コラム

公開 2022.02.01

知っておきたい、不動産オーナーが取るべき相続対策は?

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不動産オーナー(大家)が生前におこなっておくべき相続対策を、類型ごとにわかりやすく解説します。

不動産オーナーが何ら対策をしないまま相続を迎えると、相続争いや相続税納税のための資金の不足などさまざまなトラブルが起きる可能性があります。

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不動産オーナーに起きうる相続などのトラブルの例

不動産をいくつか所有している不動産オーナーにとって、相続対策は避けては通ることのできないことでしょう。
はじめに、不動産オーナーが何ら対策をしなかった場合に起きうる相続などでのトラブルについて解説します。

遺産の分け方で家族が揉める

現預金などとは異なり、不動産はその分け方の自由度が低いという特徴があります。
たとえば、長男と二男で財産を平等に分けようにも、遺産の内容が2,000万円相当の自宅不動産と1億円相当の賃貸アパートとその敷地、2,000万円相当の預貯金であった場合などには、平等に分けることは到底できません。

だからといって、賃貸アパートを共有にしてしまえば、結局共有している相続人間でその運用方法について揉めたり、
売却時や次の相続時などに問題となりかねず、単なる問題の先送りとなるだけでしょう。
平等に分けることが難しいうえ、相続人がそれぞれ自分の相続分を取得したいと主張した場合には、
遺産である不動産を売却して金銭化し金銭で分けるなどの選択が取られることが現実的です。

また、当人同士で遺産分割の話合いがまとまらなければ、裁判所での話合いである調停や、裁判所に結論を下してもらう審判へと移行する可能性があります。
一度争いに発展してしまえば、兄弟間の溝が深まってしまう悲しい結末となってしまうかもしれません。

高額な相続税が発生する

賃貸用不動産は、元々の地価が高い地域において所有されることも多く、複数の世帯が入居できる賃貸アパートなどであれば建物の価値が一般的な自宅不動産よりも高いことが多いでしょう。

また、不動産を複数所有しているのであれば、相続税が高額となる可能性があります。
何ら対策をしないままでは、高額な相続税がかかり、残された家族が困ってしまうかもしれません。

相続税を支払うお金が捻出できない

一般的には、1億円で取得した土地や建物の相続税評価額は、1億円を大きく下回ります。
さらに、賃貸をしていれば自分で使っている土地や建物よりも安く評価されます。そのため、相続税を下げる対策の一環として、アパート等の建築をする場合もあるでしょう。

しかし、現預金のまま持っているよりは相続税が低額となるとはいえ、通常は相続税額がゼロになるほど評価が下がるわけではありません。
そのため、たとえば預貯金の大半をつぎ込んでアパートを建築した場合などには、相続税を支払うためのお金がなく、遺された家族が相続税の支払いに困ってしまう可能性があります。

なお、相続税は現金一括払いが原則です。
物で納める物納や分割払いである延納も制度としては存在しますが、要件が厳しく申請すれば必ず認められるものではないため、
現金での一括払いをを行うことを前提として対策をする必要があるでしょう。

認知症になって管理ができない

相続が起きる前の段階で起きうるトラブルとして、オーナー自身が認知症になってしまい不動産の管理ができなくなることが考えられます。
重い認知症になってしまうと、ご自身で新たに賃貸借契約を結ぶことなどは困難になります。

また、金融機関が認知症であることを認識した時点で、不正防止などの観点から口座が凍結されてしまう場合もあります。
賃貸不動産オーナーが何ら対策をすることなく認知症となってしまった場合の影響ははかりしれません。

不動産オーナーが検討したい相続争い対策

不動産オーナーが検討したい相続争い対策

ここからは、不動産オーナーがおこなっておくべき相続対策を紹介します。
はじめに、相続争いを防止するという観点から検討したい対策を2つ解説しましょう。

遺言書を作成する

相続人が複数人いる場合には、遺言書の作成は必須であるといえます。
所有する財産それぞれについて受取人を定めた有効な遺言書があれば、その遺言書どおりに遺産を分けることになるため、相続人同士での遺遺産分割協議をする必要はありません。

そのため、遺言書を作っておくことで、相続争いを未然に防ぐことが可能です。

生命保険を活用する

遺言書があっても残ってしまう問題が、遺留分です。
遺留分とは、子や配偶者など一定の相続人の保証されている、相続での最低限の取り分のことです。

遺留分を侵害したからといって遺言が無効になるわけではありませんが、遺留分を侵害された相続人から遺言などで財産を多く受け取った人に対して、遺留分侵害額請求がなされる可能性があります。
遺留分侵害額請求とは、侵害された遺留分相当額をお金で払うよう請求することです。

不動産は平等に分けることが難しいため、どうしても一部の相続人に遺産が集中するような内容の遺言書となってしまうケースが多いでしょう。

たとえば、遺産の内容が2,000万円相当の自宅不動産と1億円相当の賃貸アパートとその敷地、
2,000万円相当の預貯金であった場合に、2,000万円相当の自宅不動産と1億円相当の賃貸不動産を長男に相続させようとすると、
残りの財産は2,000万円の預貯金しかないというケースが発生しえます。

遺産の内容の例

  • 全財産:1億4000万円
  • ・2,000万円相当の自宅不動産
  • ・1億円相当の賃貸アパートとその敷地
  • ・2,000万円相当の預貯金

長男に相続させたい財産

  • ・2,000万円相当の自宅不動産
  • ・1億円相当の賃貸不動産

法定相続人が長男と二男の2名のみであったとすれば、
二男の遺留分は全財産の4分の1(遺留分2分の1×法定相続分2分の1)となります。

二男の遺留分

  • 全財産の4分の1(遺留分 2分の1 × 法定相続分 2分の1
  •  
  • 全財産 1億4000万円=(自宅不動産2,000万円+賃貸不動産1億円+預貯金2,000万円)の場合
  • 二男の遺留分は3,500万円(=1億4,000万円×4分の1) 

この場合には、仮に預貯金の2,000万円をすべて二男に相続させたとしても、遺留分を満たすにはまだ1,500万円不足しています。
もちろん、二男が何ら請求をしない可能性もありますが、仮に長男に対して侵害された遺留分相当額の支払いを請求した場合、
長男は実際に1,500万円のお金を捻出し、二男へ支払わなければなりません。

このお金を補てんするため、長男を受取人とする生命保険に加入しておくことが考えられます。
仮に遺留分を請求された場合であっても、長男が受け取った保険金から請求された遺留分相当額を支払うことができるのです。

一部の相続人に遺産が集中するような内容の遺言書を作成する際には、生命保険などを活用した遺留分対策も併せて検討しておきましょう。

不動産オーナーが検討したい相続税対策

不動産オーナーが検討したい相続税対策
不動産オーナーが検討しておきたい相続税対策には、次の4つがあります。

小規模宅地等の特例の適用を確認する

小規模宅地等の特例とは、相続税の計算上、土地の評価額を最大8割(賃貸不動産の敷地は最大5割)減じてもらえる特例です。
この制度の適用を受けられるかどうかで、相続税額に大きな違いが生じる場合が少なくありません。

特例の適用には、取得者などの要件があります。
そのため、遺言書を作成する際には小規模宅地等の特例が使えるかどうかも考慮したうえで、不動産を誰に相続させるのか検討すると良いでしょう。

不動産の入居率を上げる

賃貸に実際に活用している不動産は、自分で使っている自宅不動産よりも相続税の評価額が低くなります。
しかし、相続が起きた時点で空室となっており、特に入居者も募集していない場合には、賃貸物件特有の減額評価を適用することができません。

空室が増えてしまっている場合には、リフォームをするなどして入居率を上げることで、資金繰りが改善するという本来の効果が期待できることに加え、相続税を下げることにもつながります。

生前贈与をする

相続税対策として、生前贈与の活用も検討したい事項の一つです。
しかし、不動産をそのまま生前に贈与してしまえば、相続税よりもむしろ高額な贈与税が課される可能性が高いといえます。

そのため、生前贈与をするのであれば、不動産以外の財産を贈与すると良いでしょう。

資産を法人化する

不動産の数が多い場合には、法人を設立して、その法人に不動産の名義を変えることも相続税の節税につながる場合があります。
ただし、資産の内容などによっては節税できる相続税以上にコストがかかってしまう場合もあるため、弁護士や税理士などの専門家に相談の上、慎重に検討しましょう。

なお、不動産を法人化した場合には、その法人の株式を少しずつ生前贈与することも可能です。

不動産オーナーが検討したい納税資金対策

不動産オーナーが検討すべき相続税の納税資金対策としては、主に次の2つが挙げられます。

生命保険を活用する

相続税の納税は、相続が起きてから10ヶ月以内にしなければなりません。
つまり、それまでに相続税相当の現金を用意すべきだということです。

相続税相当の預金は預貯金で用意しておいても良いですが、その場合には遺産分割協議がまとまらないことには、原則として引き出すことができません。
仮に協議が難航した場合には、預貯金を納税に充てることが難しいのです。

こうした事態に備えて、生命保険で納税資金を用意することも検討すると良いでしょう。
生命保険は受取人が単独で受取手続きをすることが可能であることから、仮に相続争いが起きていてもスムーズに現金を手にすることができるためです。

また、生命保険金には非課税枠もあるため、相続税を下げる効果も期待できます。

金融機関へ相談しておく

納税資金が不足してしまった場合には、不動産を担保にするなどして金融機関から借入れをすることが必要となる場合もあるでしょう。
こうした事態に備えて、あらかじめ付合いのある金融機関に相続時の融資などについて相談をしておくことも一つです。

事前に相談をしたからといって必ずしも借入れができるわけではありませんが、事前に話をしておくことでいざというときのスムーズな対応が期待できるほか、
どの程度であれば融資が受けられるそうなのか目安を知ることにつながります。

不動産オーナーが検討したい認知症対策

ご自身が認知症となってしまうリスクに備え、不動産オーナーが検討したい対策は次の2つがあります。

任意後見制度の活用を検討する

任意後見制度とは、あらかじめ任意後見人を引き受けてくれる人(「任意後見受託者」といいます)と公正証書で契約を結んでおくことにより、万が一認知症となるなど判断能力が低下した際に、任意後見受託者に財産管理などをおこなってもらう制度です。

この制度を利用すれば、家族など信頼のおける人を後見人として指名することができるうえ、任意後見人に依頼したい事項をあらかじめ決めておくこともできます。
たとえば、依頼事項として賃貸物件についての管理や賃料の受領などを定めることが可能です。

なお、任意後見とよく比較される制度に、法定後見(成年後見)制度があります。
こちらは、実際に判断能力が低下した際に家庭裁判所に後見人を選んでもらう制度です。

法定後見の場合には必ずしも候補者がそのまま選任されるとは限らず、特に不動産などの資産が多い人の場合には、弁護士や司法書士など外部の専門家が選任される可能性が高くなります。
また、おこなってもらう事務についての自由度も、任意後見と比べると限定される傾向にあります。

信託の活用を検討する

民事信託とは、あらかじめ受託者との間で契約書を作成しておくことにより、万が一の際の財産管理などを委託することができる制度です。
任意後見制度よりもかなり自由度が高く、契約内容を工夫することにより、たとえば収益不動産の買い替や賃料を委託者以外の人へ渡すなど、自由な制度設計ができる点に特徴があります。

また、契約内容によっては、本人の生存中は賃貸不動産から生じる賃料は本人が受け取り、本人の死亡後は配偶者が賃料を受け取れるようにするなど、死後も含めた設計をすることも可能です。
ただし、今後起きうる状況の変化を細かく折りこんで個別事情に合わせた契約内容をつくりこむ必要があるため、制度設計時の費用が比較的高額になる傾向にあります。

まとめ

不動産オーナーが何ら相続対策をせずに相続を迎えてしまうと、さまざまなトラブルが生じる可能性があります。
相続争いや相続税、納税資金、認知症などさまざまなリスクに対処できるよう、生前のお元気なうちから対策を練っておくことが重要です。
対策をご検討の際には、ぜひ弁護士へご相談ください。

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適切な相続対策を講じるためには、個々人の財産状況や親族との関係性を適切に分析し、取りうる種々の対策案からベストな方法を選択する必要があります。
Authense法律事務所には、生前の相続対策について様々なケースを担当した経験豊かな弁護士が所属しているため、
適切な相続対策を行うための具体的なご提案や必要となる手続の代理を行うことが可能です。
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記事を監修した弁護士
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