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コンテナは建造物か
先日、ちょっと興味深い裁判例を見つけました。
ある刑事裁判の中で、コンテナ倉庫からそこに入っていた物を盗んだ被告人に、窃盗罪のほか、建造物侵入罪が成立するかが争われたという事案です。
コンテナってイメージ湧きますか?
私がすぐに思い浮かべるのは、刑事ドラマで、夜中に、悪者が、主人公に、何か重要な情報を渡すからなどとうそをついて呼び出すための場所。
人気もなくて危険そうなのに、なんでそんな場所に一人で行ってしまうかな、とやきもきしながら見守ってしまうあれです。
あとは、ときどき、駅のホームで、貨物列車というのでしょうか?
あの運ばれていくものは、コンテナですよね。
列車のみならず、船でも運ばれることがあると思います。
つまり、コンテナって、ずっとひとところにあり続けるわけではなく、移動することもあるわけです。
ここで、建造物侵入罪でいう「建造物」ってなんだっけと考えてみると、住居や邸宅以外の建物、それらに付属する敷地を指すはず。
そして、「建物」というのは、土地に定着したものであることを前提としているはず。
となると、一定の場所からどこかに運ばれていくことが想定できるコンテナが果たして建造物といえるのか、という問題意識が生まれるわけです。
今回問題になったコンテナというのは、奥行き約1240センチメートル、幅約240センチメートル、高さ約288センチメートルの大きさの鉄製のコンテナが土地上に設置されていたとのこと。
そして、そのコンテナは、設置されて以降3年10か月以上の間、移動されることなく、電気を電柱から電線で引き込んでタイヤ等を保管する倉庫として継続的使用されていたという実態があるようです。
こういった事実関係のもとでは、このコンテナ倉庫は、移動が容易ではなく、土地に置かれて継続的に使用される物で、その形態や使用の実態に照らして、社会通念上土地に定着しているといえるから、建造物侵入罪にいう「建造物」にあたるという評価がされたとのこと。弁護人側からは、基礎が打たれていないではないかという指摘などもあったようですが、そのような事情は、建造物であると認めるための決定的な要素ではないとの判断がされたようです。
ただ、これは、あくまでもこの事例における判断。
この裁判例によって、「なるほど、コンテナ=建造物といえるのか」と認識してしまうのは誤りだと思います。
そのコンテナの形状、使用の実態によっては、移動が容易といえ、建造物とは評価できないという結論もあり得るところ。
さらに、建造物侵入罪以外の犯罪、たとえば、建造物等放火罪など他の犯罪類型においては、それぞれの犯罪が守ろうとしているものの違いから、異なった解釈もあり得るところなのだと思います。
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