リーガルエッセイ
公開 2025.11.06

部活と体罰について

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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部活と体罰

先日、部活動の時間に、顧問の教員が、生徒を突き飛ばして転倒させるなどの暴行を加え、脳に重傷を与えたとの被疑事実で逮捕されたと報じられました。
教員は、「部活動の指導の一環だった」と述べているとも報じられています。
捜査は始まったばかりで、今後、事実関係が明らかになるものと思います。
少しこの報道を離れ、部活動と体罰に関し取り上げてみたいと思います。

まず、言うまでもなく、部活動の指導として暴行を加えるということは許されません。
これは、「指導として望ましくない」などというレベルの話ではありません。
法令で明らかになっています。
学校教育法11条では、「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは」「児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。」と定められています。
そして、文科省は、「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について」という通知の中で、「部活動も学校教育の一環であり、体罰が禁止されていることは当然」と明記しています。
その上で、「運動部活動においては、生徒の技術力・身体的能力、又は精神力の向上を図ることを目的として、肉体的、精神的負荷を伴う指導が行われるが、これらは心身の健全な発達を促すとともに、活動を通じて達成感や、仲間との連帯感を育むものである。」「その指導は学校、部活動顧問、生徒、保護者の相互理解の下、年齢、技能の習熟度や健康状態、場所的・時間的環境等を総合的に考えて、適切に実施しなければならない。」としているのです。
裁判例においても、部活動というものは、学校教育の一部であり、教育というものは、豊かな人間性、創造性、健やかな身体を養うことや個性の確立に努めることを目標とするものであると学校教育法51条に定める理念に沿い説明し、部活動の指導で、生徒の人格を否定するような言動に及んだり、体罰を加えたりすることは学校教育法11条の趣旨から許されるものではないと述べているものがあります。

部活動と一言で言っても、学校、その学校における当該部活のもつ歴史、ひとりひとりの顧問の考えなどの要素によって実態はさまざまだと思います。
ただ、一般的に、部活内での人間関係は濃密になる傾向はあるのかもしれません。
特に、大会での団体競技があったり、また、部活での活躍が将来の進路に影響したりするというような要素がある場合、一人一人の生徒にとっての部活動の存在がもつ重みも大きなものになってくることも。
もしかすると、結束力の強さが、ときに閉鎖的で外からは中での様子が見えにくくなる傾向もあるかもしれません。
中で問題があったときに、それは、被害を受けている立場のかたにとって助けを求めにくいとか、被害を受けていない立場のかたにとっても声をあげにくいとか、加害側にとっては加害行為をエスカレートしてしまうとか、そういった状況に結びつきやすいこともあるかもしれない。
だから、部活動というものを密室で行われる閉鎖的なものにせず、顧問以外の教員による監督の目が届き、学校全体であるべきでない指導がなされていないかチェックする体制作りが必要なのだと思います。
具体的には?
学校の先生方にかかる負担の大きさを考えて、部活動について、学校外のリソースを用いるということも議論のあるところだと思います。

生徒にとって、部活動というものが、生徒を心身ともに傷つけるものではなく、法が目指しているような教育効果を実現できるようなものであるためにいかにして体罰などを排除することができるのか考えていく必要がありそうです。

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