リーガルエッセイ
公開 2025.04.16

教員による体罰で起こった傷害事件

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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教員による傷害事件

先日、立て続けに、小中学校で、教員が、生徒に重いけがを負わせたという報道を目にしました。
1つは、小学校の特別支援学級の担任が、低学年の生徒をゴミ箱に入れて立たせてその状態でゴミ箱を蹴ったところ、生徒が転倒して前歯が折れたという報道。
もう1つは、中学校の教員が、廊下の柱に生徒を押し付け、転倒した生徒が布巾かけのフックに頭をぶつけ、頭がい骨を骨折したという報道。

まず思ったことは、新生活が始まったこの時期にこういった事件の報道がされて、目にした保護者のかたは、今朝も学校に向かったわが子のことを思い、不安に思われただろうなということでした。

私は、報道の限りでしか内容を把握しておらず、事実が何なのか、ということはわかりません。
ただ、もし、報じられているように、小学校での事件が、特別支援学級の担任によるそのクラスの生徒に対するもので、また、現場が学校内の教育相談室という個室であったということが事実であれば、今回、この報道に至る道のりは、保護者の方にとってとても厳しく、ご不安なものだっただろうなと想像します。

教員と生徒が1対1という状況で、目撃者がいない状況。
そして、生徒は何らかの特性があって特別支援学級に在籍しており、まだ小学2年生であったこと。
もちろん、生徒のかたがもつ特性等によっても全く状況は変わり得るとは思いますが、個室で起きた出来事について説明することは心身ともに大変な負担を伴うものだったのではないかと思うのです。
保護者のかたをはじめとする周囲のかたのサポートがあってはじめて安全性が保たれた状態で記憶にある出来事をお話しすることができたのだと思います。

中学校での事件についても、保護者のかたは、頭がい骨を骨折して緊急手術をするという重篤な結果に、今もなおご心配な日々を送っていることと思います。

教員の刑事責任については、今後捜査が進むのだと思いますが、私は、刑事責任がどうなるかということ以上に、学校において、生徒に対する教育の在り方というものを今一度考えなおす必要があるのだと考えます。
体罰禁止。
それは、もはや当たり前過ぎて言うまでもないことです。
「体罰」というと、「昔は普通だったけどね。最近は厳しくなってきたから、やってはいけないことになってきたんだよね」というような誤った見方をされる危険があるように感じます。
でも、そうではなくて、法律でも、体罰が禁じられることは明記されています。
また、他人に対して手をあげることは、それ自体が暴行罪ですし、けがをさせれば傷害罪。
犯罪です。
行為者が教員であって、仮に子どもにおいて正すべき言動があった場合であったとしても、何らその犯罪が正当化される余地はありません。
さらに、犯罪だからやってはいけないというのではなく、教員が生徒に対してけがをさせたという行為が生徒の心身に与えるダメージがあまりにも大きいこと、教員が生徒に対して手をあげることにより、教育効果などが得られるはずはなく、ただただ生徒の心身へのダメージが残されるにすぎないこと、そのようなことが、教員は決して生徒に手を出してはならない理由なのだという当たり前のことへの理解が学校には浸透しているのかということを不安に思います。

子どもたちにとって、「先生」という存在は圧倒的であるはず。
先生との毎日が子どもたちの学校生活のすべてであるかのように感じられることもあると思います。
自分たちにいろいろなことを教えてくれる立場である先生がすることに間違いがあるわけがない、と思っている子どもたちも多いと思います。
そのような思いの中、先生の言動に傷ついたり、恐怖を感じたりしたことがあっても、それを他の先生や保護者のかたに相談することができずに一人で抱え込んでいる子どもたちもいるかもしれない。
もし相談したとしても、自分の言葉が信じてもらえるわけがない、などと思い込んで、何も言えずにいる子どもたちがいるかもしれない。

こういった報道を子どもたちにシェアしながら、体罰というものは何があっても許されないものであること、自分の身の回りで不安なことがあったら、すぐに保護者に話してくれれば、子どもの意向を最大限尊重しながら、二度と子どもたちが不安に思うことがないよう一緒に方法を考えていくということを子どもに伝えることはとても大事なことだと思っています。
新学期が始まって2週間。
入学、進級当初の緊張感が少しずつ薄れ、また、心身の疲れが見え始めてくるころかもしれません。
お子さんのお話の中で、学校での心配事がうかがわれるものの、どうやって学校と話し合いをしていけばわからないというかたがいらっしゃいましたら、お気軽にお声かけください。
保護者のかたと一緒にお子さんのお話をうかがい、お子さんの新生活がより安心したものになるようにサポートさせていただきます。

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