コラム

公開 2022.02.15

不動産業界におけるDXとは?DXの種類、導入事例と課題

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不動産業界でDXを導入するメリットや課題を紹介し、最近のDX導入事例をわかりやすく解説します。

近年不動産業界におけるDXは加速しており、オンラインでの内見やチャットツールの導入など、その取り組みは多岐にわたります。

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不動産業界におけるDXとは

DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略称です。
単なるIT化ではなく、デジタルを活用して業務を「変革」することがDXにあたるとされています。

DX化の波はさまざまな業界に押し寄せていますが、最近では不動産業界でのDX化が盛んです。

不動産業界は、デジタルという観点において、比較的古い業界だといえます。
そのため、多くの物件情報をFAXでやり取りしたり紙で管理したりする場合が多く、人手不足に常に悩まされてきました。

こうした中で、新型コロナウイルスの影響により、できるだけ対面を避けたいと考える顧客が増えたことや出社人数を減らす必要が生じたことなどで、一気にDXが加速したと考えられます。

近い将来には、高度なシステムを使いこなすDXが進んだ企業と、FAXなどを中心に使用し続けるアナログな企業とに二分されていくといっても過言ではないでしょう。

不動産業界にDXを導入するメリット

不動産業界にDXを導入するメリットは、非常に多く存在します。
中でも、主なメリットは次のとおりです。

業務効率化を図ることができる

メリットの1つ目は、業務効率化を図ることができる点です。
たとえば、これまで一つひとつ人の目で確認して管理していた物件情報を、システム上で一元管理をすることが可能となれば、業務効率は非常に高まることでしょう。

また、システムの導入でミスを防ぐことにつながるほか、担当者の不在時に他の職員であっても情報を確認しやすくなるなど、副次的な効果も期待できます。

遠方の顧客や対面が難しい顧客と商談ができる

メリットの2つ目は、遠方の顧客や対面を避けたい顧客との商談が可能となりうる点です。
たとえば、オンラインで不動産の内見ができるとなれば、実際に現地を見ることなく賃貸借契約をしたり、物件の売買契約をしたりするケースが増加するでしょう。

これは、コロナ禍ではもちろんのこと、たとえば地方から上京する人や単身赴任をする人などにとっても、非常に便利だといえます。
事前にオンラインで内見をして物件を決めておくことで、上京や異動の当日からその物件で暮らすことができるためです。
また、初めて実家を出る学生などであれば、地方に住む両親とともにオンラインで物件を見ておきたいというニーズも満たすことができるでしょう。

このように、DXを取り入れることで、きちんと物件の様子がわかるのであれば現地を実際に見なくとも契約をしたいと考える顧客を取り込むことが可能となります。
海外との商談など、今後ますますビジネスのチャンスが広がっていくと考えられます。

人手不足の解消につながる

メリットの3つ目は、DXの導入により人手不足の解消を図ることができる点です。

たとえば、これまで1件1件の問い合わせに個別で対応していたところ、ある程度の問い合わせにはチャットボット(チャットAIが自動で返信をするツール)で対応できる仕組みを導入すれば、かなりの労働時間が削減できることでしょう。

また、後ほど紹介するアットホームの物件のおすすめコメントの自動生成ツールなども、人手不足の解消に役立つツールの一つです。

不動産業界におけるDXの種類

一口に「不動産業界におけるDX」と言っても、その種類や活用方法はアイデア次第で無限に存在します。
ここでは、不動産に関わる企業が活用しやすいDXを4つ紹介します。

電子契約の導入

電子契約とは、オンライン上で契約を締結する仕組みです。
従来、契約といえば紙に双方が署名と捺印をして行うことが一般的でしたが、昨今電子データに電子署名を付す電子契約が普及しつつあります。

電子契約を導入することにより、オンラインのみですべての手続きを完了させることができる点が大きなメリットです。
これは不動産業界にとってのみではなく、顧客にとっても大きなメリットといえるでしょう。

しかし、不動産業界においては宅地建物取引業法により重要事項説明書などを書面で交付しなければならないとされており、電子契約は認められていませんでした。

こうした中、国土交通省では売買取引における重要事項説明書等の書面の電子化に係る社会実験が実施されています。
不動産取引で全面的に電子契約が解禁される改正法の施行は、2022年5月頃となる予定です。

改正法が施行されれば、多くの不動産業者で電子契約が本格的に導入されてくるものと思われます。
数年後には電子契約に対応ができないことがその不動産業者にとっての弱みともなりかねません。
今のうちに仕組みを知り、導入を検討しておくと良いでしょう。

Web会議システムの導入

Web会議システムとは、オンラインで会議ができるサービスです。
代表的なものに、ZOOMやMicrosoftのTeamsなどがあります。

こういったツールを導入することにより、本社などに集合することなく会議を行うことができるほか、顧客とのオンラインでの商談やオンラインでの物件内見が可能となります。

最近では、勤務先の企業や学校などでWeb会議システムを使ったことのある人が増えているため、顧客も抵抗感なくWeb会議での商談に応じてくれる可能性が高いといえるでしょう。

チャットツールの導入

チャットツールとは、スマートフォンやPCを介してリアルタイムでコミュニケーションを取ることができるツールです。
身近なものとしては、LINEなどがこれに該当します。

ビジネスに活用できるチャットツールにはSlack(スラック)やChatwork(チャットワーク)など、さまざまなものが存在します。
チャットツールは社内での情報共有や進捗管理などはもちろんのこと、顧客とのやり取りに活用することも可能です。

最近では電話が苦手だという人やEmailをほとんど使わないという人も増えているため、チャットで連絡が取りあえることは、顧客から選ばれる一つの強みとなります。

近年、Atlicu(アトリク)など不動産業界に特化したチャットツールも登場していますので、さまざまなサービスを比較検討したうえで活用を検討してみると良いでしょう。

不動産管理システムの導入

不動産管理システムとは、賃貸管理や土地管理などの不動産業務を、システムによってサポートするものです。

不動産管理システムには、GMO インターネットグループのGMO TECH株式会社が運営する「GMO賃貸DX」のほか、株式会社ダンゴネットの「賃貸名人」、株式会社いえらぶGROUPの「いえらぶCLOUD」など、数多くのシステムがリリースされています。

自社に合ったシステムを導入することで、業務の効率化につながるでしょう。

不動産業界におけるDXの導入事例

不動産業界における実際のDX導入事例には、次のようなものがあります。

住友不動産販売による「ステップオークション」導入

住友不動産販売株式会社は、ステップオークションを導入しました。
ステップオークションとは、本社が一括で発信した物件情報を業者が入札し、顧客に業者が提示した買い取り価格の最高値を提示したうえで、購入申し込みをまとめて受け取る仕組みです。

不動産業界は未だ紙ベースのやり取りが多く、従来は営業店がそれぞれ地元の宅建業者数十社に対して電話やFAXなどで物件を紹介しています。
こうした手間を削減するために、ステップオークションを導入しました。

これにより、従来ではあまり売れなかったような物件がニーズのある業者の目に留まり、成約するケースも増えているようです。

アットホームによる物件おすすめコメント自動生成AI

アットホーム株式会社は、不動産業務総合支援サイトである「ATBB(アットビービー:at home Business Base)」を運営しています。
ATBBはアットホーム加盟店専用のオンラインサービスで、各加盟店が物件情報を掲載したり閲覧したりするシステムです。

ATBBには物件のアピールコメントを記載することができますが、このアピールコメントをAIが自動で生成する機能が搭載されました。
作成されたコメントはATBB内の閲覧できるのみではなく、消費者向けポータルサイトである不動産情報サイト「アットホーム」の物件詳細ページに、「おすすめコメント」として掲載されるようです。

野村不動産ソリューションズが導入した「Musubell for 仲介」

「Musubell(ムスベル) for 仲介」とは、株式会社デジタルガレージが開発した電子契約一元管理サービスです。
この第一導入企業として、野村不動産ソリューションズ株式会社にシステムを提供しました。

このサービスは、不動産売買仲介契約の電子化や、契約から取引完了までのステータスの一元管理などに対応しています。
電子契約の機能には、弁護士ドットコム株式会社の「クラウドサイン」を採用しており、今後もサービスを拡充していくようです。

不動産業界におけるDX導入の課題

不動産業界におけるDX導入の課題

不動産業界におけるDXの導入には、課題も少なくありません。
中でも、主な課題は次のとおりです。

前例が少ないため試行錯誤が必要となる

不動産業界におけるDXの前例は、まだそれほど多いわけではありません。
また、一口に「DX」と言っても、その中身は企業によって多種多様です。

そのため、自社と同規模の他社で同じような仕組みの導入事例があるとは限らず、試行錯誤をしながら進めていく必要があるといえます。

システムの導入に多額の費用がかかりやすい

大規模なDXに取り組もうとすれば、システムの導入が不可欠です。

しかし、当然ながらシステムの導入にはそれなりの費用が掛かります。
システムの導入に要するコストと、システムを導入することで得られるメリットとをよく検討してから導入する必要があるでしょう。

また、せっかく高価なシステムを導入しても、使いこなすことができなければ宝の持ち腐れになり、単なるコストの垂れ流しとなってしまいかねません。
さまざまな機能が付加された多機能なシステムは魅力的に見えるかもしれませんが、本当に自社にとって必要で使いこなすことができそうなものだけを導入するよう、冷静に見極めることが必要です。

DXを扱う人材の確保が難しい

DXを導入する場合には、そのシステムを取り扱う人材が不可欠です。
たとえば、会計ソフトを導入したからといって、すべての会計が自動で行われるわけではないことと同じだと考えると良いでしょう。

社内にDXに詳しい人やDXについて積極的に学ぼうとする人がいなければ、せっかく導入したシステムを使いこなすことは困難となってしまいます。
こうした人材の確保が、不動産業者がDX化を進める際の大きな課題の一つです。

また、本格的にDX化を進めるとなれば、業務の進め方を抜本的に変革する必要が生じます。
古くから勤務する人が多い企業などでは、これに反発をする社員が生じて軋轢が生じてしまう可能性がある点も、課題の一つといえるでしょう。

法整備が追いついていない

不動産業界では、消費者の利益を守るため、宅地建物取引業法で取引に関するルールが細かく定められています。
電子契約については近く改正されて解禁される見込みであるとはいえ、他にもさまざまな規制があり、思い描いたDXがすべて実現できるとは限りません。

新たな取り組みを行おうとする際には、事前に弁護士に相談し、宅地建物取引業法などの法令に違反しないかどうかよく確認してから進めることをおすすめします。
いざ投資してDXを進めていく中で法令に違反したものだと判明すれば、大きな痛手となってしまいかねません。

まとめ

一口に「不動産業界のDX」と言っても、ここまでお伝えしてきたように、その内容はさまざまです。
やみくもにシステムを導入したとしても使いこなすことができなければ、せっかくコストをかけてシステムを導入した意味が半減してしまいかねません。

DXありきでシステムの導入を検討するのではなく、まずは自社の課題を洗い出してその課題を解決するために活用できそうな仕組みを取り入れていくことこそが、DX成功の近道ではないでしょうか。

また、不動産業界のDXには、課題も少なくありません。
特に、DXの導入により法令違反の状態となってしまわないかどうかは、事前によく確認しておくべきです。

オーセンスには、企業のDXや不動産法務に詳しい弁護士が多数在籍しております。
安心してDXへ取り組むため、不動産に関する業務のDXをご検討の際には、ぜひオーセンスまでご相談ください。

Authense法律事務所の弁護士が、お役に立てること

・企業のDXや不動産法務に詳しい弁護士が、ご希望のDXと関連法規との関係をチェックし、法令に適合したDXの導入をサポートします。
・最新の法律改正などを踏まえて、現在構築されているDXの適法性チェックや法律違反状態の改善などをサポートをします。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(神奈川県弁護士会)
神奈川県弁護士会所属。明治大学法学部法律学科卒業、慶應義塾大学法科大学院を修了(法務博士)。相続分野を中心に多くの案件を取り扱うほか、離婚や刑事事件など、様々な案件に意欲的に対応している。多量の資料であっても隅々まで精査し、証拠として重要なポイントを抽出することを得意としている。
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