リーガルエッセイ
公開 2024.08.16

中学生のいじめ問題について

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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中学生のいじめ問題

私には高校生の娘がいます。
娘は、小学校6年生のときに私立中学を受験して入学しました。
中高一貫校でした。
娘自身も何度も見学して、この中学校に通いたい!と希望して決めた中学校でした。
でも、中学3年生になるタイミングで退学し、転校しました。
中学1年生の2学期ころから不登校になり、2年生になったタイミングで一度は登校を再開したものの、すぐにまた不登校になり、その学校には通い続けることができなくなったためでした。

不登校になった背景にはいろいろな要素があると思っています。
でも、不登校になった大きなきっかけのひとつは、上級生からのからかい行為でした。
娘は、年齢の割に幼いところがあり、その言動に子どもっぽさがみられることがあります。
そんな娘のふとした言動を見た上級生集団が、突然娘を囲み、娘を動物にたとえてからかい、お友達とお話ししていた娘の様子を、ばかにしながらすぐそばで動画撮影したというのです。
面識のない上級生たちに突然そのようなことをされた娘はおそろしくなってしまったといいます。
もしかしたら、撮影された動画が、上級生たちの間で共有され、陰でばかにされたり、知らないところでSNSにさらされたりするんじゃないかと思ったようです。
泣きながら帰宅して、その話を私に打ち明けてきました。
私は、担任の先生に連絡し、娘から聞いた話を報告しました。
そうしたところ、「上級生たちの特定ができないため、なんともしようがない」と言われました。

知らない上級生たち、しかも集団だったから、娘がその特定をできなかったのです。
それに対し、私は、たいして人数がいるわけではないのだから、2学年以上の先生らにおいて、各クラスで状況を確認することができるのではないか、その様子を目撃していた人もいるであろうから、しっかり調査してほしいと頼みました。
後日、調査結果の報告を受けました。
上級生らの特定ができたこと、その子らに確認したところ、動画はすでに削除していると答えたこと、「今後はしないように」と伝えた旨告げられました。
先生に、生徒らのスマホの確認をしたのか聞くと、していないとのことでした。

娘は、その出来事があって以降、学校に行くことが怖くなり、学校に行くことができなくなってしまいました。
一度は、登校を再開したものの、またもや、別の上級生たちから心無い言葉をかけられ続け、それが恐ろしくなって、再び登校することができなくなりました。

私は、当時、自分が学校とどんなやりとりをしたか、あまりよく覚えていません。
今となっては親としてやれることがもっとあったように思うのに、全くやりきれないままに娘の退学の選択を受け止めたことについて自分を責めるような気持ちを持ち続けています。
どうして自分は学校との話し合いをしっかりやりきらなかったのか、と考えたときに思い出すのは、当時、私自身、不安、焦り、怒りなどの感情に押しつぶされそうになりながら、毎日、娘の話を聴いたり、そのような娘のかたわら自分の仕事の時間を捻出することで精いっぱいになっていた日々。
私は、娘と私が陥っている現状は、すべてが私自身に原因があるのではないかという思いに押しつぶされそうになっていて、1日1日を乗り越えていくことで精いっぱいで、事態をよくするために、学校に相談したり、話し合いをしたりしようなどという余裕も気力もなかったように思います。

転校に際し、学校に退学届を出しに行く必要がありました。
退学届には「退学の理由」という欄がありました。
そのとき、「家庭の都合により」とか「入学したい学校があったため」とか適当なことを書くこともできたし、学校もそれを望んでいるだろうなと思いました。
でも、私は、娘が見守る中、その欄に大きく「上級生からいじめられる被害に遭ったこと。それに関し、親として、学校と話し合いができなかったこと」と書きました。
学校に対する嫌がらせのつもりはありませんでした。
私自身が、何もできなかった事実をごまかしたくないなという気持ちになってそのように書きました。
それを見た学校側は、一瞬戸惑いの色を見せたものの、それに対し、何もコメントはありませんでした。

ときどき、娘と当時のことを振り返ることがあります。
そして、「あのとき、私は、親として何ができたのかな」と考えることがあります。
でも、いつも最後は、娘とともに「あのとき、もう少し何かできたことがあったかもしれないけど、結果、今があるからよかったよね」と言い合います。
当時があったから、自分が通う学校について、何かあったときに、一人一人の先生が生徒に向き合って話を聴いてくれるという要素を一番大事にしたいということが明確になり、進学する高校を選択するときに、漫然と学校見学をするのでなく、学校側にポイントを絞った話を聴くことができました。
当時があったから、私も、学校生活の中ではいろいろなことが起きるけれど、必ずしも今の環境に居続けなければいけないというしばりなどはなくて、少し視野を広げたら、多様な居場所が存在するということを知ることで、何が起きても「まあ、なんとかなるさ」という気持ちをもてるようになってきました。
何か問題と思われることが起きたときに、すべてを外部の環境のせいにしたり、逆にすべてを親である私や子ども自身のせいにしたりするのでなく、絡み合ういろいろな要素を分解してとらえた上で、自分自身の課題、娘の課題、学校に相談すべきことなどを切り分けて対応する必要性を認識することができるようになってきました。

もちろん、今も課題は山積ですが、少しだけ光が見えたような気持になっていることもたしかです。

ただ、今でも思うのは、当時は、本当にどうしたらいいかわからず、真っ暗闇にいるような孤独や苦しさでいっぱいだったこと。
私は、どうにかこうにか今に至ることができましたが、それでも、やっぱりしんどかったなと思います。
また、私は、当時、気力や余裕がなくて何もできなかったけれど、娘の話を聴いたうえで、学校ともっと向き合って話し合いをすべく、諦めないで、根気強く具体的な働きかけをできればよかったなとは思っています。
今でも、ときどき、当時何もできなかった自分を「弁護士のくせに、一番大事なわが子のピンチに何もできなかったふがいない親」と責め、呼吸が荒くなってしまうこと、娘をからかっていた上級生たちの顔を想像しては怒りで頭に血がのぼることもあります。
なんだかんだきれいにまとめようと思っても、やっぱり私の中ではまだまだ未解決のままなのかもしれません。
そして、そんな思いを娘も抱いているのかもしれません。

夏休みも終盤。
長期休み明けを控え、今のうちになんとかしなくては、と焦る必要は全くないと思います。
ただ、もし、お子さんのいじめ被害を受け、何かをどうにかしたいのだけど、ご家庭だけで具体的な動きをとるだけの余裕や気力がないという場合には、少しまとまった時間がもてそうな夏休みの期間に、弁護士までお声かけください。
じっくりお話をうかがい、何ができるか一緒に考えることができます。
そして、学校や加害者側に働きかけをする場合には、弁護士が窓口となることもできます。
まずは、現状をお話しいただき、お子さんや保護者のかたが不安に思っていることを見える形にしたうえで、ご家庭で考えたほうがよいこと、学校側に相談、働きかけを行ったほうがよいこと、加害者側に求めるべきことなどを整理してみるところから始めませんか?
お気軽にご連絡ください。

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