リーガルエッセイ
公開 2025.11.05

公訴時効について

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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公訴時効について

先日、1999年に発生した殺人事件の被疑者が逮捕された旨報じられました。
報道でも、「26年前の犯罪」などという報じられ方をしているのをいくつも見ましたが、これを見て、「時効にかかっていないのかな」と思われた方もいるかもしれません。
でも、結論として、時効にはかかっていません。
2010年4月27日スタートの法律改正で、殺人罪の公訴時効は撤廃されたからです。
その改正法のスタートにあたっては、「この法律の施行の際既にその公訴の時効が完成している罪については、適用しない」とされたため、1985年4月28日以降の殺人の犯行については、公訴時効にかからないということになったのです。
そのような話を聴いたとき、「あれ?それは他の法律と整合しないのでは?」とお考えになった方がもしかしたらいるかもしれません。
憲法39条1項に、「何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。」とされていることと矛盾するかのように感じる方もいるかもしれないなと思うのです。
でも、矛盾とはいえません。
実は、この点は、過去に裁判所で争われたのですが、裁判所は、「時の経過に応じて公訴権を制限する訴訟法規を通じて処罰の必要性と法的安定性の調和を図ること」が公訴時効制度の趣旨であり、本改正は、「その趣旨を実現するため、人を死亡させた罪であって、死刑に当たるものについて公訴時効を廃止し、期間を延長したにすぎず、行為時点における違法性の評価や責任の重さを遡って変更するもの」ではないと述べているようです。
つまり、被疑者が殺人の犯行に及んだときに、適法とされていた行為を、遡って処罰しようとか、本来想定していた責任よりもさらに重い刑罰を科そうとかそのような趣旨の改正ではなく、行為時の予測可能性に影響を与えるものではないという評価がなされているものと理解しています。
いずれにしても、今回の被疑事実に関し、もし、時効撤廃の法改正がなされていなければ、すでに25年の時効が成立していた可能性が高いところ、法改正により公訴時効が撤廃されたために今後刑事訴追の可能性が高まったといえるでしょう。

捜査は始まったばかり。
年前の犯罪であること、被疑者の属性等いろいろな観点から注目が集まり、いろいろなメディアで大きく報じられているのを感じます。
周囲の者には想像することができない日々を送られてきたご遺族のお気持ちに少しでも思いを巡らせて静かに捜査、裁判の進捗を見守ることが求められるのではないかと思っています。

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