法違反については、規制薬物を譲り受けたという犯罪ではなく、あくまでも、「規制薬物として」譲り受けたことが犯罪になり得ます。
(「規制薬物として」譲り受けたということは、それを密売人から買った際のメッセージのやりとり等により明らかにします。)
だから、譲り受けた物が、鑑定等により、客観的に規制薬物だったことが立証できない、いわゆる物なし事案で、この麻薬特例法違反による逮捕がなされることがあります。

今後の捜査に注目します。

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